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「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 次世代の子供達-44d

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匿名ユーザー

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三年前より】






 星夜の様子を伺う
 多少、顔色が悪くなり呼吸が荒くなってはいるが……まぁ、大丈夫だろう
 こいつが契約している「残留思念」は、過去の記憶を読み取る以外にも、先程のように再現することができる
 ただ、再現する際に………その再現した記憶に「持って行かれる」事があるのだと言う
 特に、都市伝説事件の現場を再現する場合、関わった都市伝説や契約者が強力であったり、強すぎる感情が感じられると持って行かれる事が多いようだ
 先程の再現でも、「狐」らしき女が出た辺りで持って行かれそうになったと言っていた

(……つっても、発動を終えたのは、完全に「ベオウルフのドラゴン」に持って行かれかけたからだろうが……)

 恐らく、「三年前」の事件関連のみの再現をするつもりだったのだろうが………そうなると、確実に「三年前」の事件の終わりまで再現してしまう事になる
 すなわち、「ベオウルフのドラゴン」の契約者たる日景 遥と、「切り裂きジャック」の契約者たる荒神 灰人
 その二人が殺意と怒りが臨界点突破した状態で暴走している、その現場をだ
 そりゃあ、「持って行かれ」そうにもなるだろう
 再現範囲に地上を含めていなかったから、灰人の分は再現しなかったにせよ、遥の分は再現しかけていたのだから

「「先生」のとこに行くか?」
「……急ぐ必要はねぇ。念の為、あとで診てはもらうが」

 星夜の返答にわかった、と頷いておく
 「残留思念」を使用して体調に影響が出ている以上、都市伝説絡みの医学知識持ちに診てもらうにこした事はないのだ
 その相手が、「組織」所属の者ではないと言う事実は多少問題ではあるが、幸い、あの「先生」は「薔薇十字団」所属だ。セーフとしておこう

 星夜の様子を確認し終えて、辺りを見回す
 「繰り返す飛び降り」………東 一葉の姿は、いつの間にか消えていた
 自らが飛び降りた瞬間をも再現されて、存在まるごと消えたか、それともここから退散したのか
 どちらなのかはわからないが、今後どうなるかは彼女次第だろう
 そこに首を突っ込むつもりはない
 自らに関連の「仕事」が回ってくればそれをまっとうするまでだが、そうでなければ関わる気はなかった

「どの辺り、主に説明ほしい?聞きたいあたりを重点的に説明するけど」
「俺はますますあんたのことが知りたくなったよ」

 と、直斗とホモ(?)野郎の会話が聞こえてきた
 しまった、直斗逹の方に意識を向けて警戒するのを忘れ………待て
 何を発言しているんだ、あのホモ(?)野郎
 (?)を取り除いてやろうか

「………慶次。あいつ、直斗が警戒度合い低めの調子で傍にいたからあまり気にしていなかったが、誰だ?」

 呼吸を整えながら、星夜が問うてくる
 そう言えば、ちゃんと説明していなかった
 ……と、言うか。直斗はあれでも警戒は多少しているのか
 星夜が「警戒度合い低め」と言っているのならば、腹立たしいがそれは正しい事なのだろう
 そういった点を見抜く技量は、悔しいながらも星夜の方が上だ
 とにかく、星夜の質問に答える事にする
 ホモ(?)野郎には聞かれないように、小声の早口で

「何者か詳しくは知らないが、推定契約者。いきなり直斗と握手したがって、握手した後にじっと直斗を見つめてた」
「何だその危険人物一歩手前」
「俺が知りたい」

 あまりうれしくない事に、星夜と意見があった
 そうか、こいつから見ても、あのホモ(?)野郎は危険人物認定一歩手前か
 直斗も直斗で、身近にナチュラルホモがいて慣れているからと言って、対応がゆるすぎるだろもっと警戒しろ
 どちらにせよ、あのホモ(?)野郎が現状、多々な理由から警戒しなければいけない事実はそのままだ

 こっちの方でそのように考えている間に、向こうはある程度話が進んだのか
 直斗が、こちらに顔を向けてきた

「なぁ、ここで「狐」関連について話すってのもなんだし、場所移動しようと思うんだけど」
「あ?……そうだな。一般人が、屋上に来ないとも限らないし」

 ……最も、「三年前」の事件以降、屋上に来る奴なんてあまりいないだろうが
 直斗逹は、時々、屋上に花を供える事もあると言っていたが、やはりあのような事件があったとなると屋上に行きたがる生徒はいないだろう
 が、念の為だ

「わかった。じゃあ、こっから一番近いフォーチュン・ピエロ行こう。慶次の奢りで」
「待て」

 おいこら待て
 何故、俺の奢りだと確定している

「星夜も来るか?慶次の奢りだし」
「だから待て」
「あぁ、でも星夜、先に「先生」んとこ行って診察受けてくるか?さっきも「残留思念」使ってる間に持って行かれそうになったみたいだし」
「人の話聞け」

 俺が奢ること前提で話を進めるな
 まだ、俺は了承していない

「……いや、まだ痛みが出てきている訳でもなし、こいつに奢らせてから行く」
「てめぇもてめぇで了承すんな!?」

 星夜この野郎、俺に奢らせる気満々ときた
 少しは遠慮しろ

「つぅか、直斗。なんで俺が奢る前提なんだよ」
「慶次が一番年上なのと、俺、さっき花買うのに金使い切った」

 清々しい笑顔で言い切りやがった
 確かに、少しずつとは言え数種類の花を買っていたから結構な出費だとは思うがこの野郎

「こっちでわかった事あったら、また情報流すからそれでチャラにしてよ。「組織」じゃ手に入れにくい情報も渡すからさ」
「………今回だけだぞ」

 仕方ない
 愛百合経由では入らない情報も多い現状、直斗からの情報は有益だ
 これくらいは、情報料と思っておこう
 直斗が、ホモ(?)野郎にこちらが了承したことを伝える
 屋上から、校舎内へと入っていって……ふと、視線を感じた
 ちらり、そちらを見ると、この学校の生徒らしき、短い髪をしてメガネを掛けたおとなしそうな女子生徒が、こちらの様子を伺っている
 星夜が、その視線に気づいて

「先、行ってろ。すぐに追いかけるから」

 とそう言って、その女子生徒に近づいていく
 どうやら、知り合いらしい

 「組織」所属の人間である、と言う意識は強い星夜だが、こうして「日常」もしっかりと送っているのだろう
 あの女子生徒は、星夜にとっての「日常」の一つであるようだった

(都市伝説云々を知らない、「日常」しか知らない奴との交流も大事とは聞くが……)

 それを考え、ふと、直斗を見る
 身の回りに都市伝説関係者が多いこいつにとって、「日常」はどの程度残っているのだろうか、と



 門のところで改めて星夜と合流し、中学校近くのフォーチュン・ピエロへと向かう
 直斗は親に「夕食、友だちと食べて帰るから」と連絡していた
 その後は、何やら思考を巡らせながら歩いている
 ホモ(?)野郎からの質問は、大体屋上で先に聞いていたらしく、直斗は答えるべき内容を頭で整理しながら歩いているようだった
 「与えていい情報」と「与えるべきではない情報」を、今のうちにまとめておいているのだろう
 こいつの場合、質問された件についての答えを全て知っていたとしても、「与えるべきではない情報」だと判断したら答えなかったり、適当にはぐらかすくらいはするはずだ
 そういった点、直斗はそれなりにうまい。診療所のくそ白衣に見習わせたいくらいには
 フォーチュン・ピエロに到着し、皆で適当に注文して席について
 さぁて、と直斗が笑って、ホモ(?)野郎を見る

「それじゃあ、順番に質問に答えていくな」
「………わかった」

 ーーーすぅ、と
 ホモ(?)野郎の表情が、消えた
 直斗の答えに集中するためか、それとも、別の意図があるのか

 流石に、この店で騒ぎは起こさないと思うが(騒ぎが起きたら、ここの厨房でバイトしている某「首塚」メンバーが飛び出してくるだろう)、一応警戒はしておく

「まず、「東 一葉と咲季さんの学年」。俺より一個上だから、今でも生きていたならどっちも高校二年だな。事件当時の学年を言うなら、中学二年」
「………ふむ」
「次、「「狐の今の体は誰か?」……これは、知らない。流石にそれを知っていたら、それなりの対応するし」
「…そうか」
「続けて。「「狐」に魅了されてる奴が現時点でどれくらい居るか」。これは、わかっている範囲で答えるぞ。俺も鬼灯さんから教えられた以外はあまり把握できていないし」

 そうして答えた直斗によると、現時点で「狐」に魅了されている事確定なのは十数名程度
 …その中で、「狐」に近い位置にいたであろう者は3人
 アメリカ出身の「いつの間にか家にあるピエロ人形」の契約者であり、アメリカでは指名手配犯でもあるアダム・ホワイト
 ヨーロッパ出身であり「ファザータイム」と言う死神の一種の契約者であるミハエル・ハイデッガー
 契約者であるミハエルが「狐」に誘惑されているのであれば、契約都市伝説である「ファザータイム」も誘惑されているのだろうが、直斗は誘惑されている人数には含めていなかった。契約者と別行動を取ることがほとんどないと聞いているから、カウントしなかったのかもしれない
 そして、最後………「鬼」
 「鬼」と言う存在は日本各地、どこにでもいると言って良い為どの「鬼」であるかまでは不明
 少なくとも、「酒天童子」や「茨木童子」等ではないらしい。ただし、人食い鬼である事は確定
 「狐」に魅了されている者の人数だけを聞かれたのだが、ある程度要注意の契約者の情報まで与えたのは直斗なりのサービスなのだろうか

 ここまで話したところで、注文していたメニューがまとめて来たので一旦休憩
 ホモ(?)野郎に関しては、注文の際「適当でいい」とぬかしてきた為、オムライス(300グラム)にチキンがついている奴にしてやった
 「エビがマヨネーズの海で泳いでいる」と評価されるバーガーを注文しなかった点についてはありがたく思って欲しい
 あのオムライス、確か男でも量多くて残すことがあるとか聞いていたが、食べ盛りの年頃だろうし問題ないだろう、多分
 直斗はチーズカレーとヨーグルトシェイクで、こっちは適当に一番人気のセットメニュー。星夜はポテトとオニオンリングがセットでついてくるナイフとフォークで食べること前提のハンバーガーを、思ったよりもきちんとナイフとフォークを使いこなして食べている
 こういうところが、微妙に苦手なんだ、こいつは

「……「狐」に対する勝算はどれくらいか、って質問だけど」

 ごくり
 口にしていた物を飲み込み、直斗がホモ(?)野郎に答える

「お前の言う「君達」が、俺を含めてどの辺りを指しているのかわからないから、俺と、俺の親友達で戦ったとして、と言う前提で答えるよ」
「……あぁ」
「「狐」相手だけなら、ほぼ100%勝てる」

 直斗は、そう断言した
 ……まぁ、そりゃそうだろう

「あの「狐」は、当人の戦闘力はないに等しいからな」
「そういう事。こっちの総戦力考えれば、負ける方が難しい」

 星夜の言葉に、直斗はにこにこと笑いながら答えた
 だとしても、なんという自信だ

「誘惑能力については考えないのか」
「あぁ、あれな。誘惑してくる事がわかっていれば、対応できるから問題ない。むしろ、誘惑しようとしてくりゃその分隙ができる」

 なるほど
 誘惑に対する対応については、鬼灯にでも聞いたのかもしれない
 あの男、何度か「狐」と対面していて、誘惑に打ち勝っているのだし

「さて、次……「狐をどうしたいのか」」

 直斗は、笑う
 ごくごく自然に、世間話でもするかのようなノリで答えていく

「正直、今、誰にも見つけられずに気配すら感じさせない状態のまま、消えて。消え去って、二度と復活してほしくないかな」

 その答えは
 「どうしたいのか」と言うよりも「そうなってほしい」と言う願望にも近いように聞こえたが

「まぁ、消えるにしてもそれなりに苦しんで欲しいのかもしれないけど。消えてくれるならまずはそれでいいや」

 それが一番楽だし、とそう答える
 ホモ(?)野郎は、直斗の返答を終始無表情で聞いている
 その無表情の中に、妙な薄気味悪さと言うか………「異質」さを感じる
 まさか「異常(アブノーマル)」の類かと考え、一応、警戒を強めておく
 「異常(アブノーマル)」関係となると、通常の都市伝説契約者では対処しきれない特殊例がありすぎる為、天地への報告は必須になるし、へたをしたらそこからSNo案件になるだろう
 …そうなったら、本当に面倒臭い事になりそうだが

 カレーを食べ終わったところで
 直斗が、残りの質問に答え始める

「えーと、次は……俺の好きな子のタイプ、だっけ?」
「「ちょっと待て」」

 はもった
 嬉しくない事に、星夜とハモった
 いや、ツッコミいれたくもなる
 何聞いてんたこのホモ野郎
 もう(?)は完全にとるぞホモ野郎

「好きな子っつか、好みのタイプなー。ヒステリー起こさなくてメシマズじゃない、優しい子がいいな」
「お前も真面目に答えるなよ!?」

 ツッコミを入れて問題ないはずだ
 これくらいはツッコミ入れても許されるはずだ
 何、真面目に答えているんだ直斗も
 ナチュラルホモが身近にいるとこういうことが平気になるのか

「で、次。俺に好きな子がいるか、だけど」
「直斗、身の危険感じたらすぐに言えよ」
「うん、ありがとうな星夜。大丈夫だよ」

 よく言った星夜
 今回は褒めてやる

「好きな子、いないよ。大事な親友逹ならいるけど」

 答えなくてもいいであろう質問にまで、直斗は笑って答える
 そう、ずっと笑っている
 にこにこと、楽しげに
 友人と世間話でもしているかのようなノリは、ずっと変わらないままだ

「えーと、次。咲季さんのフルネームと、どう漢字書くかな。ちょっと待って」

 席に常備されているアンケート用のペンを取り、ついでに制服の内ポケットから小さな黒い革製の表紙のメモ帳を取り出した直斗
 メモのページを一枚破ると、さらさらと書いていく
 「土川 咲季」、と

「「土川 咲季(つちかわ さくり)」、これが、咲季さんのフルネーム。これでいいか?」
「……あぁ」
「うん、じゃあ。これで質問には答えたな」

 お役目終了、と言った表情の直斗
 今度は、逆に直斗から質問するのかとも思ったが、その様子は見えない
 ホモ野郎に質問しない代わりに

「なぁ、慶次と星夜は、さっき俺が言ってた以外に、「狐」に誘惑された奴で厄介なやつの情報って持ってるか?」

 と、こちらに問うてきた

「そう言われてもな……こっちも、さっきお前が話した情報以外はあまり。一つ、あるっちゃあるがかなり曖昧な情報だし」
「曖昧?」
「相手の契約都市伝説と、その能力がはっきりしていない。契約者自身の目撃者も「生きていない」。その程度の情報だ」

 最後の一口を食べ終えた星夜が、こちらの答えを補足する
 そう、何やら厄介な奴がいるらしい事はわかっているのだが、情報が不確定すぎるのだ
 あまりにも不確定すぎて、話す事も少々ためらわれる

「「三年前」の時点で「狐」傘下にいたと思われる奴なんだが。西洋剣の扱いに長けた奴が返り討ちにあってる」

 こちらが、情報を出すのをためらっているうちに、星夜が続けた
 そういえば、その時に死んだ西洋剣の扱いに長けた奴とやらは、こいつの先輩格だったか。かけらも尊敬はしていなかったようだが

「そいつの遺言。「剣の支配権が奪われた」。意識も朦朧としていたし、真実かどうかはわからねぇ。ただ、そいつの死因は、そいつが扱っていたはずの剣でばっさり斬られた事だ。支配権つっても、それは都市伝説で作られた物でもないただの西洋剣だった」
「………なるほど。うん、いい情報だ。ありがとう」

 本当に感謝したように直斗は言ってきた
 情報を重要視する直斗らしい


 情報交換を終えて、店を出る
 外は、だいぶ日が落ちて暗くなってきていた
 すっかり、日が落ちるのも早くなってきている

「直斗、1人で帰るつもりか?」
「んー、いや。途中まで星夜と帰る方向一緒だし厳密には1人じゃないよ。それにこれくらいの時間帯なら、逆に「逢魔が刻の影」とは遭遇しないだろうし」

 確かに「逢魔が刻の影」と呼ばれる奴らが出没する時間帯とはズレているが……他にも厄介なものが多数いるのが今の学校街だから、もう少し気をつけるべきだと思う
 星夜がいるとはいえ、こいつの契約都市伝説は戦闘向きではないのだし
 ……だと言うのに、直斗は「大丈夫」と自信満々に言う
 根拠などないに等しい自信だと言うのに、何故かこいつが言うと本当に大丈夫なんじゃないかと錯覚しそうになる
 実際、今までも大丈夫だったのだから、こいつはかなりの幸運に愛されているのだろう
 星夜の事も同時に送ることになる為若干腹立たしいが、護衛していってやろうか、と考えていたその時

「あ、直斗君、星夜君。慶次さん。こんばんは」

 かなえの声がして、そちらを見た
 見ると、長い何かを包んだ布袋を持った、かなえの姿
 …あぁ、そうだ。そういや、今日はかなえの薙刀の稽古がある日だった
 その帰りか
 さり気なく、ホモ野郎の視線からかなえを遮る
 かなえは、ホモ野郎の方を見て首を傾げたようだったが、俺達の誰かの知り合いだと思ったのか追求はしなかったようだ

「かなえ、習い事お疲れ様。今から帰り?」
「うん。あ、でも、ちょっとお買い物してから、帰るけど……」

 直斗の問いに、かなえはそう答える
 買い物してから、となると……今の時間帯、かなえ1人で大丈夫だろうか
 いや、厳密には「岩融」がいるから、1人ではないのだが

「かなえ、念の為送っていくか?」
「え?えっと……」

 こちらの申し出に、おたおたとするかなえ
 直斗が、そんなかなえににこっと笑って告げる

「送ってもらったら?女の子の独り歩きは物騒だし」

 直斗も、かなえが厳密には「1人」ではない状態だとわかっているだろうに、こう言っている
 かなえは「んっと…」と、直斗の方を見たが

「俺は、大丈夫」

 と、自信満々に笑いながら直斗が答えるものだから、うん、と、頷いてくる

「えっと、それじゃあ、慶次さん、お願いしてもいいですか……?その、正直、暗い中1人で歩くのはちょっと、怖くて」

 「岩融」さんがいても、と小声でこっそりとつけたしていた
 まぁ、都市伝説が傍にいるとはいえ、都市伝説以外の一般不審者に対してどの程度都市伝説能力で対抗していいかどうかは個人意見がわかれるところだ
 かなえは、なるべく都市伝説関係者以外には都市伝説で対抗したくないのだろう

「わかった……じゃあ、直斗、気をつけろよ。ついでに星夜も」
「余計な世話だ」

 つい、と星夜はそっぽを向いてきた
 相変わらずの態度に逆に安心する

「……一応、あのホモ野郎をしっかり警戒しとけよ」
「わかってる」

 念の為、星夜と小声でそのようにやり取りして
 俺はかなえを送っていく為に、直斗逹とわかれた




 慶次とかなえを見送り、直斗はほっと笑ってみせる

「うん、いいタイミングでかなえが来てくれた」

 と、そのように口にした
 直斗の様子に、星夜が首をかしげる

「直斗?」
「いやな。ちょっと、「慶次には聞かせにくい答え」をしなきゃいけない質問もされてたからさ」

 そう星夜に答えながら、直斗はちらりと早渡を見た
 中学校の屋上で質問を聞いていた際、直斗が言うところの「慶次には聞かせにくい答え」をしなければいけない質問を受けた際
 直斗は、口には出さず、スマホのメモに打ち込んだ画面を見せて、こう早渡に伝えていたのだ

『ちょっと、慶次に聞かせにくい答えをしなきゃいけない質問がいくつかあった。これから行く店で、じゃなくてその帰り道にででも答える』

 と、そのように
 なので、慶次に帰り道についてこられると、少々面倒だったのだ
 ……もっとも、直斗は「かなえが習い事の帰り道、この辺りを通る」事を想定していたのだが

「俺には聞かせていいのか?」
「うん、星夜はもう知ってる事だし……じゃ、歩きながら話そうか」

 三人でゆっくり、歩きながら
 直斗が、早渡からの残りの質問に答えていく

「「「狐」に魅了されたらどんな感覚になるか説明できるか」、についてだけど……俺は無理。誘惑された奴って、そのまんま死んでる奴多いし。「三年前」の事件の犯人たるあいつは生きてるけど、なんかまともな受け答えできない状態で都市伝説犯罪者専用刑務所にいるから話聞けないし」
「そうか……」
「………でも」

 でも、と
 にっこり笑いながら、直斗は続ける

「説明できるかもしれない奴に1人、心当たりがある」
「…心当たり?」
「そう。問題は、あの人の説明が理解できるかどうかだけど」

 やや曖昧な答えに、早渡は無表情のまま、直斗に観察するような視線を送る
 直斗の答えに、星夜が「あぁ」、と声を上げた

「…なるほど、「先生」の事か」
「そうそう、そういう事」
「……「先生」、と言うと?学校の?」
「いいや。住宅街にある診療所の「先生」。都市伝説契約者で、所属は「薔薇十字団」……ただ、数年前まで、ちょっとワケアリで発狂してたらしくてさ」

 その発狂していた理由に関しては、「狐」は全く関与していないのでさておく
 ただ、その発狂していて、世界各地で毒をばらまいたりを筆頭に色々やらかしてしまい、複数の都市伝説関連組織から指名手配を食らっていた「先生」は、その発狂期間中に一度「狐」に遭遇している
 しかも、だ

「「先生」は発狂していた間に「狐」に誘惑されて、それを解除されてる」
「……「狐」が自ら誘惑を解除した?」
「そうそう。誘惑された直後に即、だったらしいよ。当人の証言だから、信じるかどうかは別として。少なくとも、過去に「狐」に誘惑されて、解除された事は確かさ」

 あまりにも、特殊例だ
 「狐」に誘惑され、しかしそれを即座に解除された、等
 他に例はない

「「先生」に聞けば、お前から最後の質問である「「狐」に魅了された奴は「魅了されてる間のこと」を覚えてるかどうか」についてもわかると思う。これも、俺だと答えられなくてさ」
「…そうか」

 なるほど、と
 早渡は直斗からの返答を聞き終えて、思考を巡らせている様子だ

「慶次に聞かせたくないってのは、「先生」が「狐」と遭遇した事がある、って事か」
「そう。現時点で慶次にその情報聞かせても、「先生」へのいらない疑い持ちそうだからさ……マシにはなってきたけど、今でもまだ、愛百合の影響が多少あるし」

 星夜の言葉に、直斗は肩をすくめてみせた
 どうしても、「先生」に胡散臭いと言うような視線を向けがちな慶次にこの情報を聞かせるのは、まだ早い、と判断したらしい
 だから、こうして慶次の居ない場で情報を渡したのだ

「これで。本当に質問には全部答えたけど……本当に、質問はこれだけでいいか?今なら出血大サービスでもっと教えるけど?」
「…随分、情報を教えてくれるんだな」
「そりゃもちろん。お前が情報を知る事が、こっちにとっての情報料なんだからさ」

 どういうことか、とでも言いたげな早渡だが、直斗は笑うだけで答えない
 代わりに、答えたのは星夜だ

「まぁ、中途半端にわかってる状態で「狐」やら別の事やらに巻き込まれて敵になられても、鬱陶しいし邪魔なだけだからな」

 そう、ズバりと
 直斗であれば、流石に多少は空気を読んだり相手を気遣う等して言わない事を、ばっさりと言ってのけた
 彼、栗井戸 星夜はこういう少年なのだ
 相手が誰であろうとも、言いたい事はド直球でばっさりと言ってしまう
 それが、自分より立場が上のものであろうともおかまいなしに言ってしまうものだから、大人からすれば星夜は「扱いにくい相手」になりがちだ
 学校の成績的には問題がないと言うのに、推薦がとれなかったのはそのせいだと言う事は星夜自身もわかっているのだが、改める気はさらさらない様子である
 慶次が星夜と仲が悪いのも、星夜のこのド直球マジレスマンとしての側面のせいなのだが、この場においては特に関係はない

「邪魔、ときたか」
「うん、まぁな。「狐」の他にも「バビロンの大淫婦」やら、「怪奇同盟」の盟主様の問題やら、「赤マント」の大量発生やら子供の誘拐やら何やら、一気に起きて本当面倒くさいし、鬱陶しいしさ」

 色々同時におきすぎ、と直斗はぼやく

「だから、お前にもなるべく情報は知ってほしいし、面倒くさい事態にはなってほしくない。だから、情報は出来る限り渡すよ。だから、聞きたいことあったら先にぼんぼん聞いてくれたほうが楽」

 色んな意味で、と直斗は笑う

「……さぁ。まだ聞きたい事は、あるか?」

 自分が教えられる範囲で教えるよ、と
 楽しそうに笑いながら、そう、早渡に告げた




to be … ?






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