27 担当待ち
この部屋は照明があるとはいえ、暗い
「組織」所属の契約者、サスガは椅子に座ったまま思案していた
数時間前の件は先にメールで報告を済ませてある
あとは担当の黒服に直接口頭で引き継ぎを行うだけだ
「組織」所属の契約者、サスガは椅子に座ったまま思案していた
数時間前の件は先にメールで報告を済ませてある
あとは担当の黒服に直接口頭で引き継ぎを行うだけだ
「フリーの契約者なのかなあの人達、『首塚』って雰囲気でも無かったし」
サスガからやや距離を置いて佇んでいるのが
先刻行動を共にした“モヒート”こと見辺 加賀実(みべ かがみ)だ
彼女はサスガと異なる中学に通学する一年生で「コークロア」の契約者だ
サスガの二つ下の後輩に当たり、「組織」の仕事では組まされることが多い
先刻行動を共にした“モヒート”こと見辺 加賀実(みべ かがみ)だ
彼女はサスガと異なる中学に通学する一年生で「コークロア」の契約者だ
サスガの二つ下の後輩に当たり、「組織」の仕事では組まされることが多い
数時間前、彼らは南区の繁華街を巡回していた
その際に裏路地から都市伝説の気配を複数察知し
追跡したところ、現場から逃走する契約者と都市伝説を発見した
所謂“野良”の契約者による襲撃かと現場に駆け付けたところ、「偽警官」が倒れていた
その際に裏路地から都市伝説の気配を複数察知し
追跡したところ、現場から逃走する契約者と都市伝説を発見した
所謂“野良”の契約者による襲撃かと現場に駆け付けたところ、「偽警官」が倒れていた
更に気配を感じ、付近の廃ビルを確認して地下のバー跡から
天井より吊り下げられるように拘束されている「臓器泥棒」を発見
この都市伝説二名の身元が近年発生していた人身売買事件の有力容疑者として
「組織」のデータベースに登録されていたため、「臓器泥棒」と「偽警官」の捕獲を優先したのである
天井より吊り下げられるように拘束されている「臓器泥棒」を発見
この都市伝説二名の身元が近年発生していた人身売買事件の有力容疑者として
「組織」のデータベースに登録されていたため、「臓器泥棒」と「偽警官」の捕獲を優先したのである
この他、「偽警官」が所持していたと思しきトランクからは大量の白い粉末が
バー跡からは複数の監禁用具が発見されており、二名の身柄と共に「組織」付の黒服へ引き渡してある
詳細はこれより調査が進むだろうが
この二名は恐らく「赤マント」や「狐」関連事件の裏で密かに活動していた人身売買の犯罪者だろう
バー跡からは複数の監禁用具が発見されており、二名の身柄と共に「組織」付の黒服へ引き渡してある
詳細はこれより調査が進むだろうが
この二名は恐らく「赤マント」や「狐」関連事件の裏で密かに活動していた人身売買の犯罪者だろう
「自警団のつもりか知らないけど、危ないからほんと止めて欲しいわ。まったく」
“モヒート”は苛立ったようにそう独り言ちる
やや置いて、彼女はちらとサスガを盗み見たが
サスガは彼女の様子など意に介さず黙考を続けていた
やや置いて、彼女はちらとサスガを盗み見たが
サスガは彼女の様子など意に介さず黙考を続けていた
現場から逃走した契約者と都市伝説
契約者には見覚えがあった、忘れもしない
あれは以前、夜の東区中学で遭遇した契約者だった
逃走の際に「人面犬」が一緒のようだったが、あれは契約者の仲間だろうか
契約者には見覚えがあった、忘れもしない
あれは以前、夜の東区中学で遭遇した契約者だった
逃走の際に「人面犬」が一緒のようだったが、あれは契約者の仲間だろうか
あれは何故あの場に居たのか
あれは一体あの場で何をしていたのか
あれは一体あの場で何をしていたのか
都市伝説犯罪者との小競り合いだったのか、それとも
あるいは仲間割れという線も否定できなくはない
しかしサスガの直感がそれを否定していた
ならば
あるいは仲間割れという線も否定できなくはない
しかしサスガの直感がそれを否定していた
ならば
今回は容疑者の捕獲を優先し、現場から逃走した者の追跡は行わなかった
一応メールでの報告には逃走者の存在を記載しているし口頭でも報告を行うつもりだ
しかし
一応メールでの報告には逃走者の存在を記載しているし口頭でも報告を行うつもりだ
しかし
「先輩、ねえ。ねえったら。……“オサスナ”」
“モヒート”の声に現実へ引き戻される
僅かに首を捻り彼女の方を見やれば、半眼でこちらを睨んでいた
僅かに首を捻り彼女の方を見やれば、半眼でこちらを睨んでいた
「先輩、まただんまり?」
「じき担当が到着する時分だ、報告を終え次第本日は解散する」
「じき担当が到着する時分だ、報告を終え次第本日は解散する」
相変わらず彼女はじっとりサスガを睨んだままだ
「報告は俺がやる。お前は先に帰っても良い」
「そうじゃなくて」
「そうじゃなくて」
続きを口にしかけ、不意に“モヒート”は黙った
代わりに部屋の入口へと視線を注いでいる
代わりに部屋の入口へと視線を注いでいる
視線の先を追うと、ドアの間から少女がこちらを覗いていた
サスガと目が合ったのか、少女は小さな悲鳴を上げて引っ込んでしまった
サスガと目が合ったのか、少女は小さな悲鳴を上げて引っ込んでしまった
「もう、いつから居たの」
ドア越しの少女に声を掛ける“モヒート”の声は
直前のサスガに向けた言葉と違って幾分か柔らかい
直前のサスガに向けた言葉と違って幾分か柔らかい
「来てたんなら挨拶してくれたっていいでしょ?」
「だって、真面目なお話、してたみたいだったし……」
「他の黒服さんに見つかったら怒られちゃうよ? 入って入って」
「だって、真面目なお話、してたみたいだったし……」
「他の黒服さんに見つかったら怒られちゃうよ? 入って入って」
もじもじしながら入って来たのは割烹着姿の少女だ
外見は小学生中学年ほどだが実態は「組織」所属の都市伝説
独り身の老人が入浴中に死亡し、追い炊きされ続けて死体が煮崩れを起こしたという怪談
世に言う「人肉シチュー」が顕在化した存在である
外見は小学生中学年ほどだが実態は「組織」所属の都市伝説
独り身の老人が入浴中に死亡し、追い炊きされ続けて死体が煮崩れを起こしたという怪談
世に言う「人肉シチュー」が顕在化した存在である
彼女は割烹着の裾をいじいじしながら頻繁にサスガの方をちらちら見ているようだ
「こんな所に来たら大変だから、ね?」
「ううー、でもー」
「“穏健派”所属が此処に居たら面倒だ。“モヒート”、送れ」
「ううー、でもー」
「“穏健派”所属が此処に居たら面倒だ。“モヒート”、送れ」
突如サスガが口を開いたためか
割烹着の少女はうぴゃいと謎の小さな叫びを上げて硬直してしまった
割烹着の少女はうぴゃいと謎の小さな叫びを上げて硬直してしまった
言われた“モヒート”は半眼で冷たい一瞥をサスガに投げる
フンと鼻を鳴らし割烹着の少女を連れ足早に部屋を出た
フンと鼻を鳴らし割烹着の少女を連れ足早に部屋を出た
「普通女子に向かってあんな口の利き方ってあり得ないわ、ほんと」
「仕方ないよ、お兄ちゃんもお姉ちゃんもお仕事終わったばかりなんだよね」
「アイツってば、いつもあんな感じだし。あれは絶対女子にモテないわね。うん絶対」
「仕方ないよ、お兄ちゃんもお姉ちゃんもお仕事終わったばかりなんだよね」
「アイツってば、いつもあんな感じだし。あれは絶対女子にモテないわね。うん絶対」
暗い廊下を割烹着の少女が“モヒート”に連れられて行く
目指すは少女が所属する穏健派のオフィスだ
“モヒート”は実質サスガに帰れと言われたのを口実にもう帰るつもりだ
折角待ってやってたのが馬鹿みたいだったと彼女は若干キレていた
目指すは少女が所属する穏健派のオフィスだ
“モヒート”は実質サスガに帰れと言われたのを口実にもう帰るつもりだ
折角待ってやってたのが馬鹿みたいだったと彼女は若干キレていた
「今日はどうしたの? 私たちに会いたくなっちゃった?」
「うん、あのね。黒服さんがいっぱいドーナツ買って来てて
いっぱいあるから、お姉ちゃん達もおなか空いてないかなって」
「ああんもう、優しいなあ!」
「うん、あのね。黒服さんがいっぱいドーナツ買って来てて
いっぱいあるから、お姉ちゃん達もおなか空いてないかなって」
「ああんもう、優しいなあ!」
歩きながら“モヒート”は割烹着の少女を抱き締める
もふもふされながら少女は先程よりボリュームを落とした声でもじもじし始めた
もふもふされながら少女は先程よりボリュームを落とした声でもじもじし始めた
「えっと、それでね、お兄ちゃんの分も、持って行った方がいいかなー、って……」
「え、アイツ? 先輩のこと?」
「うん……」
「え、アイツ? 先輩のこと?」
「うん……」
うーん
少女の優しさに“モヒート”は困ったような笑みを浮かべた
少女の優しさに“モヒート”は困ったような笑みを浮かべた
“モヒート”は知っていた
“オサスナ”ことサスガ先輩は甘いものが苦手であることを
“オサスナ”ことサスガ先輩は甘いものが苦手であることを
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