「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 次世代ーズ-EX01

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EX 難波津 軍次




「あのう、すいません」

 逢魔ヶ刻を迎えた通学路
 制服姿の少女が、先を行く制服姿の少年に声を掛けた

 少年はおもむろに振り返る

「あの、ちょっといいですか?」

 そう声を掛ける少女の口は異常な程大きなマスクに覆われている
 どこの制服かは知らないが、たぶん、いや絶対市内の高校に違いない

 少年の目が彼女の顔から胸元へと滑った
 うむ、大きい

「あのう、私って、キレイですか?」
「あっはい最高だと思うッス!!」
「えっ、あっ、最高、ですか? ……じゃあ、これでも……」
「あっ、待って!! ストップストップ!!」

 彼女がマスクに手を掛けようとした所を、少年は慌てたように制止した
 彼はとっさに首から提げられたカメラを構える
 それは最早武器ではないかと思わせる程のごつい代物だ
 確実に諭吉君が50枚以上吹っ飛びそうな、そんなやばそうなカメラである

「ふひっ、やっぱファインダー越しが断然いいっッスねー!! 最高ッス!!」
「え、あ、あの……」
「マスク外したらもっと最高だと思うッス!! 良かったら外してもらってもいいッスか!?」
「あ……あの、じゃあ……こ、これでもキレイかーっっ!!!」

 少年の言葉に、彼女はマスクを外しながら叫んだ
 なんと彼女の口は耳元まで大きく裂けているではないか
 そう、彼女の正体は世に噂される都市伝説、「口裂け女」だ

 しかし少年に動ずる様子はない
 彼女がマスクを外し、裂けた口を曝け出した直後

 カメラから鋭いシャッター音が響いた

「ふっ、決まったッス……!!」

 少年の決め台詞とほぼ同時に、マスクを外した少女は後方へと倒れてしまった

 彼は一仕事終えたといった表情で少女を見下ろす

 問題ない、彼女は気を失っているようだ


「ふ……、ふふふっ、ぃいやっピぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃイイイイイイイイイッッ!!!!」


 通学路に歓喜の絶叫がこだまする
 少年はガッツポーズで小躍りを始めていた

「噂には聞いてたンスよお!! 『最近、制服型の「口裂け女」が徘徊してる』ってなあ!!
 放課後こうして張り込んでた甲斐があったってモンッスよおッ!! まじでっ!!!」

 少年は鼻息も荒く、仰向けに失神している少女に近づいていく
 勿論、その間に彼女にカメラを向けて何度もシャッターが切られた

「はあ……、マジかわいいッス……。ああ、いい……。もう最っ高ッス……!!」

 少年の名は難波津軍次
 実在化した「口裂け女」を瞬時に無力化した彼もまた只者ではない
 まあお察しの通り、彼は「写真を撮影されると魂を抜かれる」の契約者であり
 ついでに言うと「組織」所属であった
 更に言うと思春期であるが故のスケベである

 彼はまず、少女の肢体を、特に顔と胸元を嘗め回すように撮影していた
 やがて気が済んだのか、彼は数歩ほど下がると、唐突に地面にうつ伏せになった
 まるで匍匐前進でもするような姿勢だ
 丁度、倒れた少女のスカートを覗き込むような格好である

「ふっふっふ、あとは『組織』に引き渡すだけなンスけど、俺はそんな素直じゃないッスからね
 万が一『黒服』が到着するにしてもまだまだ時間に余裕はあるし、こっからがお楽しみだぜぇ……!!」

 下衆な声色で何やらいやらしいことを口にしつつ
 彼のレンズは無慈悲にも少女のスカートの中へ向けられた

「ひひひっ!! さ~あ御開帳の時間ッスよぉぉ~!! 『口裂け女』ちゃんはどんなの履痛でぇぇぇっ!!??」

「はーいストップそこまで」

 少年が乙女のスカートを暴こうとフラッシュを焚こうとする直前
 彼の頭頂部に物凄い勢いでヒールがめり込んだ

「痛でぇぇぇぇぇぇぇっっ!!??!!??」
「ったく、駆け付けたら案の定じゃないのよ……」

 彼は痛みを堪えながら、自分の頭をおもっきし踏み潰した元凶を睨んだ
 すぐ傍に立って少年に軽蔑の視線を送っているのはパンツスーツ姿の若い女性だ
 少年より少々年上のお姉さんのようにも見えるが、その正体は説明する間でもなく「組織」の「黒服」である
 つまり、実年齢は不明なのだ

「アンタ、そろそろ本当に担当のメガネに言いつけるわよ?」
「くっ! それで俺の弱みを握ったつもりッスかあ!? 暴力には屈しないッスよ!!」

「確か、『無力化後の必要以上の対象撮影は厳禁』、だっけ?
 カメラは没収、データは処理してナンバー経由で返却するから、覚悟してよね」

「なっ!? あっ俺のカメラがな、無いッ!?!?」

 少年が持っていた筈のカメラは、いつの間にか黒服の首に提げられている

「まったく……いくら相手が都市伝説とはいえ、何やっても許されるとは思わないことね」
「まだ何もしてねえッスよ!!! これからってときに邪魔が入っ、あっ、と、兎に角、まだ何もやってねえッスよ!!!」
「言い訳の上に、邪魔が入らなければそのままセクハラしてたってこと? 最っ低ね」
「ち、違っ!! だ、だって仕方ねえじゃねえッスかあ!!
 そりゃ性欲は自分で処理できるッスけどお!! 俺はファインダー越しじゃねえと興奮できねえンだぁぁぁぁっっっ!!!!」


 少年の言い訳がましい釈明に、黒服は冷ややかな眼差しで答えつつ
 手早い挙動で失神した「口裂け女」をお姫様だっこした

「精々きっついお仕置きでもされて反省しなさい。……じゃあね」

 最後の挨拶が非常に刺々しい
 黒服は「口裂け女」の少女を抱いて足早にその場を立ち去った

「ちっきしょぉぉ……、来んの速過ぎだろぉぉ、『組織』ィィ……」

 少年の口からは恨みがましい声が漏れ出るが
 実はこのとき、少年は隠し持っていたコンデジを取り出し
 密かにピントを合わせ、現場から立ち去る黒服の尻を、主に尻を執拗に撮影していたのだ

 実に、ものの数秒の犯行であった

「くっ、逆光でなければPラインまで撮影できたが……、いやこれはこれで良し!!」

 黒服が完全に視界から消えたのを見届けた後
 少年はコンデジの画面を覗き込んで撮影の出来を確認する

 そして少年は黒服が消えて行った先を物凄い形相で睨み付けた

「俺は絶対に諦めねえッス……!! 超自我の声(※性欲のこと)に従って撮影道を究めるまでなあっ……!!」





<終>

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