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「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 次世代ーズ-CL08

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匿名ユーザー

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一日目の夜、『組織』




 学校町南区、某ビル屋上


「みさ、おきてよ」


 もう身動ぎすらしなくなった友人を揺すった
 先程まで聞こえていたはずのか細い呼吸も、もう分からない

 あの少年と少女が立ち去ってどれくらいが経ったのか
 あの少年はまず友人を、続いて自分を滅茶苦茶にした
 そして、あの少年は自分とそっくりの姿に変身して、自分の服を着て、行ってしまった


   じゃあ、俺たちはお前ん家で 夕メシ 食って くっから
   気が向いたら、 お袋の味 って奴を教えに来てやるよ


 あの少年はそう言って、少女と一緒に此処から飛び降りて行った
 少年は自分の家族を[ピーーー]つもりだ


「おきて、おねがい。おきて……」


 自分の携帯は少年に奪われた
 そして、友人の携帯は目の前にある
 少年の手で破壊された、携帯だった残骸が

 これでは、助けを呼べない
 家族に連絡を取ることも、出来ない


「おきて……」


 陽も落ちた、寒い、空気が冷たい
 夜の闇の中で、もう何も言わなくなった友人を揺さぶるしかなかった


 誰も助けに来ない

 誰も


 あの少年と少女は嗤っていた
 何もできない自分と友人を、嗤っていた


「たすけて」


 無意識に、ただその言葉だけを呟いていた


「だれか、たすけて――」


 掠れた喉で、何度その言葉を口にしただろう


 不意に、視界の隅に光が差した
 咄嗟に顔を向け、眩しさに思わず光を手で庇った


 誰かが、こっちへ近づいてきた





「負傷者、2名。発見しました」


 「組織」Rナンバー、「援護班」所属
 スカートスーツに、顔を包帯で覆った「黒服」、乱野憐子は
 声を絞り出すようにして、ようやくそれだけを無線で報告した

 目の前の惨状に、声を失っていた
 中央高校の制服の子と、全裸に近い状態で腹を裂かれている子が居たからだ
 全裸の子は茫然とした体でこちらを見つめ続けていた


「これも『ピエロ』がやった、てのか?」


 相方のPナンバーの黒服の声に我に返った
 立ち尽くしている場合ではない

 乱野は重傷を負った二人の少女へと駆け寄る


「種別:US、未成年女子2名、陽性です
 両名とも全身に創傷、一名は腹部に切創、ダーム脱出あり、一名は顔面に擦過型の剥脱
 Class III以上です、至急対応してください」

『ベースに回せ。応援を送る』
「お願いします」


 一息で無線へ告げると、少女と視線が合った


「もう大丈夫だよ、今から病院に行くからね」
「こっちはアタシやる。そっちの子頼む!」


 相方が中央高校の子の応急処置を開始した
 乱野は応急用のフィルムを取り出し、少女の体を床へと寝かせた
 先ずは飛び出した内臓の固定だ、これほどの創傷を直ぐに処置できる霊薬は持ち合わせていない


「おかあさん」
「え?」
「おかあさんが……」


 少女が、か細い声で呻いていた


「お母さん? どうしたの?」
「おかあさん、たべられちゃう……。たすけてください」


 少女は泣き出した
 お母さん? 食べられる? どういうことだ

 一瞬、乱野は状況に躊躇した
 この場で何があったのかをヒアリングすべきなのか
 だがその必要は無かった
 直後、Pナンバーの黒服達が到着したからだ


「先輩、ちょっとマズいですよ!」


 後ろから声を掛けてきたのはこの春に配属されたばかりの新人だ
 相方のPナンバーの部下である、リーディング系能力の黒服だった


「この子達に酷いことしたのは男女二人組の契約者で
 二人組は今、この子の家に向かってて、お母さんを食べる気みたいです! って、うわ……」


 勢いのままそうまくし立てた新人は、慌てて乱野の背後に引っ込んだ
 少女の傷を直視してしまったらしい


「んだとォ!? おいミッペ! この子の実家、何処か分かるよな! 調べろ!!」
「んあっ、ちょっ、待ってくださいよ!」


 「ミッペ」と呼ばれたのはリーディング系の黒服だ
 そして、そう呼んだのは遅れてやってきたミッペのバディだ
 彼女もミッペと同時期に配属された新人である


「あっ、待てお前ら! 単独行動は駄目だって言ったろ――」

「メイプルさん、オレとミッペで動くんだから単独行動じゃ無ェっすよ!
 それにもう研修期間は済んだんスから心配いらねーって!! おらっ、行くぞミッペ!」

「ちょっと! 首に手ぇ回すの止めてください!」

「コラ待て二人とも! 新人の独断行動は厳禁っつっただろうが!!」


 応急処置から手を離し、新人二名を怒鳴りつける
 が、遅かった
 新人二人は既にこの場から消え失せていた


「あンの、クソ新人共が……っ!! レンコ悪い、この場を――」
「駄目ですっ!! この子達をベースに移送しないといけません!!」
「あ゛ーもうっ! 分かったよ、クソッ! おい、聞こえてるか!? クソ新人が二人、勝手に飛び出した! 追跡してくれ!」
『らじゃーなのです!!』
「アイツら……、戻ってきたらタダじゃ済まさねえぞ……!」


 メイプルと呼ばれた相方の黒服は、こめかみに青筋を浮かべながら応急処置を再開した
 仕方が無い、新人の独断先行は許される行為では無いが
 この場の処置を投げ打って良い理由にはならない
 一刻も早くこの子達を「ベース」、つまり「組織」管轄の病院へ移送しなければならない

 怒りを抑える相方に一瞥を送りながら
 乱野憐子は胸の奥に奔った僅かな胸騒ぎを、無理やり押し殺した

 大丈夫、新人ちゃん二人は、Pナンバーのスタッフさんが追いかけてくれる
 だからきっと、大丈夫
 自分にそう言い聞かせながら



 彼女らにはまだ報告は入っていない
 「現在、学校町に感知・予知系能力者へのカウンター能力を持つ暗殺者が侵入している」という報告は










 学校町 東区

 「組織」過激派の人員は車道沿いに繁華街の方向へ向かっていた
 無論、「ピエロ」及び連中の中枢を発見しこれを討伐するためだ

 先程踏み込んだ現場には相当数の「ピエロ」が潜伏していた筈だ
 恐らくまだ遠方へは行っていない、主任はそう判断し
 部下を散らして連中の捜索を開始した

 東区の放火については既に穏健派も動いているという話で
 それ以前に数名の契約者と思われる者達が目撃されていたようで
 既に鎮圧が済んでいるのかもしれない


 に、しても

 主任は思考を巡らせる
 10月から「ピエロ」の報告が上がっていたが
 いずれも散発的で、しかし契約者・一般人の別なく襲撃するという状況から
 「赤マント」と同程度には警戒されていた

 だが、今夜の動きは怪しむべき点が多い
 これほど目立つ動きを見せたのは初めてと言って良い
 おまけにピエロ装束の連中だけでは無く、それ以外の契約者が行動を共にしているという報告があった
 事象改竄系の契約者、そして観測系能力に対するカウンター能力を持つ契約者
 報告が事実だとすれば、そのいずれも脅威度が高い


(『狐』、なのか?)


 主任も「ピエロ」が「狐」の手駒であるという点には懐疑的だ
 その部分は現時点での過激派幹部連中の判断と一致している
 手の内を晒さず掴ませまいとする「狐」の手口と、「ピエロ」の活動とは一見相反している
 だが――
 長年過激派の黒服として現場で指揮を執る身として
 直観が告げる警告を無視できずにいた

 「ピエロ」は愉快犯的な犯行を繰り返しているが、無為無策では無い
 このタイミングで登場した同行契約者の存在、これをどう考えるべきか――


「主任、よろしいでしょうか」


 後に従う部下から声が掛かる


「今回の『ピエロ』の動き、やはり裏に『狐』が」
「判断を出すのは早計、それが幹部(うえ)の判断だ」
「主任ご自身はどうお考えです?」
「……俺はそれを判断する立場には無い、今は捜索に集中し――」


 咄嗟に光線銃を抜き、続けざまに発砲

 前方の街路樹の影にいたのは、そう、「ピエロ」だ


「戦闘を許可するッ! 戦えッッ!!」

「なンだ野郎しか居ねえのかぁア!? 『黒服』ゥゥゥゥッ!!」


 前方から、だけでは無い
 横合い、対向車線側からも奇怪な装束の道下達が出現した

 皆、銃器の類を手にしている


「『弾除け』と『人払い』はッッ!?」
「既に展開済みです!!」


 主任は確認するかのように周囲に視線を奔らせる
 遅い時間では無いが、車の通りも通行人の姿も無い


「まだ非常命令は出ていないッ! 可能な限り物損は控えろッッ!」


 主任の言葉とほぼ同時に部下達は光線銃を発砲し出した
 非常命令云々、物損は云々は穏健派の手により義務化された条項だ
 そう、許可が無い限りは人間、そして物品への被害は最小限に抑えなければならない

 それが建前だが、彼らは腐っても過激派だ
 つまり主任の言葉はただの念仏に過ぎず、律儀に守られる訳では無い

 また守る必要も無い、何故なら


「おーれーたーちーピーエーローをー」「舐ァァめるなぁぁぁぁ!!! っとぉ!!!」


 自動小銃を乱射し始めた「ピエロ」相手に、そんな余裕は無いからだ


「こいつらホントやりたい放題だなッ、クソッ! 市街地で銃撃戦などッ!!」
「主任、もうちょい詰めてください」


 手近な物陰に潜り込み、隙を見て光線銃を発砲
 「ピエロ」数名の頭部を撃ち抜いた


「これじゃキリが――」


 悪態を吐く余裕も無かった
 後方が突如爆破した


「今度は何だッッ!?」


 爆炎が夜の歩道を赤く照らす
 「人払い」が無ければ確実に一般の注意を引き付けるレベルだ
 いや、「人払い」を展開している現状でも怪しい、炎が上がり過ぎている


「本部に連絡入れろッッ! 応援が必要だッッ!!」
「無理です主任、圏外になってます、多分妨害されてます」
「なら異空間通信に切り替えろッ!!」
「その機能ついてんの主任の端末だけです」
「なら俺のを使えッッ!!」


 部下に己の携帯を押し付け、光線銃を構え直した
 物陰の向こう側では「ピエロ」共が奇声を上げて銃器を乱射していた


「クッソ、完全に包囲されたかッ!?」

『げひゃひゃひゃひゃひゃひゃっ!!
 どーぉぉぉぉうだいクソ黒服共ぉぉ!! 胸焼けするほど嬉しいだルぉぉオオおおおおうっ!?』

「今度は何だッッ!?」


 突如、電気的に拡声された女の哄笑が鼓膜を叩いた
 死角から顔を出すと、「ピエロ」の居る前方が強い光で照射されている
 どうも「ピエロ」の内、数名が何処から調達したのか、スポットライトを使用しているらしい



 光の中には、仁王立ちの女が居た

 シャイニーカラーのパンツに、トラだかライオンだかの顔面が大きく印刷されたシャツ、という出で立ちの中年女性が


 「何者だ……ッ」


 主任が絶句するのも無理は無い
 その女の風体も雰囲気もこの場の緊張感に全くそぐわないものだ


『んンんん!? アタシが誰かってぇぇぇぇぇぇ!?
 フン、「ピエロ」の子達が不甲斐ないって言うからねえぇ!!
 わざわざ出張ってきてあげたンだよぉぉぉぉぉ!!
 アンタら黒服をぉ、丸焦げにするためにねぇぇぇぇぇぇぇ!!』

「面目ないです先生!」「先生やっちゃってくだせえ!」


 バックから「ピエロ」達の声援を受けつつ、女はふんぞり返るような恰好でそう言い放つ
 不意にスポットライトが黒服達の潜む物陰に照射された


『ンじゃまぁぁ、ド派手に行こうかねぇぇぇぇぇっ!!
 「ポップロックス」とぉ、「コーラ」でぇぇぇぇっっ!!!!』

「まずい、散開しろぉッッッ!!!」


 黒服達が物陰から転がり出るように離脱した、刹那



 アスファルトを深く抉るように、地面が爆破した










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