目の前で、全長2メートルの化け物が吠える
さて、どうしようか
明日葉は、半ば他人事のように考えていた
さて、どうしようか
明日葉は、半ば他人事のように考えていた
自分一人ならば、どうにかなる
だが、幸太もいるこの状況、さて、どうしたものか
だが、幸太もいるこの状況、さて、どうしたものか
自分達に向けて、振り下ろされる拳
幸太は慌てて、明日葉の手を引いて踵を返し、今までとは反対方向に走り出す
化け物の巨大な拳は、明日葉の髪を軽く掠って、宙を切った
その衝撃で起きた衝撃波に、二人の小さな体は飛ばされそうになる
幸太は慌てて、明日葉の手を引いて踵を返し、今までとは反対方向に走り出す
化け物の巨大な拳は、明日葉の髪を軽く掠って、宙を切った
その衝撃で起きた衝撃波に、二人の小さな体は飛ばされそうになる
「幸太、やはり、俺を置いてお前が一人で逃げたほうが効率が良さそうな件について」
「うー!駄目!明日葉も一緒に逃げる、うー!」
「…やれやれ、頑固者め」
「うー!駄目!明日葉も一緒に逃げる、うー!」
「…やれやれ、頑固者め」
一人の方が、確実に逃げられると言うのに
和装でうまく走れない明日葉など、余計な荷物でしかないと言うのに、幸太は明日葉と共に逃げる事にこだわる
自分一人が助かる事を、拒絶するように
和装でうまく走れない明日葉など、余計な荷物でしかないと言うのに、幸太は明日葉と共に逃げる事にこだわる
自分一人が助かる事を、拒絶するように
追撃の拳が迫る
次は避けきれない、明日葉は確信した
ここで幸太を突き飛ばせば、幸太だけは助かるな
そう考え、幸太の手を振り払おうとした
次は避けきれない、明日葉は確信した
ここで幸太を突き飛ばせば、幸太だけは助かるな
そう考え、幸太の手を振り払おうとした
だが
それよりも早く響いた、発砲音
化け物が、絶叫を上げる
それよりも早く響いた、発砲音
化け物が、絶叫を上げる
「幸太!」
「…うー!パパー!」
「……おぉう」
「…うー!パパー!」
「……おぉう」
前方からかけてきた女性………否、どこからどう見ても女性の姿の男性に、明日葉はほっと、息を吐く
明日葉の手を引いたまま。幸太はパパと呼んだその男性に駆け寄っていく
…幸太の父親の、虎吉だ
どこからどう見ても女性の外見である事には、突っ込んではいけない
そもそも、今は突っ込む余裕などない
その手に、一般庶民であるはずの彼女…じゃなくて、彼がショットガンを持っている、その事実に突っ込む余裕もないのだから
明日葉の手を引いたまま。幸太はパパと呼んだその男性に駆け寄っていく
…幸太の父親の、虎吉だ
どこからどう見ても女性の外見である事には、突っ込んではいけない
そもそも、今は突っ込む余裕などない
その手に、一般庶民であるはずの彼女…じゃなくて、彼がショットガンを持っている、その事実に突っ込む余裕もないのだから
「ああああぁぁぁああああァアアアアアアァァァァああああああああああっ!!!」
化け物が、叫ぶ
虎吉が放った弾丸は、化け物の目に命中していたようだ
つぶれた目から流れる血は、涙のようにも見える
痛みに呻き、それは暴れまわる
虎吉が放った弾丸は、化け物の目に命中していたようだ
つぶれた目から流れる血は、涙のようにも見える
痛みに呻き、それは暴れまわる
虎吉が、再びショットガンを発砲した
弾丸は、まだ無事だった化け物の他の目に命中し、再び悲鳴を上げさせる
弾丸は、まだ無事だった化け物の他の目に命中し、再び悲鳴を上げさせる
「滝夜叉!」
『きひひひひっ!ようやく妾の出番か!!』
『きひひひひっ!ようやく妾の出番か!!』
虎吉の声に答えるように現れた、着物の女……滝夜叉
巨大な髑髏と蝦蟇を従えた滝夜叉は、楽しげに笑って、化け物を指差した
巨大な髑髏と蝦蟇を従えた滝夜叉は、楽しげに笑って、化け物を指差した
『さぁ、行けっ!』
髑髏が、牙をむき出して襲い掛かる
痛みにもだえる化け物は、めちゃくちゃに腕を振り回して髑髏を迎え撃とうとする
がしゃん、と響く音
髑髏が粉々に砕かれる
だが、それでも滝夜叉は笑っている
だからどうした、とでも言うように
痛みにもだえる化け物は、めちゃくちゃに腕を振り回して髑髏を迎え撃とうとする
がしゃん、と響く音
髑髏が粉々に砕かれる
だが、それでも滝夜叉は笑っている
だからどうした、とでも言うように
蝦蟇が、化け物に襲い掛かる
巨体がのしかかり、化け物の動きを封じた
げごぉ、と不気味に声をあげ、大口を開ける蝦蟇
化け物を喰らおうとした、その時
巨体がのしかかり、化け物の動きを封じた
げごぉ、と不気味に声をあげ、大口を開ける蝦蟇
化け物を喰らおうとした、その時
-----化け物の姿が、消滅した
げごっ!?と、べちゃん、と道路に落ちた蝦蟇が驚いた声を出す
『おや?どうしたのじゃ?』
「本体が倒されたっぽいのでは?」
「本体が倒されたっぽいのでは?」
幸太に手を握られたまま、虎吉の背後に立たされていた明日葉が滝夜叉の疑問に答える
…化け物の本体が
サミュエルが倒されたのだろう、明日葉はそう理解する
思ったより早かったな、と、そう考える
…化け物の本体が
サミュエルが倒されたのだろう、明日葉はそう理解する
思ったより早かったな、と、そう考える
『本体?おぬし、何か知っておるのか?』
「いや、それっぽいと判断したのでとりあえず言ってみた。ソースがある訳ではない」
「いや、それっぽいと判断したのでとりあえず言ってみた。ソースがある訳ではない」
ソース?と首をかしげている滝夜叉
明日葉はそれ以上は口に出さず、空を見上げる
……空を飛ぶサミュエルの分体の姿は見えない
本当に、負けた…死亡したのだろう
明日葉はそれ以上は口に出さず、空を見上げる
……空を飛ぶサミュエルの分体の姿は見えない
本当に、負けた…死亡したのだろう
「二人とも、大丈夫?」
す、と虎吉がしゃがみこみ、心配そうに二人を見つめてきた
こうしている表情は、本当に女性に見えるから困る
こうしている表情は、本当に女性に見えるから困る
「うー!僕大丈夫、うー!」
「問題ない」
「そう、良かった」
「問題ない」
「そう、良かった」
ほっとして、二人を抱きしめてきた虎吉
むぅ、と付け足された乳の感触に、明日葉は微妙な表情を浮かべた
むぅ、と付け足された乳の感触に、明日葉は微妙な表情を浮かべた
「とりあえず…どうも、今日は「危険な日」みたいね。明日葉ちゃん、私達の家に来てる?安全よ」
「いや、そうなるとぶっちゃけ、家で寝ている姉ちゃんが心配なので帰りたい」
「いや、そうなるとぶっちゃけ、家で寝ている姉ちゃんが心配なので帰りたい」
虎吉の申し出を、そう断った明日葉
家で姉が寝ているのは事実だ
明日葉の姉は病弱だと「言うことになっている」から
家で姉が寝ているのは事実だ
明日葉の姉は病弱だと「言うことになっている」から
「そう…なら、せめてお家まで送るわね。行きましょう」
「うー、明日葉、家に送るー!」
「うー、明日葉、家に送るー!」
そっと、幸太に握られていたのとは反対側の手を、虎吉に握られた
……ふむ、ならば、素直に送られようか
この親子といれば、安全だろう
明日葉は二人の手を握り返し、気づかれぬように小さく笑ったのだった
……ふむ、ならば、素直に送られようか
この親子といれば、安全だろう
明日葉は二人の手を握り返し、気づかれぬように小さく笑ったのだった
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