「迷子どこの子?」
学校町南区、秋祭り前日。
北区に通じる路地の道端では早くも屋台の設営が始まり、町は祭りモード一色である。
浮き立つ人々の様子を眺めていると、こちらまで楽しくなってくるから不思議だ。
北区に通じる路地の道端では早くも屋台の設営が始まり、町は祭りモード一色である。
浮き立つ人々の様子を眺めていると、こちらまで楽しくなってくるから不思議だ。
「~♪~~♪」
鼻歌混じりに歩く、そんな彼女も浮き立っている内の一人であった。
楽しいもの好きの彼女にしてみれば、秋祭りはまさにたまらないイベント。
そして祭りは始まる前もまた楽しい。
そんな空気に誘われ、外へと出てきたのだった。
楽しいもの好きの彼女にしてみれば、秋祭りはまさにたまらないイベント。
そして祭りは始まる前もまた楽しい。
そんな空気に誘われ、外へと出てきたのだった。
結構大規模な祭りらしく、いつにも増して人混みも多い。
最近ようやくこの辺りにも慣れてきたとはいえ、変わり始めた景色は注意しなければ今いる場所でさえ見失いかねない。
そんなことにでもなれば、あの騎士からまたお説教を食らうであろう事がたやすく想像できてしまう。
そんな思いから、この日彼女はいつも以上に周りに気を遣いながら歩く事にしていた。
最近ようやくこの辺りにも慣れてきたとはいえ、変わり始めた景色は注意しなければ今いる場所でさえ見失いかねない。
そんなことにでもなれば、あの騎士からまたお説教を食らうであろう事がたやすく想像できてしまう。
そんな思いから、この日彼女はいつも以上に周りに気を遣いながら歩く事にしていた。
それでもたまに気になる屋台に目を奪われたりしていると、ふとそんな設営中の屋台の前でぽつんと一人でいる男の子が目に留まった。
始めは自分と同じく祭りの準備を見物しに来ているのかと思いきや、時折きょろきょろと辺りを何かを探す様に見回している。
もしかしたら迷子だろうか。
始めは自分と同じく祭りの準備を見物しに来ているのかと思いきや、時折きょろきょろと辺りを何かを探す様に見回している。
もしかしたら迷子だろうか。
「あの、こんにちは」
迷子ならば大変だととりあえず声をかけてみれば、たちまち男の子はびくりと顔をあげた。
年の頃は幼稚園か小学生低学年ぐらいだろうか、お菓子の箱を大事そうに抱いている様子がなんとも微笑ましくて、思わず笑みが浮かぶ。
「うー、こんにちは」
きちんと挨拶が出来る子の様だ。
しかしその眼差しは少し不安げで、声を掛けた以上なおさら放ってはおけない。
しかしその眼差しは少し不安げで、声を掛けた以上なおさら放ってはおけない。
「一人でどうしたんですか?」
「ひとりじゃないよ、おにーちゃんとお買物に来たの」
ちょっぴりむっとした顔をされてしまった。
しかしその表情もすぐに沈み、「でも……」と浮かない表情を見せる。
しかしその表情もすぐに沈み、「でも……」と浮かない表情を見せる。
「おにーちゃん、いなくなっちゃった?」
そう尋ねれば「うー」と唸りながらも、男の子はこっくりと頷いてみせる。
「じゃあ、私と一緒に探しませんか?」
そう声をかければ、たちまち男の子の顔がぱあっと明るくなる。
始めこそ強がっていた様子だったが、やはり心細かったのだろう。
始めこそ強がっていた様子だったが、やはり心細かったのだろう。
「おねーちゃんと?」
「そう、おねーちゃんと」
「ね?」と空いた手を差し出せば、元気よく小さな手のひらが重なられて途端に嬉しくなる。
「よーし、じゃあおにーちゃん探してレッツゴー!」
「ごー!」
そうやって元気よく声をあげると、嬉しそうに男の子も声をあげた。
初めて聞いた彼の笑い声に、彼女もまた嬉しそうに笑う。
そうして小さな手を引き、二人は元気よく歩き始めたのだった。
初めて聞いた彼の笑い声に、彼女もまた嬉しそうに笑う。
そうして小さな手を引き、二人は元気よく歩き始めたのだった。
それから男の子のいた地点を中心に、二人は様々な店などを回っていた。
探すべき「おにーちゃん」の特徴を聞いてみれば、「ちゃらちゃら!」というなんとも元気な返事が返ってくる。
もしかしたら結構年の離れた兄弟なのかもしれない。
探すべき「おにーちゃん」の特徴を聞いてみれば、「ちゃらちゃら!」というなんとも元気な返事が返ってくる。
もしかしたら結構年の離れた兄弟なのかもしれない。
そうやって歩く内にだんだん男の子とも打ち解け、彼が話す「おにーちゃん」の様々な話を聞いた。
いわく、「カレーを作ってもらった」とか、「ゲームの対戦で勝った」とか、はたまた「好きなひとがいるらしい」とか。
優しいおにーちゃんですね、と相槌を打つと何とも嬉しそうな笑顔が返ってきた。
いわく、「カレーを作ってもらった」とか、「ゲームの対戦で勝った」とか、はたまた「好きなひとがいるらしい」とか。
優しいおにーちゃんですね、と相槌を打つと何とも嬉しそうな笑顔が返ってきた。
「おねーちゃんは、ひとりぼっちでさみしくないの?」
不意の質問とくりっとした瞳に見つめられて、一瞬きょとんと言葉に詰まってしまう。
しかし「うー?」と不思議そうに見上げる視線に我に返ると、気を取り直して笑いかけた。
しかし「うー?」と不思議そうに見上げる視線に我に返ると、気を取り直して笑いかけた。
「確かに今は一人暮らしですけど、全然さびしくないですよ」
傾いた日差しを見上げながらも、脳裏に自然と浮かぶのは大柄で心配性な己のパートナーの姿。
あれから半ば喧嘩腰で「少しぐらい信用してくれ」とあの騎士に直談判したのだが、それは案外すんなりと受け入れられたのだった。
たじたじとしていた騎士の貴重な様子を思い出すと、今でも笑いがこみあげてくる。
その代わり「危険なところには行かない」、「無理はしない」、「用事が済んだらすぐ帰る」などのいくつもの約束事を設けられたのだったが。
もしかしたら今も影からこちらを見守っているかもしれない。
あれから半ば喧嘩腰で「少しぐらい信用してくれ」とあの騎士に直談判したのだが、それは案外すんなりと受け入れられたのだった。
たじたじとしていた騎士の貴重な様子を思い出すと、今でも笑いがこみあげてくる。
その代わり「危険なところには行かない」、「無理はしない」、「用事が済んだらすぐ帰る」などのいくつもの約束事を設けられたのだったが。
もしかしたら今も影からこちらを見守っているかもしれない。
「うー、そっか、いつでもそばにいるんだね」
「ええそうですね……えっ?」
思わず聞き流しそうになった男の子の発言に視線を戻したその時、彼はつないだ手を振りほどいて走りだしていた。
「ステーキのおにーちゃん!」
つられてまた前方へと目をやれば、何とも目立つ頭の青年が目に入った。
男の子の呼ぶ声に驚いた様子で振り返った彼は紙袋を抱えていたが、直ぐ様ぼふんと飛び込んできた男の子を慌てた様に空いた手で抱き留めた。
男の子の呼ぶ声に驚いた様子で振り返った彼は紙袋を抱えていたが、直ぐ様ぼふんと飛び込んできた男の子を慌てた様に空いた手で抱き留めた。
「ちゃらちゃら……なるほど」
思わずそう呟かざるをえない外見の青年だった。
一見すれば夜の繁華街によくいそうな感じではあるが、どこか人のよさそうな雰囲気と男の子に抱きつかれている様子は、まさに「おにーちゃん」と言った感じだった。
しばらく二人は何か話している様子だったが、やがて男の子に連れられて青年がこちらへとやって来た。
一見すれば夜の繁華街によくいそうな感じではあるが、どこか人のよさそうな雰囲気と男の子に抱きつかれている様子は、まさに「おにーちゃん」と言った感じだった。
しばらく二人は何か話している様子だったが、やがて男の子に連れられて青年がこちらへとやって来た。
「こいつが世話になったみたいで……礼を言うよ」
「いえいえ、お役にたてたみたいで何よりです」
軽く頭を下げる青年に、思わずこちらも頭を下げてしまう。
確かに外見は突っ張っているが、どこか親しみを感じる青年に思える。
男の子に抱いたのと似た様な微笑ましさを感じ、やはりくすりと笑みが浮かんでくる。
何かお礼を、とも言われたのだが、それは丁重に断った。
それよりも弟さんを大切にしてあげてください、と言うとなぜか戸惑ったような反応をされてしまった。
しかし自分がやったのは当然の事だし、男の子との話もなかなか楽しませてもらったのだから、それで満足だ。
確かに外見は突っ張っているが、どこか親しみを感じる青年に思える。
男の子に抱いたのと似た様な微笑ましさを感じ、やはりくすりと笑みが浮かんでくる。
何かお礼を、とも言われたのだが、それは丁重に断った。
それよりも弟さんを大切にしてあげてください、と言うとなぜか戸惑ったような反応をされてしまった。
しかし自分がやったのは当然の事だし、男の子との話もなかなか楽しませてもらったのだから、それで満足だ。
それじゃあ、と踵を返そうとすると、ふと小さな手が彼女の服の裾をつかんだ。
「おねーちゃん、これあげる!」
「うー!」と差し出されたものを見ると、それは彼が抱えていたお菓子のひとつ。
「これで幸せ! うーうー!」
どうやら彼なりのお礼らしい。
「じゃあ、ありがたくいただきますね」
手のひらに乗せてもらった一粒をそっと握ると、今度こそ彼らに別れを告げて歩きだす。
「またねー!」と背中にかけられた声に振りかえれば、青年の横に並んだあの子が元気に手を振っていた。
自らもまた大きく手を掘り返して、もらった一粒を口の中に放り込んでみせれば、途端に彼の顔いっぱいに笑みが広がった。
そうして再び歩きだした彼女の足取りは、始めの頃よりさらに軽いものになっていたのだった。
「またねー!」と背中にかけられた声に振りかえれば、青年の横に並んだあの子が元気に手を振っていた。
自らもまた大きく手を掘り返して、もらった一粒を口の中に放り込んでみせれば、途端に彼の顔いっぱいに笑みが広がった。
そうして再び歩きだした彼女の足取りは、始めの頃よりさらに軽いものになっていたのだった。
そこからすぐ傍の路地にて。
「…………………………」
一人の首無しの騎士が、影の中にじっと佇んでいた。
その手はしっかりと腰の剣の柄へとかけられていたが、やがて二人が見えなくなってからようやくその手は下ろされた。
「…………………………」
やがて騎士もまた、影の中へと歩き始め、やがてその姿は見えなくなったのだった。
<Fin>