隠密少女 ◆JZARTt62K2
葉が青々と生い茂る樹木の下で、膝の上に紙の束を広げる少女が一人。
少女は丁寧に紙の束を捲り、一枚一枚じっくりと検分していく。
最後の一枚を隅から隅まで見つめた後、少女は深い溜息をついた。
少女は丁寧に紙の束を捲り、一枚一枚じっくりと検分していく。
最後の一枚を隅から隅まで見つめた後、少女は深い溜息をついた。
「結局、首輪の解析・解体に使えそうな支給品は殆どなし、か。ジェダもそこまで馬鹿というわけではないみたいね……」
長時間酷使した瞼を閉じ、んっ、と背伸びを一つ。膝の上のアイテムリストがパラパラと音を立てる。
首輪の解除に関する情報が少しでもあればと思い、改めて目を通してみたが不発に終わってしまった。
解析系の支給品はせいぜい出力端子がないノートパソコンをはじめとした二・三個くらいで、本当に役立つものかすら疑わしい。
他は殺し合いのための武器ばかりだ。
まあ、ふざけた支給品も同じくらいの数あるが。
首輪の解除に関する情報が少しでもあればと思い、改めて目を通してみたが不発に終わってしまった。
解析系の支給品はせいぜい出力端子がないノートパソコンをはじめとした二・三個くらいで、本当に役立つものかすら疑わしい。
他は殺し合いのための武器ばかりだ。
まあ、ふざけた支給品も同じくらいの数あるが。
「となると、他の参加者頼みってことか……」
ジェダが錬金術すら超える能力を持っているのは間違いない。
それと同じように、他の参加者の中にも未知の能力を秘めた人物が存在する。
そう、始まりの広間でジェダに立ち向かった女のように。
エマーソンの格言ではないが、無知な者が物事を成そうとするほど馬鹿なことはない。そして、私はジェダの能力について無知だ。
しかし、他の参加者も全員無知であるとは限らない。
ジェダの能力、あるいはジェダに対抗できる能力を知っている参加者がいる可能性もある。
そんな参加者達から情報、特に遠隔操作や自動発動系の能力のことを聞き出すことが首輪解除には必須だ。
なぜなら、おそらく首輪には高い確率で未知の技術が使われているからである。それも、私が知らないような技術が。
簡単に解けてしまうようなものならばゲーム自体が成り立たない。
それと同じように、他の参加者の中にも未知の能力を秘めた人物が存在する。
そう、始まりの広間でジェダに立ち向かった女のように。
エマーソンの格言ではないが、無知な者が物事を成そうとするほど馬鹿なことはない。そして、私はジェダの能力について無知だ。
しかし、他の参加者も全員無知であるとは限らない。
ジェダの能力、あるいはジェダに対抗できる能力を知っている参加者がいる可能性もある。
そんな参加者達から情報、特に遠隔操作や自動発動系の能力のことを聞き出すことが首輪解除には必須だ。
なぜなら、おそらく首輪には高い確率で未知の技術が使われているからである。それも、私が知らないような技術が。
簡単に解けてしまうようなものならばゲーム自体が成り立たない。
「私の知識と技術だけじゃ首輪解除には程遠いし、やっぱり仲間探しが急務ね。“あの支給品”が手元にあればよかったんだけど……」
アイテムリストに載っていた支給品のことを思い浮かべる。
その支給品の名は『詳細名簿』。参加者の詳細なデータが記載されているという支給品。
この支給品があれば、首輪解除や島の脱出に役立つ能力を持つ参加者を調べられるだけでなく、
危険な参加者、参加者間の関係、参加者の出身など重要な情報もわかるという優れものだ。
その支給品の名は『詳細名簿』。参加者の詳細なデータが記載されているという支給品。
この支給品があれば、首輪解除や島の脱出に役立つ能力を持つ参加者を調べられるだけでなく、
危険な参加者、参加者間の関係、参加者の出身など重要な情報もわかるという優れものだ。
「って、ないものねだりしても仕方ないか。一人一人地道に見極めていくしかないわ」
アイテムリストをデイパックにしまい、立ち上がってお尻をはたく。
隠れていた木陰を後にして南下を開始。隠密行動を基本として、見込みのありそうな参加者がいたら……
隠れていた木陰を後にして南下を開始。隠密行動を基本として、見込みのありそうな参加者がいたら……
「モッチョレーッ!」
いたら……
「キロキローッ!」
……
「トッピロキーッ!」
断言するという行為はそれほど好きではないけど、この奇声を発している参加者は絶対に役に立たない。
「ウニョラーッ!」
青い忍者服を着た男の子が蝶々を追いかけている。
短い手足をバタバタと動かし、太った身体をゴム鞠のように跳ねさせ、子猫のごとく蝶々に飛びついては落ち、飛びついては落ち。
ああ、頭の可哀相な子なんだな。こんな子まで参加させるなんてジェダ許すまじ、と嘯いてみるが、つまらなかったので4秒でやめる。
ドタドタと走る蝶追い人が過ぎ去るのを見送り、身を起こす。
君子危うきに近寄らず。私は何も見なかった。
短い手足をバタバタと動かし、太った身体をゴム鞠のように跳ねさせ、子猫のごとく蝶々に飛びついては落ち、飛びついては落ち。
ああ、頭の可哀相な子なんだな。こんな子まで参加させるなんてジェダ許すまじ、と嘯いてみるが、つまらなかったので4秒でやめる。
ドタドタと走る蝶追い人が過ぎ去るのを見送り、身を起こす。
君子危うきに近寄らず。私は何も見なかった。
数十分後、メルヘンな少年の光景を脳内から消去しつつ、私は慎重に歩を進めていた。
見つからないように、気付かれないように……
と、道上にランドセルが落ちているのが目に入った。蓋が開き、中身がいくつか飛び出している。
……明らかに怪しい。怪しすぎる。
ランドセルから30m程度離れた地点で様子見るが、周りに怪しい人影はない。
そのままランドセルを中心とした円を描くように一周。怪しい人影はない。
人間の何倍もの視力を誇るホムンクルスの目で狙撃ポイントを探す。やはり怪しい人影はない。
ランドセルに向けて石を投げる。罠は発動しない。
小枝を投げる。罠は発動しない。
自分のランドセルを投げる。やはり罠は発動しない。
そこまでして、ようやくランドセルに近づいた。その中身は……
見つからないように、気付かれないように……
と、道上にランドセルが落ちているのが目に入った。蓋が開き、中身がいくつか飛び出している。
……明らかに怪しい。怪しすぎる。
ランドセルから30m程度離れた地点で様子見るが、周りに怪しい人影はない。
そのままランドセルを中心とした円を描くように一周。怪しい人影はない。
人間の何倍もの視力を誇るホムンクルスの目で狙撃ポイントを探す。やはり怪しい人影はない。
ランドセルに向けて石を投げる。罠は発動しない。
小枝を投げる。罠は発動しない。
自分のランドセルを投げる。やはり罠は発動しない。
そこまでして、ようやくランドセルに近づいた。その中身は……
「……うそ」
出来すぎだ、出来すぎてる。詳細名簿がここまで簡単に手に入るなんてご都合主義もいいところだ。
反射的に周りを見渡すが、やはり誰もいない。誰もいない、はず。
ジェダが嘲笑っているような幻聴を振り払い、ランドセルを検分する。
詳細名簿の他に入っているのは……これは『天空の剣』か。
確か、アイテムリストに『勇者しか装備できない』と書いてあった剣だ。試しに鞘から引き抜こうとしてもビクともしない。
しかし、“勇者”。なんとも曖昧な表現だ。まさか勇気あるものという意味でもないだろうし。
……この名簿、さっそく使ってみようかな。
道の脇に腰を下ろし、手に入れたばかりの詳細名簿を捲る。
超能力者……獣使い……コソ泥……坊主……忍者……犬神使い……ホムンクルス?
反射的に周りを見渡すが、やはり誰もいない。誰もいない、はず。
ジェダが嘲笑っているような幻聴を振り払い、ランドセルを検分する。
詳細名簿の他に入っているのは……これは『天空の剣』か。
確か、アイテムリストに『勇者しか装備できない』と書いてあった剣だ。試しに鞘から引き抜こうとしてもビクともしない。
しかし、“勇者”。なんとも曖昧な表現だ。まさか勇気あるものという意味でもないだろうし。
……この名簿、さっそく使ってみようかな。
道の脇に腰を下ろし、手に入れたばかりの詳細名簿を捲る。
超能力者……獣使い……コソ泥……坊主……忍者……犬神使い……ホムンクルス?
(へえ、私の他にもホムンクルスが参加していたの……生まれつきのホムンクルスですって!?)
確かに『ホムンクルス』を辞書で引くと『人造人間』と書かれているが、私が知っている『ホムンクルス』は違う。
人間型ホムンクルスは全て元人間の成れの果てのはず。それなのに“生まれつき”?
動揺したまま資料を読み進めると、特異なホムンクルスの正体がだんだんとわかってきた。
名簿順11番の少女は、私が知っているホムンクルスとはそもそも定義からして違うらしい。
私とは全く違う方法でホムンクルスになった少女……魔術回路と魔眼を持つ生粋の人造人間。
イリヤスフィール・フォン・アインツベルン、か。
いけない、横道に逸れてしまった。今はとりあえず勇者のことを調べましょう。
生体兵器……吸血鬼……人形……魔法使い……暗殺者……魔神契約者……勇者、こいつか。
ニケ、ね。マヌケな顔してるけど本当に勇者なのかしら?
えっと、プロフィールは……
人間型ホムンクルスは全て元人間の成れの果てのはず。それなのに“生まれつき”?
動揺したまま資料を読み進めると、特異なホムンクルスの正体がだんだんとわかってきた。
名簿順11番の少女は、私が知っているホムンクルスとはそもそも定義からして違うらしい。
私とは全く違う方法でホムンクルスになった少女……魔術回路と魔眼を持つ生粋の人造人間。
イリヤスフィール・フォン・アインツベルン、か。
いけない、横道に逸れてしまった。今はとりあえず勇者のことを調べましょう。
生体兵器……吸血鬼……人形……魔法使い……暗殺者……魔神契約者……勇者、こいつか。
ニケ、ね。マヌケな顔してるけど本当に勇者なのかしら?
えっと、プロフィールは……
「モニョレーッ!」
「あッ!?」
「あッ!?」
軽く持っていただけの詳細名簿が突然の衝撃に吹き飛ばされ、手元を離れて宙を舞う。
背中に突撃してきた肉の塊がその名簿を一瞬で掴み取り、一目散に駆け出した。
あの背中は……さっきの蝶々坊主! まだこの辺りをうろついていたの!?
背中に突撃してきた肉の塊がその名簿を一瞬で掴み取り、一目散に駆け出した。
あの背中は……さっきの蝶々坊主! まだこの辺りをうろついていたの!?
「くっ……待ちなさい!」
静止の声に振り向いた襲撃者の顔は、なんとも形容し難いものだった。
黒目が異様に大きいネコのような眼は見開かれ、口は獣を思わせる形で半笑いの状態を維持している。
こいつのプロフィールを先に見ておくべきだった……!
黒目が異様に大きいネコのような眼は見開かれ、口は獣を思わせる形で半笑いの状態を維持している。
こいつのプロフィールを先に見ておくべきだった……!
【しんべヱはようすをみている】
道路上で、敵意を顕わにして睨み合う。
見つかってしまったものはしょうがない、問題はどう行動するかだ。
この手の相手には言葉が通じないと相場が決まっているから、交渉の余地があるとは思えない。
ならば、いっそ先制攻撃で……
見つかってしまったものはしょうがない、問題はどう行動するかだ。
この手の相手には言葉が通じないと相場が決まっているから、交渉の余地があるとは思えない。
ならば、いっそ先制攻撃で……
「キロキローッ!」
【しんべヱはにげだした!】
「本当に行動パターンが読めないわね!」
遠ざかる背中を視界に納めたまま、二つのランドセルを引っ掴む。
そのまま追跡のための足を踏み出そうとして……やめた。
そのまま追跡のための足を踏み出そうとして……やめた。
(ここで焦ったら、終わる)
奇声を発しながら逃げる少年を追跡するという行為はどれほど目立つだろうか?
棚ぼたで手に入れた詳細名簿に固執した結果、狩人に見つかって殺されるのは御免だ。
今回のことは明らかに私の失敗。名簿を読むのに夢中になって周囲への警戒を疎かにしたという痛恨のミス。
むしろ、何の怪我もなかったことに感謝するべきかもしれない。そのまま殺されていた可能性も十分に有り得るのだから。
隠れ潜むことが私の本分。それを忘れてはいけない。
今回の失敗を肝に銘じ、緩みそうになった心を戒める。
今度こそ慎重に慎重を期して……
棚ぼたで手に入れた詳細名簿に固執した結果、狩人に見つかって殺されるのは御免だ。
今回のことは明らかに私の失敗。名簿を読むのに夢中になって周囲への警戒を疎かにしたという痛恨のミス。
むしろ、何の怪我もなかったことに感謝するべきかもしれない。そのまま殺されていた可能性も十分に有り得るのだから。
隠れ潜むことが私の本分。それを忘れてはいけない。
今回の失敗を肝に銘じ、緩みそうになった心を戒める。
今度こそ慎重に慎重を期して……
「ウニョラーッ!」
遠くで、蝶々を追いかけていた肉の塊が立木に正面衝突していた。
(あの様子なら、詳細名簿もどこかで落とすかもしれないわね……)
大声を出しながら動いているから追跡は簡単だが、その分他の参加者に対しても目立つ目立つ。
そうなると、私自身が見つかってしまう危険性も高くなる。
いや、仲間探しが目的なんだからかえって好都合なのかしら……?
そうなると、私自身が見つかってしまう危険性も高くなる。
いや、仲間探しが目的なんだからかえって好都合なのかしら……?
「トッピロキーッ!」
遠くで響く解読不可能な奇声が、不愉快な雑音として耳朶を打った。
【H-3/道路/1日目/午前】
【ヴィクトリア=パワード@武装錬金】
[状態]:健康/満腹
[装備]:なし
[道具]:アイテムリスト、天空の剣@ドラゴンクエストⅤ、基本支給品×2(食料-1)、首輪
[服装]:制服の妙なの羽織った姿、返り血無し
[思考]:あの舌、食い千切ってやろうかしら?
第一行動方針:男の子(しんべヱ)を追いかけて詳細名簿を取り戻すかどうか迷っている。
第二行動方針:首輪を外す。主催者の目的について考える。
第二行動方針:“信用できてかつ有能な”仲間を捜す。 ホムンクルスのイリヤに興味。
基本行動方針:まずは様子見
参戦時期:母を看取った後
[備考]:能力制限は再生能力及び運動能力の低下、左胸の章印を破壊されたら武器を問わず死ぬ。
ジョーカーの存在を疑っています。
『01:明石薫~46:ニケ』の顔写真とプロフィールにざっと目を通しました。
【ヴィクトリア=パワード@武装錬金】
[状態]:健康/満腹
[装備]:なし
[道具]:アイテムリスト、天空の剣@ドラゴンクエストⅤ、基本支給品×2(食料-1)、首輪
[服装]:制服の妙なの羽織った姿、返り血無し
[思考]:あの舌、食い千切ってやろうかしら?
第一行動方針:男の子(しんべヱ)を追いかけて詳細名簿を取り戻すかどうか迷っている。
第二行動方針:首輪を外す。主催者の目的について考える。
第二行動方針:“信用できてかつ有能な”仲間を捜す。 ホムンクルスのイリヤに興味。
基本行動方針:まずは様子見
参戦時期:母を看取った後
[備考]:能力制限は再生能力及び運動能力の低下、左胸の章印を破壊されたら武器を問わず死ぬ。
ジョーカーの存在を疑っています。
『01:明石薫~46:ニケ』の顔写真とプロフィールにざっと目を通しました。
【G-4/草原/一日目/午前】
【福富しんべヱ@落第忍者乱太郎】
[状態]:凶暴化
[装備]:なし
[道具]:詳細名簿(手で掴んでいる)
[思考]:ウニョラー
[備考]:凶暴化は数時間経つか、呪いを解く効果のある魔法や道具で治ります
【福富しんべヱ@落第忍者乱太郎】
[状態]:凶暴化
[装備]:なし
[道具]:詳細名簿(手で掴んでいる)
[思考]:ウニョラー
[備考]:凶暴化は数時間経つか、呪いを解く効果のある魔法や道具で治ります
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