Two sides of the same coin ◆yX/9K6uV4E
――――いつだって、傍にある。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
朝になって放送がありました。
とても、とても哀しい放送が。
呼ばれたのは15人のアイドルでした。
それには、私――
岡崎泰葉の縁者と、私達のグループ――
諸星きらり、藤原肇、白坂小梅、市原仁奈、
喜多日菜子に関係する人物も含まれていてました。
正直言うとショックでした、こんなに死んだのかと。けれど私達は哀しんでる暇などありませんでした。
死者の発表とともにあった禁止エリアの発表。
そこには今私達がいるエリアも含まれていて、早急に対策しなければいけませんでした。
そこで私達はグループを分割する事を決めたんです。
杏さん探しと、
自転車を回収したいきらりさんが小梅さんと供に灯台に向かう事になりました。
何故そうしたかというと、きらりさんか遭ったというアイドル二人――
古賀小春と
小関麗奈の事です。
きらりさんによると、二人は街の方には向かわなかったそうなんです。
なら灯台にいるのは、自然なのですが、一つ問題がありました。
それは次の放送でB-7のエリアがされてしまったら彼女達は閉じ込められてしまう。
千川ちひろがそうするとは思いませんが、そうなった後では遅いんです。だから私達は彼女達を迎えにいく事にしました。
実際元々向かいにいくという話も出ていましたし。
禁止エリア指定までに間に合わなければ、合流は水族館として。
迎えにいくメンバーは彼女と面識があるきらりは当然として、放送で起き出した小梅さんでした。
どうやら私から離れたい感じだったのともう一つ大きな要因があったのもあり、彼女になったのです。
まあ、それに不服は無く彼女達は出発しました。
一つ心配だったといえば……
「……きらりは、きらりは大丈夫だにぃ」
と、放送直後に、きらりさんが言った言葉でした。
何が大丈夫なのか、私にはさっぱり解からなかったけど。
何処かその呟きが、寂しく響いて、何処か哀しい音色だったのが、とても印象的だったのです。
【C-7・港/一日目 朝】
【諸星きらり】
【装備:なし】
【所持品:基本支給品一式×1、不明支給品×1】
【状態:健康】
【思考・行動】
基本方針:杏ちゃんが心配だから杏ちゃんを探す☆
0:今度こそ杏ちゃんを探しに行くにぃ☆
1:自転車取りにいくー☆
2:小春ちゃん達迎えにいくー☆
3:(大丈夫だにぃ……)
【白坂小梅】
【装備:無し】
【所持品:基本支給品一式、USM84スタングレネード2個、不明支給品x0-1】
【状態:背中に裂傷(軽)】
【思考・行動】
基本方針:死にたくない。
0:きらりについていく
1:やっぱり泰葉には逆らえない。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
そして今に到って私達はきらりさん達を待っています。禁止エリアになるまえに間に合わないのであれば水族館にまちあわせ、という事で。
大人しく待っていればいいんですが、そうもいかない理由があって。
それは小梅さんがきらりさんについていった要因でもあるんです。
「美波さん、そんな……」
肇さんが
新田美波の死によるショックで落ち込んでいる事だったんです。
もう塞ぎこむぐらいで動くのもままならないぐらいに。
だから、きらりさんと行動を供にしていた肇さんがきらりさんといけなかった理由が其処にありました。
新田美波、サマーライブで輝いていた一人。
アイドルとしても輝いていた彼女は、肇さんと同じプロデューサーで、特別仲が良かったようです。
私としても彼女の死はショックでたまりません。
……もう一人しか残っていないなんて。
栗原ネネ、彼女だけ生き残って欲しい。
あって輝くアイドルの姿を見せて欲しい。
それが私の願いでした。
「こんな所で死んでしまうなんて……」
まず肇さんを励まさないと。
こんな哀しんで落ち込んでしまうなんて。
アイドルらしくないというのも酷かもしれませんね。苦楽も全て共に過ごしてきたのなら。
泣かないだけ立派かもしれません。
ですが、私はどう慰め、はげませばいいか解らなかった。
だって私はずっと今まで一人で頑張ってきた。
苦しい時も哀しい時も全部一人で乗り越えてきたのだから。
誰かに励まされるなんてなかった。あるのは蹴落とそうとしてくることぐらい。
だからどう励ませばいいかなんて解る訳が無かった。
自分の事ながら、いえ自分の事だからこそ哀しいですね、本当。
本当……悲しすぎる。
こんな言葉が全くでて来ないなんて。
どうしましょう……私は…………
私がそう戸惑っている時、ふと彼女に寄ってくる人がいました。
いつの間に起きたのか。
しかしその女の子は誰よりも輝いてみえたんです。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「哀しいですか?」
「……ぇ?」
怖かった。
ずっとずっと怖かった。
皆、目が怖くて、ずっと泣いてばかりだったのごぜーます。
仁奈は嫌で嫌で嫌で、たまらなかったですよ。
逃げて逃げて、そして今起きて。
目の前で、哀しんでやがるんですよ少女が。
何があったか仁奈には解かりません。
でも、あいつ……仁奈のプロデューサーから、教えられた事があるのですよ。
――哀しんでる人がいたら、喜ばせる
って。
だから、仁奈は頑張ってこの人を喜ばせないといけねーんです。仁奈はアイドルですから。
「どうしたんでごぜーますか?」
「えっと……大切な友人がとても遠く行ってしまったの」
「……肇さん」
「……こう言った方がこの子にとっていいので」
この女の人は肇というらしい。
大切な友達が遠くに行った。
何だかそれは……
「もう……会えない……の」
仁奈にそっくりで。
仁奈は、会えない訳じゃないけどパパは遠くにいやがるのです……。
とてもさみしくて、さみしくてたまりません。
でも!
「仁奈と同じでごぜーますよ」
「え?」
さみしくても、さみしくても。
さみしくて、仕方なかったけど
「仁奈のパパも遠くに……でも!」
――は教えてくれてやがったのです。
「遠くにいても、思ってくれる。頑張れって、応援してくれるって」
「……っ!」
「だって大切な人なんだから、絶対いつでも応援しくれるんでごぜーますよ」
大切な人だから。だからこそ。
いつでも応援してくれる。
だってパパは……パパは。
「仁奈はパパが大好きで、パパも仁奈が大好き……おねーさんの大切な人はちがうです?」
「……きっと……そんな……事は……ない……です」
「じゃあ、きっと……心の底から、応援してる……そう思うんで……ごぜーます」
仁奈の事が大好きで。
きっと応援してくれる、仁奈のことを。
だから、
「頑張れる……おねーさんは違うです?」
「………………ううん。私も……私……頑張ろう」
頑張るんでごぜーます。
おねーさんは泣きそうな顔から、笑い始めて。
握りこぶしを作って、また開いて。
そして、
「仁奈ちゃんも………………頑張ったね」
「………………えっ」
ぎゅっと。
仁奈は抱きしめられた事に気付くのに、大分時間がかかったのです。
「怖かったでしょう……辛かったでしょう」
「そ、そんなことはねーで……」
「小さいのに頑張ったね、本当頑張った」
「…………あ…………う…………」
抱きしめられると、安心するんでごぜーます。
ママに抱きしめられるみたいで、嬉しくて。
「ほら震えてる…………もう大丈夫だから……寂しかったでしょう」
「ぅぅ……ぁぁぁ……」
「よしよし……頑張ったね……仁奈ちゃんはいい子だ」
これが、温もりで、久々……温もりが…………
仁奈には、とても………………嬉しかったんでごぜーます。
だから、仁奈は、ぎゅっとぎゅーーーと抱きしめ返しました。
――――ほら、希望はいつでも、すぐ傍にある。
素晴らしい、素晴らしいとしか言えない。
これが、アイドルの……いえ、藤原肇と市原仁奈持つ輝きだろうか。
余りにも輝き過ぎて少し眩しいとさえ。自然と頬が緩んでしまうぐらいに、温かくもあった。
「仁奈ちゃんありがとう」
「いえ、仁奈もありがとうごぜーます、肇おねーちゃん」
「は、肇お姉ちゃん!? ふふっ、それもいいですね」
ふふっ、本当いいですね。
こういうのに満ち溢れているなら、私達は絶対負けません。
そう思えてしまうぐらいに。
……ええ、負けてたまるものですか。
「えへへー肇お姉ちゃん……」
「て、照れますよ…………そうですね、何かご褒美ほしいですか?」
「ご褒美?」
「ええ、頑張ったご褒美です」
しかし、ほほえましいですね。
本当姉妹みたいで、少し妬けます。
私は妹はいませんし…………
………………妬いてないですよ?
「…………そうでごぜーますね……仁奈、できるならケーキ食べたいでごぜーます!」
「ケーキ?」
「ほっとしたら、甘いものたべたくなったのですよ」
「……なるほど……そうですね……でも此処甘いものないし……ううん」
肇さんが少し迷った表情を浮かべて。
仁奈ちゃんが困惑した表情を浮かべ始めました。
無理なお願いいったのかなと言いたいように。
…………やれやれ、仕方ない。
少しは、お姉ちゃんらしいの、させてあげますか。
「……直ぐ近くにケーキ屋さん見かけましたよ」
「岡崎さん……?」
「二人でいってきたらどうです? 折角ですし」
「……でも、岡崎さん一人で」
「構いませんよ。ですが禁止エリアなるのに間に合いそう出なければ、水族館集合で」
「……解かりました」
「詳しい場所は…………ここら辺です」
「なるほど、ありがとうございます」
と言う訳で、肇さんに助け舟です。
どうせ、私を一人にさせるとか不安がってそうでしたし。
まあ、別にそれはよかったですし。
二人に元気になってもらう方が先です。
「じゃあ、いきましょうか、仁奈ちゃん」
「わーい♪」
ふふ……やはり、良かったかもしれませんね。
喜んでる様子みると、こっちも嬉しくなります。
そうして、二人はケーキ屋に向かっていきました。
元気になるといいですけれど。
……………………まあ、勿論それだけで二人を出発させた訳じゃないんですけどね。
ええ、当然の事ながら、裏があります。
何故なら一人で処理しないといけない問題がありますから。
誰かが帰ってくる前に早くしなければ。
これは他の誰かに見られては困るし、処理しきれないだろうですし。
それは、未だに眠り続けている眠り姫。
私たちに襲い掛かり、小梅さんを傷つけた張本人。
喜多日菜子。
妄想姫とも、名高きアイドル。
さてはて、彼女はここでもいつも通り妄想して、それが爆発したのでしょうか?
それとも、狂気に染まった上、妄想の世界に逃げ込め、世界から目を背けたのでしょうか?
どっちでしょう?
前者なら、まあ色々更正はあるでしょうか?
後者なら…………………………
「さて、そろそろ目覚めの時でしょうか。色々なものから、目覚める時間ですよ、喜多さん」
私は彼女のナイフをくるくると回す。
喜多さんは手首を縛って、更に脚も縛って身動きの出来ない状況になっている。
彼女の所持品も回収した。
さあ――――目覚めましょう。
今こそ――――目を向ける時です。
【C-7・港/一日目 朝】
【岡崎泰葉】
【装備:スタームルガーMk.2麻酔銃カスタム(10/11)、軽量コブラナイフ】
【所持品:基本支給品一式×2 不明支給品x0-1(喜多のもの)】
【状態:健康】
【思考・行動】
基本方針:アイドルとしてあろうとしない者達、アイドルとしていさせてくれない者達への怒り。
0:喜多日菜子を対処
1:禁止エリアになる前に水族館に移動
2:
今井加奈を殺した女性や、誰かを焼き殺した人物を探す。
3:
佐城雪美のことが気にかかる。
4:古賀小春や小関麗奈とも会いたい。
※サマーライブにて複数人のアイドルとLIVEし、自分に楽しむことを教えてくれた彼女達のことを強く覚えています。
【喜多日菜子】
【装備:無し】
【所持品:無し】
【状態:睡眠(麻酔銃)、手首&脚を縛られている、妄想中】
【思考・行動】
基本方針:王子様を助けに行く。
0:………………zzz
1:邪魔な魔物(参加者)を蹴散らす。
2:迷子の仁奈を保護者の元へ送り届ける。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
逃げた。
逃げて、逃げて。
怖い。
怖くて、怖くて。
だれも、だれも、私を護ってくれません。
だれも、だれも、私を助けてくれません。
どうして?
どうして?
私が悪い子だから、いけないから?
いやだ、いやだ。
逃げた、逃げた。
山の中、ずっとずっと。
斜面を駆けずるように。
見失った島村さんを探すように。
樹の枝が引っ掛かって痛い。
でも、気にせず逃げた。
なんでって、怖いから。
ただ、怖いから。
――放送が流れました。
新田さんが死んだそうです。
あのゆかりさんに殺されたんだろうと思います。
怖い、怖い、あの人から。
………………嫌。
嫌、怖い。
だから、逃げました。
なんで、嫌か、何で怖いかわかりません。
でも、怖いんです。嫌なんです。
だから、逃げました。
斜面を転がって、やがて、林になりました。
服も土に汚れて、腕とか傷ついて。
息も絶え絶えになって。
それでも、気にしません。
誰かに会いたかった。
誰かに縋りたかった。
でも、誰も会えませんでした。
島村さんは何処にもいませんでした。
ねえ、私を独りにしないでください。
あの時………………みたいに。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
私は厳格ながらも裕福な家に生まれました。
とても、幸せだったと思います。
お父様とお母様と……お兄様と。
お兄様。
大切なお兄様でした。
いつもいつも、傍に居てくれて。
ドンくさい私をずっと支ええてくれて。
優しくて、優しくて、素晴らしいお兄様でした。
大好きでした。
大好きでした。
それは、恋をするくらいに。
――けれど、その恋は実りませんでした。
本気だったのに、本気だったが故に。
あのお父様はお怒りになって。
あのお母様は酷く哀しんで。
それはいけないことだ。
それは駄目だ。
間違った育て方をした。
ちゃんと育てなおさないといけない。
そうやって、私を隔離させました。
全寮制のお嬢様学校に。
そして、お兄様は私に対して冷たくなって。
あんなに、あんなに優しかったのに。
まるで、他人を見るみたいに。
誰も、私を護ってくれませんでした。
だから、私は独りで。
そして、お兄様を、探して。
彼は、私に優しくて。
まるで、お兄様のように。
私は嬉しくて、嬉しくて。
甘えて、甘えて、甘えて。
色々打ち明けて。
それでも、彼は優しくて。
そして、彼は言ってくれました。
――里美を、この世のすべてのものから、護ってあげるから……のびのびやるんだよ。
嬉しかった、だから、もっと頑張ろうと。
護られてる事がこんなに嬉しかったなんて。
だから、護られる事が、幸せでした。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
逃げた、逃げた。
怖いから、怖いから。
走った、走った。
嫌だから、嫌だから。
どれ位走ったのでしょう。
日はもう大分高くて。
それでも、私は走って。
走って、走って。
林を駆け抜けて、街が見えてきて。
それでも、走って、ずっと、ずっと走って。
そして、
「あ…………」
街の道で、歩いてる二人の少女を見つけました。
少女が小さな女の子と手をつなぎながら。
とても、とても、幸せそうで。
まるで、姉妹に見えました。
にっこり笑いあって、羨ましい。
……羨ましい? 何が?
そうこうしてるうちに、二人はお店に入っていきました。
小さなケーキ屋さんでした。
楽しそうにケーキを選んでいます。
とても、幸せに微笑んで。
とても、楽しそうに、女の子はコレが良いと指をさして。
少女は、じゃあ、器に入れて……そうだ、ちょっと待ってねと厨房に向かっていきました。
姉妹みたいです。
幸せそうです。
いいなぁ、いいなあ。
……何が。
何で、何でだろう。
なんで、こんな感情沸くんでしょう。
あの女の子が羨ましい。
どうして…………どうして…………
そして、何かに引っ張られるように、私もケーキ店に入りました。
「だ、誰ですか……?」
「……はぁ……ふぁ……里美と……いいますぅ……」
「……大丈夫でごぜーますか? 息が荒いですよ」
女の子は椅子にちょこんと座りながら、私に問いかけます。
でも、もうそんな事は私はきになりませんでした。
「………………どうして、怖くないんですか?」
私にとって当たり前の問いでした。
こんな怖い島なのに、どうして。
この子は、笑ってるの?
「……肇おねーちゃんが護ってくださるんですよ」
「…………えっ」
護ってくれる。
護る?
「色んな人が、護ってくれるんです」
「護る…………?…………そんな訳ないですぅ」
そんなの嘘だ。
そんなの嘘だ。
みんなこの島なんかで、優しくなんていてくれない。
「違うでごぜーますよ?…………きっと手を差し伸べて、抱きしめてくれる人がいるんです……仁奈がそーでごぜーましたから」
「……そう」
「おねーさんも、きっと……」
居ない、居ない。
そんな、人居ない。
絶対に。
「……そんなのありえないですぅ」
「ありえない……なんて、ないでごぜーますよ」
「……私はそんな風に笑えないですぅ」
もう、笑えない。
もう、あの時みたいに。
もう、あの頃には、戻れない。
「大丈夫でごぜーますよ……仁奈は、肇おねーちゃんのお陰で笑えるようになりましたから……だって――」
だって?
「肇おねーちゃんが、護ってくれるから。――が応援してくれるから、遠くにいるパパも、頑張れっていってくれるから」
そんな……そんな……
「仁奈は、幸せでごぜーます」
そんな訳、無い!!!!!!!!!!
ぶつんと
心の糸が、切れる音が、しました。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「そんな訳無い!」
ギリ。
「誰も、誰も、護ってくれない!」
ギリギリ。
「じゃあ、あの時どうして、島村さんは手を差し伸べてくれなかった!?」
ギリギリギリ。
「じゃあ、どうして、あの時、お兄様は、私を護ってくれなかった!?」」
ギリギリギリギリ。
「どうして、お父様も、お母様も、私を追い詰めた!?」
ギリギリギリギリギリギリギリギリ。
「誰も、誰も、誰も! 護ってくれないんですよ! 私はいやなのに、独りはいやなのに!」
ギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリ。
「幸せなんて、ない。怖いのに、怖いのに、護ってくれない! 護ってくれない!」
ギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリ。
「嫌ですよぉ、いやですよぉ、いやですよぉ、独りはいやですぅ!」
ギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリ。
「お願いだからぁ、おねがいだからぁ―――さぁん、早く、私を護りに来てください!」
ギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリ。
「どうしてぇ…………護ってくれないんですかぁ!」
――――ギリ。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
気がついたら、感情が爆発していた。
気がついたら、目の前の女の子の首を絞めていた。
「…………………………え?」
―――そしたら、女の子は死んでいた。
私が殺した。
恐らく首を絞めて。
そんなつもりは……なかったのに。
いや……いや…………いや。
「いやぁぁぁああああああああああああああああああああああ!!!!」
そして、私は、また、逃げ出しました。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「これでよし……待たせたけど……いいものができました」
仁奈ちゃん待たせてしまいました。
でも喜んでくれるはずです。
……ん、騒がしい……?
「いやぁぁぁああああああああああああああああああああああ!!!!」
店から、聞こえる叫び声。
仁奈ちゃんじゃない、何があった?
私は急いで店の方に行きます。
ケーキを持ってることに気付かずに。
「…………………………え?」
其処に広がってたのは、哀しみでした。
「えっ……ぅ……ぁ……?」
仁奈ちゃんが倒れてました。
目を閉じたまま、苦しそうな顔で。
そっと、脈をとる。
「…………ぁ…………っ……ぅ……」
―――亡くなっていました。
「ぁ…………っぁ……ひぃ……ぁ……ふぁ……ぅ」
あんなに、さっきまで、元気だったのに。
――――仁奈は、おねーちゃんができました。
あんなに幸せそうだったのに。
「ぁぁ……ぁ……っ……ぁー……」
――――えへへ♪ たのしーでごぜーますよ。
あんなに……あんなに……あんな……にぃ
「っっ…………く……ぁ………………ぁ」
駄目だ、幸せなことを……はぴはぴな……ことを……かんがえ……わらえ……
――――仁奈は、幸せです、肇おねーちゃんといられるから!
「ぁ……ぁっ……くぅ……ぁ、ひぁ……あぁぁ――――」
――――これからも、一緒にいましょうね、肇おねーちゃん♪
「ぁぁあぅぁああああああああああああああぁぁあああああああああっああああああああああっぁああああああああああああああああああぁ
あぁああああああああああああぅッあああああああああああああああああああああああっぅつああああああああああああああああああああ
っぁあっあッあああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
ケーキがのった皿が、地面に落ちた。
皿が、割れた。
綺麗な器でも、一度、割れたら、もう二度と、戻らない。
ケーキには、砂糖細工が乗っかっていた。
羊、狼、ペンギン。
仁奈が好きな、動物だった。
喜んでもらえると、肇が、用意したものだったのに。
【市原仁奈 死亡】
【C-6/一日目 午前】
【藤原肇】
【装備:ライオットシールド】
【所持品:基本支給品一式×1、アルバム】
【状態:絶望】
【思考・行動】
基本方針:??????????????????
0:??????????????????????
※仁奈の遺体の前に仁奈の荷物が広がっています
【榊原里美】
【装備:なし】
【所持品:なし】
【状態:疲労(極大)】
【思考・行動】
基本方針:死にたくない
1:??????
――――ほら、絶望はいつでも、すぐ傍にある。
最終更新:2014年02月27日 21:16