水彩世界 ◆yX/9K6uV4E
ずっと、前の事。
思い出すのも辛い事。
「大丈夫だって、頑張ろう! ねえ、笑って!」
いわれてしまったこと。
「×××××××××××××××!」
今も、忘れられません。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「そんな……」
悪夢をみているようだと、ネネは思う。
たった六時間、六時間の間に十五人も死んでしまった。
嘘だといいたい気持ちも充分ある。
けれど、間近に命の危険を感じた現状、事実として受け止めるしかない。
「新田さん……多田さん」
同じサマーライブの舞台で輝いていた二人。
もう、もう死んでしまった。
胸が、心が苦しくなる。
あんなにも輝いていたのに、死んでしまった。
もうその輝きを見ることが出来ない。
そう考えると、ただ苦しかった。
歩みが、遅くなってしまう。
なんで、どうして殺してしまうの?
そんな問いが心の中で渦巻くのを感じる。
けれど、その答えは明瞭で、ネネ自身にも解かっている。
――皆、ヒロインでいようとしたんだ。
だから、こんなにも死者が出た、出てしまった。
プロデューサーの為に殺して。
あるいは、アイドルでいようとしたが故に殺されてしまって。
そう考えると胸がギュ―と締め付けられる感覚にネネは襲われる。
「迷ってる暇すら、無いの?」
自分が進む道、星のようにぼやっと光っている道。
光の道か、闇の道か。
決めなければ、いけないのだろうか。
いつまでも、淡い日の出の光の中、いてはいけないのだろうか。
あの光とも闇ともとれない薄明るい時間のように。
そのように、留まる事すら、できないのか。
選択しなければ……決断の時は近いのだろう。
ネネは、どうすればいいかと迷い、そして
「ねえ…………えーと、ちょっとそこの貴方!」
まるで、アイドルの勧誘をするような気軽な話し方。
ネネはそんな声にびくっとしながら振り返ると。
其処には、太陽のような少女――
日野茜と、日だまりの笑顔を浮かべる少女がいた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
栗原ネネが、日だまりの笑顔を浮かべる少女――
高森藍子の事で思い出す事がある。
それは、ほんの一ヶ月も経たないぐらい前の事だったろうか。
あるひと時の休憩時間の時だっただろう――――
「お疲れ様です、プロデューサー」
「おう、ネネか…………げっ」
「げっって……なんですか……って、あー!」
栗原ネネが、雑誌のインタビューを済まして、事務所に帰った時の事だ。
予想より早く終わったから、プロデューサーに挨拶しようと休憩室に寄ってみたら
「また、タバコ吸ってる! 健康によくないですよ!」
「いやいやいやいや、わかってんだがよー! それでも、美味しいんだって、解かるか、ネネ!」
「ちっとも解かりません!」
「だーーっ! だからさぁ、仕事終わりで、ブラックコーヒーと一緒に一服……たまんねえだろう! 格別の上手さなんだよ、と俺は思うんだよ!」
「全く解かりません!」
「けっ……これだから、子供はよー……黄昏る大人のひとときがわからんだろうに」
「はぁ…………」
「呆れんなよ!」
何時ものように、タバコを吸ってるぼさぼさの髪で、しかも無精髭のプロデューサーが居た。
ぼけーとスポーツ新聞片手にテレビを見ている。
まるで駄目なオッサンであった。
こんなだらしないプロデューサーがネネのプロデューサーである。
そして、タバコを注意するが、まあ止めないだろうなとネネは思う。
何度、健康に悪いと注意しても全くきかないのだ。
半ばネネも諦めモードだが、ネネの前では全く吸わない。
今も火をつけたばかりだろうに、直ぐに消した。
そういう優しさを持ってるプロデューサーでもあるのだけど、やっぱりタバコはやめてほしい。
長生きしてほしいからと、ネネは心の底から思う。
そんな思いを持ちながらふと休憩室のテレビから聞こえる音に耳を澄ませると
『ALRIGHT* 今日が笑えたら ALRIGHT* 明日はきっと幸せ』
そう、あるアイドルの曲をカヴァーを歌うアイドルグループが映っている。
見るまでもない、フラワーズだろう。
うちの事務所の出世株なのだから。
テレビに出ない日はないぐらいに。
羨ましいなと思う。
あんな風に輝けるなんて。
「あー、震災被災地で、復興を願ってのチャリティーライブ、だそうだ」
「へぇ……最近うちで、良くやりますよね。震災関連のチャリティー」
「ああ。ちひろが強く推してるんだと、あのスーパー守銭奴が珍しいんだよなぁ」
「……それ本人の前で言わないでくださいね」
「いわねえよ!」
大震災から、もう一年経つ。
忙しくてすっかり忘れていたが、あの時の事をネネも忘れてない。
凄惨な出来事だった……本当に。
『皆……笑顔をありがとう! 私も笑って、皆を幸せにするから!』
歌が終わり、リーダーの藍子の声が聴こえる。
フラワーズの最も輝いてる花。
十時愛梨と同じく、シンデレラガールだろう。
「凄いですよね彼女……半年でこんな人気なんて」
「いや……高森藍子に限っては違うはずだと思うぜ」
「えっ?」
「彼女は……下積みそのものはクソ長いはずだ」
そうは見えないけどとネネは思い、テレビに映る彼女を見る。
やっぱり輝いていた、驚くぐらいに。
「それも、一度ユニットの話ぽっしゃったと聴くしな」
「へぇ……」
「まあ、俺も入った当初見たけど、一見ただの普通の女の子にしかみえなかったしなぁ」
「ふむふむ」
「引退しない方がビックリだったぞ」
そんな彼女が下積みが長いとは思えない。
ある意味自分より下積みが長いなんて。
ネネは驚嘆するしかない。
「ま、執念じゃねーの」
「執念?」
「アイドルに絶対すると言うプロデューサーと、なりたい、戻れないという高森藍子の執念じゃねえのかなあ」
そう言って、プロデューサーはブラックコーヒーを思いっきり飲み干した。
うわ、にげえと言っていたが当たり前だろうにとネネは苦笑いを浮かべる。
大人はブラックだろうと意味のわからないこといっていつもブラックなのだ。
甘いのものが好きなくせに。
「……さて、仕事きてるぞ」
「わぁ、なんですか」
「水着だ!」
「……えーそういうのはでっかい人に任せましょうよ」
お仕事、なんだろうと目をキラキラさせたネネはあっと言う間にジト目に変わる。
成長中のネネはまだ水着での撮影とはいわれても、ピンと来ない。
「何言ってんだ、お前肌が白いんだから絶対似合うって!」
「そうですか?」
「そうそう! 乙姫がイメージらしいぞ! 水彩の乙姫だそうだぞ!」
「乙姫かぁ」
「だから、受けようぜ!」
水彩の乙姫と言う響きに、ネネはまた目をキラキラさせる。
なんだか、ワクワクさせる響きだ。
だけど、
「で、その本心は?」
「俺が水着みたいに決まってるからだろー!」
「……………………えっちです、すけべです」
「ぐっ……いいから受けろ、というか受けた! はい、けってーい!」
「ちょ、ちょっとぉ、プロデューサーぁ!」
いつもこう。
こういう人だとネネは思う。
でも、だから、だからこそ――――
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「そう、多田さんは……」
ネネは、そのまま茜と藍子と着いていく事にした。
警察署に向かうらしいので、とりあえずは。
邪険にする必要も無いし、迷う中、話を聞いてみたいなと思ったから。
遊園地からはなれてしまうが、仕方ない。
その中で、
多田李衣菜の死に様を聞いた。
苦しまずにいけたと言えば、いいのだろうか。
何も残せず逝ったといえば、いいのだろうか。
解かる事は、哀しいという事ぐらい。
「だから、私達は彼女達の思いを継いでいこうと思っています」
そう藍子はいって、笑う。
力強い言葉だった。
凄い強い、言葉で。
「小さな希望が、集まって、大きな希望に……それが花束で」
希望。
希望ってなんだろう?
放送でも言われた言葉だ。
ネネは疑問に思いながら、彼女の言葉を待つ。
「その為に、一緒にきてくれませんか?」
それは、勧誘。
差し出された未来の道。
希望に溢れるだろう道。
それが、正しい道。
(……そうなの?)
けれど、それが正しい道なんて解かるはずもない。
少なくともネネにはそうだと断定できるとは思えない。
さしのばされた手をとることなんて、出来ない。
どうする? どうすればいい?
「……ねえ! あれって!」
「…………あれは!」
そう、迷ってる時だった。
見えてきた警察署に、駆け込む少女がいて。
それは、ネネにとっても既知の人物で。
「美穂さん!」
そして、それがもう一つの道だった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「チョコの作り方?」
「はい」
「誰かに送るんですか?」
「う、うん……変かな?」
「いえ、別に」
「笑わないでよぉ」
そう、小日向美穂が栗原ネネに尋ねたのはいつ頃だったか。
割と昔の話だったなとネネは思う。
兎も角チョコを送るイベントが近い日の時だという事だ。
「いいですけど、道明寺さんにきいてみては?」
「あの子はドジが多いし……」
「……ああ」
「それに…………」
「…………まあ、いいですよ」
そして、ネネは美穂と道明寺が親友同士であることも知っている。
且つ、恋愛で微妙な事になってることも。
ネネはどっちかを応援するつもりは無い。
どちらも、大切な友人ではあるから。
「じゃあ、調理室で試しに作ってみましょうか?」
「はい!」
「まずはチョコクッキーとかどうでしょう?」
「何でもいいですよ」
「じゃあ買出しに行きましょうか」
……そうして、買出しに行って。
クッキーを焼いてる最中に。
「送る人は、いうまでもないですよね?」
「うう、ネネちゃん意地悪いよぉ」
「うふふ、御免なさい」
「……うぅ……でも」
彼女はエプロンをぎゅっと握って。
「贈りたいから……この想いごと」
「……私達はアイドルですよ?」
「それでも! 私は女の子だから。伝わらなくても贈りたいなって」
だって、と彼女は紡ぐ。
顔を真っ赤にしながら。
「大好きだから」
そういう美穂は、ネネから見えてとても輝いてみえて。
素敵だな、と思ったのだ。
「……さて、出来ましたよ」
「わぁ、美味しそう」
「でしょう」
「あ、この別に作られてるのは?」
「そ、それは……」
チョコクッキーにトッピングされてる特別製が少しだけあって。
ネネは急に顔を赤くして。
その様子に美穂は納得するように。
「なあるほど」
「な、なんですか!」
「べーつーにー」
「ひ、酷いです」
「ひーとーのーことーいえないんじゃないかなーってー」
「うぅ」
ネネは更に顔を真っ赤にして、その時
「おーなんだークッキーやいてたのか。ネネ」
「プ、プロデューサー!」
「どれどれ」
「あ、それは……」
突然現れたネネのプロデューサー。
ネネが驚くまもなくクッキーをつまむ。
それは、ネネが作った特別製で。
「…………んー」
「ど、どうでしょうか?」
「いや、甘すぎね?」
「……っ!? プロデューサーが甘いのがいいといったんでしょう!」
「いや、いったけどさ、コレ甘すぎね!?」
「もう、知りません!」
「はあ!?」
そう、首を捻るプロデューサーを無視して、ネネは顔を真っ赤にして調理室からでていく。
困ったプロデューサーは美穂の方を向いて。
「なあ、俺のせいなのか!」
「はい」
「マジで!?」
「マジです、大マジです」
「うぉぉおぉ!? ちょっと待って、ネネぇぇぇぇ!?」
そうして、プロデューサーはネネを追っていく。
美穂はそんな二人を見て。
「可笑しな二人……でも……いいな」
そう、そんな、ネネが正しく恋する少女だった頃の話。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「そう…………塩見さんと言う人が」
「……………………私のせいで」
半ば恐慌状態だった美穂を、ネネが落ち着かせるのに、大分時間がかかってしまった。
その後、美穂が語った話は壮絶で。
同行者が殺されて、一目散に自分がもといた場所に戻ってきたという事だ。
ここなら安全だと思ったらしいから。
「………………大丈夫です?」
「……はい、其方も大変だったみたいで」
「いえ……」
藍子も心配するように声をかける。
藍子が辿った道も、美穂にやんわりと説明した。
ただでさえ、恐怖に怯えてる状態だった彼女を安心させるためには、腹を割って話すしかない。
そう判断したネネは藍子に説明してもらったのだ。
幸い藍子は、有名人ではあるので、美穂も顔を見たことがあった。
「あの……美穂さん」
「……なんでしょう?」
「話を聞いて、くれますか?」
藍子が、そう切り出した時。
ネネは、ただヤバイとだけ思ったのだ。
何故ならば、
「私達も仲間を失いました……大切な……仲間を」
「……はい」
「でも、生き様を引き継いで、生きようと思います」
ネネは、藍子と少し話しただけで解かる。
藍子は、強い。真っ直ぐなアイドルだ。
「貴方も塩見さんの気持ちを受け継いで、生きませんか?」
「……えっ」
「小さな希望も束になれば大きな希望に……花束に」
「………………」
誰かの死を受け止めて。
沢山泣いて、哀しんで。
それでも、前を向いて生きていける少女だ。
「貴方と塩見さんの希望を……かしてください」
けど
「…………ないで」
誰もが、その強さを、持ってるわけじゃないんだ。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「…………ないで」
自分が出したと思えないぐらい低い声だと美穂は思う。
なんで、こんな声を出してるんだろうと。
哀しいのに、苦しいのに。
「……え?」
「…………ざけないで」
いや、わかっていた。
目の前の少女に対して。
美穂は、溢れ出る激情を抑えることが出来ないのだ。
「ふざけないでっ!」
それは、ほぼ絶叫だった。
溢れる感情が発した言葉。
「生き様を継ぐ……………………そんな事……簡単にできないよっ!」
目に浮かぶのは一人の少女。
塩見周子。
飄々としていたけど、優しかった。
きっと彼女にも、背負ってるものが、背負ってる人が居たのに。
それなのに、美穂を護って一人逝った。
「彼女だって、沢山やりたいことあったのに、伝えたい思いもあったのに、逝っちゃった」
悔やんでも悔やんでも悔やみきれない。
哀しくて、哀しくて仕方ない。
でも、
「私は、もう、精一杯なんですっ! ただでさえ、大好きな、大好きな人の命が危ないのに!」
大好きな、大好きな人。プロデューサー。
その人の命が天秤にかけられて。
しかも、そのプロデューサーと付き合ってる親友がいて。
自分の事でもう苦しい事のに。
「継ぐ事なんて、重すぎるよぉ……辛い……よぉ」
誰かの生き様を継ぐなんて、もう、重たい。
そんな事なんて、できない。
辛すぎた。辛すぎた。
涙が溢れて、止まらない。
「ねえ、藍子さん……貴方は? 貴方だってプロデューサーの命がかかってるのに」
「……私は…………私は」
藍子は迷いながら、それでも、口にする。
視線は迷い、手を合わせて。
それでも、伝えなきゃ。
自分の気持ちを。
それでも、アイドルだから。
高森藍子は、アイドルだから。
真っ直ぐに、愚かしいほどに。
「………………強いね、藍子ちゃん」
美穂は、ぽつんと呟く。
本当に強いアイドルだと思う。
それは美穂にも驚くぐらいに。
「そんな事無いです……」
「そんな事無いわけが、無い。きっと貴方だってプロデューサーのことが好きなんでしょう?」
「……どうして?」
「さっきの反応見れば解かるよ」
想いを潰して。
アイドルであろうとするなんて。
「ねえ、美穂ちゃん……私は強くなんかないよ……みんなに支えられてる……だから、ね?」
それでも、藍子は手を伸ばして。
「一緒に頑張ろう? 皆が幸せになれる方法をみつけよう?」
彼女に問いかける。
美穂は―――
ねえ、神様―――
「あ゛な゛た゛の゛つ゛よ゛さ゛を゛お゛し゛つ゛け゛な゛い゛で!」
―――弱い事は罪ですか?
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
涙も。
鼻水も。
哀しみも。
沢山溢れていた。
美穂は気がついたら、駆け出していた。
ただ、あの場所に居たくなかった。
自分の弱さがまざまざと見せ付けられるようで。
本当に、嫌だった。
だから、逃げた。
走って。
走って。
「……はぁ……はぁ……ひぐ……うぁぁ」
疲れて。
涙も溢れて。
立ち止まって。
「やーっと捕まえた」
「……え?」
ぽんと、肩を掴む人がいる。
振り返ると藍子と一緒に居た茜が傍に居た。
どうしようと悩み、逃げようと想っても、疲れて逃げれない。
「逃げないでいいよ。連れ戻したりもしない」
「……えっ」
かけられたのは思いのほか優しい言葉。
「私たちが軽率だったね、御免」
「……そんな事無いです」
「そんな怯えないでいいよ……何もしない」
「あっ」
それは塩見周子がかけてくれた言葉。
優しい言葉だった。
「私が言えることは一つ」
「なんでしょう」
茜が息を吸って言う。
それは美穂を解放する一つの言葉だ。
「泣いちゃえ」
「えっ」
「塩見さんの為に泣いちゃえ。もう泣いてるけどさ……大声で泣く事は、また別だよ」
泣けばいい。
泣いて、気持ちをリセットできるなら。
きっと、それが、前を向くまずいいことなんだから。
「立ち止まってさ、泣くんだ……それが出来るのは女の子の特権だ!」
「あ……う…………」
そっと抱き抱えられる。
優しくて。暖かくて。
「うぁぁ……あぁぁああああああああ――――」
小日向美穂は、塩見周子の為に泣く事ができました。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「落ち着いた?」
「はい」
「藍子ちゃんとこ、いく?」
「…………いきたくないです」
「そっか」
泣き終えて、美穂と茜二人、地面に座って。
今後の事を話し合う。
藍子のところに戻るのは、美穂は絶対に嫌だった。
藍子の言ってる事は、正直受け付けない。
嫌悪感すら、未だにある。
藍子の言葉は、強いから。
そして、アイドル過ぎるから。
今の美穂には強すぎて。眩しすぎて。
そんな生き方できやしない。
「じゃあ、私も暫く付き合うよ」
「いいんですか?」
「一人に出来ないっしょ」
「……ありがとうございます」
「……ここから、近いのは牧場だね、ちょっと行ってみよう!」
そして、周子に手をひかれたように、また茜に手を引っ張られる。
つられるまま、歩き出す。
ふと、美穂は思う。
親友はどうしてるのだろうか?
解からない。
藍子はどうして、あんなに強くて、アイドルに拘るんだろう。
普通の少女、恋する女の子に、戻れないのだろうか?
私はどうするの?
大好きな人の為に。
私は、本当にどうしたいの?
やっぱり、解からない。解かりたくない。
そんなことをとりとめもなく考えて。
彼女は手を引っ張られ続けたのだった。
【G-5・分かれ道/一日目 午前】
【小日向美穂】
【装備:防護メット、防刃ベスト】
【所持品:基本支給品一式×1、草刈鎌、毒薬の小瓶】
【状態:健康 哀しみ】
【思考・行動】
基本方針:殺しあいにはのらない。皆で幸せになる方法を考える?
1:茜についていく
2:藍子の考えに嫌悪感。
【日野茜】
【装備:竹箒】
【所持品:基本支給品一式x2、バタフライナイフ、44オートマグ(7/7)、44マグナム弾x14発、キャンディー袋】
【状態:健康】
【思考・行動】
基本方針:殺し合いには乗らない!
0:美穂を励ますために、牧場に。
1:他の希望を持ったアイドルを探す。
2:その後藍子に連絡を取る。
3:熱血=ロック!
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「あはは……駄目だな、私」
そうして、警察署に取り残されたのは、藍子とネネだった。
茜は、警察署の電話番号だけさっさと調べて、美穂が心配だから行く!といってそのまま出て行った。
連絡するからと言葉を残して。藍子も茜に行くように頼んで。
結果として二人が残される事になった。
「……きついなぁ……やっぱり……もう二度と聞きたくなかったのに」
そう呟く藍子は元気なさそうだった。
それも当然かなとネネは思う。
美穂の事も、気になるがやっぱりまずは藍子の事を。
「ネネさんは私の傍に居るの?」
「…………はい」
そして、ネネは藍子の傍に居る事を今は、選ぶ。
未だに心は迷い、揺れる。
悩んで、悩んで、悩みきってる。
けれど、二つの鍵となる人物がいた。
アイドルたるアイドル、フラワーズのリーダー、高森藍子。
ヒロインたるヒロイン、親友との恋に揺れる少女、小日向美穂。
アイドルとして、彼女がどう思うのか。
ヒロインとして、彼女がどう思うのか。
藍子はそのまま、アイドルで居続けられるのか。
美穂はもしかしたら、殺す側に回るかもしれない。
どちらにしろ、プロデューサーが人質になってるのだ。
その上で、どう歩むのか。
二人の行く末を、そして、自分の道を。
彼女達を通して、見つけたい。
それが、日の出の光とも闇とも取れないそんな淡い世界に居る。
そうそれは、まるで。
――――水彩の位置にいる栗原ネネの決断だった。
【G-5・警察署/一日目 午前(昼間際)】
【高森藍子】
【装備:なし】
【所持品:基本支給品一式×2、爆弾関連?の本x5冊、不明支給品1~2】
【状態:健康】
【思考・行動】
基本方針:殺し合いを止めて、皆が『アイドル』でいられるようにする。
0:きっついなぁ……
1:他の希望を持ったアイドルを探す。
2:愛梨ちゃんを止める。
3:茜の連絡を待つ
4:美穂は……
5:爆弾関連の本を、内容が解る人に読んでもらう。
※FLOWERSというグループを、
姫川友紀、相葉夕美、
矢口美羽と共に組んでいて、リーダーです。四人同じPプロデュースです。
【栗原ネネ】
【装備:なし】
【所持品:基本支給品一式×1、携帯電話、未確認支給品0~1】
【状態:健康】
【思考・行動】
基本方針:自分がすべきこと、出来ることの模索。
1:高森藍子と話してみる。
2:小日向美穂が心配。彼女の生き方をみたい
3:決断ができ次第
星輝子へ電話をかける。
最終更新:2013年04月27日 09:47