21世紀深夜アニメバトルロワイアル@ウィキ

スクラップド・プリンセス

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スクラップド・プリンセス ◆PuVQoZWfJc


(一体この子に何が、何があったっていうんだ・・・)
彼、マスクド竹之内(以下マスクド)は今一人の少女を背負い当初の目的地である診療所へと向かっていた。
その少女は先程別れた褐色の少女とは違い顔つきや表情から一見して普通に見えた。

だがその印象もすぐに覆されることとなった。マスクドが最初に見かけた時、少女は路上にひとり
呆然と佇んでいたのだ。手には銃器を、もう片方の手には斧とも槍ともつかないものを持っていたのだ。
そして泣きはらしたような、それでいて焦点の定まらない目は何も映さない。

マスクドは初め彼女がイタリア辺りの少女兵かと警戒したが、もし自衛のために人を撃ってしまい忘我状態
に陥っている一般人に過ぎなければ保護してやらねばとも思い、意を決して声をかけたのだ。しかし

「..............................」

少女は何も返さない、違和感に気づき危険を承知で顔の前で手を振り、頬も軽く張って見たが
やはり微動だにしない。たまに瞬きをするが体は立っているのが不思議なほどに脱力している。マスクドは
立ったまま気を失っているのかと思いとりあえず手にぶら下げている物を没収してしばらくの間
様子を見ていた。どうやら目を開けたまま失神しているというわけでもない。

「何か恐ろしいものでも見たのか、それとも薬か何かの禁断症状?いや、もっと違う気がするが」
見ていると少女、ヘンリエッタはふらふらと何処かへと向い歩き出す。

驚きながらもう一度声をかけるが反応はなくまるでゾンビのようによたよたと歩き続ける。
その先に何かあるのだろうかと目をやれば闇の中に取り立てて何かが見えるわけでもない、
黙って後を付いていくとヘンリエッタは力尽きるように倒れて小刻みに痙攣するとそれきり立ち上がることはなかった。

慌ててマスクドが駆け寄り顔をライトで照らして見れば、それはひどい形相だった。
この僅かな時間で目は充血しきっており鼻からは血を出して形を保っていないうわ言を呟き続けている。

「じ、.......ゼッっざ.......、ョおっェ......ァ......」
「おい大丈夫か、しっかりしろ!おい!」

ビクンっと体が跳ねて息を長く吐いた瞬間マスクドは彼女が死んだと思ったが、まだ彼女は生にしがみついていた。
文字通り息を絶え絶えにして。マスクドはヘンリエッタの目を閉じさせると発電所から持ってきたトイレットペーパーを
ちぎり鼻に詰めてやり、背中におぶう。荷物のせいもあるのだろうか少女の体は重かった。

(こんな小さな子が一体どうやったらここまでになっちまうっつーんだよ!)

時を遡ること覆面の男が通りかかる少し前のことである。二人の人間をゲームから排除し自分の兄妹(フラテッロ)で
ある男性、ジョゼッフォ・クローチェを探して彼女は「耳」を澄ましていた。常人よりも優れた聴覚で辺りの音から
危険と安全の双方の見当をつけようとしたのだ。自分以外に周囲に物音を立てる者はいなかったために普段よりも
音が拾いやすかったが災いした。

初めに聞こえたのは爆発音だった。それなりに大きな音だったこともあり方角も絞ることができた。
次いで聞こえたのは不可解な連続した風鳴りとしばらくした後に水音、そして男女のものと思わしき声、
内容まではわからなかったがどちらからも戦闘の気配は既になく、先に爆発音が止んだ方から周りその後
会話が聞こえた方を片付けようと思った時、それは聞こえてしまった。

耳に届いたと言うのが正しいほどに小さな響きだった。気のせいかと思い振り返るがその背中に祭りの
ような空気の震えを感じてヘンリエッタはまさかと思った。

確かめようと思い歩いていくと音の方もまた近づいて来る。危うく聞き逃すところだったと新しい声を追っていく。
どうやら誰かが歌っているようで、それは男性のものの様だがよく通る声だった。この危険地帯で高らかに
歌を歌うなど真っ当な神経の持ち主とは思えず、状況の確認へと走る。

そしてその歌が彼女に耳にはっきりと聞こえる所まで来た時、彼女は終わった。
イタリアにいた時は全く知らなかった衝撃、怒声と警告以外では滅多に聞かない男性の大声、それも
歌手のような歌声に未知の感動さえ覚えた。そこまでは良かったのだ。

歌に聞き入るうちに頭の中に急速に靄がかかり、自分の中の多くのものが色を失っていく。
意識が薄れ始めた矢先、頭に激痛が走り言い知れぬ不安に襲われたヘンリエッタは声の聞こえ方がおかしい
事、明滅する視界の中で走馬灯の如く思い出が蘇っては行き過ぎるのを戸惑う。

痛みに意識を一気に引き戻されて思考を巡らせるがしかし今にも霧散しそうだった。
歌は囮で無臭のガスでも撒かれていたのだろうか、自分が罠にはまったと錯覚して慌てて銃を構えて敵を探すが
誰もいない、今いる場所は遮蔽物も何も無くまた人が隠れられるような場所もなかった。

歌そのものが特殊な攻撃である可能性を思い当たり声の主へと駆け出そうとするも足が動かない。
「ジョゼットさん、私、ジョゼットさん、」
自分が身を捨ててでも守らなければならない、ここにはいない人物の名を呼び縋ろうとする。

だが突如頭に見たこともないヒゲを生やした背の高い男の顔が脳裏に浮かび遂にパニックに陥ってしまう。
(誰この人、こんな人知らない、ジョゼさんを思い出さなきゃジョゼさんジョゼさんジョゼさん.........」
見知らぬ男とジョゼの姿が入れ替わり立ち替わりしていく中で痛みは留まらず蹲ると額からはぼたぼたと
地面に汗が滴っていく。


ただの人間なら(この場合身体能力や特異な能力或いはは生態系ではなく被洗脳経験や薬物経験のない事を指す)
歌に魅せられて自我を一時的に失うだけに過ぎないのだが、義体と呼ばれる体を持つヘンリエッタはその体を得た
後に施される処置によって洗脳という現象に対して抗体ともいうべき経験ができたが今それが過剰に
反応してしまっているのだった。

基本的に耐性のない病原菌に罹患した後にその病が治まると体内にその病原菌への抗体ができるものである、
その為再度の発症や早期治療へと繋がっていくのだが、中には人にも因るが耐性ができない事で抗体の
超過剰反応であるアナフィラキシーといった症状を防ぐという側面を見せる者もいる。

しかし少女はどちらでもなかった。予め受けた体の変更と過去を抹消する為に施された大量の投薬措置とそれに伴なう
条件付けと呼ばれる洗脳の「痕」は彼女自身の体が覚えていたのだ。しかもその病は治ってなどおらずむしろ小康状態と
言ったほうが正しい。根治の難しい病を抱えながら生きるのと同じように、その状態を維持したまま今日まで来た
ツケが今苦痛を伴って露出し始めていた。

「ぅぅうぅぅぅぅっぐ!おぁっあい、痛い痛イいたいイタいいだイイイいいいぃいぃぃっっ!」
折れた骨を折れた方向にもう一度折ることができず、たん瘤が鏡餅のように重ならないのと同じで洗脳が
解体された訳でもないのに強制的に力づくで洗脳を上書いたりすることはできない。

『身に覚えのある』刺激に脳が今までの記憶を総動員して抗うが、思い出した出来事は使い捨てのように消えて行く。
海辺の思い出、戦いの記憶、訓練の日々、同僚の顔、街の喧騒、公社の人間、自分の名を呼ぶ数々の声。
巻き戻した分だけ消えていく記憶がある地点に差し掛かった時点で速度を落とし逆に痛みが加速する。

(ヘンリエッタ)
自分を呼ぶ声が聞こえて前を向く。ゆっくりとそれも薄れていく。

(おいで、オリオンが綺麗だ)
その虚像へ手を伸ばす。

(いこう、ヘンリエッタ)
耳に馴染んだ言葉に後を追おうと歩き出す。

そこでその男の姿は消えて今度こそ完全に立ち尽くすと堰をきったように残りの記憶も移っていき
痛みが感知できなっていくに連れてヘンリエッタと呼ぶ声がひどく他人の声みたいに遠のいていく。

(ヘンリエッタってだれだっけ?ああ、わたしだ、でもわたしってなんでヘンリエッタなんて呼ばれて......)
巻き戻しは止まること無く続く、今度は違う場面、静かな個室で女の人と男の人の声がとても小さな声で聞こえる。


(何にします?名前は)(.........ヘンリエッタ.........)
夢の名残か幻聴のように聞こえた、初めてヘンリエッタとして目覚めた時に誰かが話していたこと。
(そっか、だからヘンリエッタだったんだ、でもねジョゼさん、私、私の、なまえは)

白く暗転したままの視界が漸く色を黒に戻す。黒い部屋、暗い部屋、しないはずの鉄の臭いが何故か鼻につく。
いつの間にか個室は見慣れた屋内の景色へと変わっていた。ずっと長い間、一番長く一緒にいたのに忘れていた顔。

思い出したくなかった光景、赤くて暗い部屋と家族の亡骸、顔、顔、顔、そして。

「あ、あああ、ぁああああああっぁぁあああああぁああああああっ!」
ぶつり、とそこで目ま苦しく巻き戻されて来た記憶が途切れると同時に意識も切断される。
ヘンリエッタは絶叫を挙げるとそのまま動かなくなる。気を失ったのは痛みに耐えられなくなったのか
それとも防衛機構が働いたのか、後は倒れることもできないままに表情を凍りつかせてその場にあるだけだった。


そして今に戻る。そんな事があったとは知らないマスクドは少女を背負って思案に暮れていた。
(どうするか、医者がいるとも思えんが病院に行くべきだろうか)
体を病院へと向け歩き出すと脇腹に重い衝撃が伝わる。背負った少女が足で蹴ったようだが意識は戻っておらず、
怪訝に思い他の方角を目指せばやはり蹴られる。

右往左往した結果目的地へ向かうと蹴られずに済むという事が分かったマスクドは道の先に誰かがいるのでは
ないかという気になる。もしかしたら無意識の内に近しい者の元へ行こうとしているのかもしれない。

彼はこの先にいる人間に望みを託すような気持ちで足を早めた。


【一日目 E-6 路上 黎明】

【ヘンリエッタ@GUNSLINGER GIRL】
[状態]:疲労(大) 神経衰弱 鼻血 失神
[装備]:TDI クリス・スーパーV "ベクター"ドットサイト付き(15/30)@Angel Beats!、ミネベア M60 “ニューナンブ”(5/5)@現実
[道具]:基本支給品×3、ランダム支給品0~5、久瀬修一の薬、クリス・スーパーVの弾倉×4、ニューナンブの弾丸×10、野田のハルバード@Angel Beats!
[思考]
基本:ジョゼさんと合流する
1:意識不明
2:ジョゼさん......

【マスクド竹之内@魁!!クロマティ高校】
[状態]:健康 疲労(少)
[装備]:C4爆弾x7@現実(最初は15個あった) 一つ一つが携帯電話で起爆するタイプ、マスクドが
     持っているのはカナンに支給されたうちの予備の携帯電話。
[道具]:基本支給品×1、ランダム支給品0~2(未確認) トイレットペーパー
[思考]
基本:仲間と帰る為にますは首輪のタイムリミットを外す。
1:仲間を探しながら診療所へ向かう。
2:殺し合いが起きているかどうか確かめ、可能ならば説得を試みる。
3:この女の子を保護する
[備考]
ヘンリエッタが起きたときの反応は後の書き手さんにおまかせします。
C4の起爆方法等が明記されてなかったのでこの場を借りて修正させていただきます。


044:嘲笑 投下順に読む 046:誤解~だんぜつ~
039:メイドインヘブン 時系列順に読む 029:天使~Angel~
023:doll ヘンリエッタ 047:I Was Born to Love you
017:Behind The Mask マスクド竹之内

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