天使~Angel~ ◆x/rO98BbgY
Ein。
サイス=マスターが己の持つ記憶操作や洗脳術の全てを注ぎ込み作りあげた、初めての作品。
ドイツ語で1を意味する、無機質な名称。
名字も何もない、ただのアイン。
それが今、暗がりの中で周囲を警戒しながら佇む、黒髪の少女の名前だった。
サイス=マスターが己の持つ記憶操作や洗脳術の全てを注ぎ込み作りあげた、初めての作品。
ドイツ語で1を意味する、無機質な名称。
名字も何もない、ただのアイン。
それが今、暗がりの中で周囲を警戒しながら佇む、黒髪の少女の名前だった。
「……交戦の経緯は以上です」
『ふむ、やはりこの刺創はお前のナイフによるものか。交戦に及んで仕留め切れんとは、お前らしくもないな?』
「……申し訳ありません、マスター」
『いやいや、責めているのではないよ。それだけこの娘が優れていたのだろう』
『ふむ、やはりこの刺創はお前のナイフによるものか。交戦に及んで仕留め切れんとは、お前らしくもないな?』
「……申し訳ありません、マスター」
『いやいや、責めているのではないよ。それだけこの娘が優れていたのだろう』
ぼそぼそと、囁くように喋るアインの周囲に人影はない。
アインは、無線トランシーバーを介して交信を求めてきたサイス=マスターに先ほどの戦闘の経緯を報告しているのだ。
アインは、無線トランシーバーを介して交信を求めてきたサイス=マスターに先ほどの戦闘の経緯を報告しているのだ。
『銃弾を弾く防壁に、突如手に現れる剣か。なるほど、御苦労だったなアイン。では、これで通信を終了する。行動を続行せよ』
「了解」
「了解」
ざぁ……と空電音を残して交信は終わる。
持ち物を交換した際、唯一サイス=マスターの手元に残した無線機付属のレシーバー。
そして骨伝導型のインカムを鞄の中に仕舞うと、アインは再び目的地に向かい歩きだす。
今の報告を聞いて、マスターが何をするつもりなのか。
それを考えるのは自分の役目ではないし、興味もなかった。
アインにとって重要なのは『サイス=マスターを生還させる』という自己に与えられた任務を、如何に成功させるかだ。
持ち物を交換した際、唯一サイス=マスターの手元に残した無線機付属のレシーバー。
そして骨伝導型のインカムを鞄の中に仕舞うと、アインは再び目的地に向かい歩きだす。
今の報告を聞いて、マスターが何をするつもりなのか。
それを考えるのは自分の役目ではないし、興味もなかった。
アインにとって重要なのは『サイス=マスターを生還させる』という自己に与えられた任務を、如何に成功させるかだ。
名簿に記された人間の名は、全部で八十人。
その中には、自分とほぼ同等の戦闘力を備えるツヴァイもいる。
大沢マリアのような無力に近い人間もいるのだろうが、その友人であるカナンという娘は相当の腕利きらしい。
そして、銃弾をも遮断する、あの蒼い髪の娘である。
その中には、自分とほぼ同等の戦闘力を備えるツヴァイもいる。
大沢マリアのような無力に近い人間もいるのだろうが、その友人であるカナンという娘は相当の腕利きらしい。
そして、銃弾をも遮断する、あの蒼い髪の娘である。
如何にかつてインフェルノ最強と呼ばれたアインの力を持ってしても、この状況でそれらの敵を正面から皆殺しにするというのは不可能に近いと判断する。
そして脱出への道筋を探る上でも、他者の持つ情報や能力については知る必要がある。
幸い、主催者たちについて知っている参加者もいる事は判っている。
あの時、声を上げた黒髪の娘や、車椅子の少女と同じ角を持った少女。
まずは彼女たちとコンタクトを取る必要があるだろう。
そして脱出への道筋を探る上でも、他者の持つ情報や能力については知る必要がある。
幸い、主催者たちについて知っている参加者もいる事は判っている。
あの時、声を上げた黒髪の娘や、車椅子の少女と同じ角を持った少女。
まずは彼女たちとコンタクトを取る必要があるだろう。
以上の要因から、この場でアインが選んだ戦略とは、脱出を目指すグループにうまく取り入って、上手くいきそうであればそれに助力し、
見込みがなさそうであれば裏から暗殺して、優勝へと近付くというものだった。
見込みがなさそうであれば裏から暗殺して、優勝へと近付くというものだった。
その戦略の為には、危険人物かもしれないと疑いを持たれた大沢マリア……彼女をどうにかする必要があった。
もし、自分の言う通りに消防署へと行ってくれていれば、彼女にも少しは信用する気があるという事だろう。
上手く言い訳すれば、彼女の存在はグループへと潜り込むためのカモフラージュにする事が出来る。
もし、自分の言う通りに消防署へと行ってくれていれば、彼女にも少しは信用する気があるという事だろう。
上手く言い訳すれば、彼女の存在はグループへと潜り込むためのカモフラージュにする事が出来る。
しかし、消防署に彼女がいなければ……自分への、明確な疑いを持たれているという事だ。
他者へと情報が渡る前に、始末を付ける必要がある。
他者へと情報が渡る前に、始末を付ける必要がある。
故にアインは、周囲の様子に気を配りながら消防署へと急ぐ。
視界の先は、闇に覆い尽くされている。
任務に集中しなければと思いながらも、移動するアインの脳裏には、先ほども想起したツヴァイの姿があった。
視界の先は、闇に覆い尽くされている。
任務に集中しなければと思いながらも、移動するアインの脳裏には、先ほども想起したツヴァイの姿があった。
アインと同じ境遇に落とされながらも、アインのような人形には成りきらず、遂には自らの名と意思を取り戻した少年。
彼女が成れたかもしれない、もう一人の自分。
果たして、再び相見える事になるのだろうか。
彼が今、いかなるスタンスで動いているのかは窺い知れないが、サイス=マスターの生還という目的の元、協力しあうのは不可能だろう。
あるいは再び、彼に銃口を向ける時が来るのかも知れない。
その時――自分は、彼を討つ事が出来るのだろうか?
彼女が成れたかもしれない、もう一人の自分。
果たして、再び相見える事になるのだろうか。
彼が今、いかなるスタンスで動いているのかは窺い知れないが、サイス=マスターの生還という目的の元、協力しあうのは不可能だろう。
あるいは再び、彼に銃口を向ける時が来るのかも知れない。
その時――自分は、彼を討つ事が出来るのだろうか?
もちろん、出来なければ任務を全うする事は叶わない。
彼はアインたちの事を知り尽くしている。
サイス=マスターの存在を知れば、必ず抹殺へと動くだろう。
だから自分が任務を優先する限り、ツヴァイ――吾妻玲二との激突は避けられないのだ。
彼はアインたちの事を知り尽くしている。
サイス=マスターの存在を知れば、必ず抹殺へと動くだろう。
だから自分が任務を優先する限り、ツヴァイ――吾妻玲二との激突は避けられないのだ。
「エ、レン……」
少女の乾いた唇が震えるように動き、彼が名付けてくれた名前を紡ぎ出す。
それは、殺し屋としてのアインではなく、ただの少女としての自分の名前。
この世で彼だけに呼んで貰える、希望の名だった。
それは、殺し屋としてのアインではなく、ただの少女としての自分の名前。
この世で彼だけに呼んで貰える、希望の名だった。
氷のように凍てついた心が、その名を口にしただけでひび割れる。
完璧な暗殺者『ファントム』ではいられなくなる。
完璧な暗殺者『ファントム』ではいられなくなる。
だから少女は――その名前をそっと包み込むように、心の奥に仕舞い込む。
今は、アインでいなければならないから。
再びその名を呼ばれる時まで、アインは自らその記憶を封印した。
今は、アインでいなければならないから。
再びその名を呼ばれる時まで、アインは自らその記憶を封印した。
そうしてアインは、目的地へと辿り着いた。
今はまだ、戦闘に及ぶ人間は周囲にはいないのか消防署の辺りは、静寂に支配されている。
今はまだ、戦闘に及ぶ人間は周囲にはいないのか消防署の辺りは、静寂に支配されている。
その消防署の入口の手前に――アインに手を振る大沢マリアの姿があった。
偽りの亡霊を信じようというのか、再会を喜ぶその表情は明るい。
偽りの亡霊を信じようというのか、再会を喜ぶその表情は明るい。
「……」
その顔を見て、アインは自分でも判らない感慨を胸に抱く。
それは人を疑う事も知らずに生きてきただろう、日本人の少女への呆れか。それとも――。
それは人を疑う事も知らずに生きてきただろう、日本人の少女への呆れか。それとも――。
【一日目 F-3 消防署 黎明】
【大沢マリア@CANAAN】
[状態]:疲労(小)
[装備]:デジタルカメラ@現実
[道具]:基本支給品×2、確認済み支給品0~3
[思考]
基本:カナンを探す。自分の出来る事を見つける。
1:青い髪の少女(立華かなで)を警戒。
2:アインに対する疑念。
※デジタルカメラで立華かなでとアインの戦闘を撮影しました。
[状態]:疲労(小)
[装備]:デジタルカメラ@現実
[道具]:基本支給品×2、確認済み支給品0~3
[思考]
基本:カナンを探す。自分の出来る事を見つける。
1:青い髪の少女(立華かなで)を警戒。
2:アインに対する疑念。
※デジタルカメラで立華かなでとアインの戦闘を撮影しました。
【アイン@Phantom ~Requiem for the Phantom~】
[状態]:健康
[装備]:ベレッタM92FS、飛び出しナイフ@現実、核鉄「バルキリースカート・アナザータイプ」@武装錬金
[道具]:基本支給品、手榴弾セットx3、ハンディトランシーバー@現実
[思考]
基本:どのような形であれ、サイスマスターを勝利させる。
1:マリアを上手く騙す。
2:利用できる者は利用し、このゲームを有利に進める。
3:使えない者、マスターに害ある者はリスクに応じて速やかに排除する。
4:マスターの優勝または脱出に繋がる情報を得る。
※サイスマスターとは今後の方針などを事前に決めました。
※第二部からの参戦。
[状態]:健康
[装備]:ベレッタM92FS、飛び出しナイフ@現実、核鉄「バルキリースカート・アナザータイプ」@武装錬金
[道具]:基本支給品、手榴弾セットx3、ハンディトランシーバー@現実
[思考]
基本:どのような形であれ、サイスマスターを勝利させる。
1:マリアを上手く騙す。
2:利用できる者は利用し、このゲームを有利に進める。
3:使えない者、マスターに害ある者はリスクに応じて速やかに排除する。
4:マスターの優勝または脱出に繋がる情報を得る。
※サイスマスターとは今後の方針などを事前に決めました。
※第二部からの参戦。
サイス=マスターはアインとの通信を終わらせると、無線機の筐体を鞄の中に仕舞い込んだ。
やはり特定の周波数にしか繋がらないようで、現状ではアインのレシーバーとしか通信出来ないだろう。
そして、支給品であるのだから、当然盗聴もされていると考えるべきだ。
いくつかの符牒は取り決めてあるが、うかつに脱出についての話も出来まい。
――が、やはり情報とは力である。
アインとのやり取りによって、サイス=マスターはさっそく役立つ情報を得る事が出来た。
やはり特定の周波数にしか繋がらないようで、現状ではアインのレシーバーとしか通信出来ないだろう。
そして、支給品であるのだから、当然盗聴もされていると考えるべきだ。
いくつかの符牒は取り決めてあるが、うかつに脱出についての話も出来まい。
――が、やはり情報とは力である。
アインとのやり取りによって、サイス=マスターはさっそく役立つ情報を得る事が出来た。
薄汚れた路地裏の道路に、蒼いロングヘアを広げて横たわる少女。
その力の一端を、アインとの通信を通してサイス=マスターは知ったのだ。
その力の一端を、アインとの通信を通してサイス=マスターは知ったのだ。
「ふふ……私は、運がいい」
簡単に止血を済ませた小柄な少女の肉体を担ぎ上げるようにして持ち上げると、白い男はいずこかへと歩きだす。
悦楽の笑みに、陶然と口元を歪ませながら。
悦楽の笑みに、陶然と口元を歪ませながら。
静謐な住宅街に立ち並ぶ、老朽化した団地。
奇しくも少女がスタート地点として降り立った建物の一室に、路地裏から移動した二人は潜んでいた。
奇しくも少女がスタート地点として降り立った建物の一室に、路地裏から移動した二人は潜んでいた。
カーテンを開け放たれた、大型の窓から射し込む月の光だけが、部屋を照らしている。
その僅かな光を受けて、ベッドに横たわる少女の肌が、白く、白く、雪のようにまばゆく映える。
少女は、首に嵌められた銀色の首輪以外、何も身に纏っていなかった。
まるで死人のように血の気を失った少女は、ぴくりとも動かない。
だが、そのなだらかな腹部に穿たれた傷跡は、既に見事な縫合で治療されており、よく見れば胸が呼吸に上下している事に気付くだろう。
その僅かな光を受けて、ベッドに横たわる少女の肌が、白く、白く、雪のようにまばゆく映える。
少女は、首に嵌められた銀色の首輪以外、何も身に纏っていなかった。
まるで死人のように血の気を失った少女は、ぴくりとも動かない。
だが、そのなだらかな腹部に穿たれた傷跡は、既に見事な縫合で治療されており、よく見れば胸が呼吸に上下している事に気付くだろう。
それは、ベッドを照らす窓とは逆方向。闇の中にひっそりと佇む、白いスーツを着た男の手によるものだった。
男は、この部屋にあった絹糸と針、そして少女の所持品の中にあった薬品を用いて、この処置を済ませたのである。
血を失い、麻酔を施された身体は、もうしばらくは目覚めまい。
それを熟知するサイス=マスターは、今の内にもう一つの『処置』を済ませる事にした。
男は、この部屋にあった絹糸と針、そして少女の所持品の中にあった薬品を用いて、この処置を済ませたのである。
血を失い、麻酔を施された身体は、もうしばらくは目覚めまい。
それを熟知するサイス=マスターは、今の内にもう一つの『処置』を済ませる事にした。
少女のほっそりとした腕に、蛇が絡み付くようにサイス=マスターの五指が触れる。
這うような指遣いで筋肉を揉みほぐされた二の腕は、傷を受けて発熱しているのか、僅かに汗ばんでいた。
この細腕で、あのアインを力づくで押し倒したとは俄かには信じがたいが、男は既にそうした理外の理をも受け入れている。
ならば少女の体に潜む秘密を、直接身体に問い質さんと――サイス=マスターは熱に汗ばむ肉の上に指を滑らせる。
這うような指遣いで筋肉を揉みほぐされた二の腕は、傷を受けて発熱しているのか、僅かに汗ばんでいた。
この細腕で、あのアインを力づくで押し倒したとは俄かには信じがたいが、男は既にそうした理外の理をも受け入れている。
ならば少女の体に潜む秘密を、直接身体に問い質さんと――サイス=マスターは熱に汗ばむ肉の上に指を滑らせる。
腕、足、太腿、腰回り、腹部、胸――しかし、どこをとってもやや発達の遅れた通常の少女であり、男の知識からでは
超常の力を発揮したという、少女の秘密の一端すら解明出来ない。
超常の力を発揮したという、少女の秘密の一端すら解明出来ない。
「ふむ、肉体による能力ではない、という事くらいしか判らんか……仕方があるまい。……ん? これは……」
うっすらと膨らむ小振りな乳房を、押し潰すようにして平坦化する。
目立たないように乳房の盛り上がりの影に隠された、僅かな手術痕。それにサイス=マスターは気付いたのである。
眼鏡の奥の眉を歪ませる。
これから行おうとしていた彼の実験。その素体が、心臓のように致命的な箇所に欠陥を抱えていては困るのだ。
心臓に手を当てて、鼓動を確かめる。
規則正しいビートを刻む心臓に、不整脈はない。
目立たないように乳房の盛り上がりの影に隠された、僅かな手術痕。それにサイス=マスターは気付いたのである。
眼鏡の奥の眉を歪ませる。
これから行おうとしていた彼の実験。その素体が、心臓のように致命的な箇所に欠陥を抱えていては困るのだ。
心臓に手を当てて、鼓動を確かめる。
規則正しいビートを刻む心臓に、不整脈はない。
「治療が済んでいるのであれば、とりあえず問題はない……が」
まさかここで胸を切開して、心臓の状態を確かめるわけにもいかない。
少々不満はあったが、サイス=マスターはそれを呑みこんで次の手順へと進む。
何しろ、時間はあまりない。
習作であるアイン、そしてツヴァイを経て匠の域にまで達した彼の手腕を持ってしても、今からやろうとしている行為は難題であった。
少々不満はあったが、サイス=マスターはそれを呑みこんで次の手順へと進む。
何しろ、時間はあまりない。
習作であるアイン、そしてツヴァイを経て匠の域にまで達した彼の手腕を持ってしても、今からやろうとしている行為は難題であった。
男は少女の持っていた薬品を用いて、この少女の記憶を消去し、アインやツヴァイのような兵士に仕立てるつもりなのだ。
それは男の三体目の実験作。
ファントム ドライとでもいうべきであろうか。
それは男の三体目の実験作。
ファントム ドライとでもいうべきであろうか。
否。
これからサイス=マスターが作ろうとしている兵士は、騒々しい都市に亡霊のように現れ、音もなく暗殺する『ファントム』ではない。
これより生まれるのは、この戦場に存在するいかなる超常の力を持つ者が相手であろうと、無慈悲な力を振るって天界へと誘う告死天使。
ならば、名付けるに相応しいコードネームは『エンジェル』であろう。
これからサイス=マスターが作ろうとしている兵士は、騒々しい都市に亡霊のように現れ、音もなく暗殺する『ファントム』ではない。
これより生まれるのは、この戦場に存在するいかなる超常の力を持つ者が相手であろうと、無慈悲な力を振るって天界へと誘う告死天使。
ならば、名付けるに相応しいコードネームは『エンジェル』であろう。
優れた兵士を作るのに必要な、『素材』と『戦場』は既に確保している。
故に問われるのは、この劣悪な環境下でアインやツヴァイと同等の処置を施せるか否か、サイス=マスターの手腕のみである。
故に問われるのは、この劣悪な環境下でアインやツヴァイと同等の処置を施せるか否か、サイス=マスターの手腕のみである。
果たして、出来るのか?
出来る、出来るとも。
その難題を前に――歪んだ笑みを持って、サイス=マスターは応える。
これだけの幸運の大盤振る舞いをされて、応えないわけにはいかない。
出来る、出来るとも。
その難題を前に――歪んだ笑みを持って、サイス=マスターは応える。
これだけの幸運の大盤振る舞いをされて、応えないわけにはいかない。
彼が手に入れた薬は、いつも使っている薬よりだいぶ強力な物であったが、脳への影響自体には変わりはない。
必要のない記憶を奪い、強い刷り込みを可能とする薬品群。
こんなものをそのまま用いては、凄まじい副作用と依存症が残るだろうが、洗脳自体は薬品に頼るつもりはないサイス=マスターは
これをそのまま使うつもりはない。
記憶さえ薬で奪えれば、あとはサイス=マスターが独自に磨いた洗脳術を用いて兵士を育成出来るのだ。
必要のない記憶を奪い、強い刷り込みを可能とする薬品群。
こんなものをそのまま用いては、凄まじい副作用と依存症が残るだろうが、洗脳自体は薬品に頼るつもりはないサイス=マスターは
これをそのまま使うつもりはない。
記憶さえ薬で奪えれば、あとはサイス=マスターが独自に磨いた洗脳術を用いて兵士を育成出来るのだ。
栓を折ったアンプルから、中身を注射器のシリンダーに注入すると、針の先から薬液を噴き出す。
意識もなく眠り続ける少女を前に、男は――。
意識もなく眠り続ける少女を前に、男は――。
見覚えのない部屋の模様が、開いたばかりの目に映る。
窓から飛び込む強い朝の光に、少女はまどろんだ意識を覚醒させた。
妙に気だるい体をなんとか起こすと、裸身に掛けられていた薄いシーツがずり落ちる。
窓から飛び込む強い朝の光に、少女はまどろんだ意識を覚醒させた。
妙に気だるい体をなんとか起こすと、裸身に掛けられていた薄いシーツがずり落ちる。
「え……なんで……?」
なぜ裸?
ぼんやりとシーツを胸元に引き寄せながら、まるで記憶にない昨夜の事を思い出そうとして――
表情こそ変わらなかったが、少女は愕然とした。
ぼんやりとシーツを胸元に引き寄せながら、まるで記憶にない昨夜の事を思い出そうとして――
表情こそ変わらなかったが、少女は愕然とした。
何も思い出せない。
ここがどこなのかも。
昨日、何があったのかも。
そして、自分の名前すらも。
ここがどこなのかも。
昨日、何があったのかも。
そして、自分の名前すらも。
何もかもを忘れたわけではない。
習い覚えた学業やピアノの弾き方、自分に付属するエンジェルプレイヤーの力。
そうした知識は、はっきりと思いだせる。
習い覚えた学業やピアノの弾き方、自分に付属するエンジェルプレイヤーの力。
そうした知識は、はっきりと思いだせる。
だが、両親の顔や、知り合いの顔。
自分がどう生きてきて、どこで何をしてきたのか。
そうした人生にまつわる記憶が、根こそぎ失われているのだ。
自分がどう生きてきて、どこで何をしてきたのか。
そうした人生にまつわる記憶が、根こそぎ失われているのだ。
「私――は……」
幻のような記憶の切れはしを、なんとか掴み取ろうとショートヘアの髪の毛をくしゃりと握りしめる。
どことなく違和感を感じたが、やはり何も思い出せない。
自分が自分であるという足場が崩落する。
不安と恐れに、心臓が高鳴る。
少女は唯一確かな命の証に縋るように、体を丸めて胸の鼓動を感じとっていた。
どことなく違和感を感じたが、やはり何も思い出せない。
自分が自分であるという足場が崩落する。
不安と恐れに、心臓が高鳴る。
少女は唯一確かな命の証に縋るように、体を丸めて胸の鼓動を感じとっていた。
「おや、目が覚めたかね」
その時だった。
ドアを開けて、背の高い男が部屋の中に入ってくる。
まるで医者のような印象を受ける、白一色の衣装が目を引いた。
手には珈琲の豊かな香気を立ち昇らせるカップを載せたトレイを持っている。
ドアを開けて、背の高い男が部屋の中に入ってくる。
まるで医者のような印象を受ける、白一色の衣装が目を引いた。
手には珈琲の豊かな香気を立ち昇らせるカップを載せたトレイを持っている。
「貴方は……」
「私の名はサイス=マスター。とりあえず、服を着なさいエンジェル」
「私の名はサイス=マスター。とりあえず、服を着なさいエンジェル」
サイス=マスターと名乗った男は、トレイをテーブルの上に置くと再び背を向けてドアを開く。
言われて目を向けてみると、ベッドの脇には動きやすそうなノースリーブのチュニックと、五分丈ほどのカーゴパンツがあった。
言われて目を向けてみると、ベッドの脇には動きやすそうなノースリーブのチュニックと、五分丈ほどのカーゴパンツがあった。
「エンジェル?」
「それが、君の名だ」
「それが、君の名だ」
少女が今一番知りたかった事を言い残すと、バタンとドアが閉じる。
今すぐ男の背中を追いたい衝動を堪えて、エンジェルという新たな名を付けられた少女は、言われた通りにのそのそと服を着た。
今すぐ男の背中を追いたい衝動を堪えて、エンジェルという新たな名を付けられた少女は、言われた通りにのそのそと服を着た。
【一日目 H-2 団地 早朝(放送間際)】
【サイスマスター@Phantom ~Requiem for the Phantom~】
[状態]:健康
[装備]:白い普段着
[道具]:基本支給品×2、無線機、オートマグ@現実、義体用の薬品セット@GUNSLINGER GIRL、ランダム支給品0~1
[思考]
基本:どのような形であれ、このゲームに勝利する。
1:エンジェルの教育
2:アインを利用する。策を弄する。
3:適切な行動の為の情報を集める。
※アインとは今後の方針、緊急の連絡方法等を事前に決めました。
[状態]:健康
[装備]:白い普段着
[道具]:基本支給品×2、無線機、オートマグ@現実、義体用の薬品セット@GUNSLINGER GIRL、ランダム支給品0~1
[思考]
基本:どのような形であれ、このゲームに勝利する。
1:エンジェルの教育
2:アインを利用する。策を弄する。
3:適切な行動の為の情報を集める。
※アインとは今後の方針、緊急の連絡方法等を事前に決めました。
【立華かなで@Angel Beats!】
[状態]:疲労(小)、脇腹に刺し傷(縫合済み)、若干貧血、記憶喪失
[装備]:エンジェルプレイヤー
[道具]:
[思考]
基本:
1:記憶が――ない?
2:サイス=マスターに話を聞く
[状態]:疲労(小)、脇腹に刺し傷(縫合済み)、若干貧血、記憶喪失
[装備]:エンジェルプレイヤー
[道具]:
[思考]
基本:
1:記憶が――ない?
2:サイス=マスターに話を聞く
※記憶を失いました。
※髪の毛をショートにカットされました。
※髪の毛をショートにカットされました。
028:フォークト=カンプフ検査法 | 投下順に読む | 030:girl meets boy:again |
045:スクラップド・プリンセス | 時系列順に読む | 034:黒豹少女-閃光と共に- |
014:Phantom Beats... | 大沢マリア | 049:座敷童子の親心 |
アイン | ||
サイスマスター | 000:[[]] | |
立華かなで |