百鬼夜行に入って精神も落ち着いたしアタイはあの日からのことをまとめようと思う。もう絶対繰り返してやるもんか。
◯◯月◯◯日
なにも変わらない平凡な日。農作業を手伝って、妹や弟たちに料理してやってそれから、話を聞かせて。何も変わらない日だった。何も変わらない、それが続いていたらと今でも思う。
仮に百鬼夜行メンバーに会わなくなったとしても………
◯◯月◯◯日
犰狳に巫女に選ばれた。そして、村へ帰った時私の姿はウサギ耳とヘビの尾と鷹の目の異型へ変わっていて、恐れられた。その日は今考えるといじめはそこまでじゃなかった。話はできたし。
今となっては思う、アタイは犰狳の神降ろしを断ればよかったんじゃないかって。それと同時に、断らなかったから恐怖して受け入れてしまったから、今があるとは思う。もし、受け入れていなかったら平凡な日々だったのだろうか?兄弟達と共に暮らして、共に育って石を投げられることもなくて。
◯◯月◯◯日
村のおばばがアタイのことを災厄を呼ぶ化け物だ、追い出せと宣言したらしい。その日からか、石を投げられたのは、あからさまに避けられたり睨みつけられたのは。信じられなかった。アタイは何も悪いことはしていないのにって。アタイが何をした?って。アタイがアタイが悪いことした?って厄災ってなんだよってな。
あとは知ったこととしては、殺すのはそれでも村人は集著していたこと。それと………昔似た例があったのだ。
◯◯月◯◯日
村の資料を探しに出かけた。館長には、睨みつけられた。速く出ていけ憎しみの目だった。
そして見つけた伝承、犰狳が村で恐れられる様になった原因。それは、昔、別の犰狳の巫女が、村を襲ったからだ。それも村の娘だった。もう一度再来するのを恐れている。それになる前に追い払いたい。そういう願いだった。巫女は神に性格が似る。
今となっては、せめて伝承を村の歴史を知った時に、抑えられているうちに村を出ていればと思う。そうだったら、アタシはともかく兄弟達は無事だったんだから。
◯◯月◯◯日
龍が現れた。この村には殆ど来なかったのにだ。厄災の第一弾だと村の人はアタイを責める。何もしていないのに、むしろ村のために戦ったのに。
その時から睨む程度だった人でさえ投げるようになった。厄災が本当であると信じられてしまったから。
それと今となっては犠牲を出してしまったのが拍車をかけたのだとわかる。あの龍はD相当だ。相性が良くなければ死んでいた。そして村人に犠牲も出た。ゆえに本当だと信じたんだ
◯◯月◯◯日
異型を受けて入れてくれた友達がいた。けれどこの日この子もこの日で村八分に参加した。声をかけても無視し、声をかけてくることもなくなった。
あとから知ったのは、親から関わるな災厄を呼ぶ化け物だから、この前のドラゴンみたいなやつをな。あいつに関わればお前が殺されるから。そう言われていたということ。本人は従うしかなかったということ。アタイと仲の良かったという理由から真っ先に売りに出されたということ………
◯◯月◯◯日
今日はご飯が少なかった。いや、厳密には今日に限らなくてこの日以降だ。家族は味方、兄弟達は味方だと思っていたから次の日も次の日も、自分のだけ少ないご飯を見てショックを受けたのを覚えている。それでも、兄弟達が心配で育てられてきた村を見捨てられなくて残ることにしたことも。兄弟に、お姉さんはといつものようにいっても………
今なら、村長やら元巫女の予言おばばがそれをしたのはわかる。この前のドラゴンのこともあったし、もし、もしも今まで通りのを続けていたのならば………考えたくはないけどきっとそういうことだ。
◯◯月◯◯日
ボタンを直したり、ぬいぐるみを治してお礼を言われても、兄弟達は心がない感じの礼になっていた。それどころか聴いてしまった、兄弟達も同年代にいじられている。
心から何かが崩れ落ちる音がした。改めて考えた今では、この時点で手遅れだったんだとわかる。
◯◯月◯◯日
こうなってから何日もたった。怪我も自分で治せるようになった。痣だらけの体を見てもいつもだとその頃には思っていたと思う。石投げもご飯が少ないのも、当たり前の一つになっていた。そして自分をアタイは、化け物だと自覚した。
◯◯月◯◯日
そろそろ誕生日だ。10になる。みんなその時くらいは………そう願っていた。純粋に無邪気に。馬鹿だよね。
◯◯月◯◯日
この日は誕生日兼、アタイが大事件を起こした日だ。もう二度と起こしてなるもんかとなるくらいには。馬鹿だったと後悔している事件を起こした日。
誕生日になって喜んだアタイはその日の料理を待ちわびていた。けれど………量の少ない当たり前へと変わったものでケーキも菓子もプレゼントもなく。村人もいつもどおりに石を投げつける。その時家から飛び出した。家出だ。そして、権能を使い復讐した。何もしていないアタイが、虐げられた復讐を。大きな蝗害を起こした。
奇しくもそれは、村に伝わる伝承と同じことだった。気づかないうちに溜まった思いは、アタイを予言どおりの厄災を呼ぶ娘に仕立て上げた。全くか同じ蝗害がおきた。
家出だけで済ませていたら………今となってはそう思う。守りたかった兄弟達も殆ど死んだか、売られた。家を継ぐ兄弟と、蝗害を止めるべく巫女と化した妹は別だがそれ以外は………それと、村の親友だった子も売られた。本当にアタイは、お姉さん失格の馬鹿だと思う。お姉さんなのに、兄弟を守れなかったんだから。
◯◯月◯◯日
家出してから数日。犰狳は生き物系の妖怪だ。野生の勘が多少はあるのか、食べ物には巡り会えた。むしろ村にいたときより食べれた。龍を倒して闇市に流してさらに食べるなんてこともした。その時は幸せだった。村で結果的に何が起きたのか、知ることもなかったから。
今となっては思う、何も知らなければ蝗害の恐ろしさを知らなければ悪戯して、兄弟達が無事アタイがいなくてもやっていてたと信じていたのだろうか?と。親友だった子が死ぬこともなかったのだろうと。
◯◯月◯日
スラムに住むことにした。時折龍を倒して金を稼ぎつつたらふく食べて、成長していった。細かった身体もスラムに住んで安定してからだいぶ戻ったのを覚えてる。
◯◯月◯◯日
蝗害調査とだいし巫女が来ていること知った。それが故郷の村であり、まだ続いていることを知った。そして………兄弟と親友だった子のことも。アタイは、泣き続けた。なんでなんでだよって、自分を呪った。知った時すべてを後悔した。やってしまったこと。その日は、調査していた巫女と接触できなかった。
◯◯月◯◯日
調査してた巫女と接触しすべてを話した日。蝗害を起こした張本人だというに優しくしてくれた。あの日。後悔を話せた日。とてもいい日で、百鬼夜行と巡り会えた日だ。居場所もなくしたアタイを受け入れてくれた。アタイのような巫女も時折いるらしいともきいた。
今となっては思う。万が一にも事件を起こした上で会えなかったのならばずっと抱え込んだ上で、暴走していただろうと。あえて良かったと。
◯◯月◯◯日
蝗害を止めに行った。厳密にはアタイの権能を、離れていたから抑えることしかできなかったが、百鬼夜行の巫女がどうにかしていた。村のみんなに謝ろうとしたが石投げどころではなかったため、百鬼夜行の巫女とともに撤退した。
◯◯月◯◯日
この出来事で一旦日誌を締めようと思う。百鬼夜行に入った。日本に行って、他のメンバーに挨拶した。つい、最初お姉さんと自分のことをいってしまった。癖だ。でも笑えていて、ここに来れてよかったと改めて思った。
そして、兄弟みたいに、壊さないためにも、もう絶対あんなことは起こすもんかと心に決めた。