機械系人外×少女 1-273様
白いボロ布にくるまれて、少女は大きくため息をついた。
ここは岩山に出来た洞窟の中、いささか狭いとは言え外の雨を防げるなら充分なように思う。
しっとりと湿った布を渇いた口元に寄せて再度ため息をつく。
体の表面は酷く冷えてるのに芯が熱い、喉が痛い、関節がきしきしと痛い。
どう見ても立派な風邪だ。
少女は三度目のため息をついた。
ここは岩山に出来た洞窟の中、いささか狭いとは言え外の雨を防げるなら充分なように思う。
しっとりと湿った布を渇いた口元に寄せて再度ため息をつく。
体の表面は酷く冷えてるのに芯が熱い、喉が痛い、関節がきしきしと痛い。
どう見ても立派な風邪だ。
少女は三度目のため息をついた。
今この洞窟に身を潜めているのには訳がある、風邪なんか引いてる場合じゃないのだ。
少女はつい先日やっと帝国から逃げ出してきた、勿論何の術も持たない少女一人だけでそんな事は出来ない。
協力者がいる、それは帝国の追っ手に抗えるだけの…。
少女はつい先日やっと帝国から逃げ出してきた、勿論何の術も持たない少女一人だけでそんな事は出来ない。
協力者がいる、それは帝国の追っ手に抗えるだけの…。
ガシャ
「!」
音のした方向に少女は顔を向けた。
雨水を全身にかぶり、洞窟のわずかな光でさえ銀に輝く無機質な体躯。
それは帝国の暗殺部隊の精鋭兵士、先ほどまで少女を追っていた者だ。
雨水を全身にかぶり、洞窟のわずかな光でさえ銀に輝く無機質な体躯。
それは帝国の暗殺部隊の精鋭兵士、先ほどまで少女を追っていた者だ。
「おかえり、ジルヴェル」
しかし少女は心底ほっとした顔で兵士を迎えた。
兵士も少女の方向に顔を向けると足音も立てずに向かってくる。
雨水をポタポタと垂らしながら彼は布にくるまれた少女を見下ろした。
兵士も少女の方向に顔を向けると足音も立てずに向かってくる。
雨水をポタポタと垂らしながら彼は布にくるまれた少女を見下ろした。
「起キテイタノカ」
金属の中で反響するような声。
少女はその声に引かれるようにだるい体を動かして彼に近づく。
少女はその声に引かれるようにだるい体を動かして彼に近づく。
「ひどい雨、だね。大丈夫だった?」
「問題ナイ」
「問題ナイ」
少女はポタポタと滴が落ちる彼の腕を見る。
熱のせいでぼやけている視界の中、さ迷った少女の手はジルヴェルの腕に触れた。
熱のせいでぼやけている視界の中、さ迷った少女の手はジルヴェルの腕に触れた。
「ひんやりして気持ちいい…」
手甲に頬を寄せ、雨水を下唇でわずかにすくうと頭が少しすっきりする気がした。
「…熱ガ上ガッテイルナ、オイ、服ガ濡レル」
ジルヴェルは自分の手で少女を傷つけないように半分自分にもたれ掛かっている体を慎重にどかせた。
熱に浮かされた少女はジルヴェルのひんやりとした温度と滴る求めて手を伸ばす。
しかし、手は空をかいてぱたりと落ちた。
その瞬間さっきよりも強い熱の波が体の内側から打ち寄せる。
熱に浮かされた少女はジルヴェルのひんやりとした温度と滴る求めて手を伸ばす。
しかし、手は空をかいてぱたりと落ちた。
その瞬間さっきよりも強い熱の波が体の内側から打ち寄せる。
「あ…ジル、ジルヴェル…」
くたりと力なく洞窟の壁に体を預ける少女の口からうわごとのように名前を呼ばれる。
ジルヴェル、それは所詮兵士としての分類名でしかない。
けれども彼は戸惑った。
無機質な体に微かに残る、どこか薄らいだ部分で彼は確かに戸惑いを感じたのだ。
ジルヴェル、それは所詮兵士としての分類名でしかない。
けれども彼は戸惑った。
無機質な体に微かに残る、どこか薄らいだ部分で彼は確かに戸惑いを感じたのだ。
「ね、ちょっと…」
少女が手招きをする。
身をかがめて顔を近づけると、少女が胸に頬を寄せてきた。
ジルヴェルは自らの胸部にある傷へ視線を落とす。
それは数多くのジルヴェルと自分を分ける元になった傷だ。
身をかがめて顔を近づけると、少女が胸に頬を寄せてきた。
ジルヴェルは自らの胸部にある傷へ視線を落とす。
それは数多くのジルヴェルと自分を分ける元になった傷だ。
ジルヴェルは少女を帝国の攻撃から庇ったのだ。
この傷はその時に出来たもので、銀一色の彼の体でとても目立っている。
この傷はその時に出来たもので、銀一色の彼の体でとても目立っている。
「ジルヴェル…」
頬、鼻先、それから唇と移り変わり、胸部の傷を少女の熱い皮膚が雨水を求めてなぞる。
熱センサーが丁寧にもその温度を拾うが、ジルヴェルは再度少女を壁に押しのけた。
熱センサーが丁寧にもその温度を拾うが、ジルヴェルは再度少女を壁に押しのけた。
「…飲ミ水ヲ、探シテ来ヨウ」
「あ…」
「あ…」
少女が声を上げた時には、彼はもうすでに音もなく洞窟の外に出て行った所だった。
ジルヴェルは酷い雨に打たれながら胸部の傷を撫でた。
他のジルヴェルとは唯一違う、少女のために出来た傷。
…先ほど自分は確かに戸惑った、もしこの身に心と呼べる場所があるのならきっとこの傷なのだろう。
まだそこは少女の皮膚の温度がうっすらと残っていた。
他のジルヴェルとは唯一違う、少女のために出来た傷。
…先ほど自分は確かに戸惑った、もしこの身に心と呼べる場所があるのならきっとこの傷なのだろう。
まだそこは少女の皮膚の温度がうっすらと残っていた。