アットウィキロゴ

白梟の大脱走

「……以上、報告終わります」

通信越しにUHラボの襲撃任務の報告を終え、ナハトはふうっと息をついた。少し離れて立つクロウが、小さくつぶやく。

「……任務、完了」

その声音は、どこか安堵にも似たものをわずかながら含んでいた。

「9年越しか。随分と報告が遅れてしまったな」
「その原因については俺が追々調べておく。対処も必要ならやっておく。お前は単独行動を控えろ、そうでなくても最近生物兵器には風当たりが強いんだからな」
「そうなのか?」

ああ、と答えるクロウの脳裏に浮かぶのは、まさに犬猿の仲というべき「千年王国」主任の顔。
この間も諍いがあったばかりだ。

『いい加減にしろ、ジングウ。そのプランについては既に破棄されたものだろうが』
『破棄されたということは問題があったということ。その問題を解決するのは、私のような人材の役目かと思いますが』

そんないつものやり取りをきっかけに、またも大論戦勃発。最後には殴り合いに発展しそうになったが、マキナが「ジングウ様に何してるのーっ!!」と飛び込んできたために水入りとなった。と、だ。

「あら」
「む……」

すぐ近くの扉が開き、中から出てきたのは細いセピア色の目を持った女性。いくつかの資料を抱え、傍には3人の少年少女を引き連れている。クロウは知っている。彼女らの異常さと、その力を。

クルデーレか……それは?」
「相変わらず唐突ね。生物兵器の資料よ。結構前の廃棄プランだけどね」
「ジングウに続いてお前もか……」

やれやれと溜息をつくクロウに、クルデーレに随伴していたうちの一人が敵意むき出しの声で言い放つ。

「デレ姉さんに馴れ馴れしい口聞くんじゃねえよ、ぶっ殺すぞ」
「随分なことを言ってくれるな。イントルーダーだけが俺の力だと思うなよ」
「なんだと、この……!」
「そこまでよ、サディコ。やめておきなさい」

制止され、サディコと呼ばれた少女が不満げに目線を投げる。

「う、けど、姉さん……」
「わからなくもないけど、今は駄目よ。騒ぎを起こして動きづらくなったら、支障が出るわ」
「それに、この男はこう見えて何かと総帥の信任を受けていますからね。消すのは簡単ですが、リターンが見合いませんよ」
「むぅ……」

銀の長髪を妙な形にまとめた少年……ラティオーにもそう言われ、不承不承ながらサディコは矛先を引っ込めた。

「それで? そっちの人が噂の生物兵器さん? ……にしては随分人間らしいわね」

ナハトに一瞬好奇の目を向けたクルデーレだったが、彼女の挙動を見るや嫌悪感が露わになる。
だが、言われたナハトの方は意に介してもいない。

「私がどうだろうが、お前には無関係だ。重要なのは、総帥からの任務を実行できるかどうか、それだけだ」

何を、とサディコが突っかかるが、ラティオーが抑える。

「それはそうだけどね……まあいいわ、私はこれで。……3人とも、行くわよ」

やり取りの間口を開かなかったニエンテだけ、最後にこちらをちらりと見たが、後はこちらには見向きもせずに行ってしまった。

「……やれやれ。相も変わらず危険な連中だ」
「何者だ? 私の記憶には存在しない」
「……ジングウのことは話したな? 一応、奴の研究グループ『千年王国』に属している奴らだ。もっとも、獅子身中の虫だがな」
「裏切り者か。ならば、排除を提案する」
「それは駄目だ。素性や真意がどうあれ、奴らはグループ自体には協力的だ。……反目するのはともかく、もし反逆の動きがあれば俺が排除してくれる」

そうか、とだけ答え、ナハトは不意に沈黙する。

「? ……どうした」
「ミーネはどうした? 戻ってから姿を見ていないが」
「さあな……ルーツが一緒だ、後で呼び出せば……」

と、クロウが言った直後だ。噂の当人が、おっとり刀で姿を現した。

「……噂をすれば影か」
「どうした、随分と焦っているようだが」
「お、おう、クロウにナハトか……ってぇ!? 発見はさっきだろ!? いつの間にここに……じゃねぇよ、緊急事態だ!」
「何?」

ナハトの帰還よりもルーツを焦らせる緊急事態とは? それを聞いたとき、クロウは思わず頭痛が湧き上がるのを覚えた。

「ミーネがいなくなっちまった! ナハトが見つかったって話したら、突然飛び出しちまって……」
「……あの馬鹿が」

本気で頭痛がしてきた。「夜姉ちゃん迎えに行くー!!」と言って走り出すミーネの姿がありありと思い描けた。しかも彼女の能力はあらゆる障害、あらゆる地形を無視しての移動だ。しかもあの行動力と体力、下手をすれば海を越えてカルーアトラズに行きかねない。

「不法侵入なんぞした日には終わりだぞ……」
「そんなことを言っている場合ではない。クロウ、ルーツ、三手に分かれての捜索を提案する」
「了承。俺は向こうの区画を回る」
「了承だ。んじゃ俺はこっちな」
「では、私は千年王国の方を回ろう」



かくして、三手に分かれてミーネの捜索を始めた3人。

クロウはというと、

「何にも」「知らないし」「教える」「義理は」「ないねー♪」
(こいつは……)

「桐原、見なかったか?」
「こっちには来てないと思うんですがね……手伝いましょうか」
「無用だ。知らんならいい、自分の仕事をしていろ」

ミチルウツロ、知らんか?」
「いや……僕は見てませんが」
「俺も知らねえな。つーか、また消えちまったのかよあのお姫様は」
「また?」
「知らねえのか? あんたが外にいる間にも結構消えてたぜ」
「………」

「見なかったか、ゼア」
「見ていませんよ。それより、リイを知りませんか? 姿が見えないのですが」
「……奴なら入口のところだ。ぼーっと外を見ていたが」
「わかりました、すみません」


ルーツの方は、

「スキュアロウ、見てねえか?」
「知らねえよ。興味もねえ。つーか、なんだ。てめえがキッチリ紐持ってろってんだ」
「……返す言葉もねえよ」

「おや、私に何か用か、シュバルツ。私の知ることならば答えてやっても構わんが」
「…………いや、いい。邪魔をした、チネン

「っとー、ナナ? ちょうどいい……」
「? いや、私は見ていないが……」

「狂夜~」
「あ? ついさっきまでここにいたけどよ」
「何! ど、どこに行った!?」
「さあ……目ぇ覚ましたらもういなかったぜ」


そして千年王国に向かったナハトは、

「さあ? 知らないわね」
「さっきの今で、よくツラが出せたな」
「抑えなさい、今は駄目です」
「………」

「ジングウ、何か知らんか」
「……よりによって私に聞きに来るとは。ちなみに知りませんよ。ずっとモニターに向かっていたのでね。一応言っておきますがサヨリさんも知りませんよ? レリックについていたはずですから」
「は、はい、見てないです……」
「りーもしらなーい」
「……了解した」


「お前たちも知らないのか」
「創作に忙しかったものでね。アリアは知らないかい?」
「パラボッカが知らないのに、私が知っているはずもないだろう。ずっとここにいたのに」
「それもそうか。すまないね、何も知らなくて」


AS2……だったか。見ていないか?」
「知らないですね。僕は今戻ったばかりなので」

「……誰だ……コヨル? 記憶に存在しない」
「あんたこそ誰? 私知らないんだけど」

紅雷 令と鈴……見ていないか」
「や、知らない。鈴は?」
「見てない……というか見たことない」
「……そうか」

「……貴様は事実上の裏切り者にカテゴライズされている。行くぞ、白虎」
「どわああああ!? ちょっと待ったあああっ!!」



―――グループ内では見た者がいなかった。鈴子からは情報が得られなかったが、これは仕方がない。


「見たのは狂夜だけか……」
「壁の中を通ったんだな。さて、これだけ見回っていなかったということは……」
「外か」

ナハトの言葉に、二人とも大きく息をついた。外界はミーネの庭だ。どこにでも行ける。
つまりそれは、探しにくくなったということだ。

「……クロウ、行動方針の提示を要求する」
「探しに行くしかあるまい。潜入メンバーにも一応連絡しておくとしよう」
「大丈夫か……? ヴァイスだの正義の味方だの、ドラグリュオンだの、ワケのわかんねーのが一杯いるぜ、最近は」
「大方問題はあるまい。……待て、もしやチョーカーをつけたままか?」
「…………そのはずだ。やべぇ、アースセイバーに見つかったら終わりだ!!」

俄かに危機感が沸騰する3人。ミーネはあらゆる障害、地形を無視して移動できるが、戦闘力はないに等しい。一刻も早く見つけ出さなければ。

「おのれ……この間ミューデが勝手に抜け出したばかりだというのに」
「大所帯になるとどうしてもな……つーか、ホウオウグループって100人いないはずじゃなかったか?」
「ナイアナザーならではの展開という奴だ。以前総帥もそう言っていた。『鴉と鳳凰、それぞれの見るもの』参照だ。メタ発言はこれくらいにして行くぞ!!」
「おおう!」
「了解だ。……後で参照しておこう」



「うぇぇぇぇっ!?」

メールを受けたトキコは、思わずそんな大声を出してしまった。隣にいたスザクが「どうした?」と訊いてくるのに「う、ううん、なんでもないよ」と辛うじて返した。
メールの内容は、「ミネルヴァ失踪。エンブレム着用。至急、捜索頼む」とのものだった。差出人はクロウ。

(ふ、梟さん……フリーダム過ぎだよ……)

障害を苦にしない彼女を捕捉するのは困難を極める。とはいえ、放置しておいては余計な問題が発生しかねない。ましてや、アースセイバーにでも見つかったらコトだ。

「……鳥さん、ごめん。ちょっと用事」
「……わかった。気をつけろよ」

そのやり取りだけで、スザクは何があったのかを察してくれたらしい。軽くうなずいて、トキコは教室を飛び出した。

(梟さん、まさかウスワイヤなんかにいないよね……それくらいの分別あるよね? あるよね!? ね!?)


残念ながら、トキコの祈りは通じていなかった。

「逃がすか、この……おごぉっ!?」
「ざーんねんでしたー。へへっ♪」

ナハトを探して飛び出したミーネは、真っ先にウスワイヤに飛び込んでいた。もしかしたらここに捕まったのかもしれない、という早合点であり、実際それは入った時点で違うことがわかった。
しかし、

「あっ」
「!」

チサトと出くわしたのが運の尽き。瞬時にアースセイバー全員に情報が伝わり、今や追われていた。
正しくは、アースセイバーがミーネを追おうとして失敗しているのだが。

「しょ、聖さん、大丈夫ですか!?」
「蒼、後にしろ! 今は奴の捕捉を……」
「俺のことはいいんだよ、ユウト! だーくそ、火吹はどうした、火吹は!? 奴なら壁も関係ないだろう」
「聖さん、あいつはアースセイバーじゃないですよ」
「ええい、肝心な時に! これだから能力者は……あがっ!?」

悪態をつこうとして、寄りかかっていた壁に蹴飛ばされた。正確には、そこから突き出た足に。

「そこだーっ!! ジミー、逃がすな!」
「ちょ、今爆発起こしたらヤバいって!! ジングウの一件から修復完全に終わってないんだから!」

ジミーとアラタが揉めている間に、ミーネは姿を消していた。
が、

「あれー? 入口どっちだっけ」

―――迷っていた。なまじ障害物を気にしないでいいだけに、方向感覚は割と曖昧なのだ。
そんなだから、

「いた! 光一っ、こっちにいたぞー!!」
「そこか、逃がすな錬太郎!!」
「わわーっ、闇野 光一だ!! やばいっ!!」

彼の恐ろしさはミーネも聞いていた。最大出力で放つ彼の光線は、機械兵器ですら一撃で消し飛ばす。そんなものを食らったら一たまりもない。
近くの壁をすり抜け、逃げる。

「待て、この……駄目か。錬太郎、お前の能力で追えないか」
「無理! 四次元の入口は開けられるけど、開けた場所にしか戻れないから」

さらに、

「あっ、この子!」
「真衣、下がって」
「永、油断するなよ。動きを止めることが優先だ」

獏也の指示に従い、永が動く。彼女のことは少ししか知らないが、重力系の力を操ると聞いている。

「冗談じゃないよーっ!!」
「あっ、待て!!」

また、

ヨリミツアルニカ、何をやってんだよ!! あいつは向こうだ!」
「うわっ、見つかっちゃった!」
「ぬうっ、逃がさん!」

アースセイバーでも腕利きのサムライに見つかってしまった。一緒にいるアルニカは直接戦闘は不得手だと聞いていたが、そもそも戦闘ができない自分よりは強いはずだ。
ゆえに、ミーネの打つ手は一つ、

「わわわーっ!!」

逃走あるのみ、であった。

「待て……駄目か。壁抜けなど使われてはな……」
「というか、何で白昼堂々ウスワイヤにホウオウグループが……」


突然現れた侵入者を取り逃がしたものの、調査ではウスワイヤ内部には直接の被害は少なかった。
一通り回ってきたイタマとまゆがいう。

「保護区画は異常、ありません……シホさん、カケル君、カナタ君、その他全員無事、です……」
「でも、エマさんとシグマくんは見当たらなかったです~」
「その二人なら心配はいらん。侵入の少し前に、聖が別の場所に連れて行ったからな」
「聖さんが……?」

少し不安げな表情で、イタマが獏也を見る。蒼井 聖の能力者嫌いはウスワイヤでも知らないものがない。元々カルーアトラズの看守だったという経歴ゆえらしいが、

「あの人、『能力者の殺し方』とか書いた手帳持ってましたけど~……」
「……ウスワイヤの中で堂々と殺しをするほど短気ではない。相応の分別は持ち合わせている男だ」

と、噂をすれば影。その当人が歩いてきた。

「見てきたぞ。今戻した」
「そうか、ご苦労」
「……ったく、手間かけさせんじゃねえよ」

おや? とまゆが首をかしげる。いつもなら「これだから能力者は」だの「生かしとく意味があんのかよ」だの、暴言がつきものだからだ。

「聖さん、なんかエマさんには優しいですよね~?」
「……親だからな」

それだけ言うと、聖はまたさっさと自室へ歩いて行ってしまった。
通路で聞いていたヒロヤが、後ろにいた歩に話しかける。

「……ありゃどういうことだ」
「詳しいことはわかりません。ただ、聖さんは『親』に対して何やら思い入れのようなものがあるようです。だからではないかと」
「そういうもんかね……」



同刻、別区画。

クロイさん」
「? おや、啓介君。学校はどうしました?」
「……フケて来ました」
「学生は学業が本文ですよ。……それより、僕に用事ですか?」

ああ、とうなずく啓介。

「辰哉を宿舎へ移送すします。護送を手伝ってくれませんかね」
「辰哉? ……ああ、例の元ホウオウグループの、ですか。了解ですが……なぜ僕に?」
「侵入者の騒ぎのせいで人手が足りない。IUCチーム始め、大半は今学校。百物語組は春美の件とシン・シー、パニ・シーの件にかかりきり。アヤセさんは警察」

他のメンバーはというと、朱弘梨は異常体質「ウィルスブリーダー」の副作用でまたも体調を崩しており、「ご、ごめん、ちょっと無理……」とのこと。
尤惟はそもそも動かすことすら困難であるし(「エターナルリグレクト」のおかげで全く動かないのである)、シンジに至っては未だ訓練・教育中で動かせない。

「ヒロヤと歩、ヨリミツさんと霧谷二佐は各ブロックの点検中、聖さんはエマさんとシグマのガードに行ってるし、教官も隊長も忙しい。永は真衣を見てもらってるし、イタマとまゆは保護区画と宿舎の見回り。光一とかの主戦闘要員は外の警戒。となると、後方警戒していたクロイさんが真っ先に候補に挙がるわけで」
「……ふむ、わかりました。では、コノカさんや為人君にも声をかけましょうか」
「そのくらいですかね。あまり大人数で行ってもなんですから」


余談、別の場所にて。

「あら、トバネ君? さっきの騒ぎで姿を見なかったけど、どこにいたの」
「谷村さんか……適当にぶらついてたら終わっちまった。ったく、いつもいつも勝手に何とかなっちまうが……今度は関わりもしねえのに騒ぎが逃げちまった」
「君の眼鏡にかなう相手ではなかったと思うんすがね……戦闘能力、皆無みたいっすよ、その侵入者」
「そうなのか、シノさん? ちっ、つまんねぇ……」


ウスワイヤから逃げおおせたミーネだったが、いかな彼女といえどもあれだけ走ればさすがに息が切れる。

「はっ、はっ、はあ……もー、夜姉ちゃんホントに見つかったのー!?」

ぼやきながら速度を落とし、歩く。足取りが心なしかイラついており、17歳という年齢に見合わぬ低身長と物腰が相まって、まるで子供が拗ねているようだった。
と、だ。

「おーや? ホウオウグーループの人がー、こんなとこーろで何をしーているのかな?」
「ッ!?」

間の抜けたようなおかしな喋り方で、そんな声がかけられた。弾かれるように顔を上げたミーネの目に映ったのは、四角い眼鏡と不揃いな髪、その奥に無機質に瞳を光らせる男。

(こいつ……確か「ハーメルン」ってコードの……!)

触れたものに特殊能力を付加するという厄介極まりない異能の持ち主だ。もしや敵対する気か?

(わ、私じゃどうにもできない……)

ミーネの異能は移動を阻害するあらゆる要素を無視するものだが、そもそも「移動ができない」状態におかれれば無力化する。あくまで「移動している途中の障害」を無視するだけであり、移動自体が出来なければ無意味なのだ。つまり、ことによっては詰む。

冷や汗をかくミーネだったが、意に反してその男……赤銅 理人は、

「まー、どうでーもいいか。とりあーえず、これをーどうぞ」
「……?」

渡されたのは、一足のスニーカー。どういうこと、と問おうとして顔をあげると、

「え――――」

おかしな男は、あっという間に姿を消していた。

「な、何、今の人……」

しかし、混乱が収まる前に次がやってくる。そして、

「……お前か」
「へっ?」

後ろからかけられた声。それは、

「ありがとーっす、ゼンジさん」
「…………」

外での時間の、終わりを告げていた。




『この大馬鹿野郎――――ッ!!!』
「あぁうぅぅぅ~!!」

ゼンジの手を借りて自分を見つけ出したスパロウ。彼女によって支部へと強制送還されたミーネは、連絡を受けて待ち構えていたクロウとルーツから大目玉を喰らっていた。

「ミューデが勝手に飛び出した一件を忘れたのか!! 昨日の今日でどうしてそういう軽率な行動に出るんだ、お前は!!」
「しかもウスワイヤに飛び込んで追っかけ回されたぁ!? うかつにも程ってもんがあるだろうが、おい!!」
「ご、ごめんなさい……」
「「ごめんで済むかぁぁぁぁっ!!」」
「……終了を提案する。時間がもったいない」

ヒートアップする二人に水をかけたのは、佇んでいたナハト。抑揚のない声に、顔を見合わせる二人。

「……どうするよ、クロウ」
「仕方があるまい……ミーネ、次から外出時はナハトを同伴しろ。……頼めるか」
「それは命令か? ならば了解だ」
「……わかった。夜姉ちゃんと一緒なら、それでいい」

あえてナハトを宛がったのは、他のメンバーでは絶対に脱走することがわかりきっていたからだ。

「……ならば、この件は終わりだ。いいか、俺たちは組織だ。誰かが勝手な行動をすれば、全員に迷惑がかかる。その事を肝に銘じて置け」

言いつつ、片手で携帯を操作するクロウ。

「? 何してんだ?」
「トキコに連絡だ。見つかったことを知らせていなかったのでな」

そんな二人を横目に、ナハトがいう。

「……ミーネ、自室への帰還を提案する」
「う、うん。……あの、さ」
「なんだ」

しばらく躊躇うように視線を泳がせた後、ミーネは本当に久しぶりに、


「……お帰り、夜姉ちゃん」


心から、笑った。


白梟の大脱走

(色々騒ぎは起きたけど)
(これでようやく、4人揃った)



「……ルーツ、ミーネの持ってきたこの靴はどうする」
「ハーメルンがくれたってことは、間違いなく能力が付加されてるな……解析に回しとくわ」

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2012年02月01日 12:05