アドラー2 - nanasihennkagura @ ウィキ

アルチョム一行がとある街に滞在しているある日。
アドラーは、アルチョムを数日間に渡って尾行していた不審人物を路地裏にて追い詰めていた。
アドラー「つけていたのは知っています。あなたの目的と雇い主は？」
アドラーはその無骨な鉄の鈍器でその男を地に平伏すことに成功した。
その武器は傭兵時代に使用していたものだ。人質を取るために特化したメイスに僅かに付着した血液と肉片。
しかしその男はニヤリと不敵な笑みを浮かべた。
男「へっ、チャ・ザ神官かよ。お前には俺を殺したり拷問したりできないだろ？喋るもんかよ」
アドラーの表情はピクリとも動かない。
アドラー「そうですか」
こういうときアドラーはどうすればいいかわかっていた。人の意思とは痛みの前には簡単に崩れ去るものなのだ。
なので、手始めに小指を潰した。すると男は絶叫をあげて暫く悶え苦しんだ後に命乞いをしながら全てを吐いた。
アドラー「なるほど、そういうことですか」
依頼者はやはりあの商人だった。そして目的はアルチョムの持つ情報らしい。
アドラー「次、私の前に現れたら確実に殺します。では」
男「ひっ、ひいいっ」
解放された男は一目散に逃げ出した。するとその瞬間、逃げ出した男の首にどこからか飛来したナイフが突き刺さった。
男「がっ……あっ……」
男は引きつった顔でアドラーを見ながら地面に倒れた。
アドラー「……何故殺したのです」
路地裏の向こうの暗闇にいるであろう人物に投げかける。
シェパード「……」
男を殺した人物が姿を表す。アルチョムが雇ったバスターズが一人、シェパードだ。
シェパード「貴様なら、言わずともわかるだろう」
アドラー「随分と仕事熱心ですね。アルチョムの命令ですか？」
シェパード「……いや」
シェパードはすでに息絶えた男の首からナイフを引き抜く。ぼたぼたと血が地面を汚していく。
シェパード「それも聞かなければわからぬことか」
アルチョムが殺せなどと命令するわけがない。
海賊にさえ一度や二度も慈悲を与えようとする。正体もわからない相手を殺すはずがなかった。
つまり、これはシェパードの独断。シェパードが自らの意志で殺害したのだ。
アドラー「それほどまでに金が欲しいのですか？この功績をアルチョムへ報告し、追加の報酬を得る、それが目的ですか」
冷たいアドラーの言葉に、シェパードの表情筋がわずかにピクリとうごいた。
アドラー（何の感情もなく人を殺すこの男にも、堪忍袋の緒というのはあるようですね。しかし何故）
ピリッと空気が凍りつく。お互いが相手を信用していない距離感。こいつは油断ならない、裏で何を考えているのかという探り合い。
アドラー「そうしてアルチョムも邪魔になれば殺すのですか」
シェパードはその言葉には表情を変えなかった。
シェパード「場合によってはな」
その言葉に尚更空気が張り詰め、アドラーはチャ・ザ神官とは思えない殺気を放っていた。殺人者のそれだった。
シェパード「フン」
しかし次の瞬間には、シェパードは嘲笑うような表情を見せ、まるで「議論は無駄だ」と言いたげな態度でその場から去っていった。

---