「別に、ついてこなくても良いのだよ?」
そう、彼…シュプリシエは言った。
しかし、この学校に迫ってきている脅威があるというのなら、「先生」として雇ってもらった…いや、匿ってもらった俺たち…「一条銘」と「灰谷傳」はそれを放って任せるわけにはいかなかった。
そう、彼…シュプリシエは言った。
しかし、この学校に迫ってきている脅威があるというのなら、「先生」として雇ってもらった…いや、匿ってもらった俺たち…「一条銘」と「灰谷傳」はそれを放って任せるわけにはいかなかった。
相棒、灰谷は言う。
「今回は、戦争にて亡くなった霊達が、その怒り冷めやらぬとしてこの死後の世界で暴れている…んでしたっけ、校長。」
「今回は、戦争にて亡くなった霊達が、その怒り冷めやらぬとしてこの死後の世界で暴れている…んでしたっけ、校長。」
「そうだ、推定では10000から50000程度の霊の集合体らしい。」
「10000から、50000ですか…」
俺は絶句する。二人で立ち回っていた俺たちさえ数の力の押し付けで、どちらも欠けずにいられたんだ。
それが、1000を優に超える数となると…想像もつかない。
そんな嵐のような存在に、立ち向かおうと言うのだ。
俺は絶句する。二人で立ち回っていた俺たちさえ数の力の押し付けで、どちらも欠けずにいられたんだ。
それが、1000を優に超える数となると…想像もつかない。
そんな嵐のような存在に、立ち向かおうと言うのだ。
「とは言え、すぐに来るわけではない。此度は偵察だ。ほら、そこを見るといい」
彼が指差した、ここから100kmほど先に銃弾や爆弾を撒き散らしながらその場にある幽霊たちを鏖殺する怨念そのもののようなものがあった。
彼が指差した、ここから100kmほど先に銃弾や爆弾を撒き散らしながらその場にある幽霊たちを鏖殺する怨念そのもののようなものがあった。
校長は、生徒を導く先生の顔となり、軽く俺たちに言う。
「このようなことは稀にだが、この世界で起こりうる。これを「群死嵐 」と言う。
「とはいえ、これほどの規模…大罪級の大嵐が起こったのは私がここに来て3度目だが」
「このようなことは稀にだが、この世界で起こりうる。これを「
「とはいえ、これほどの規模…大罪級の大嵐が起こったのは私がここに来て3度目だが」
どうやらこれはかなりの古株の校長にとってもあまり前例のないことらしく、頻繁ではないという安堵と恐ろしさが同時に染み出してくる。
「決戦は明日だ。君たちを前線に出すつもりはないが、もし私が負けたら子供達の避難を頼んだよ」
「わかりました。」
「では、私は保険を呼ぶから、先に校舎に帰っていてくれ。」
そう言いながら、彼は携帯を取り出し、どこかへと繋げた。
そう言いながら、彼は携帯を取り出し、どこかへと繋げた。
「ああ、私だ。嵐は私が対処するから…ああ、うん、情報封鎖はしなくていい。もし私が負けた場合は生徒をよろしく頼む。あとは…おそらく他の「保険」が宴会を所望するだろうから、酒場を貸してくれたまえ。」
「私だ。今この世界を襲っている俗に言う「憤怒の嵐」は私が対処する。もし私が負けた時用に待機を少し戦場の後ろで頼む。報酬はお前の好みの酒を出して宴会を開いてやる。使うポイント数は今年私が入手した点数全てだ。『なぜ何を言うかわかった?』何年の悪縁だと思っている、藍島。『一人連れて行く?』いや、誰だそれは?………あいつ切りやがったな」
「すまない、ベルフリート。生徒達を一度預かっておいて貰えるか?私は嵐を討伐しに向かうから…ああ、もし私が負けた時は酒場に。救援?ああ、来てくれるならありがたい。連れが一人?君もか?いや、構わないが…虐殺など見ていて楽しいものではないぞ?」
いくつか聞いたことのない声があり、その電話が終わる前に俺たちは学校にて、生徒達を避難させる準備をしに移動した。
─────────
「ソルシエール、君はどうする?」
─────────
「ソルシエール、君はどうする?」
「私は待機しておるよ、ただの薬師に何ができる?」
「君を知っている者で、そんなことが言えるものは君以外にはいないよ」
「それを言ったのが今のでちょうど1000回目だな、祝うか?」
「茶化さないでくれたまえ、生徒達を頼んだぞ」
「ああ、任せろ」
─────────
当日、天気が爆発と銃弾の雨となっている時、つまり衝突20分前程度となった。
各々の手段で流れ弾を防ぎながら、俺たちは話し合う。
各々の手段で流れ弾を防ぎながら、俺たちは話し合う。
「とりあえず、最初はそれぞれで戦いたい、と?」
校長が藍島と呼ばれていた男に問う。
校長が藍島と呼ばれていた男に問う。
「あんた一人突っ込ませてもいいけど、せっかくの祭りなんだ…俺たちにも楽しませろよ」
「君はともかく、君の連れはどうするつもりなんだ?」
男が連れてきた、鉄条という名前の少女は、怖れを抱いているのを隠せないのか、軽く震えた声で、藍島に
「こ、こいつは誰なんだよ!」
と藍島に問う。藍島は呆れたような声で、
「おいおい、雑魚の群れなんかにビビってんじゃねぇよ…こいつは、俺の友人だ」
シュプリシエは言う
「腐った縁もここに極まれりだがな」
「腐った縁もここに極まれりだがな」
藍島は懐かしむ
「こいつはこの戦いから逃れることを望んだやつを匿ってんだが…その「学校」とやらに1年間ずっと襲撃をかけたことがあってな」
「こいつはこの戦いから逃れることを望んだやつを匿ってんだが…その「学校」とやらに1年間ずっと襲撃をかけたことがあってな」
シュプリシエはため息を吐きながら言う
「あれは悪夢そのものだった」
「あれは悪夢そのものだった」
藍島は気にせず続ける
「そん時持ち込んできた酒があんまりにも俺の好みだったんでな」
「そん時持ち込んできた酒があんまりにも俺の好みだったんでな」
シュプリシエはとても微妙な顔をしながら言う
「あれ一つに50点持っていかれるんだぞ?」
「あれ一つに50点持っていかれるんだぞ?」
藍島は聞こえていないかのように続ける。
「そん時からの縁ってやつだ」
「そん時からの縁ってやつだ」
もう一集団、呼び寄せられていた者たちへ校長が話しかける
「ベルフリートと…シオン嬢、だったか。」
「君たちはどうする?」
「後方で待機していてもいいが…まあ、あまりにも戦わなすぎても体に毒だ。少しだけ出させてもらうよ。シオンはどうする?」
「あなたが出るのならば、私も出る。足手纏いにはならない。」
それに俺たちも続き、
「当然、俺たちも出ます。お願いします校長」
「絶対に死なないと誓いますんで!」
俺たちの言葉を聞き、校長は逡巡したのちに口を開く。
「もし上手く勢力を減らせれば、残響として彼らを永らえさせる事もできるかもしれない…価値はないが、意味のある行為、なのだろうな」
「了承した。もはや意味もないが、我らが家名に誓い、君たちを死なせないと誓おう。」
その言葉が皮切りとなり、嵐と俺たちの戦闘…いや、戦争が始まった。
それぞれが領域を展開する。だがしかし、人数差があまりにも酷いため、基本的には自分の足元以外には展開できていない。
それぞれが領域を展開する。だがしかし、人数差があまりにも酷いため、基本的には自分の足元以外には展開できていない。
領域内に入ると嵐の中でも、2つの勢力に分かれ争いを続けていることがわかった。
『死ね!』『殺す…!殺す!』『帰らせて!家族の元に帰らせて!』『俺を殺したあいつはどこだ!』『ああああああああああああああああああああああああああああああああああ!』
痛ましい、絶叫のような声が響き続け、殺し合いをしていた。
生前にも、この世界に来てからも経験をしたことのない狂気に晒され、軽く吐き気が込み上げる。
生前にも、この世界に来てからも経験をしたことのない狂気に晒され、軽く吐き気が込み上げる。
そんな中で、最初に動いたのは藍島と、鉄条だった。
「いいねぇ…!さぁ!賭けていこうか…俺の命と!お前らの命をよぉ!」
「なっ…!待てよバカ師匠!」
そう言って、彼らは軍勢の片方へと突っ込んでいった。
次に動いたのは、ベルフリート達。
次に動いたのは、ベルフリート達。
「さて、では私たちも出ようか、シオン。」
「了承。準備完了…いつでも行ける」
「私が能力で君たちから注意を逸らす。注意は忘れないで欲しいが、戦いやすい戦場を保証しよう。」
「貴公に感謝を。して、貴公らはどこへ?」
「とりあえずは君たちに同行しようかと考えている。それで構わないかね?」
俺たちは狂気に軽く酔った脳を醒まし、返事をする。
「「はい!」」
「「はい!」」
「と、いうわけで同行させて頂くとしよう。」
「ふむ…では、彼らが突撃した軍勢に続こうかな。」
そう言って俺たちは出撃し、軍勢の中に歩み入る。
前方には、召喚された電車と、敷き詰められた人の中で明確に一つ穴が空いており、そこから響く、「どうしたどうしたぁ!もっと来いよ!」と叫ぶ声から藍島が戦っていることがわかる。
俺は木を幾つか生やして壁とし、相棒に合図を送る。
相棒はそれに頷き、俺と相棒の周囲を感電罠で囲み、即興の砦を作り上げた。
そこからは俺たちの必勝パターンだ。遠距離から攻撃してくる敵には相棒が電線で対処し、近距離に急接近する相手には罠と俺の樹木による圧殺で仕留める。
相棒はそれに頷き、俺と相棒の周囲を感電罠で囲み、即興の砦を作り上げた。
そこからは俺たちの必勝パターンだ。遠距離から攻撃してくる敵には相棒が電線で対処し、近距離に急接近する相手には罠と俺の樹木による圧殺で仕留める。
校長がこちら側に近づいてきている。どうやら大量の「刃のみの断頭装置」で首なし死体を量産しているようだった。
「私は能力で軍勢の敵対意識の管理をしよう。とりあえず君たちの方に問題なく処理できる程度の軍勢を送り続けるから…厳しくなったらいつでも呼んでくれたまえよ。撤退の時は合図を送るから、迷うことなく下がってくれ」
「校長はどちらへ?」
「とりあえずベルフリートの方に助太刀をしに行くとしようか」
「お気をつけて!」
「ああ、いや、うーん言い忘れそうだな…ずっと思っていたのだが…
君たちもそこまで畏まらなくていい。まだ環境に慣れていないのが大きいのだろうが、君たちも私にとっては生徒のようなものだ。存分に甘えたまえよ」
君たちもそこまで畏まらなくていい。まだ環境に慣れていないのが大きいのだろうが、君たちも私にとっては生徒のようなものだ。存分に甘えたまえよ」
微妙に頷きずらい提案をされ、どんな反応をすればいいか悩んでいるうちに校長は行ってしまい、そのうち殺意を存分に表出させた軍勢が現れ、思考は中断された。
─────────
後に語られるこの戦いは、いくつかの視点から記録されている。その一つが、一条銘の見た“嵐の序奏”だ。
そしてここからは、それを俯瞰した記録である。
そしてここからは、それを俯瞰した記録である。
死因も、その時持っていた心も武器も情景も違うのにも関わらず、その二人は構えも、戦い方も、纏う風…その全てが似ていた。
「「嵐」を見た感想はどうだ?シオン」
「正直なところ、気分が悪い。」
「そうだろうな…だが、いずれ我々の安息地に襲いかからないとはいい切れない嵐だ。」
「だから慣れておくべきだ、と?、、、はぁ…またベルフリートは私を谷底に落とした…」
「待て待て!今回は貴公の友人は連れてきていないし、私もいる。何より…」
断頭台で首を切り落とされた死体を見ながら、ベルフリートは言う。
「彼もいるしな。」
「あの人は、そんなに信頼が置けるのか?」
「我々と同じ、安息地の経営人だ。尚且つこの世界の最古参でもある」
「?」
「少なくとも、彼より早くこの世界を訪れた者を私は知らない。彼が言うには、当時は貴公と同じように未来からの来訪者だったのだと言う。」
「なら、なぜ点数は200止まりなんだ?」
「彼は自らの能力でポイントを消費して様々なものを出せる…そして大昔に過去に稼いだポイントのほぼ全てを安息地の創造に費やしたらしい。」
「それ以外にも様々なもの…校舎などに使った結果、ほぼ全てのポイントが消えたらしい。」
「つまり彼の本当の総得点は誰も知らないと?」
「彼と同期の薬師ならばあるいは…といったところだ。」
そう話しながら向かってくる軍勢に対処していると、物理法則を真っ向から殴りつけるような移動法…横向きにしたギロチンに乗って移動する…をしながら、シュプリシエがこちらに近づいてきた。
「大丈夫かね?」
「ああ、軍勢の集中度を調整してくれているだろう?全く以って群衆特攻だな貴公は…囲んで集中攻撃という数の差を持つ存在の最も簡単にして最も効果の高い行動を集中の操作により封じてしまうとは」
シオンはその二人の会話を見て、軽くロードを挟み、何かを決め、こんな事を言い出した。
「……その程度の得点で、そこまで油断して大丈夫?」
シュプリシエはベルフリートの顔とシオンの顔を順々に見て、笑い始めた。
ベルフリートは近づいてきた阿呆を切り捨てながらなんとも言えない顔をする。
「シオン…」
シュプリシエは軽く咳払いをして笑いを抑えた後に機嫌良く話す。
「君は中々面白い子を連れてきたようだ…冗談がとても上手い」
「いや、貴公…そこは叱ってもよいのではないかね?」
「別に私は総得点数を隠しているわけでもないし、悪意も感じない。好奇心からきた悪戯程度で怒りを覚えるようでは教師たり得んよ」
「では…ふっふっふ…そんなに知りたいかねお嬢さん…」
少し格好つけながら彼は言う。
「まあ正直覚えてなんぞいないんだがね…安息地と学舎を造るのに30000は持っていかれた、と言っておこうかな」
「…」
(軍勢がベルフリートの手により切り裂かれる音)
「…」
(軍勢がシオンの手により消し飛ばされる音)
「…」
(軍勢がシュプリシエの手により切り刻まれる音)
(軍勢がベルフリートの手により切り裂かれる音)
「…」
(軍勢がシオンの手により消し飛ばされる音)
「…」
(軍勢がシュプリシエの手により切り刻まれる音)
「…なんだねこの空気は?」
「いや…貴公はこの世界に来て戦闘はそこそこに隠居したのではなかったのかね?」
「あ〜…それは『私達』が『私』になった後の話だな。
『私達』の遺産のポイントを使用し、『私』は学校を立ち上げたのだよ」
『私達』の遺産のポイントを使用し、『私』は学校を立ち上げたのだよ」
「…。」
「…。」
「…。」
「つまり、複雑な事情があるということか?」
「そういう事だ。ああ…そうそう」
「退路確保のためここら一帯を掃除したい。手を貸してくれるかベルフリート、シオン嬢」
「突貫か…悪くない」
「うん、勝機は逃さない。」
ベルフリートは戦地に慣れた者特有の獰猛な笑みを見せながら武器を構え、もう一つの軍勢と藍島たちに釘付けになった軍勢の側面に喰らいつく。
シオンはベルフリートの存在に気づき逃れようとした数名を刈り取る事で援護し、ダメージを最小限に抑えながら最大の戦果を挙げていた。
シュプリシエは大量の処刑器具を上空、そして自らの側から発射しベルフリートを援護しつつ、自らも処刑人の剣を握り前線へと向かう。
「ふむ…。」
「筋金入り、というやつか。」
シュプリシエはそう呟く。
シュプリシエはそう呟く。
「どうした?」
「前方にある程度統率された30名程の集団がいる。
この嵐の中にあっても、個をを保っている。私の能力が通じない。」
この嵐の中にあっても、個をを保っている。私の能力が通じない。」
「了解した。シオンは私の後ろへ。」
そう言いながらベルフリートは盾を構え弾丸を弾き、統率された集団へと距離を詰めて行く。
そう言いながらベルフリートは盾を構え弾丸を弾き、統率された集団へと距離を詰めて行く。
シュプリシエは戦況を見て、軽く後ろに下がり、位置を確認し、人差し指と中指をその集団に向け…
「屈みたまえベルフリート、シオン嬢!」
そう言った後、彼は軽く狙いをつけたのち異常に刃渡りの長い断頭台の刃を横向きに召喚し、構え、
「断頭弾!」
撃ち放つ。
撃ち放つ。
まるで弾丸のように敵の首を目掛けて刃が滑り、集団の半分程度はそれにより斬首された。
突如行われた物理学者を殴り倒すような蛮行により狂気の中にあっても保たれていた軍列が崩れ、そしてそれを見逃す二人ではない。
多対一ではなく一対一を繰り返せとはよく言うが、彼らはそれをさらに発展させ常に二体一を繰り返し、反撃の隙も与えずに倒し切っていた。
「これで…」
「終わり!」
最後の一体が怨嗟の声を上げながらシオンにより消滅し、彼らの目標は完遂された。
「終わり!」
最後の一体が怨嗟の声を上げながらシオンにより消滅し、彼らの目標は完遂された。
「流石、腕は鈍ってないようだなベルフリート。」
「初めから掃討しようとするのは貴公の悪い癖だな、全く…私はともかくシオンが巻き込まれたらどうする」
「君が連れてきたという事実を信頼し、最善手を選択したまでだよ。最悪ソルシエールを呼べばいい」
「『怠惰の嵐』の残響か、今回は顔を見せていないようだが?」
「元は私があれを使って一掃する予定だったからな。子供達を任せている。」
「そうか…私たちはそろそろ下がるが、問題ないか?」
「問題はない…が、これを渡しておこう」
そう言い、シュプリシエは手鏡を2つ、ベルフリートとシオンに手渡す。
「これは?」
「ソルシエールと私の合作だ。学校に繋がっている。いつでも歓迎しよう…では、私は彼らに助力してくる」
「貴公の武運を祈ろう。」
「ベルフリート、シオン嬢、貴殿らの協力に、最上の敬意と感謝を」
そう言うと、彼は少しずつ追い込まれていく少女の元へと移動していった。
─────────
鉄条一歌は何度も何度も湧いて出てくる軍勢に、少しずつ追い込まれていた。
「くそっ…!」
頬に弾丸を掠め、その後自らの死因を押し付けて敵を一人討伐する。
(多すぎる…どこを見ても人がいるのに、誰も人間じゃない…)
一人を殺しても一点は与えられず、確かに殺意はあるのにそこには何の意思も感じられず、ゲームのNPCを倒しているような感覚に一歌は陥っていた。
「くっそ…がああ!」
一人、また一人、彼女の手によって避けることもせずに敵が倒されていく。
彼女を勝手に弟子にした存在は、息切れもせずに彼女の何倍も多い数の軍勢を切り飛ばしていた。
とはいえ彼女はそんな「神業」ができるほどに成長しておらず
また、この嵐の狂気にあって冷静を保ち切れるほどの経験もなかった。
また、この嵐の狂気にあって冷静を保ち切れるほどの経験もなかった。
そして、決定的瞬間は訪れる。
「しまっ…!」
後ろからナイフを構えて、走って近寄ってくる一人の敵影に気づかなかったのだ。
「しまっ…!」
後ろからナイフを構えて、走って近寄ってくる一人の敵影に気づかなかったのだ。
鈴を鳴らすのも間に合いはしない。これで彼女の物語は終幕を迎える…訳はなかった。
「自分の弟子の面倒すら見れないのか…あの阿呆は」
「処荊百般…処刑人の剣。」
「お手を失礼?」
シュプリシエはそう言い、彼女の手を握り軽く引き寄せ、敵の首を切り裂いた。
「あの阿呆に目をつけられるとは…不運な死者もいたものだな、全く。」
「あ、ありが」
「感謝は不要だ。そもそもこの戦いに君たちを巻き込んだのは私だし、君たちを死なせないと宣言したのも、私なのだからね」
「それよりお嬢さん…」
「Voulez-vous danser ?」
「えっ何?」
そのまま彼はもう一方の手を握り、こともあろうか戦場の真っ只中にあって踊り始めた。
「スロー」
銃弾が彼らが先程いた場所にへと放たれ、迫ってきていた軍勢に当たる。
「スロー」
無防備に特攻をした数人が彼の処刑人の剣により処断される。
「クイック」
ギロチンにより離れて撃っていた一群が処される。
「クイック」
数人によりクロスファイアをされるが、それを軽く避け、同士討ちさせる。
「スロー」
自らに追従させるようにいくつもの処刑器具を召喚、それらを自らと一歌を中心として回転させ、敵を一掃する。
そして、戦地の演奏は止み、静寂が訪れる。
「君にアドバイスをするなら…」
「視野が狭い。もう少し自らの死に向き合うといい…あいつに連れられて、工夫を重ねる暇がなかったのだろうがね
教材としちゃあいつのやり方は一流だ、勉学に励みたまえよ」
教材としちゃあいつのやり方は一流だ、勉学に励みたまえよ」
一歌は突如自分を巻き込んで踊りながら敵を一掃し、当たり前のように助言を言った、その一連の流れ全てに困惑を重ねながら、
「えっ…はぁ?」
と、気の抜けた返事をする。
「では、私はあいつの所へ行く。
君を守り切れる自信がない…不甲斐ないが、下がってくれるとありがたい。」
君を守り切れる自信がない…不甲斐ないが、下がってくれるとありがたい。」
そう言った後、シュプリシエは一条達にも撤退の合図を送り、彼女の師匠の元へギロチンで宙に浮きながら移動する。
それを見て、一歌は一言。
「なんなんだあいつ…」
─────────
狂気的な戦禍の中にあって尚圧倒的な存在感を放つその男は、刀を振い続け、無限と錯覚するような数の敵と相対しながら、もはや正気を失ったはずのその「嵐」に対して恐怖を植え付けていた。
「まだだ…まだだ!久しい宴なんだ!この程度で終わってくれるなよ…!」
弱者の群れを襲う感覚なのでもなく、強者と凌ぎを削る感覚でもない。
その狂気と狂気で削り合うような感覚に身を委ねて、死体の山を重ねていく。
その狂気と狂気で削り合うような感覚に身を委ねて、死体の山を重ねていく。
そうして大量の敵対者を斬り捨て、無限であれ、この程度で終わる勿れと願いながら、全霊を持って狂気をぶつけている。
そんな彼に迫る影が一つ。
それに彼は気づき、奇襲であろうと刀を向ける。
「阿呆」
その影は心底呆れたと言わんばかりに自らの剣で迎撃する。
その影は心底呆れたと言わんばかりに自らの剣で迎撃する。
「…お前か」
「私だが?」
「弟子を全くもって気にしないで戦いに没頭するお前に朗報だ。お前と私以外は全員退却したぞ。」
「勿体のない事をする奴らだな」
「人殺しを娯楽の類に貶められるのはお前と私のようなこの世界に堕ち切った阿呆だけだ」
「…で?俺にも帰れと?」
「いや?嵐の勢力を抑えて残響化を助けるためにとりあえずこちらの軍隊をまとめて掃討する。それに付き合えと命ずるつもりだが?」
「へえ?俺にお貴族様は付き合うと?」
「腐れ縁も、使いようはあるという事だよ、侍」
「へえ…じゃあいくぞ!」
そう言い、この会話の間に倒した敵を踏みつけながら、二人は駆け出す。
「天より出よ、地より裁けよ」
「『処荊百般』…『領域革命 』」
彼の領域が広がり、この嵐の支配する灼けた空に、青空が差し込む。
彼は自らの領域にある椅子に腰掛け、
彼は自らの領域にある椅子に腰掛け、
「目を瞑りたまえ…すぐに終わる」
そう告げると、自らの領域内に
ギロチンを始めとした大量の処刑器具を空中、そして地面に出現させる。
ギロチンを始めとした大量の処刑器具を空中、そして地面に出現させる。
「『天地顎刑 』」
まるでその場にいるもの全てが死罪に値する罪人であると告げるように、
一切の巻き込みも厭わずに、それらを噛み合わせる。
一切の巻き込みも厭わずに、それらを噛み合わせる。
その中を駆けるは藍島。
嵐のように打ち出されていく処刑器具を時には弾き時には掴み時には避けながらシュプリシエの処刑から逃れた者たちを切り裂き─この一撃にて現在生き残っていた半数が掃討される。
嵐のように打ち出されていく処刑器具を時には弾き時には掴み時には避けながらシュプリシエの処刑から逃れた者たちを切り裂き─この一撃にて現在生き残っていた半数が掃討される。
「じゃあ、そろそろ終わらせるか。」
藍島はそう呟き
「領域覿面『禍』」
人数差が圧倒的にもかかわらず、藍島はまるで墨汁を落としたかのように領域を広げていき、同じように全くの巻き込みの遠慮などをせずに言葉を紡ぐ。
「七星臨界…『赫蜈蚣 』」
彼が自らの領域を変質させた極彩色の宇宙の中にある赫い星々が繋がれて、領域内にいる全ての敵が同じ高さに赫い一本の線を刻まれる。
並以下の幽霊では生存すら出来ぬ圧迫に、「憤怒の嵐」は抵抗する。
この程度では死ねぬと。
まだ終われぬと。
まだ終われぬと。
しかし、終わりを彼は刻む。
一歩、二歩、三歩。
圧縮された領域を一瞬で膨張させる事により得られる音を置き去りにする速度を利用し、一瞬にして全てを斬り捨てる神業。
「終いだ。楽しかったぜ「憤怒の嵐」。」
それから逃れられる者は居らず、憤怒の嵐は自らの死を認識するより先に死を迎える──ある意味幸福な──二度目の死を迎え、鎮圧された。
─────────
しかし、この程度で消えるなら「大罪」の名は冠せない。
彼らは人が糾弾し、されど捨てきれぬその罪そのものに殺された者。
故に、死などでは、歩みを止める事など、出来はしないのである。
『嫌だ』
『嫌だ』
『嫌だ』
『嫌だ』『嫌だ』
『嫌だ』『嫌だ』『嫌だ』『嫌だ』『嫌だ』『嫌だ』『嫌だ』『嫌だ』『嫌だ』『嫌だ』『嫌だ』『嫌だ』『嫌だ』『嫌だ』『嫌だ』『嫌だ』『嫌だ』『嫌だ』『嫌だ』『嫌だ』『嫌だ』『嫌だ』『嫌だ』『嫌だ』『嫌だ』『嫌だ』『嫌だ』『嫌だ』『嫌だ』『嫌だ』『嫌だ』『嫌だ』『嫌だ』『嫌だ』『嫌だ』『嫌だ』『嫌だ』『嫌だ』『嫌だ』『嫌だ』『嫌だ』『嫌だ』『嫌だ』『嫌だ』『嫌だ』『嫌だ』『嫌だ』『嫌だ』『嫌だ』『嫌だ』『嫌だ』『嫌だ』『嫌だ』『嫌だ』『嫌だ』『嫌だ』『嫌だ』『嫌だ』『嫌だ』『嫌だ』『嫌だ』『嫌だ』『嫌だ』『嫌だ』『嫌だ』『嫌だ』『嫌だ』『嫌だ』『嫌だ』『嫌だ』『嫌だ』『嫌だ』『嫌だ』『嫌だ』『嫌だ』『嫌だ』『嫌だ』『嫌だ』『嫌だ』『嫌だ』『嫌だ』『嫌だ』『嫌だ』『嫌だ』『嫌だ』『嫌だ』『嫌だ』『嫌だ』『嫌だ』『嫌だ』『嫌だ』『嫌だ』『嫌だ』『嫌だ』『嫌だ』『嫌だ』『嫌だ』『嫌だ』『嫌だ』『嫌だ』『嫌だ』『嫌だ』『嫌だ』『嫌だ』『嫌だ』『嫌だ』『嫌だ』『嫌だ』『嫌だ』『嫌だ』『嫌だ』『嫌だ』『嫌だ』『嫌だ』『嫌だ』『嫌だ』『嫌だ』『嫌だ』『嫌だ』『嫌だ』『嫌だ』『嫌だ』『嫌だ』『嫌だ』『嫌だ』『嫌だ』『嫌だ』『嫌だ』『嫌だ』『嫌だ』『嫌だ』『嫌だ』『嫌だ』『嫌だ』『嫌だ』『嫌だ』『嫌だ』『嫌だ』『嫌だ』『嫌だ』『嫌だ』『嫌だ』『嫌だ』『嫌だ』
どうして?
『私達は、私達の死程度ではこの無意味な戦いを止められなかった』
『私達は、私達を殺した罪をしっている』
『怒りだ』
『全てを忘れて、ただ目の前の敵を殺したいという怒りだ』
『ならば、我らは痛みこそが、怒りこそが輪郭』
『死ごときが、怒りを収めようか』
『死ごときが、この無意味な憤怒を終えようか』
『ハハ』
『ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!』
『ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!』
そうして彼らは『蘇る』。冷めやらぬ怒りのみが自らであると定義し、底の抜けた杯が血で満ちるまで、殺し続け、死に続けると叫びながら。
─────────
「そら、帰るぞお貴族様!」
「待て、領域が消えていない。取り逃しがいる…?残滓か?」
「だが、全員消えている…何だ?何が起こった?」
誰もいなくなった戦地を見渡し、今まで経験のない事象に警戒を強める影一つ。
「へえ…隠し球か」
誰もいなくなった戦地を見渡し、未だあるのかとデザートを待つような影一つ。
「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「死ね」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」
そして
彼らの足を掴み銃口を突きつける影、100000。
彼らの足を掴み銃口を突きつける影、100000。
「ああ、なるほど」
「はーーーっ俺じゃなくてお貴族様の方かよ」
「はーーーっ俺じゃなくてお貴族様の方かよ」
彼らを眺める二人は、一方は未だ明かされていなかった能力がなんだったのかを悟り、もう一方は隣にいる存在の方が適役であることを悟った。
「宴の質を上げることを代金に、前線から下がることを依頼しようか」
「仕方ねえなぁ…300は使えよ?」
「ついでに彼らの護衛を頼む。」
─────────
「何だ…あれ…」
一条はそう、災害により破壊され尽くした街を目にした人間のように呟く。
一条はそう、災害により破壊され尽くした街を目にした人間のように呟く。
シオンによって消されたはずの兵士が、灰谷によって感電死した筈の兵士が、一条によって圧死した筈の兵士が、藍島やベルフリートにより切られた筈の兵士が、瞬く間にしてもう一度立ち上がり、現れ、シュプリシエと藍島に銃口を向けていた。
まるで屍人 のような、狂気を吐きながら行進するこの嵐は、「死程度では終わらなかった戦争」にて生まれた故に、不死を冠する。
いままでの嵐を総合しても、尚法外と言える死因。
しかし、ただ一つの彼らの敗因を語るならば…
──年季が、足りなかったのだ。
しかし、ただ一つの彼らの敗因を語るならば…
──年季が、足りなかったのだ。
軽く敵を切り伏せながら後方にて待機する者達に合流した藍島は、自らが勝手に弟子にした娘に向けて、こう言う。
「丁度いい、いずれお前も相対するだろうし見ておけ。これがこの世界に居続ける事を選んだバカどもの奥の手だ」
彼らの目線の先には、断頭台を自身の目の前に召喚するシュプリシエがいた。
─────────
「さて、だ。」
自分と、嵐以外はいなくなった戦場の中で、彼は断頭台へ向かう罪人のように、軽く息を吸い、言葉を紡ぐ。
自分と、嵐以外はいなくなった戦場の中で、彼は断頭台へ向かう罪人のように、軽く息を吸い、言葉を紡ぐ。
「この世界は、死後の世界だ。」
「そして、誰もが簡単に死に、殺し、そうして生き返るか、死ぬかでこの世界から消える。」
「しかし、私のような例外は…」
「この世界に浸かりすぎた者は…」
「この世界、死と同じになってしまうのだよ」
そう言い、彼は目の前にある断頭台へと歩む。
憤怒の嵐は、それを最大の脅威と認め、自らの持つ全霊を持って止めさせようとしている。
しかし、突如現れたシュプリシエを囲む「顔のない」民衆達に阻まれ、彼の歩みを止めさせる事ができず、とうとう彼はその断頭台へと辿り着く。
憤怒の嵐は、それを最大の脅威と認め、自らの持つ全霊を持って止めさせようとしている。
しかし、突如現れたシュプリシエを囲む「顔のない」民衆達に阻まれ、彼の歩みを止めさせる事ができず、とうとう彼はその断頭台へと辿り着く。
「では…よろしく。」
そう、「顔の無い」処刑人に挨拶をしたのち、彼は断頭台に首を差し出す。
それは処刑される罪人のようでもあり、舞台に上がった道化のようでもあった。
それは処刑される罪人のようでもあり、舞台に上がった道化のようでもあった。
歓声と、血が染み付いた鉄が肉を切り裂く音が、彼の領域たる青空に響き渡る。
「貴種の青い血、だったか。」
先程斬られたはずの首から、どこまでも黒く、全ての光を飲み込んでしまうような澄んだ液体を流しながら、彼は嘆く。
「全くもって、笑えない冗談だな」
黒い液体は憤怒の嵐の領域を徐々に侵食していく。
憤怒の嵐がシュプリシエに弾丸を浴びせるが、その一つとして、命中したのにも関わらず彼に損害を与える事ができない。
憤怒の嵐がシュプリシエに弾丸を浴びせるが、その一つとして、命中したのにも関わらず彼に損害を与える事ができない。
「憤怒の嵐、その怒りの奔流を私が真に理解することは叶わないだろう。」
「だが…同じ成れ果てとして、一つわかる事があるとするならば…」
「我らには、一息つける時間が必要なのだろう。」
「名乗ろうか」
自らの首に下げた、美しい宝石を、空中に投げ捨てる。
「『強欲の嵐』の残響、ル・シュプリシエ・アンコニュ。」
宝石は弾丸により砕かれ、そしてそれを皮切りに、彼は…いや、彼らは領域の奪い合いにおいて『憤怒の嵐』を圧倒し始める。
─────────
「──よいのか」
「今一度、我らに成るのか」
「嵐へと戻るのか」
「今一度、我らに成るのか」
「嵐へと戻るのか」
彼の脳内に彼らの声が響く。
「違うな」
「“私達”ではない」
「此度は、“私”が、君たちを利用するだけだ。」
─────────
「“私達”ではない」
「此度は、“私”が、君たちを利用するだけだ。」
─────────
「『擬似解放:乱狂旒』」
「流石に本来の嵐に戻るという訳にもいかないのでね。」
黒血が触れた瞬間、
彼らの視界はそれぞれの「最期」に塗り替わる。
彼らの視界はそれぞれの「最期」に塗り替わる。
焼ける肺。
潰れる骨。
裂ける喉。
潰れる骨。
裂ける喉。
──そして、終わるはずの瞬間が、終わらない。
しかしそれでも、彼らは憤怒のままに戦う。死など、気に留めるに値しないと叫びながら。
それが、最悪手だと気づくことなどできぬまま。
『さあ、我が地獄より抜錨せよ 』
「『血に染まる正義の斜刃 』」
自らの黒き領域から、彼は刃を生み出し、それを抜く。
それはまるで、処刑人のようで。
それはまるで、処刑人のようで。
「先程はすまなかった…今度こそ目を閉じるといい。」
「『旧き王権、その末路 』」
振り下ろされた銃剣が、空中で止まる。
引き金にかけられた指は、
撃つ直前の形のまま、永遠に引かれない。
撃つ直前の形のまま、永遠に引かれない。
叫びは喉の奥で凍りつき、
音にならないまま、形だけが残る。
音にならないまま、形だけが残る。
彼のその力は、自らの領域に入った全ての動作を止めてしまうのだ。
これに抵抗できるのは、同じく死と同化したもの…或いは生へと必死に向かうもののみ。
そして憤怒の嵐はそのどちらでも無い。故に彼の刑からは逃れられない。
シュプリシエはあらゆる敵の頭上に彼の領域と同じ澄んだ黒の斜刃を自らの領域に踏み入った者達に構える。
「我が血を以て罪を暴き…」
その刃は、結果の確定…2度と変わらぬ運命からの転落を示す。
「我が手を以て其を裁かん」
例え、どれだけ法外な財力や権力、『能力』があったとしても…
「汝らの許されざる罪を…斜刃にて断とう」
あの断頭台へ行くのは、それを持っていた者達だったように。
「『屍より成る革命よ 』」
──あの革命は、死者の上にしか成立しないのだ。
──あの革命は、死者の上にしか成立しないのだ。
彼らの首は絶たれ、生き返るという力も断たれる。
「アンスィ・ソワ・ティル。」
それは命令ではなく、
裁きでもなく、
裁きでもなく、
──祈りだった。
─────────
領域が解除される。戦闘が終わったのだ…しかし静寂は終わらなかった。
領域が解除される。戦闘が終わったのだ…しかし静寂は終わらなかった。
一条はただ、自らの首が斬られていない事に安堵した。
灰谷は、こんなことをしておいて「畏れるな」と言うのは無理ではないかと考え、それ以上深く考えないことで自己を保った。
シオンは、今までに観測したことの無い事象により、思考回路の全てをその理解に費やしていた。
ベルフリートは、シュプリシエと初めて出会った時のことを懐古していた。
鉄条は、これといずれ戦う事になるという藍島の言葉が脳内で回っていた。
藍島は…黒血の領域にしれっと入り、自らを殺すまでと言わんばかりに延々と飛んできた斜刃と遊んでいたが、領域が閉じられた事によりそれが終わり、つまらなさそうな顔をしていた。
そして此度は出しゃばる事になったシュプリシエは…黒い血も、そして宝石も元通りになり、平然と彼らの元へと歩んでいた。
さらに、そんな彼に歩み寄る小さな影一つ…
シュプリシエはその影を見て一言…
「ああ、ソルシエー「阿呆!」ぐへっ!」
云えなかった。
その少女…ソルシエールは彼の頭をひっぱたき、彼を地に伏せさせた。
とはいえ少女の膂力が圧倒的だったわけではない。単純に、シュプリシエが空元気を見せていただけだったのだ。
とはいえ少女の膂力が圧倒的だったわけではない。単純に、シュプリシエが空元気を見せていただけだったのだ。
「『死の欲動』だけならまだしも嵐の擬似解放まで使った上で虚勢を張るでないわ!たわけ!」
「すまない…」
「さっさと寝ろ」
「はい…」
彼女は生前薬師だったため、基本的に無理をする輩に対してやたらあたりが強い。
「『彼』と…あと始末を頼む…」
シュプリシエはそれだけ言うとそのまま力尽き、寝てしまった。
「ふむ?ああ、あそこに居る…此度の嵐の『残響』か、よく器用に残したもの…いや、これは単純に理性を保っていた一軍が、お前を「恐れる」事ができて巻き込まれなかったのか。」
そう、その残響は、シオン達により一度一掃されたまだ一抹の知性を残した一軍が中心となって形成されていた。
「そうそう、お前たちにこやつは宴を開くと約束しておったか。」
そう言うと、彼女は彼らに紙を渡し、
「好きなものを一人5つまで書きつけろ。こやつが出したり私が料理したりするから…3日後に酒場に来い。」
「新人の…一条と灰谷だったか。全員の所望を受け取った後、戻ってこい。私はこやつらを先に保健室に連れて行く。」
そうして、彼女は「憤怒の嵐」と「強欲の嵐」を担いで学校へ戻って行った。
一条は言う。
「なんなんだろうな、あの人。」
「なんなんだろうな、あの人。」
灰谷は言う。
「本人が言うにはただの薬師らしいけど…」
「本人が言うにはただの薬師らしいけど…」
ベルフリートは言う。
「怠惰の嵐の残響、そう聞いていたが?」
「怠惰の嵐の残響、そう聞いていたが?」
シオンは言う。
「なるほど、だから彼も素直に従ったのか。」
「なるほど、だから彼も素直に従ったのか。」
一条と灰谷は言う。
「「いや、多分…」」
「「いや、多分…」」
鉄条は疲れを滲ませた声でそれに続け、締める。
「それは関係ねぇんじゃねぇかな…」
「それは関係ねぇんじゃねぇかな…」