「なぁ、アンタは俺の家族を守ってくれるのか?」
お前の実家は…ここか。ふむ…
ここの安全地帯への退避を勧める手紙を送れ、その場所は2週間後には更地になるぞ
ここの安全地帯への退避を勧める手紙を送れ、その場所は2週間後には更地になるぞ
「何人を殺した?ああ、すまない、味方じゃない、敵を殺した数だよ」
私一人なら、38人。私の作戦で死んだ者なら、現段階で3万人はいるかと。
「悪魔…悪魔よ!アンタは血の通っていない、化け物なのよ!」
自分が血の通っていない化け物なら、治療費が浮くから、ありがたいな
「例え我らが全滅しようとも!世界が闇に包まれ、可能性を閉ざす事だけは!それだけは避けねばならぬ!」
よくわからないな。いずれ世界を覆う闇ってのは、私の知ってる戦争よりもひどいものなのだろうか。
「お前の歳で吸わせるのは倫理に従っちゃアウトなんだが…まぁ、いいか。やるよ、俺のタバコ。形見代わりに持っといてくれ。んでもって、吸って苦さを知ったんなら早々に捨てろ。」
苦いな。けど、癖になる。
「クソ…もう時間がない」
補給が持つのはあと12ヶ月程、それまでに交渉のテーブルに就かせなければ詰み、か。
「奴ら、もう見境ないぞ!クソッ退避!退避だ!」
特殊案C-6に従え!相手にも被害が出ている事を確認した、この機に包囲を完成させるぞ!
「それは…遺書か?遺書を送る家族がいない?そうか。」
ただの、私が死んだ時用の作戦立案書ですよ。故郷はこの戦地なので、自分が死んだ時用に故郷に送る文章という意味では同一ですが。
「右腕が吹き飛んだお前に朗報だ。敵から質の良い義肢を鹵獲してきた。」
ありがとう。整備は?済んでいるのか。
この後は?私を庇って死んだ者を弔う、のか。私も同行させてくれ。
この後は?私を庇って死んだ者を弔う、のか。私も同行させてくれ。
「お前は唯一あのクソッタレの支配者に、敵として認められたらしい。『極北の死神』だとさ。」
死神だなんて、冗談だろう?私が死神なら、かの暴君はなんだ?唯一神とでも?
「遺書を送る家族はいねぇから、お前に渡しとく。何故って?お前を長生きさせんのが俺たちの仕事なんだから、お前の方が長く生きてるに決まってるからだろ?」
読んだ時の私の気持ちも慮れ。流石にそれを言われてまともに直視できる程狂ってはいない。なんだ?その顔は?『皮肉なんて1mmも込めてないぞ』、そんな顔をしているな、阿呆。
「お前の死体を渡すか、お前を出頭させれば、少なくともこの指定された、今俺たちが支配している地域は自治を認める、ね。」
事実確認は?私が死ねばそれで終わるならいいが、逆転の手札が一枚も無くなった後にあるのは無条件降伏のみだ。
「ダメだ、俺は、俺たちは、もう、耐えられなかった。」
そう、か。
ありがとう、我が友。
君のその善行が、天国に君を導いてくれる事を祈っている。
ありがとう、我が友。
君のその善行が、天国に君を導いてくれる事を祈っている。
友に向けられたリボルバーの銃口が、眩しいくらいに、輝いて。
バァン
バァン
バァン。
バァン
バァン。
ゆっくり、ゆっくりと目を覚ます。ここは…どこだ?野戦病院か?
体を起こし、周囲を見渡す。一度も目にした事のない風景だ。
体を起こし、周囲を見渡す。一度も目にした事のない風景だ。
くそっ頭痛が…!
『ダメだ!あいつが死んだと知った途端、奴ら攻勢に出始めたぞ!』
『これじゃああいつは…あいつは…!』
『残してくれた作戦書を使う!奴らに、最後の意地を見せるぞ!』
『ごめん、ごめんな、俺達は、お前の…足を引っ張って、ばかりで』
『ゲリラ戦を行う。市民の巻き込みを恐れるな!』
大量の声が流れ込んでくる。親友の声から、宿敵の声まで。
あの戦争に関わった、全員の声が。
あの戦争に関わった、全員の声が。
俺が死んだ後から、俺が戦争に関わる前の人まで。
灼けるように頭が痛い。
思考が次々と焼け落ちてゆく。
ああ、ああ、ああ。
それが、自分の記憶の空白をはっきりと示して。
それが、自分の記憶の空白をはっきりと示して。
「…俺は、誰だ?」
そう、つぶやいた。
そう、つぶやいた。
彼が来たのは、それから15分後。
ル・シュプリシエ・アンコニュ…「校長」と名乗る人物から、この世界と、自分がどんな存在なのかについて、教えてもらった。
ル・シュプリシエ・アンコニュ…「校長」と名乗る人物から、この世界と、自分がどんな存在なのかについて、教えてもらった。
「ここはネクロリバイブ。生き残りを賭けて殺し合う幽霊の世界だ」
「で、君は特殊例。死群嵐と呼ばれる大量の死者の集まりから生まれた、残響だ。」
「そしてここは私が校長として経営する学校…安全地帯だよ。」
そのように、いくつかの事を教えてもらう。そうして話している間に、記憶の整理が成されてゆくのを感じる。
「…そろそろ落ち着いてくる頃だろうが…
もし良ければ教えて欲しい。自分が生前誰だったのか、わかるかね?」
シュプリシエが、私にそう問う。
もし良ければ教えて欲しい。自分が生前誰だったのか、わかるかね?」
シュプリシエが、私にそう問う。
「わかり…ます。 たぶん、私は…戦争の指揮官、だった、ような…?」
私は歯切れの悪い返事を返す。
私は歯切れの悪い返事を返す。
それを聞いて、シュプリシエは、
「おそらく私と同じ中心人物型だろうな…」
と、呟いた後に、
と、呟いた後に、
「君、自分の名前を思い出せるかね?」
と問う。
と問う。
「思い出せる…いや、思い出せすぎる、ような。 確かに私は私のはず、なのに…輪郭が緩んで…どれが自分の名前かわから、ない。」
私は頭痛の引いて来た頭で正直に応える。
私は頭痛の引いて来た頭で正直に応える。
彼はそれを聞き、少し考えるような間を置いた後に、
例え名が戻ったとて、自分はもはや友や敵と混ざってしまった生前とは別の存在故に、特に否を言う気もなく、そのまま受け入れた。
「歩けるかね?」
「ええ、大丈夫…です。」
体の感覚は生前とあまり変わりなく、体と同じく馴染みのある軍服を着ようとする。
体の感覚は生前とあまり変わりなく、体と同じく馴染みのある軍服を着ようとする。
「…?」
軍服に、見覚えのない勲章がつけられていた。
美しいルビーがあしらわれている勲章で…一度目にしたのならば忘れられないような、そんな意匠をしている。
軍服に、見覚えのない勲章がつけられていた。
美しいルビーがあしらわれている勲章で…一度目にしたのならば忘れられないような、そんな意匠をしている。
「ああ、それか。」
「『嵐の残晶』と呼ばれている。どうやら私達の嵐だった時の力を封じ込めたものらしい。」
「君はまだ、それを使うには早いだろう。下手に解放しては、今度こそ消えてしまいかねない…だから、傷つけないよう注意する事だ。」
シュプリシエは自らの持つ蒼い宝石を私にみせながら私に忠告した。
いまいち要領を得ないが、私はそれでも今の私がそれを壊してはいけないことは理解し、軽く頷きを返した。
いまいち要領を得ないが、私はそれでも今の私がそれを壊してはいけないことは理解し、軽く頷きを返した。
「さて…君に最低限自立できる程度の知識は渡した。そこで問うが…」
「君は、この学校で私の庇護下に入るか、外に行き、自ら進みたいか、どちらだ?」
そう、彼は気兼ねせずに言う。
そう、彼は気兼ねせずに言う。
彼が言うには、この場から離れるという事はそれ即ち殺し合いへ身を投じると言うこと。
そして、この場所に留まるという事は、殺し合いを放棄し、気の遠くなるような時を共に過ごすということ。
私は生まれた時から戦場にいた。
私は幾人、幾万人もの人を、この手で殺し、誰かの手で殺させた。
そんな自分には、地獄が、殺し合いがお似合いだ。
日常を過ごす資格など、最早ない。
私は幾人、幾万人もの人を、この手で殺し、誰かの手で殺させた。
そんな自分には、地獄が、殺し合いがお似合いだ。
日常を過ごす資格など、最早ない。
そう考え、少し目を伏せた後、声を発しようとする。
「わた、し、は…」
おかしい、声が出ない。
まるで、喉が潰れたようだ。
まるで、首を絞められているようだ。
まるで、まるで、まるで。
私が…戦地になど、もう居たくないと、叫んでいるようだ。
おかしい、声が出ない。
まるで、喉が潰れたようだ。
まるで、首を絞められているようだ。
まるで、まるで、まるで。
私が…戦地になど、もう居たくないと、叫んでいるようだ。
初めて人を撃った時の記憶がある。
初めて敵の一団を殲滅した時を忘れられない。
昨日まで友だったスパイを撃ち殺した時のトリガーの重さを今も夢に見る。
友に撃たれた弾は、体の中にまだあるかのよう。
初めて敵の一団を殲滅した時を忘れられない。
昨日まで友だったスパイを撃ち殺した時のトリガーの重さを今も夢に見る。
友に撃たれた弾は、体の中にまだあるかのよう。
いつのまにか、俺の喉は、
「ここに、居させて…くれませんか」
と、言っていた。
「ここに、居させて…くれませんか」
と、言っていた。
「…そうか、ならば。」
そう言い、彼は扉を開ける。
その先には─
そう言い、彼は扉を開ける。
その先には─
「すみませんせんせー、図工の補習を頼んでもいいですか?」
「図工の補習かぁ…おっちょうどいい所に!銘!」
「んー?何だよ?」
「この子の補習やってくれないか?」
「了解、了解。」
「一緒にゲームやるやつ集合だーっ!」
「おっいいね◯鉄やろうぜ桃◯」
「いいやマ◯オパーティーという事になっている」
「お姉さんも混ぜてよー⭐︎」
「すみません、ソルシエールさん」
「ん?何々?」
「論文をとりあえず書き切ったので査読して欲しいんですけれど…」
「わかった、受け取ろう。
とりあえず1ヶ月後には返せるようにするよ」
とりあえず1ヶ月後には返せるようにするよ」
「死因の解釈の拡大かぁ…自分が本気でそう思わなきゃいけないから難いんだよなぁ…」
「わかるぅーー!校長の宿題もう4ヶ月は引きずってるわ」
「自衛能力は流石にないとなぁ…ってお前4ヶ月は流石にアドバイス貰いに行けよ」
──あんまりにも眩しい、「日常」があった。
彼は、端的にこの場所がどう言う場所であるかを示し、私に告げる。
「まだ、わからないことの方が多いだろう、拭い去れぬ混乱が君を逃さないだろう。」
「しかし、それに答えるのが我らの役目であり、義務だ。」
「故に…君を心の底から歓迎する」
「──伯立幽霊学園にようこそ、友よ。
これより君は、我が校の生徒だ。」
これより君は、我が校の生徒だ。」
これが、俺の知らない日常。
これが、俺が守ろうとしていたもの。
これが、俺がこれから生きる時間。
これが、俺が守ろうとしていたもの。
これが、俺がこれから生きる時間。
なぜか、涙が流れた。
理由は…わからなかった。
理由は…わからなかった。
とうに枯れ果てたと思っていた。
折角体に溜め込んだ水を、無駄にしてしまう行為だから、と。
折角体に溜め込んだ水を、無駄にしてしまう行為だから、と。
唐突に、養父となってくれた中将の言葉を思い出す。
彼が言うには、
「人は、生まれる時に涙を流し、周りの人は微笑んでいるもので、死ぬ時に周りの人は涙を流し、自分は穏やかに笑うものだ」
と。
俺は生まれ落ちる時に、周りに穏やかに笑う人はいなかった。
ただ、私を産んで力尽きた母と、母を守って死んだ父、そして怒声をあげる兵士たちがいただけだった。
彼が言うには、
「人は、生まれる時に涙を流し、周りの人は微笑んでいるもので、死ぬ時に周りの人は涙を流し、自分は穏やかに笑うものだ」
と。
俺は生まれ落ちる時に、周りに穏やかに笑う人はいなかった。
ただ、私を産んで力尽きた母と、母を守って死んだ父、そして怒声をあげる兵士たちがいただけだった。
ならば、自分が本当に生まれ落ちたのは…今だったのかもしれない。