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ふぇらにーる --カク


 男の性器を咥えるという行為は、一般的に抵抗がある。愛しい男を前にした女でさえ、そう思うのだ。ましてや、同じものをもっている男としては、まずその機会に巡り合うこと自体が一生ないだろう。
 だとすれば、十歳も年下の子供の性器を頬張って満足感を得ている自分は、どうしようもない変態なのだろうか。熱に浮かされた頭で、ニールはそんなことをぼんやりと考えた。
「ふっ……ニー、ル……ぅ」
 頭の上から、子供の濡れた喘ぎ声が落ちてくる。髪を握る手の力が容赦なく、痛い。だが、そんな些細なことは気にせず、ニールは口に咥えたものに舌を絡ませた。深く呑み込み、頬を窄ませて全体を擦る。一度口を離し、裏を舐め上げ、括れを擽る。先端を舌先で抉ってやれば、どろりとした苦味が口の中を満たした。決して美味くないそれさえ、この子供から溢れたものなら愛しく思えるのだから、重症だ。咥え込んだまま喉を鳴らして唾液ごと呑み込めば、それすらも刺激になるのか、子供は熱のこもった喘ぎを零した。
「ニールっ、もう……離せ、って」
 髪を引く手に、訴えるように力が入る。それを無視して啜り上げれば、目の前の身体が大きく撓った。
「ぅぁ、あ、あァッ」
 跳ねる腰を押さえ込み、口の中に弾けるものを、喉を鳴らして呑み込む。その味を、やはり不味いと思う。それでも、ニールは苦いばかりのそれを甘露のようだと思った。この子供が、こんな行為を受け入れ、求めてくれる。その最たる証だと思えば、自分が厭うはずがないのだ。



女学校レオニルレオ --カク

・さすけさんとカズキヨさんの女学校絵に触発されて、裏でずっとこっそり書いてました(*´Д`*)

 漂う紫煙の香りに、レオニは眉を顰めた。厭っているから、ではない。その香りは、この俗界から隔離された清らかな学舎に、あってはならないものだからだ。
 レオニの前には、一人の学生がいる。麗らかな陽射しの下、回廊のフェンスに身体を預けている様は、確かに見栄えがいいのだろう。この学校の生徒たちに人気を誇っているのも、そこはかとなく頷ける姿だ。生徒会長を前にして、隠れもせずに堂々と喫煙している度胸も、人気の一つに違いない。だが、そういった事実を知ってはいても、レオニの心に何かを響かせる訳ではなかった。
「ニル子さん、何をなさっているのかしら?」
「あら、怖い人に見つかってしまったわね」
 言葉とは裏腹に、少しも悪びれていない様子で、相手は笑った。実際にそうなのだろう。咎める声をかけられてなお、相手は煙草を消そうともしていない。
「煙草は重大な校則違反です。貴方、それをわかっていて?」
「あまり細かいことは気にしないのよ、生徒会長さん。折角のいい昼下がりが台無しじゃない」
「生憎ですけれど、これが私の務めですの」
 睨みつければ、おどけた仕草で肩を竦める。そのひとつひとつが、どうにも気に食わない。だが、これ以上こちらを刺激するつもりはないのか、レオニが突き出した手に、相手は大人しく煙草の箱を置いた。
「生徒会長さんは生真面目ね。もっと余裕のある人生を送らないと、色々損をすると思わなくて?」
「貴方にそんなことを教授されなければならないほど、私は落ちぶれてはおりませんことよ」
「あら怖い」
 相手はからからと笑うと、懐から携帯灰皿を取り出し、ふかしていた煙草を押し込んだ。そうして、フェンスから腰を上げる。
「で、罰則は?」
「反省文を」
「嫌ね、私が一番嫌いだって知っていて選んだでしょう」
「貴方の好みなど、私が知る訳がないでしょう」
 冷たく言い放っても、相手はやはり軽く肩を竦めるだけだ。自分でも、一層表情が険しくなったのがわかった。態度の割には自分の言葉をある程度まともに受け取っているようだが、それでもこの馴れ馴れしさと得体の知れなさは気に食わない。生理的な嫌悪感にも似ているのだろう。自分は、理解できないものを受け入れない。
「ああ、また」
 少し、意識を内に向けていたらしい。相手の声が聞こえたと同時、眉間に何かが触れる感触があった。温かさと、少し冷たく固い何か。人の、指先だ。
「怖い顔して、綺麗なのが台無しじゃないの」
「ッ」
 咄嗟に振り払う。だが、その手が届くよりも前に、相手は笑いながら素早く手を翻した。先ほどまでレオニの眉間に触れていた指が、小さな何かを弾く。ちょうど胸元に落ちてきたそれを、レオニは反射的に受け止めた。掌に収まるほどの大きさの、棒付きの飴玉だった。
「……これは何のおつもりかしら」
「疲れたときには甘いもの、よ。頑張って頂戴ね、生徒会長さん」
 片目を瞑ると、相手はのんびりと歩き出した。その割に速度が速いのは、単純にコンパスが長いからだろう。長身だと自覚のあるレオニよりも、その背は更に高い。
「お待ちなさい、菓子の携帯は校則で――」
 話を最後まで聞こうともせず、相手は手を振ってその場を歩き去った。レオニは立ち尽くしたまま、その背を見送っていた。何故追いかけなかったのかは、わからない。或いは、あの飄々とした態度に、毒気を抜かれてしまったのかもしれない。得体は知れないが、悪い人間ではなさそうだ。だが、たとえそうだとしても、気に食わない相手であることに違いはなかった。
 レオニは無表情に飴玉を見下ろすと、包装のビニールを剥いた。淡い黄色のそれは、傍目からでは何味なのか見当もつかない。ビニールの印刷を確認すればわかるのかもしれないが、それも面倒だ。無言のまま、レオニは飴玉を咥えた。そして、舌を刺すような濃厚な甘さに、思わず顔を顰めた。
「……蜂蜜」
 いつも紅茶に入れているものとは全く質が違うが、それでも蜂蜜の味だ。ふと、自分が蜂蜜入りの紅茶を好んでいることを、相手は知っていたのだろうかという疑惑が頭を過ぎる。
 レオニは顔を顰めたまま考え込み、やがて飴玉に思い切り歯を立てた。そして、決して上品とは言えない甘さに、一層顔を顰めたのだった。





最終更新:2011年06月19日 10:57