sample/スケ
「着替え。ニール、そのカソック着替えた方がいい。ナイトシャツはどこ?」
唐突な思いつきで出た問いだったのだが、ニールはさして不思議に思わなかったようだ。
「そこの、棚」
顔の向きを僅かに変えて、視線で指し示される。マイケルは示されるままその棚に向かうと、五段に分かれている引き出し棚を片っ端から開けていった。
引き出しごとにちゃんと衣類が分別されて仕舞ってあるけれど、所々乱雑に押し込んである衣類もあったりして生活感が窺える。彼はこの家でしっかりと生活しているのだ。
マイケルはお目当てのナイトシャツを見つけると、離れたときと同じく大股でニールのいるベッドへ戻ろうとしてふと動きを止めた。彼がベッドから起き上がろうとしていたからだ。
「なんで起き上がってるんだよ、寝てなきゃ駄目だ」
「起きなきゃ、着替えられねえ、だろ」
ニールの言うことは正論だった。寝たきりの老人か、歩くこともできない赤子ならいざ知らず、いくら病人といえど彼は大人だし着替えるぐらいはできるだろう。けれどマイケルは腑に落ちない。
「起きなくていいから」
ベッド脇まで戻り、浮き上がっていたニールの肩をシーツに押し戻す。何で? と不思議そうな顔をする彼は、熱のせいなのかマイケルの意図を測りかねているらしかった。そんな彼に構わず、カソックのボタンを外していく。
「マイケル、……」
ニールは自立した大人だ。未だ学生のマイケルとは違い、牧師という職業につき、自立した生活基盤を築いている。器用な彼は身の回りのことだって卒なくやっているのだろうし、風邪をひいたって、余程つらくない限り自力で治してしまうのだろう。いや、社交的な彼のことだ。頼れば喜んで看病してくれる人の一人や二人いるはずだ。
「な、なあマイケル……いいって。自分でできる……」
最終更新:2011年10月06日 22:27