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「ジェフリー……?」
 呻くような問いかけの声が零れる。それを受けて、男は酒に濁った目を訝しげに細めた。
「あ? なんで俺の名前を知ってやがる、テメエ」
「ニール、知り合いなのか?」
 状況が掴めず、マイケルはニールの袖を引いた。だが、問いかけにニールは答えなかった。茫然自失になっているわけではないのは、すぐに固く引き結ばれた口元からも明らかだ。明確な意志の元に、ニールは返答を避けている。その事実に、不穏な予感が黒雲となって、胸中に沸き起こった。
 ニールが口を閉ざす中、マイケルの問いかけに反応したのは、眼前の男の方だった。
「ニール……? まさかお前、ニール・ローウェルか!?」
 濁った目を見開き、ぽかんと口を開けてニールを見上げる。ニールは肯定も否定も返さず、ただ無言で男を見下ろすだけだ。だが、男が確信を抱くにはそれでも十分だったらしい。少しの間をおいて、男の口の端が悪意の形に吊り上がった。 
「へえ、見ない間に随分とでかくなったじゃねえか。そのナリは何だよ。まさかお前、牧師でもやってるのか?」
 ニールの服装をあげつらって、何が面白いのかげらげらと大声で笑う。失礼な言動に、しかしマイケルは何も言えなかった。男の非礼さに反論する言葉は五万とある。だが、それを発するための怒りの熱は、傍らから漂う冷気に飲み込まれてしまっていた。




最終更新:2012年09月19日 23:47