「誕生日と星座は?」
「よく知らない」
「何処に住んでるの?」
「今日から寄宿舎」
「スリーサイズは?」
「パーソナルデータにあまり興味ない」
「ここの制服着ないの?」
「調達が間に合わなかった」
「あかりんって呼んでいい?」
「別にいい」
「趣味と特技は?」
「射撃と料理」
「好きなタイプは?」
「……転生者?」
「罵ってください!」
「くたばれ、地獄で懺悔しろ」
矢継ぎ早に飛ばされる質問の嵐に灯は全く表情を変える事なく淡々と答える。
彼女を囲む人だかりを見ながら、担任は呆れたように嘆息を吐き出した。
「おいおい、緋室さんにばっかり質問するんじゃないぞ? 転入生はもう一人いるんだから……なあ、柊くん?」
「…………」
担任の声に回りの生徒達の視線が一斉に蓮司に集まった。
しかし彼は視線を気にするでもなく、何かに耐えるように歯を食いしばり拳を握り締めている。
「どうした、柊君」
「…………」
「あれ、ちょっ……柊君!?」
蓮司は担任の声を無視して踵を返し、教室の引き戸を豪快に開け放って廊下に出た。
そして彼は教室に振り返り、目線を上げる。
「よく知らない」
「何処に住んでるの?」
「今日から寄宿舎」
「スリーサイズは?」
「パーソナルデータにあまり興味ない」
「ここの制服着ないの?」
「調達が間に合わなかった」
「あかりんって呼んでいい?」
「別にいい」
「趣味と特技は?」
「射撃と料理」
「好きなタイプは?」
「……転生者?」
「罵ってください!」
「くたばれ、地獄で懺悔しろ」
矢継ぎ早に飛ばされる質問の嵐に灯は全く表情を変える事なく淡々と答える。
彼女を囲む人だかりを見ながら、担任は呆れたように嘆息を吐き出した。
「おいおい、緋室さんにばっかり質問するんじゃないぞ? 転入生はもう一人いるんだから……なあ、柊くん?」
「…………」
担任の声に回りの生徒達の視線が一斉に蓮司に集まった。
しかし彼は視線を気にするでもなく、何かに耐えるように歯を食いしばり拳を握り締めている。
「どうした、柊君」
「…………」
「あれ、ちょっ……柊君!?」
蓮司は担任の声を無視して踵を返し、教室の引き戸を豪快に開け放って廊下に出た。
そして彼は教室に振り返り、目線を上げる。
『2-B』
「……またこのネタかよおおぉおぉおお!?」
私立銀成学園高校の屋上。
遠方に広がる街並みと、昼休みの喧騒に僅かに揺れる生徒達を眼下に臨みながら、蓮司は目を細めて息を吐き出した。
「学校っていいなあ……」
満ち足りた表情で彼はしみじみと感想を吐き出す。
学校に辿り着くまでは勿論の事、午前中の授業も何事もなく終了した。
そんな普通の学生のような時間を過ごしたのはいつ以来だっただろうか。もうあまり記憶に残っていない。
「あとは……」
落下防止のフェンスに置いた手に僅かに力を込める。
そして彼は小さく俯くと、肺の空気を全て吐き出すほど深く暗い溜息を吐き出した。
「これで三年だったらなあ……」
「……何故そこまで学年に拘る?」
脇から呆れたような声を出したのは斗貴子だった。
彼女はフェンスに背を預けながら、ちらりと蓮司に視線をやる。
「潜入任務で学年が変わるなんて、別に珍しい事でもないだろう。私だって年齢で言えば三年なんだぞ?」
もっともと言えばもっともと言える彼女の言葉に、しかし蓮司はがくりと肩を落とし恨みがましい目線で斗貴子を見返した。
「……じゃあお前、今から一年の教室に行って『本来なら三年生のはずですが、何故か一年生に編入される事になりました』とか言われても平気なのか?」
「それは…………すまなかった」
カズキの妹である武藤まひろのクラスに赴く事を想像したのだろう、斗貴子は僅かに眉を険しくして呻くように漏らす。
微妙に重い沈黙が降りて斗貴子は手にしていた昼食のサンドイッチを口に入れる。
なんとなく空気に耐えられなかったのか、彼女はサンドイッチを飲み込むようにして喉に通した後再び口を開いた。
「しかし、彼女は何故キミ達を学校に編入させたのだろうな。今回の任務から言って学校に入る必要などなさそうなのに」
「前の斗貴子さんと同じなんじゃ?」
地面に座り込んで青汁を飲んでいるカズキが言うと、彼女はゆるゆると頭を振ってそれを否定する。
「あの時はまともな戦力が私だけだったから。今は私にカズキ、剛太や毒島、そして戦士長が二人もいる。
ウィザードではなくとも一拠点を防衛するには過剰と言っていい程の戦力だ」
「んー。じゃあアレだよ。やっぱ学生なんだから学校に行っとかないとって事じゃない?」
「何を暢気な……」
「そんな訳あるか」
嘆息交じりに言いかけた斗貴子に口を挟んだのは蓮司である。
彼は振り向いて斗貴子と同じようにフェンスに背を預け、ずるずると座り込みながら口を尖らせた。
「あの女のこった、特に深い意味なんてねえよ。あったとしても何か下らねえ悪巧みに決まってる。アイツはそーいう奴だからな」
はん、と言いながら蓮司は肩を竦めて見せる。
それと同時に、彼等がいるこの屋上と校舎を繋ぐ鉄扉が弾け飛ばんばかりの勢いで開かれた。
「カズキィィイ!!」
「あ、やっぱりここにいたんだ」
「てっきり校内を案内してるかと思ったんだが」
姿を現したのは岡倉 英之、大浜 真史、六枡 孝二の三人である。
「おう、皆――どふっ!」
友人の顔を認めたカズキが喜色を称えて手を上げ声を上げかけたが、一直線に疾走してきた岡倉のリーゼントがカズキの顔に叩き込まれた。
岡倉はのけぞったカズキの胸倉を掴み上げ、がくがくと揺さぶりながら更に叫ぶ。
「何故だぁあ!?」
「な、何が……?」
「アレだっ!」
「……?」
体中に怒気を孕ませたまま、岡倉は先程から黙々とパンを食べている緋室灯を指差した。
「斗貴子さんといい、緋室さんといい、何故転入生はお前にばっかり集まる!?」
「……あー」
合点がいったのかカズキは一つ頷いてみせると、小さく笑みを浮かべてポーズを決めて見せる。
「やっぱアレかな、オレもついに覚醒しちゃったかな」
「覚醒だとぅ?」
「そう……男のミリョクって奴に! 斗貴子さん斗貴子さん」
「?」
カズキは愕然とする岡倉を押し退けて斗貴子に顔を向ける。
怪訝そうに見返してくる彼女にカズキは優しく微笑みかけて――
「悩殺! カズキキッス!」
「―――」
斗貴子は身体が強張り、目を僅かに見開く。
ポーズを決めたまま動かないカズキを呆然と凝視したまま――彼女は顔を紅潮させた。
「……っ」
しかし彼女はすぐに眉間にしわを寄せて、驚くべき速さで指をカズキの眼に叩き込む。
「△×□~~!」
「……今度やったらブチ撒けると夏に言わなかったか? 言ったよな?」
「ごめん、つい」
「まったく……」
紅潮してしまった頬に手を当てながら誤魔化すように顔を反らすと、斗貴子はそこで何時の間にか斗貴子達から距離を取っている蓮司に気付いた。
「……どうした、蓮司」
彼はびくりと身体を震わせた後、周囲に目を配りながら小さく溜息をつく。
「……いや、てっきりアンゼロットが出てくるのかと」
「わたくしがどうかしましたか、柊さん?」
「ひっ!?」
唐突に声が響いて蓮司は裏返った悲鳴を上げて飛び退き、声のした方を見る。
だがそこにはアンゼロットの姿はなく、パンを食べ終えた灯の姿があった。
「……似てた?」
「心臓に悪い事すんじゃねえよ! いくら声が似てるからってえ!!」
「……いつもじゃれあってるから、つい」
「じゃれあってる訳じゃねえ!?」
「俺もぜひじゃれあいたい!」
地団太を踏みながら叫ぶ蓮司に混ざるように岡倉が手を上げて叫ぶ。
灯は彼に視線をやり上から下まで観察すると、
「……私と?」
「そう! 同じクラスメイトとしてぜひ!」
「…………じゃあ、これ」
灯は脇においてあったバッグに手を入れて、光り輝く直方体の物体を取り出した。
「こ、これは……っ!?」「そ、それは……っ!?」
岡倉の期待に満ちた声と、蓮司の驚愕に満ちた呻きが同時に漏れる。
「これは……お弁当?」
「凄いな、純銀製だ」
岡倉の後ろから覗き込んだ大浜と六枡の二人が声を漏らす。
そしてそれに直面している岡倉はまるで太陽に目がくらんだかのように身体を震わせている。
「こ、これはまさか!」
「……お近付きの印に作ってきた」
「やはり手作り弁当っ!? 色々過程をすっ飛ばしていきなり? 俺、いつの間にフラグを立てたんだ!?」
おそるおそる弁当箱に手を伸ばしかける岡倉。
しかしそれを制止する声が轟いた。
「待て! 早まるな……えっと、リーゼント!」
「岡倉 英之」
「そう、岡倉! ……死ぬぞっ!!」
純銀の弁当箱の蓋がカタカタと鳴動しているのに気付いているのは蓮司だけだった。
いや、恐らくは斗貴子も気付いているのだろう、彼女は少しだけ青ざめた様子で弁当箱を凝視している。
切羽詰った蓮司の叫びに岡倉は一度だけ彼に視線を向ける。
そしてふっと笑みを浮かべると、
「美少女に殺されるなら本望だ! でやっ!」
岡倉は弁当箱の蓋に手をかけると、一気にそれを開け放ち――
遠方に広がる街並みと、昼休みの喧騒に僅かに揺れる生徒達を眼下に臨みながら、蓮司は目を細めて息を吐き出した。
「学校っていいなあ……」
満ち足りた表情で彼はしみじみと感想を吐き出す。
学校に辿り着くまでは勿論の事、午前中の授業も何事もなく終了した。
そんな普通の学生のような時間を過ごしたのはいつ以来だっただろうか。もうあまり記憶に残っていない。
「あとは……」
落下防止のフェンスに置いた手に僅かに力を込める。
そして彼は小さく俯くと、肺の空気を全て吐き出すほど深く暗い溜息を吐き出した。
「これで三年だったらなあ……」
「……何故そこまで学年に拘る?」
脇から呆れたような声を出したのは斗貴子だった。
彼女はフェンスに背を預けながら、ちらりと蓮司に視線をやる。
「潜入任務で学年が変わるなんて、別に珍しい事でもないだろう。私だって年齢で言えば三年なんだぞ?」
もっともと言えばもっともと言える彼女の言葉に、しかし蓮司はがくりと肩を落とし恨みがましい目線で斗貴子を見返した。
「……じゃあお前、今から一年の教室に行って『本来なら三年生のはずですが、何故か一年生に編入される事になりました』とか言われても平気なのか?」
「それは…………すまなかった」
カズキの妹である武藤まひろのクラスに赴く事を想像したのだろう、斗貴子は僅かに眉を険しくして呻くように漏らす。
微妙に重い沈黙が降りて斗貴子は手にしていた昼食のサンドイッチを口に入れる。
なんとなく空気に耐えられなかったのか、彼女はサンドイッチを飲み込むようにして喉に通した後再び口を開いた。
「しかし、彼女は何故キミ達を学校に編入させたのだろうな。今回の任務から言って学校に入る必要などなさそうなのに」
「前の斗貴子さんと同じなんじゃ?」
地面に座り込んで青汁を飲んでいるカズキが言うと、彼女はゆるゆると頭を振ってそれを否定する。
「あの時はまともな戦力が私だけだったから。今は私にカズキ、剛太や毒島、そして戦士長が二人もいる。
ウィザードではなくとも一拠点を防衛するには過剰と言っていい程の戦力だ」
「んー。じゃあアレだよ。やっぱ学生なんだから学校に行っとかないとって事じゃない?」
「何を暢気な……」
「そんな訳あるか」
嘆息交じりに言いかけた斗貴子に口を挟んだのは蓮司である。
彼は振り向いて斗貴子と同じようにフェンスに背を預け、ずるずると座り込みながら口を尖らせた。
「あの女のこった、特に深い意味なんてねえよ。あったとしても何か下らねえ悪巧みに決まってる。アイツはそーいう奴だからな」
はん、と言いながら蓮司は肩を竦めて見せる。
それと同時に、彼等がいるこの屋上と校舎を繋ぐ鉄扉が弾け飛ばんばかりの勢いで開かれた。
「カズキィィイ!!」
「あ、やっぱりここにいたんだ」
「てっきり校内を案内してるかと思ったんだが」
姿を現したのは岡倉 英之、大浜 真史、六枡 孝二の三人である。
「おう、皆――どふっ!」
友人の顔を認めたカズキが喜色を称えて手を上げ声を上げかけたが、一直線に疾走してきた岡倉のリーゼントがカズキの顔に叩き込まれた。
岡倉はのけぞったカズキの胸倉を掴み上げ、がくがくと揺さぶりながら更に叫ぶ。
「何故だぁあ!?」
「な、何が……?」
「アレだっ!」
「……?」
体中に怒気を孕ませたまま、岡倉は先程から黙々とパンを食べている緋室灯を指差した。
「斗貴子さんといい、緋室さんといい、何故転入生はお前にばっかり集まる!?」
「……あー」
合点がいったのかカズキは一つ頷いてみせると、小さく笑みを浮かべてポーズを決めて見せる。
「やっぱアレかな、オレもついに覚醒しちゃったかな」
「覚醒だとぅ?」
「そう……男のミリョクって奴に! 斗貴子さん斗貴子さん」
「?」
カズキは愕然とする岡倉を押し退けて斗貴子に顔を向ける。
怪訝そうに見返してくる彼女にカズキは優しく微笑みかけて――
「悩殺! カズキキッス!」
「―――」
斗貴子は身体が強張り、目を僅かに見開く。
ポーズを決めたまま動かないカズキを呆然と凝視したまま――彼女は顔を紅潮させた。
「……っ」
しかし彼女はすぐに眉間にしわを寄せて、驚くべき速さで指をカズキの眼に叩き込む。
「△×□~~!」
「……今度やったらブチ撒けると夏に言わなかったか? 言ったよな?」
「ごめん、つい」
「まったく……」
紅潮してしまった頬に手を当てながら誤魔化すように顔を反らすと、斗貴子はそこで何時の間にか斗貴子達から距離を取っている蓮司に気付いた。
「……どうした、蓮司」
彼はびくりと身体を震わせた後、周囲に目を配りながら小さく溜息をつく。
「……いや、てっきりアンゼロットが出てくるのかと」
「わたくしがどうかしましたか、柊さん?」
「ひっ!?」
唐突に声が響いて蓮司は裏返った悲鳴を上げて飛び退き、声のした方を見る。
だがそこにはアンゼロットの姿はなく、パンを食べ終えた灯の姿があった。
「……似てた?」
「心臓に悪い事すんじゃねえよ! いくら声が似てるからってえ!!」
「……いつもじゃれあってるから、つい」
「じゃれあってる訳じゃねえ!?」
「俺もぜひじゃれあいたい!」
地団太を踏みながら叫ぶ蓮司に混ざるように岡倉が手を上げて叫ぶ。
灯は彼に視線をやり上から下まで観察すると、
「……私と?」
「そう! 同じクラスメイトとしてぜひ!」
「…………じゃあ、これ」
灯は脇においてあったバッグに手を入れて、光り輝く直方体の物体を取り出した。
「こ、これは……っ!?」「そ、それは……っ!?」
岡倉の期待に満ちた声と、蓮司の驚愕に満ちた呻きが同時に漏れる。
「これは……お弁当?」
「凄いな、純銀製だ」
岡倉の後ろから覗き込んだ大浜と六枡の二人が声を漏らす。
そしてそれに直面している岡倉はまるで太陽に目がくらんだかのように身体を震わせている。
「こ、これはまさか!」
「……お近付きの印に作ってきた」
「やはり手作り弁当っ!? 色々過程をすっ飛ばしていきなり? 俺、いつの間にフラグを立てたんだ!?」
おそるおそる弁当箱に手を伸ばしかける岡倉。
しかしそれを制止する声が轟いた。
「待て! 早まるな……えっと、リーゼント!」
「岡倉 英之」
「そう、岡倉! ……死ぬぞっ!!」
純銀の弁当箱の蓋がカタカタと鳴動しているのに気付いているのは蓮司だけだった。
いや、恐らくは斗貴子も気付いているのだろう、彼女は少しだけ青ざめた様子で弁当箱を凝視している。
切羽詰った蓮司の叫びに岡倉は一度だけ彼に視線を向ける。
そしてふっと笑みを浮かべると、
「美少女に殺されるなら本望だ! でやっ!」
岡倉は弁当箱の蓋に手をかけると、一気にそれを開け放ち――
「キシャアアァ!!」
――叩きつけるような勢いで蓋を閉じた。
「………」
「………」
「………」
「………」
「………」
「………食べてくれないの?」
「えっ!? いや……」
身体を大きく震わせ、怯えた目で灯を見る岡倉。
彼女は無機質な瞳に僅かな悲嘆を孕ませてから、僅かに顔を伏せて呟いた。
「……友達になってくれると思ったのに」
「うっ……うぐ、ぐぅ……!」
「あ、あんまり無理しない方がいいよ、岡倉君……」
「……せめて遺書を書いてからにした方がいいぞ」
大浜と六枡の声を耳に入れながらも視線はガタガタと揺れ動く弁当箱から目を離せない。
息を呑んで岡倉は再び弁当箱に手を伸ばそうとするが、どうしても触れることができなかった。
そんな時、弁当箱を横からカズキが取り上げた。
「岡倉が食わないんならオレが食うぞ?」
「「何ィー!?」」
蓮司と斗貴子が同時に声を上げる。
「? せっかくあかりんが作ってくれたんだから食べてやんないと失礼だろ?」
「武藤カズキ……」
灯が尊敬と親愛を込めた目線をカズキに向ける。
そんな彼女を尻目に、蓮司と斗貴子は焦った様子でカズキに詰め寄った。
「おま、お前さっきの見なかったのか!?」
「見たよ? 凄い活きが良かったよな」
「活きがいいとかいう問題ではないだろう、アレは!!」
「え、そう?」
言いながらカズキは躊躇なく蓋を開ける。
「キシャア!!」
同時に緑色をした物体が粘液を吹き散らしながら奇声を上げる。
「活き作りと似たようなモンだって。ほらこの色なんて青汁みたいだし」
「色とか以前にそのクリーチャーに疑問を持てよ!!」
「そうだなあ、丸呑みは流石にちょっとアレだからこっちの方だけ」
「いやそっちじゃなくてさ!!」
蓮司の叫びを無視してカズキは灯から受け取った箸(純銀)で触手らしきモノを摘み上げる。
びちびちと跳ねるそれを見て斗貴子はひっ、と裏返った悲鳴を漏らし、縋るようにカズキを見た。
「お願いだ、カズキ……青汁やゲテモノはいいとしても、人としての尊厳まで失わないでくれ……」
「斗貴子さん……心配性だなあ。大丈夫だって、見た目はコレでもちゃんと作った奴なんだよな、あかりん?」
「………。うん」
少しだけ沈黙した後こくりと頷いた灯にカズキは満面の笑みを浮かべて見せた。
「ホラな。それじゃいただきまーす」
「「あ゛あ゛~~!?」」
カズキは緑色の液体を滴らせた触手を口の中に放り込む。同時に蓮司と斗貴子の悲鳴にも似た声が響いた。
岡倉達三人はもはや声も出ないと言った感じでカズキを凝視し、灯もまたカズキの様子を窺っている。
固唾を呑んで見守る周囲を他所にカズキはしばし咀嚼した後それを嚥下し、吟味するように首を捻った。
「……なんていうか、新感覚?」
「マジでっ!?」
「だ、大丈夫なのか? 本当に何ともないのか!?」
「大丈夫だってば。今まで食べた事ない味だからちょっと戸惑うけど、慣れれば全然平気だよ?」
青ざめた顔で尋ねる斗貴子にカズキは笑顔で答える。
灯は半ば呆然としてカズキを眺めやり……そして彼の手をそっと握った。
「武藤カズキ……貴方は素晴らしい」
「え? そう?」
「……私の料理をまともに食べてくれたのは貴方が初めてだから……とても嬉しい」
普段表情を崩すことがない灯の顔がほころぶ。
多少ぎこちなくはあったが柔らかい笑顔を向けられて、カズキは照れ臭そうに頬を掻いた。
「カァアァアアズキィイィイイ!!」
横合いから怨嗟に満ち満ちた岡倉の叫びが響き渡る。
「斗貴子さんというものがありながら、なおかつ彼女を目の前に何をストロベリってやがるんだぁああ!?」
岡倉は大きなリーゼントをカズキの脳天に叩きつけ、手にしていた弁当を彼からひったくった。
「カズキが食べれるんなら俺だってー!!」
「待て、リーゼント!」
「早まるな、岡倉!」
「岡倉君落ち着いて!」
「だから遺書を先に書いておけと」
灯とカズキを除いた周囲の制止を振り切って岡倉は奇声を上げるクリーチャーを箸でむんずと掴む。
「うおぉおおおぉおーーー!!」
そして勢いに身を任せたまま彼はソレを口の中に放り込み――
「………」
「………」
「………」
「………」
「………食べてくれないの?」
「えっ!? いや……」
身体を大きく震わせ、怯えた目で灯を見る岡倉。
彼女は無機質な瞳に僅かな悲嘆を孕ませてから、僅かに顔を伏せて呟いた。
「……友達になってくれると思ったのに」
「うっ……うぐ、ぐぅ……!」
「あ、あんまり無理しない方がいいよ、岡倉君……」
「……せめて遺書を書いてからにした方がいいぞ」
大浜と六枡の声を耳に入れながらも視線はガタガタと揺れ動く弁当箱から目を離せない。
息を呑んで岡倉は再び弁当箱に手を伸ばそうとするが、どうしても触れることができなかった。
そんな時、弁当箱を横からカズキが取り上げた。
「岡倉が食わないんならオレが食うぞ?」
「「何ィー!?」」
蓮司と斗貴子が同時に声を上げる。
「? せっかくあかりんが作ってくれたんだから食べてやんないと失礼だろ?」
「武藤カズキ……」
灯が尊敬と親愛を込めた目線をカズキに向ける。
そんな彼女を尻目に、蓮司と斗貴子は焦った様子でカズキに詰め寄った。
「おま、お前さっきの見なかったのか!?」
「見たよ? 凄い活きが良かったよな」
「活きがいいとかいう問題ではないだろう、アレは!!」
「え、そう?」
言いながらカズキは躊躇なく蓋を開ける。
「キシャア!!」
同時に緑色をした物体が粘液を吹き散らしながら奇声を上げる。
「活き作りと似たようなモンだって。ほらこの色なんて青汁みたいだし」
「色とか以前にそのクリーチャーに疑問を持てよ!!」
「そうだなあ、丸呑みは流石にちょっとアレだからこっちの方だけ」
「いやそっちじゃなくてさ!!」
蓮司の叫びを無視してカズキは灯から受け取った箸(純銀)で触手らしきモノを摘み上げる。
びちびちと跳ねるそれを見て斗貴子はひっ、と裏返った悲鳴を漏らし、縋るようにカズキを見た。
「お願いだ、カズキ……青汁やゲテモノはいいとしても、人としての尊厳まで失わないでくれ……」
「斗貴子さん……心配性だなあ。大丈夫だって、見た目はコレでもちゃんと作った奴なんだよな、あかりん?」
「………。うん」
少しだけ沈黙した後こくりと頷いた灯にカズキは満面の笑みを浮かべて見せた。
「ホラな。それじゃいただきまーす」
「「あ゛あ゛~~!?」」
カズキは緑色の液体を滴らせた触手を口の中に放り込む。同時に蓮司と斗貴子の悲鳴にも似た声が響いた。
岡倉達三人はもはや声も出ないと言った感じでカズキを凝視し、灯もまたカズキの様子を窺っている。
固唾を呑んで見守る周囲を他所にカズキはしばし咀嚼した後それを嚥下し、吟味するように首を捻った。
「……なんていうか、新感覚?」
「マジでっ!?」
「だ、大丈夫なのか? 本当に何ともないのか!?」
「大丈夫だってば。今まで食べた事ない味だからちょっと戸惑うけど、慣れれば全然平気だよ?」
青ざめた顔で尋ねる斗貴子にカズキは笑顔で答える。
灯は半ば呆然としてカズキを眺めやり……そして彼の手をそっと握った。
「武藤カズキ……貴方は素晴らしい」
「え? そう?」
「……私の料理をまともに食べてくれたのは貴方が初めてだから……とても嬉しい」
普段表情を崩すことがない灯の顔がほころぶ。
多少ぎこちなくはあったが柔らかい笑顔を向けられて、カズキは照れ臭そうに頬を掻いた。
「カァアァアアズキィイィイイ!!」
横合いから怨嗟に満ち満ちた岡倉の叫びが響き渡る。
「斗貴子さんというものがありながら、なおかつ彼女を目の前に何をストロベリってやがるんだぁああ!?」
岡倉は大きなリーゼントをカズキの脳天に叩きつけ、手にしていた弁当を彼からひったくった。
「カズキが食べれるんなら俺だってー!!」
「待て、リーゼント!」
「早まるな、岡倉!」
「岡倉君落ち着いて!」
「だから遺書を先に書いておけと」
灯とカズキを除いた周囲の制止を振り切って岡倉は奇声を上げるクリーチャーを箸でむんずと掴む。
「うおぉおおおぉおーーー!!」
そして勢いに身を任せたまま彼はソレを口の中に放り込み――
「……………………………ぐぶっ」
くぐもった呻き声を漏らして昏倒した。