幻想が現実となり、紅き月が水の都に昇る。
虚構は現実へ、現実は虚構へと。
時は停滞し、日々は繰り返される。
都の護り手は、その力を封じられ、
白の導き手は、少女を連れ戻すべく奔走する。
水の導き手たる共感者が堕ちたとき、世界は闇に包まれるだろう。
この危機を防ぐためには「柊蓮司」の力の必要になる。
――――とあるバカップルの予言写本より
虚構は現実へ、現実は虚構へと。
時は停滞し、日々は繰り返される。
都の護り手は、その力を封じられ、
白の導き手は、少女を連れ戻すべく奔走する。
水の導き手たる共感者が堕ちたとき、世界は闇に包まれるだろう。
この危機を防ぐためには「柊蓮司」の力の必要になる。
――――とあるバカップルの予言写本より
「おはよっ、後輩ちゃん!」
振り返るとそこには青く短い髪に、勝気そうな瞳をした自分より少し年上の少女が立っていた。
私に声をかけたのは、姫屋のウンディーネの藍華先輩。勝気そうに見えて、意外と泣き虫なところがあるひとで、
所属している会社は別なのだが、いつの間にか一緒に合同練習をするのが日課になっていた。
「おはようございます、藍華先輩。……灯里先輩はまだ来ていないみたいですね」
いつもなら誰よりも先に来ているはずなのに。……珍しい。
「あかり?誰それ、オレンジぷらねっとの人?」
両手につけた手袋をつけ直しながら、藍華先輩は言った。
「?なにいってるんですか?」
そう問いかけても、わけがわからないという風に首をかしげている。
どういう事でしょう、からかわれているんでしょうか?
アテナ先輩や晃先輩ならともかく、藍華先輩がこんな突拍子もないことをするとは思えない。
喧嘩したにしても、こういう陰険な態度を藍華先輩がとるとは思えないし、
でもふざけているようにも……でっかい不思議です。
振り返るとそこには青く短い髪に、勝気そうな瞳をした自分より少し年上の少女が立っていた。
私に声をかけたのは、姫屋のウンディーネの藍華先輩。勝気そうに見えて、意外と泣き虫なところがあるひとで、
所属している会社は別なのだが、いつの間にか一緒に合同練習をするのが日課になっていた。
「おはようございます、藍華先輩。……灯里先輩はまだ来ていないみたいですね」
いつもなら誰よりも先に来ているはずなのに。……珍しい。
「あかり?誰それ、オレンジぷらねっとの人?」
両手につけた手袋をつけ直しながら、藍華先輩は言った。
「?なにいってるんですか?」
そう問いかけても、わけがわからないという風に首をかしげている。
どういう事でしょう、からかわれているんでしょうか?
アテナ先輩や晃先輩ならともかく、藍華先輩がこんな突拍子もないことをするとは思えない。
喧嘩したにしても、こういう陰険な態度を藍華先輩がとるとは思えないし、
でもふざけているようにも……でっかい不思議です。
「おう、なんだこれから練習か?ガチャベン」
そう言って声をかけてきたのは、サラマンダー(火炎之番人)の暁さん。
黒い髪をポニーテールにしているが、れっきとした男性である。
「うっさい、アンタには関係ないでしょ?ポニ男」
むすっとした顔で言葉を返す藍華先輩。相変わらず仲が悪いんですね、この二人は。
そうだ。
「暁さんは、灯里先輩のことを知ってますよね?」
少し声が震えてしまう。まるで自分が別の世界に迷い込んだような気になる。
「あ、誰だそいつ?知り合いか?」
何を言ってるんだ?という感じで首をかしげる。
「もみ子っていつも暁さんが呼んでいる人ですよ」
「もみ子?そんなセンスのないあだ名、俺様はつけんぞ」
「……すみません、藍華先輩。用事があったのを思い出しました。失礼します」
「ちょ、ちょっと後輩ちゃん!?」
嫌な胸騒ぎを感じる。
ほんの数メートル先のいつもの光景が壁に遮られたように、
まるで別もののように見えて。
ソレを否定したくて、ここに居たくなくて、そこから私は逃げ出した。
そう言って声をかけてきたのは、サラマンダー(火炎之番人)の暁さん。
黒い髪をポニーテールにしているが、れっきとした男性である。
「うっさい、アンタには関係ないでしょ?ポニ男」
むすっとした顔で言葉を返す藍華先輩。相変わらず仲が悪いんですね、この二人は。
そうだ。
「暁さんは、灯里先輩のことを知ってますよね?」
少し声が震えてしまう。まるで自分が別の世界に迷い込んだような気になる。
「あ、誰だそいつ?知り合いか?」
何を言ってるんだ?という感じで首をかしげる。
「もみ子っていつも暁さんが呼んでいる人ですよ」
「もみ子?そんなセンスのないあだ名、俺様はつけんぞ」
「……すみません、藍華先輩。用事があったのを思い出しました。失礼します」
「ちょ、ちょっと後輩ちゃん!?」
嫌な胸騒ぎを感じる。
ほんの数メートル先のいつもの光景が壁に遮られたように、
まるで別もののように見えて。
ソレを否定したくて、ここに居たくなくて、そこから私は逃げ出した。
柊蓮司と退屈なお茶会(A Mad Tea-Party)
Scene 2 : 白猫、不幸な男を送り込む “The Cat Sends Unhappy Man”
Scene 2 : 白猫、不幸な男を送り込む “The Cat Sends Unhappy Man”
柊蓮司は、目の前の物体を前に固まっていた。
「なんだ、シロクマなのか……コレは?」
まあ平安時代っぽい眉を除けば確かにそう見えなくもないが。
……でも「にゅっ」ってなんだ「にゅっ」って。
いや、シロクマの泣き声なんて知らないけどソレは明らかに違うだろ。
それになんつーか間抜けっぽいしコイツ。
北極最強の肉食獣であるシロクマとは思えない。
「ぷいにゅ!」
じりっ。少しずつ気取られないように、後退りする。
やばい、なんだかわけが分からないがトラブルの匂いがする。
柊の、主にアンゼロットのせいによる不幸によって研ぎ澄まれた危機察知能力が警告を発する。
じりじり。今だ!!身を翻し、唯一の出口から逃走をはかる。
「せっかくの休暇をつぶされてたまっ……」
――――ドカッ。次の瞬間柊は見えざる壁に顔面からぶつかっていた。
「ぐ、ぐお……」
大いなる者の特殊能力「次元断」によって唯一の退路を封じられ、
「にゅ?」
――――ガコンッ。
痛みに顔面をおさえ、前後不覚になった彼の足元に唐突に広がる暗闇。
急に訪れるのは浮遊感。
「なんだ、シロクマなのか……コレは?」
まあ平安時代っぽい眉を除けば確かにそう見えなくもないが。
……でも「にゅっ」ってなんだ「にゅっ」って。
いや、シロクマの泣き声なんて知らないけどソレは明らかに違うだろ。
それになんつーか間抜けっぽいしコイツ。
北極最強の肉食獣であるシロクマとは思えない。
「ぷいにゅ!」
じりっ。少しずつ気取られないように、後退りする。
やばい、なんだかわけが分からないがトラブルの匂いがする。
柊の、主にアンゼロットのせいによる不幸によって研ぎ澄まれた危機察知能力が警告を発する。
じりじり。今だ!!身を翻し、唯一の出口から逃走をはかる。
「せっかくの休暇をつぶされてたまっ……」
――――ドカッ。次の瞬間柊は見えざる壁に顔面からぶつかっていた。
「ぐ、ぐお……」
大いなる者の特殊能力「次元断」によって唯一の退路を封じられ、
「にゅ?」
――――ガコンッ。
痛みに顔面をおさえ、前後不覚になった彼の足元に唐突に広がる暗闇。
急に訪れるのは浮遊感。
「お、俺の休暇を返せ~~~!!」
哀れにも柊蓮司は唐突にできた穴から地下へと下がっていった。
柊は危機を察知できても、回避はできないということか。
柊は危機を察知できても、回避はできないということか。
……にしてもアリア社長とぼけた顔でこんなことをするとは意外と外道である。
「……いったいどういうことなんでしょう。でっかい謎です」
ベンチで一人うなだれる。誰も覚えていないなんて。
晃さんも、郵便屋さんも、ムッくんも、アリシアさんも、誰一人覚えていないなんて。
からかわれているにしても、いくらなんでも度が過ぎます。
「まぁ社長は覚えていますよね、灯里先輩のこと?」
まぁ社長は首をかしげるだけで、答えを返してくれない。
八方ふさがりでもうどうしていいのかわからなくなって。
世界に一人きりになってしまったような気がした。
ベンチで一人うなだれる。誰も覚えていないなんて。
晃さんも、郵便屋さんも、ムッくんも、アリシアさんも、誰一人覚えていないなんて。
からかわれているにしても、いくらなんでも度が過ぎます。
「まぁ社長は覚えていますよね、灯里先輩のこと?」
まぁ社長は首をかしげるだけで、答えを返してくれない。
八方ふさがりでもうどうしていいのかわからなくなって。
世界に一人きりになってしまったような気がした。
「あら、こんなところに座り込んで。どうかしたの?」
その少女は銀色の髪に、金色の瞳。見たこともない制服の上にポンチョを着込み、
じゃがバターをほおばっている。彼女は不敵な笑みを浮かべていた。
「あっ、ベルさん……」
彼女の名前はベル・フライ。アテナ先輩のお得意様で、
二年に一度黒髪の少女とともにネオヴェネツィアを訪れる。
今回黒髪の少女は来ていない。なんでも別の用事があって来られなかったらしい。
その少女は銀色の髪に、金色の瞳。見たこともない制服の上にポンチョを着込み、
じゃがバターをほおばっている。彼女は不敵な笑みを浮かべていた。
「あっ、ベルさん……」
彼女の名前はベル・フライ。アテナ先輩のお得意様で、
二年に一度黒髪の少女とともにネオヴェネツィアを訪れる。
今回黒髪の少女は来ていない。なんでも別の用事があって来られなかったらしい。
「ふうん、それは妙な話ね」
「はい……」
気がつけば今までのことを彼女に話していた。誰かに聞いて欲しかった、身近な人ではない誰かに。
「ベルさん、私どうすればいいのでしょうか?」
「それは貴方がどうしたいかによるわね」
「どこをさがせばいいんでしょう?」
「それは貴方がどこをさがしたいかによるわね」
「まあ、それはそうなんですけど……」
のらりくらりととらえどころのなく答える彼女に思わず眉をしかめてしまう。それを見てベルさんは微笑を浮かべる。
「そうね、それじゃあ一つだけヒントをあげましょう」
「ヒントですか」
「そうヒント。貴方しか覚えていないというその先輩。
周りの人が誰も覚えていなくて貴方だけが知っているというその先輩。
普通に考えるならそんな先輩はいないってことになるわ、ふつうに考えるならね」
「でもね、これは周りが普通だったときにいえること。もしそうでないのならば」
「そこには必ずなんらかの歪みが、矛盾が生じるわ。
それは些細なものかもしれないけど、明らかにおかしな異変
……私が言えるのはこれぐらいね」
そう言った彼女はじゃがバターを食べ終わると、
それが入っていた袋をくしゃくしゃに丸めベンチから立ち上がる。
「じゃ、がんばってね。……ここが消えてしまうのは、つまらないしね」
消える。その言葉になんだか不穏なものを感じ、呼び止めようとしたが、
「はい……」
気がつけば今までのことを彼女に話していた。誰かに聞いて欲しかった、身近な人ではない誰かに。
「ベルさん、私どうすればいいのでしょうか?」
「それは貴方がどうしたいかによるわね」
「どこをさがせばいいんでしょう?」
「それは貴方がどこをさがしたいかによるわね」
「まあ、それはそうなんですけど……」
のらりくらりととらえどころのなく答える彼女に思わず眉をしかめてしまう。それを見てベルさんは微笑を浮かべる。
「そうね、それじゃあ一つだけヒントをあげましょう」
「ヒントですか」
「そうヒント。貴方しか覚えていないというその先輩。
周りの人が誰も覚えていなくて貴方だけが知っているというその先輩。
普通に考えるならそんな先輩はいないってことになるわ、ふつうに考えるならね」
「でもね、これは周りが普通だったときにいえること。もしそうでないのならば」
「そこには必ずなんらかの歪みが、矛盾が生じるわ。
それは些細なものかもしれないけど、明らかにおかしな異変
……私が言えるのはこれぐらいね」
そう言った彼女はじゃがバターを食べ終わると、
それが入っていた袋をくしゃくしゃに丸めベンチから立ち上がる。
「じゃ、がんばってね。……ここが消えてしまうのは、つまらないしね」
消える。その言葉になんだか不穏なものを感じ、呼び止めようとしたが、
「ベルさん……!?」
彼女の姿はそこにはなく、丸められた袋が捨てられていただけだった。
彼女の姿はそこにはなく、丸められた袋が捨てられていただけだった。
柊が眼を覚ましたのは、どこかの路地裏。
レンガ造りの高い建物に切り取られた空を見上げると、
小島や見たこともない船が浮かんでいる。その小島には線が走っていて、
どうやらロープウェイで地上とつながっているようだ。
……また異世界に飛ばされたらしい。
すんなりとそのことを受け入れられる自分の順応能力の高さになんだか泣けてきた。
レンガ造りの高い建物に切り取られた空を見上げると、
小島や見たこともない船が浮かんでいる。その小島には線が走っていて、
どうやらロープウェイで地上とつながっているようだ。
……また異世界に飛ばされたらしい。
すんなりとそのことを受け入れられる自分の順応能力の高さになんだか泣けてきた。
「で、俺をここまで拉致ってきたのにはちゃんと理由があるんだろうな白いの?」
顔が少しひきつりながらも、目の前にいる諸悪の根源(仮)を睨む。
睨みつけられた諸悪の根源(仮)は涙目だが逃げるつもりはないらしく、
「ぷ、ぷいにゅ…」
くすん、くすん。腰がひけ、ふるふると震えている。
「はあ~~」
なんだかそんな姿を見ると、こちらが弱いものいじめをしているような気になる。
気が抜けてしまい、思わず座り込んでしまう。
まあそれに柊にとってみれば、拉致され無茶なお願いを
「はいかYesでお答えください」とごり押しされるのは日常茶飯事のことだし。
顔が少しひきつりながらも、目の前にいる諸悪の根源(仮)を睨む。
睨みつけられた諸悪の根源(仮)は涙目だが逃げるつもりはないらしく、
「ぷ、ぷいにゅ…」
くすん、くすん。腰がひけ、ふるふると震えている。
「はあ~~」
なんだかそんな姿を見ると、こちらが弱いものいじめをしているような気になる。
気が抜けてしまい、思わず座り込んでしまう。
まあそれに柊にとってみれば、拉致され無茶なお願いを
「はいかYesでお答えください」とごり押しされるのは日常茶飯事のことだし。
「ぷいにゅ」
「?」
ぴとっと前足が柊の額にあたる。ぷにぷにとしている肉球が気持ちいい。
「っつ……!?」
頭にいろいろな映像や知識が流れ込んでくる。
「これって……」
以前にめんどくさがり屋な「世界の守護者」が使った安直魔法「かくかくしかじか」に似ている。
入ってきた情報を吟味しながら、確かめるように柊は尋ねた。
「つまりここは『ガイア』のような平行世界の火星でお前はウィザードで、
水無灯里がエミュレーターにさらわれたから救出するのに手を貸してくれっていうんだな?」
「ぷいにゅ!!」
「でも、なんでわざわざ俺を呼んだんだ?こっちの世界でもウィザードはいるんだろ?」
「?」
ぴとっと前足が柊の額にあたる。ぷにぷにとしている肉球が気持ちいい。
「っつ……!?」
頭にいろいろな映像や知識が流れ込んでくる。
「これって……」
以前にめんどくさがり屋な「世界の守護者」が使った安直魔法「かくかくしかじか」に似ている。
入ってきた情報を吟味しながら、確かめるように柊は尋ねた。
「つまりここは『ガイア』のような平行世界の火星でお前はウィザードで、
水無灯里がエミュレーターにさらわれたから救出するのに手を貸してくれっていうんだな?」
「ぷいにゅ!!」
「でも、なんでわざわざ俺を呼んだんだ?こっちの世界でもウィザードはいるんだろ?」
……何故か意思疎通ができている。安直魔法にはそんな力はないはずなのだが。
「ぷい」
「預言書?何でそんなものに俺の名前が……」
ふと思い出すのはあのバカップルの記した「未来に書かれた日記」。
こちらにとっては迷惑きわまらない代物だったな……。
どこか不安げに見つめるアリアという猫?
いまだに猫とは思えないのだが、
知り合いのフェレットの例もあるのでとりあえずスルーすることにする。
「わかった。じゃあ、まずは情報収集からだな。
こっちにも聖堂教会やコスモガードみたいなウィザードのあるんだろ?」
アリア社長の不安を吹き飛ばすように彼を励ますようにして、柊蓮司は笑ってそう言った。
「預言書?何でそんなものに俺の名前が……」
ふと思い出すのはあのバカップルの記した「未来に書かれた日記」。
こちらにとっては迷惑きわまらない代物だったな……。
どこか不安げに見つめるアリアという猫?
いまだに猫とは思えないのだが、
知り合いのフェレットの例もあるのでとりあえずスルーすることにする。
「わかった。じゃあ、まずは情報収集からだな。
こっちにも聖堂教会やコスモガードみたいなウィザードのあるんだろ?」
アリア社長の不安を吹き飛ばすように彼を励ますようにして、柊蓮司は笑ってそう言った。
「あれここは……」
ベルさんと別れた後灯里先輩を探して入り込んだのは、見たこともない小路(カッレ)だった。
彼女の趣味は散歩である。入り組んだ迷路のような薄暗い小路(カッレ)、
それを抜けていくと子供の遊び場になっている光差す広場(カンポ)。
運河(カナレッジョ)に架かった橋(ポンチ)。
会社の先輩たちには年寄りくさいって言われるけど、
規則正しくそれが繰り返され変わっていく町並みはいつも穏やかな気持ちにさせてくれる。
ベルさんと別れた後灯里先輩を探して入り込んだのは、見たこともない小路(カッレ)だった。
彼女の趣味は散歩である。入り組んだ迷路のような薄暗い小路(カッレ)、
それを抜けていくと子供の遊び場になっている光差す広場(カンポ)。
運河(カナレッジョ)に架かった橋(ポンチ)。
会社の先輩たちには年寄りくさいって言われるけど、
規則正しくそれが繰り返され変わっていく町並みはいつも穏やかな気持ちにさせてくれる。
なのにどうしてでしょうか、こんなに不安な気持ちになるのは。
風が吹く。帽子が飛ばされないように手で押さえる。
春も終わりを迎えようとしているのに舞う枯葉を、唖然として見つめた。
春も終わりを迎えようとしているのに舞う枯葉を、唖然として見つめた。
枯れ葉が風に舞い、視界は遮られ世界は一変する。
風が止み、視界が戻る。
さっきまで明るかったはずの空が急に暗くなり、空を見上げると紅い月が天に昇っていた。
「紅い月……」
見たこともない禍々しい色をした月。
あまりの異様な事態に呆然とし現実逃避しそうになる。
だが世界は少女にそれを許さない。
紅き月が現れると時を同じくして、闇の眷属は姿を現す。
さっきまで明るかったはずの空が急に暗くなり、空を見上げると紅い月が天に昇っていた。
「紅い月……」
見たこともない禍々しい色をした月。
あまりの異様な事態に呆然とし現実逃避しそうになる。
だが世界は少女にそれを許さない。
紅き月が現れると時を同じくして、闇の眷属は姿を現す。
轟音とともにソレは、闇夜から降り立った。
自身の体を確かめるように背伸びするようにして体を伸ばす。
「獅子の石像……!?」
それは彼女にも馴染みの深いもの。
この街に多数点在する福音史家マルコーを表した翼ある獅子の石像。
石像であるはずのソレが体を震わせ、彫られているだけのはずの眼は紅く輝く。
動かないはずのものが動く、そのことがただ恐ろしくて、
少女はまるで糸の切れたマリオネットのように、座り込んだ。
この地を護る正義の化身が、彼女に牙を向ける。
自身の体を確かめるように背伸びするようにして体を伸ばす。
「獅子の石像……!?」
それは彼女にも馴染みの深いもの。
この街に多数点在する福音史家マルコーを表した翼ある獅子の石像。
石像であるはずのソレが体を震わせ、彫られているだけのはずの眼は紅く輝く。
動かないはずのものが動く、そのことがただ恐ろしくて、
少女はまるで糸の切れたマリオネットのように、座り込んだ。
この地を護る正義の化身が、彼女に牙を向ける。
震え座り込む少女にはなすべくもなく、その牙は振るわれた。