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ナイトウィザード!クロスSS超☆保管庫
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ナイトウィザード!クロスSS超☆保管庫

Scene03

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匿名ユーザー

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惑星AQUA(旧火星)が惑星改造(テラフォーミング)されてから、地球暦で大体150年ほどになる。
その際に地球(マンホーム)のいろいろな街や都市がモデルとなり、AQUAに建設された。
ここネオヴェネツィアも地球のヴェネツィアが元になっている。
そのためネオヴェネツィアはあらゆる点で地球のヴェネツィアに似通っている。
それは街の風習や建造物、美術品など多岐に渡る。
だがそれは結局のところ似ているだけなのだ。
つまりこの二つに存在する年月や歴史も全くの別物でしかない。
ヴェネツィアには野良猫が多い。
これは元々中世にペストの病原菌を撒き散らすネズミを駆除するために猫が多数放たれた名残だ。
だが、ネオヴェネツィアにはそんな歴史は存在しない。
なのに、何故かこの街には猫が多く存在する。

それはこの世界AQUAの守護者が猫妖精(ケット・シー)であることに起因している。

寄り添うようにして存在するもう一つの世界。
近くて遠い「宵闇の世界」。
この世界に来ることができるのは、その世界の守護者である
猫妖精の加護を受けている者かウィザードだけだ。


「ふむ……」
男は顎に手をあてながら思案する。
この世界に存在するウィザードの多くは、人間ではない。
「世界の守護者」が猫妖精(ケット・シー)であることも関係しているのだが、猫や人外の者が多数を占める。
最も大きい理由は「世界結界」が同じ並行世界「ファー・ジ・アース」に比べ強いことだ。
そのため人が魔法を扱うことも、ウィザードに覚醒することも元より人外の者と比べ難しくなっている。
この世界に存在する「柊蓮司」がただの「イノセント」であるように。

「これはいったいそういうことだ?」
彼が訪れたのは、この世界に存在する唯一のウィザードの組織「猫の集会」。
「柊蓮司の捜索」というアンゼロットの依頼のついでにここを訪れたのだが……。

「まるでメアリー・セレスト号だな」
彼は本部になっている廃屋――プラント跡――を見やりながら呟いた。
やはり廃墟跡であるため、柱にはひびが入り今にも崩れ落ちそうである。
数多く並ぶ人が使うには幾分か小さい机と椅子や、小皿に盛られたキャットフード。
そして一番奥に存在する周りの雰囲気とは少々ずれる人が使うにはあまりにも大きすぎるデスク。

それは彼が以前に訪れた光景と同じだった。

――――誰一人そこにいないことを除いて。

いつもちょこまかと忙しく走りまわっている火星猫も、
カーニバルの仮面をかぶった人間も、中央に確かな威厳と存在感をもって座る「世界の守護者」も。

誰もいない。

「そして誰もいなくなった、か……」
近くに置いてあったコップに触れる。
中にはホットミルクが注いであり、まだ温かい。
……それほど時間は経っていないということか。
ふと大きな古時計が眼に入り、眉をしかめる。
時計が指している時間は、現時刻と異なっていた。
目を細めよく見てみると秒針も止まっている。壊れているのか……。

「いや、違うな」
自身の時計を見る。そちらの方も止まっていた。
この時計は彼が妻から送られたもの。
ここに来る前までは正常に動いていたし、壊れないように知り合いの魔術師に特別に魔力で強化してもらっている。
一応O-Phoneの時間表示も確かめたが、そちらも同様に止まっていた。
だとすればありえるのは。
「この空間だけ時間が止まっているのか……」
それなら、いまだに温かいマグカップにも得心がいく。
顎に手をあてながら、考えをめぐらすが、

「考えてもわからんな」
情報が少なすぎる。
今無理矢理に結論を急いでも、おそらくその結論は間違いに至るだろう。
「まずは情報収集だな」
ならまずは知り合いをあたることにしよう。幸い頼りになる知り合いもこちらにはいる。
おそらく柊蓮司も事態に巻き込まれているだろうし。
月衣からレーダーのようなものを取り出す。
柊蓮司には知る由もないが、彼の月衣には発信機が放り込まれている。
アンゼロットの手によって、プラーナの反応を何らかの方法でごまかされた時のために用意していたものだ。

アンゼロットは発信機の反応を辿り、柊の予約した部屋で待ち伏せしていたのだが、
柊が宿に到着した後発信機の反応が消失。異世界への転移が確認され、
数少ない異世界への渡航経験のあるウィザードであるナイトメアへ「柊蓮司の捜索」が依頼されたということだ。
男は口元に笑みを浮かべると、その場から夏の日の陽炎ように揺らめき消えた。



柊蓮司と退屈なお茶会(A Mad Tea-Party)
Scene3: 鏡の向こうの家 “Looking-glass house” 



「連絡が取れない?」
その言葉にきな臭いものを感じ、柊は思わず顔をしかめた。
ほぷよん、ほぷよんと聞きなれない擬音を立てながら隣を歩く『彼』を横目で見やる。
『彼』――アリア――も不安そうな顔をしている。
アリアの話によると、
この世界のウィザードは「世界の守護者」であるケット・シーのもとで強固な団結力を誇っているそうだ。
そのためこの世界に存在するウィザードの組織は、一つしかないらしい。
そこと連絡が取れないということは、この世界に存在するウィザード全てと連絡が取れないということと同意だ。
柊は今水路沿いに街の露店を見やりながら歩いている。
頭上に浮かぶ未来的な船に反し、街に建つ建物は自分の世界でめったに見られない古風なレンガ造りで微妙なアンバランスさを見せていた。

街は
「く、食い逃げだ!誰か捕まえてくれ!!」
「ぎゃーす!!り、りんごが!?」
「だ、大丈夫ですか!?藍華さん!!」
「速い!?なんか蜘蛛みたいに壁をよじ登ってくぞ!!」
喧騒をみせていた。一瞬食い逃げ犯をとっ捕まえようかとも思ったが、距離も遠いし今はこちらの方が先決だ。

「そんな情けない顔すんなよ、連絡が取れないならそれなりにやりようはあるしな」
アリアの頭を撫でて、彼を励ます。
事実柊はどこぞの腹黒ゴスロリ少女(見た目は)のせいで、他のウィザードの助力を得られない任務につくこともあった。
仲間を護るために全世界のウィザードを敵に回したこともある。
――――組織の協力が得られないのは、残念だがそれなりにやりようはある。
「とりあえず今日はもう遅い。そろそろ寝床を確保しねえとな」
「ぷいにゅっ!」
「?心当たりがあるのか?」
アリア社長に連れられて、ひとまず柊達は一路ARIAカンパニーへと向かった。

本来ならありえない紅い月。
それが路地裏を照らしていた。
少女は異形を目の前にして声を出すことも出来ず座り込んでいる。
三対の異形が少女の逃げ場をふさぐ。
絶対的強者による弱者への蹂躙。
それは世界で最も古く、最もわかりやすい自然の法則。

力を持たない少女には抗う術はなく、
ただ奪われるのみ。

嫌だ。こんなところで死ぬのは嫌だ。
まだグランマのような素敵な女性になってないのに。
まだプリマになっていないのに。
灯里先輩を見つけていないのに。

灯里先輩。
彼女に会ったことで、私の日常は一変した。
彼女に出会えなかったら、ウンディーネは辞めていたかも知れない。
彼女に逢えなかったら、いつも支えてくれる『左手』の大切さに気づかなかったかもしれない。
彼女に逢えなかったら、きっと私の日常は灰色のままだった。

だから、終われない。
灯里先輩を見つけるまえに、ここで倒れるわけにいかない。

右手を伸ばす。それは無意識の行為。知らないはずの言葉が頭に浮かび、体中に力が満ちていく。
右手に暖かい力が収束し、意思を持ってその力を放つ。ただ一言、

『タイダルウェイブ』

大気中に存在する水分が凝縮され、大量の水の塊を創り出す。
石像を頭上から押しつぶし、水の圧力により、石像にところどころにひびが入り、片足が砕け散る。
石像の周りにできた水溜りから茨が生じ、石像を絡めとっていく。

額に汗がにじむ。
覚醒直後に、慣れない魔法を使ったせいで体に今まで感じたことのない疲労感が襲う。
倒れそうになるのをこらえる。

……まだ終わってない。

石像が口を開く。
ソレと同時に口元から亀裂が入り、崩れ落ちていく。
だというのに、ソレは痛みに悶えることもない。

「クウオォォォォォォォオゥン!!」

風が吹く。
石像の前に風が舞い、集い一筋の牙となる。

まだ終われない。

体から吹き上がる形容し難いナニカ。
いまだどうやって扱ったらいいかわからないソレを全力で開放し、防御へと回す。

――阻め――

『マジックレジスト』
突如発生した光に風の牙が阻まれた。
突然のことに事態が理解できず、戦闘中だというのに思考が停止する。


「そこまでだ、エミュレイター」

声が聞こえた。それは空から降り注いだようで。

レンガ造りの建物の上。
紅い月を背にして黒ずくめの男が立っていた。
遠目からはよく見えないが顔の半分が黒い布に覆われている。

「どり~む」

――――タンッ。

高所から落ちたというのに、さほど大きな音を立てることなく、彼は路地裏へと降り立った。
そこでようやく頭が回り始める。
顔の半分が眼帯に覆われ、唯一見える瞳は紅く。そして、

「腹筋が割れています……」

いい年した男性がヘソだしファッションをするのはどうかと思う。
というか、あの格好で出歩いてよく通報されませんでしたね。
……こんな状態でこんなことを考えられるなんて案外余裕があったのでしょうか。

「消えろ、リブレイド」

白い光が春に降る雨のように降り注いだ。
茨に絡めとられたエミュレイターにはかわすことはできず、暖かな光に貫かれていく。
石像は砕け散り、砂状になり崩れていった。

「さて、無事か少女よ」

さてここで問題。

Q:眼の前にヘソ出しルックの全身黒ずくめの正体不明な男がいます。
少女から見てこの男性はどう映るでしょう?
答えは、

「でっかい変態です……」

アリスはじりじりと男に気取られることのないように後退する。
先ほどとは違い恐怖ではなく、生理的嫌悪感で。

「落ち着くといい、少女よ。私はあやしいものではなあい」
「変態はみんなそう言います」
「まあ少なくとも敵ではないのはわかっているのだろう」
まあ確かに彼は先ほどの戦いで助けてくれた。
なら話だけなら聞いてみてもいいのかもしれない。

……こちらにも聞きたいこともあるし。
彼はこちらの警戒が薄れたのを感じたのか、話を続ける。


「どうやら先ほどの戦いを見ていた限り、覚醒したてのようだな。
なら状況が理解できていないのも無理はないな」
淡々と彼は事実だけを述べる。
「私の名前はナイトメア。絶滅社所属の、まあわかりやすく言えば魔法使いだ」

――魔法使い――

そんな御伽噺に出てくるような存在が、当たり前のことのように受け入れられた自分に驚いた。
こんなことをすぐに信じられるなんて、灯里先輩じゃあるまいし。
「キミが先ほど戦っていた相手はエミュレイター。人を食らうもの。世界を壊すもの。まあ簡単にいうならば、あれは私たちの敵だ」
「私達」。その言葉には言外に私も含まれているのでしょう。

「私はオレンジぷらねっとのアリスです。」
名乗られたので、一応礼儀として名乗り返す。……まあ名前くらい大丈夫でしょう。



「アリスか、夢使いにふさわしい良い名前だ。ではお近づきの印にこれを進呈しよう」
そういってナイトメアさんがどこからか取りだしたのは黒い服だった。とりあえずそれを広げてみる。
それはやけに布の面積が狭く、ビキニ並みの面積。
お尻の部分は微妙に食い込んでいるし、
しかもお腹の部分には締め付けるようなベルトがあるだけで、おへそが丸出し(2ndルルブの夢使いの格好参照)。
……おヘソが丸出しなのは彼の趣味なのだろうか、こんなのを好んで着るのは痴女だけだと思う。

「でっかい遠慮します」

投げつけたいの抑えて、服を押し返す。
「なぜだ!これは夢使いの正式コスチュームなのに!?」
狼狽するナイトメアを冷たい眼で見つめる。
魔法使いってみんなこんな人達ばかりなのだろうか。

こんなのを制服にしている人となんて……正直関わり合いたくないです。


彼女は知る由もないが、ネットオークションが趣味の夢使いの少女は
その「制服」をプレゼントされ、また部屋に引きこもってしまった。

……ナイトメアが後日ジャスティスレッドの手によって制裁されたのはいうまでもない。

「さて、覚醒直後にすまないがまだ動けるか?……どうやらまた招かれざる客が来たようだ」
ナイトメアさんの体から紫色の「ナニカ」噴出していくのが見える。
「えっ」
「やれやれ気づかれていましたか。もう少し様子を伺うつもりだったのですがね」
建物の影が螺旋を描き、巻き上がる。
捻り曲がった塔のようなソレは、カツンっと音を立て人の形を成した。

「初めまして、かな。私は『帽子屋』というモノだ。」
ソレはコートを着て帽子を深く被ったナニカだった。
……今ならわかる。あれは人の形はしているが、人ではない。人ではないまったく別のナニカなのだと。

「コイツらを差し向けたのは貴様で間違いないな」

「いやまあ、そこの少女をぜひとも私のお茶会にお誘いしたくてね。まあ、少々手荒な真似をしてしまったが」
やれやれといった感じで男は肩をすくめた。

「どうかな、お嬢さん。今からでも遅くはない。……キミのご友人もすでにご招待したしね」
そう言ってソレは私に手を差し伸べてきた。まさか……。
「灯里先輩をさらったのは貴方なんですか?」
「さらうとはまた穏やかではない言い草だね。ちゃんと本人の意思で着て頂いたが」
「貴方が……!!」

スッとナイトメアさんが私を押しとどめ前に出た。
「ああ、まことに申し訳ないのだがキミは招待していないんだ。もう席も満席なのでね」
横目でナイトメアさんを見やりながら、興味なさそうにソレは言う。

「悪いが、貴様の道化に付き合う気は毛頭ない」
彼は『帽子屋』に向かって右手を掲げる。

「ここで消えろ」
周囲の空間が歪み、闇が生まれる。

『ヴォーティカルショット』

収束され球状になった闇が『帽子屋』へと放たれた。


アリシア・フローレンスは今日の仕事を終えて、ARIAカンパニーへと戻っていた。
「アリア社長どうしたのかしら……」
彼が一人で出かけるのは別段珍しいことではない。
カーニバルの時期になると十日間ほどどこかへ出かけていくこともある。
でも、今日は様子が明らかにおかしかった。いったいどうしたのかしら。

……とりあえずアリア社長が帰ってくるのを待ちましょう。
今日もいい天気で、干しておいたシーツがよく乾いている。
シーツを取り込んでいると、

「ぐうーー」

音がした方に顔を向けると、
「?」

そこには干した覚えのない変わった色のシーツが干してあった。

よく見ると、それはシーツではなく見慣れない女の子が干してあった。
その少女は見慣れない服装をしていて、腰に剣の柄のようなものをぶら下げていた。


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