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ナイトウィザード!クロスSS超☆保管庫
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ナイトウィザード!クロスSS超☆保管庫

オープニング01

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―――西暦280年12月上旬
―――???

「失礼します!アンゼロット様!!」
「…あ、相変わらず元気ですね…どうぞ」

 明朗快活な声と共に、一人の女性がその部屋に入ってきた。
 そこはここではないどこか。
 世界とは異なる場所にある城。あるいは宮殿。

 あまりにも美しい白い髪と、幼い顔には不釣合いな表情を浮かべた女性が中心に住まう世界。
 老女のような幼女が紅茶を置いたのは、部屋に入ってきた女性が手にした書簡を重たげに開き始めてからだった。

「それで、どうでしたか?」
「…はい。すでに、中原、河北のウィザードとは連絡が途絶えています。
 辛うじて、北海のウィザード1名と連絡が取れたに過ぎません」

 守護者、と呼ばれる幼女の格好をした老女は、年相応の落ち着きをもって、続きを促す。
 その一方で、書簡を開き、状況を説明する女性は、部屋に入ってきたときとは一転、沈んだ声で言葉を続けた。

「『隻眼の竜』、『疾風の白馬』…彼らもすでに、エミュレイターの手に落ちた模様です」
「ガッデム!
 太守クラスか、それに順ずる者達がそうも簡単に…!!」
「…あるいは、元々エミュレイターが彼らの家臣や君主としてもぐりこんでいたのかもしれない、との分析も出ています。
 事実、長安の董卓は魔王級のエミュレイターと認定されました」
「なぜ気づかなかったのか…とは愚問ですね。
 それが彼らのやり口です」
「…」

 世界の守護者はため息をつく。
 それは、本心か、あるいは皮肉なのか。
 彼女に比べ、はるかに年若い少女には、想像もつかぬことだった。

「…益州のウィザードは無事でしたか?」
「は、はい!
 益州では、成都の『鉄の仁義』。永安の『霹靂の臥龍』、そして『悪夢』。
 いずれも健在です。
 彼らを中心に、防衛線を張り、エミュレイターを撃退している模様です」
「これを幸いと言えるかどうかは、この後の展開しだいですね。
 荊州は…聞くまでもありませんか」
「はい!」

 そう。
 荊州には四人の優れたウィザードがいる。
 人呼んで、荊州四英傑。

『轟雨の老鬼』、黄忠。
 強化人間である彼の矢から、逃れられたエミュレイターは存在しない。

『荒ぶる猪』、?道栄。
 勇者たる彼が現れたのは、世界が求めた故であろう。

『虎殺しの鷹』、鮑隆。
 相棒である陳応とならび賞される豪傑。
 世間一般では弓の得手とされるが、その実態は、優秀な忍者。

 最後の一人の名前を頭の中に浮かべて、彼女―――アンゼロットは、今まで閉じていた瞳を開いた。
 そこには、変わった形の宝玉が付いた剣を、後生大事に抱えた武将が一人。
 きっと、いつもの彼を知っている人が今の彼を見ても、同一人物とは思わないだろう。
 心の中の笑みと、全く別物の笑みを顔に浮かべ。
 アンゼロットは、とても楽しそうに、言った。

「…というわけで、魏延さん、次の任務です♪
 中原の偵察をしてきていただけますね?」

「ふざけんなアンゼロットォォオオ!?
 俺に軍務をやらせろぉっ!?」

『反骨の飛竜』。魔王の宿敵、あるいは守護者の玩具。
 そう呼ばれる魔剣使い―――魏延文長は、いつものごとく、そしてあるいは、未来永劫そうなることが約定されているかのように、悲鳴を上げた。


―――西暦240年12月上旬
―――???

「助けてください…!助けて…!」

 助けを呼ぶ声に、何もできない。
 わかってる、今行く、と言いたくても、それは適わない。
 それはそうだ。
 俺は夢使いでもなけりゃ、神様の生まれ変わりでもない。

「兄様が…下ヒの皆さんが…!」

 だから、せめて、手を差し伸べようとする。
 が、それはがん、という頭への衝撃で中断された。


 痛みに戸惑う間に、景色はぼやけていく。
 と。先ほどまで悲痛な表情を浮かべていた彼女は、どこか空恐ろしい顔でこちらを見ていた。

「…玄徳様?その方は?」
「嫁じゃ」

 ―――!?
 声にならない声が、した。
 それが、自分の口から漏れたものなのか、幻聴なのかは区別がつかない。

 とりあえず懇願の意を込めて、『彼女』に視線をむける。
 しかし、彼女はただどこか透明な表情を浮かべているだけだった。
 それが数秒か、数十秒か、あるいは数時間だったのかは、彼には見当がつかない。
 長らく続いた沈黙は、或る意味、聞き捨てならない言葉で終わった。

「…やっぱり若い方がいいんですね」
「待てっ!?」

 声が出た。が、もう遅い。

「色気ですねっ!?色気にやられたんですねっ!?」
「だから待てと言っとるだろうが」
「そうじゃ」
「お前は黙」
「玄徳様の…」

 結局、その夢は、あまりにも、そう、あまりにもひどい終わり方をした。

「玄徳様のロリコンッ!胸好きッ!太ももマニアッ!節操無しっ…!!」

 何故だか聞いたことのあるようなないような言葉をたたきつけられ。
 何故だか遠く離れた場所にいる、彼女の爪先が。
 彼の米神を打ち抜いたのであった。


―――280年12月下旬
―――永安・政庁

「起きたか」
「…」
「なんが」

 上を見たら、やたらでかい胸のせいで、彼女の顔が見えなかった。
 …そんなことを言ったら、今の倍は蹴られるだろう。
 威力として、の話だが。

 阿呆なことを考えつつ、劉備は上体を上げる。
 どうやら、割と手加減なしで蹴られたらしい。
 なかなか首が痛い。

「なにか言いたいことでもあるか」
「何もねえよ」

 彼女―――孫家の娘が来てから、昼寝している時に蹴り起こされることはほぼ日課になっていた。
 時にはただ寝そべっているだけの時ですら、蹴られることがある。

「…さて」

 とはいえ、確かに寝ている場合ではないようだ。
 用事ができた。
 それも、是が否でも片付けなければいけない用事だ。

「諸葛亮、いるか?」
「はい」

 彼は、劉備が起きている時からそこにいた。
 背後。振り向くと、いつものような暑苦しい格好で、ゆったりと構えている。
 劉備は、軍師に最低限のことだけを言う。

「悪いな、用事ができた」
「だと思いました」

 笑みも浮かべず、ただそうとだけ、諸葛亮は答える。
 彼が見通せなかったことなどない。
 だが、それでも劉備は聞いた。

「何でわかった?」
「徐庶殿から承りました」

 思わず、あたりを見回す。
 よく見ると、木陰に、腕を組んだ格好の男がいる。
 徐庶元直―――劉備が臣下の軍師にして、名うての夢使い。
 悪夢を操る彼なら、確かに今見た夢の内容を知っていてもおかしくはない。

 納得がいくなり、劉備は次の用件を言う。

「守りは?」
「人相手の、というのならしばらくは大丈夫でしょう。
 エミュレイター相手の、というのであれば…」

 腕を組むでもなく、ただ扇を整え。

「正直なところ、『大海師』がいなくなるのは厳しいです」

 やはり表情は変化しない。

「ですが、いくのでしょう?」
「ああ」

 傍らにある、雌雄一対の剣を手に取る。
 立ち上がるまでは、一瞬。
 それまで、ずっと細められていた劉備の瞳が、片方だけはっきりと開かれた。

「後のことは頼むぜ、諸葛亮。
 甘と…そうだな、ついでに、『影』のことも頼む」
「阿斗様のことは?」
「忘れてた」

 そして、歩き出す。
 歩き出した、彼の横。
 同調するように、劉備のことを蹴飛ばして目を覚まさせた張本人も歩く。


「…孫。
 ついてくるのか?」
「ああ」
「訳も聞かずにかよ」
「言ったはずだ」

 ふん、と彼女―――孫の姫たる、孫尚香は息を漏らす。

「あたしは、あんたの傍で戦うのじゃ」

 さも当然のように言った孫尚香に、劉備は笑みを漏らす。

「…やれやれ。
 働き者が多いな」
「…フ。全くだな」
「お前もだよ、徐庶」

 政庁の一角から、劉備は立ち去る。
 木陰にいた男は、すれ違い様にかけられた劉備の言葉に。

「どりぃ~む…」

 意味があるかないかはともかく、そう答えた。


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