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ナイトウィザード!クロスSS超☆保管庫
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ナイトウィザード!クロスSS超☆保管庫

第18話

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だれでも歓迎! 編集
 命題。
 果たして中村 剛太の持つモーターギアは、モーリー=グレイに通用する武器なのだろうか?


 二度にわたるモーターギアの攻撃は、二度共に呆気なく彼女の甲冑に弾かれてしまった。
 それがモーリーの積極的意思による防御であったならまだいい。
 しかし現実にはモーリーは剛太とモーターギアを全く意識していない。
 魔剣使いたる彼女が身につけている、剣士としての無意識的な知覚と危機回避能力だけで対処されてしまっている。
 ……つまりは、全く話になっていない。

 だが、それで『否』という回答を導いた者は命題を過って捉えている。
 確かに、中村 剛太はモーリーにとって路傍の小石も同然だろう。
 正面から相対すればおそらく一合で決着する。5秒持てば奇跡の領域と言った所だ。
 しかしここで論じているのは中村 剛太の力量などではない。
 重要なのはモーターギアがモーリー=グレイにとって有効な武器であるかどうかだ。
 その点を論ずるのならば、回答は『是』である。
 意識的にであろうと、無意識だろうと、『防御した』という事実には変わりない。
 むしろ無意識的に防御したからこそ、それは彼女の直感において『防がなければならない』ものだと判断しているのだ。
 問題はタイミング。
 甲冑を貫けない以上その隙間を突くしかない。
 モーリーの身体能力を考慮すればそれだけでもお釣がくるほど困難な上に、加えて彼女の知覚能力も考慮せねばならない。
 攻防の最中に打ち込んでも簡単に弾かれた。飛礫に紛れ込ませても誤魔化せなかった。
 要するに生半可な隙を突いても全く意味がない。
 かといって、彼女の知覚を上回る速度を出すのは、いかな速さを身上とするモーターギアでも不可能。
 であれば剛太がこの戦いにおいて取りうる手段は一つしかなかった。

 ――モーリー=グレイ 対 ブラボー・ナイトメア。
 互いに全力を振り絞り、討ち果さんとする彼等の闘いを、その最高潮で横からかっさらう。

 卑怯と謗られるだろうか、あるいは姑息と嘲笑われるだろうか。
 だがそんな事は剛太の知った事ではない。
 そもそも中村 剛太と彼等ではスタンスが違う。
 その力量でもって道を押し通すやり方になど、付き合っていられない。
 卑怯でも姑息でも勝ちは勝ちだ。
 力量に絶対的な格差があるこの場において、中村 剛太の活きる道はそれしかない。
 幸いにして――当然の選択としてモーリーは剛太の事を完全に無視していた。
 故に彼はただ訪れるだろうその一瞬だけを待てばいい。
 全身の神経を研ぎ澄ませて、最速・最巧の一投だけを叩き込む。

 そして――世界を灼き潰す閃光と共に、その瞬間が来た。



 ※ ※ ※



「散華せよ!!」
 解放した魔剣の暴威を解放する。
 目の前の戦士も後方のウィザードも周囲の総て何もかもを白色の力で染め上げる中。
 ほんの僅かに瞬いた小さな輝きが疾走るのを、致命的なタイミングで知覚した。
 引き伸ばされた一瞬の中で、ちっぽけな銀輪がゆっくりと飛来してくる。
(避――)
 ――ける事は、できない。
 彼女がその一撃のために解き放った魔力は極大。
 極大であるがゆえにその最中で細やかな制御制動が及ぶはずもない。
 その狙いは精密にして精緻。
 彼女の魔剣を振るう動作がまるで銀輪の軌道に吸い込まれるようにさえ見える、完璧な軌道。
 1mmでも身体を動かせれば簡単に弾けてしまえるその一撃を――自ら放つ力に拘束された彼女には避ける事ができなかった。




 ※ ※ ※



 そして、瓦礫の世界だけが残った。
 かつて市街地であったこの場所は既にその面影は微塵もなく、ただただ圧倒的な破壊に蹂躙された傷跡だけしか存在しない。
 何もなくなったその場所に、剛太は一人立ち尽くした。
 彼なりに総てを込めた一撃、その確かな手応えを証明する血に濡れたモーターギアを握り締めて、剛太は地を蹴って走り出した。
「戦士長! ナイトメア!」
 モーリーが全力を搾り出したあの状況では、たとえモーターギアの一撃で彼女を絶命させたとしても解き放たれた力は止める事はできない。
 つまり剛太の攻撃の成否に関わらず、ブラボーとナイトメアはあの魔剣の破壊を正面から受ける事になっていたのである。
 無論それは彼の責任ではないが、その瞬間を狙うためにあえて看過したのも事実だった。
 恐らくは剛太がブラボー以上にシルバースキンの防御力を過信していたのもあっただろう。
 モーリーの全力の一撃が、これほどまでに桁外れであった事を読めていなかったのもあった。
 そして、それ以上に――

「見事……と。言っておこう」

 ――彼は、魔王という存在を、過小評価していた。

 体中に戦慄が走りぬけ、剛太は凍りついたように動きを止めた。
 まるでブリキのようになってしまった身体を、ゆっくりと動かす。
 揺れる視線の先、廃墟の世界の中、鮮血に濡れた魔王がそこにいた。
「―――」
 言葉さえも出す事ができなかった。
 愕然としたまま凝視している剛太をようやく正面から見据え、モーリーは自らの喉に手を充てた。
 モーターギアによって裂かれた喉から鮮血が零れ、彼女の身体を紅に染め上げていく。
 だが彼女はそのような事は些事とばかりに剛太に向かって口を開く。
「だが、妾を討つにはあと僅かに『力』が足りなかったな」
「―――っ」
 一歩。モーリーが剛太へと歩み寄る。
 同時に彼女の身体が傾いだ。倒れそうになる身体を手にした魔剣を杖に立て直す。
 ブラボーとの凄烈な戦い。ナイトメアによる超上位魔法の二撃。
 《生命の刃》《魔器解放》による膨大な魔力の消費。更に加えてモーターギアの一撃。
 これほどの攻撃に晒されていれば、いかな魔王といえど消耗は著しかった。
 もはや歩く事さえも困難に見えるその姿に、剛太は歯を食いしばり己を奮い立たせた。
 モーターギアを握り締めて彼はモーリーに相対する。
 彼の戦意を見て取って、モーリーは僅かに目を細めた。
「……先の一撃は、賞賛に値する」
 モーリー=グレイはその性情ゆえに正面からのぶつかり合いを好む。
 だが、だからといって搦め手の戦術を唾棄するほど狭量ではなかった。
 明確な力の差を、それ以外の手段によって補い覆そうとする。
 そういった意味で言えば剛太の取った戦術は戦いとして正しい。
「なればこそ、ここにきて無様な抵抗などを晒してくれるな」




「……っ」
 圧倒的な敵からの評価は僅かなりとも誇れるモノがあるだろう。
 だがそれ以上に、既に闘いが決したような物言いに剛太は歯を噛んだ。
 無様な抵抗。確かにそうかもしれない。
 だが、無様だろうと格好が悪かろうと、ブラボーとナイトメアが命を賭して闘った以上自分も退く訳にはいかない。
 宮殿で守護者の少女に言われた言葉を思い出す。
 中村 剛太は今ここにいるのだ。ここにいる以上、為せる事と為すべき事が必ずある。
「う、ぉおおおぉおぉおおおおっ!!!」
 咆哮と共に腕を翻す。
 渾身の力を込めてモーターギアを射出する。
 その速度は先の一撃にも劣らない程に速く、鋭い。
 ……だが。
 仮釈それが先の一撃を上回るものであったとしても。
 正面から相対した以上モーリーにとって一切の脅威ではなかった。
「……そのような児戯で晩節を汚すとはな」
 魔剣を握り締め一閃する。
 たったそれだけで、剛太の渾身の一撃は呆気なく弾き飛ばされた。
 あらぬ方向へ弾かれていくモーターギアを見ながら、剛太は歯を食いしばった。
 モーリーが更に一歩踏み出す。斬撃圏内。
 身動き一つ取れずに睨みつけてくる剛太を冷ややかに見据えながら、モーリーは魔剣を振りかざした。
 もはやかける言葉すらもなく、彼女は一片の逡巡もなく魔剣を剛太に振り下ろす。
 そこで、彼女は見た。
 確実な死を目前にしながら、凄絶な笑みを浮かべている中村 剛太を。

「……”こんな児戯”で十分なんだよ」

 彼は振ってくる刃に眼もくれずに言い、

「十分だとも。ブラボーだ、戦士・剛太――!!」

 それに男は応えた。



 魔剣が振り下ろされると同時、剛太を護るように銀鱗の壁がせりあがった。
 更に刃はそれにぶつかる刹那、見えない障壁がその侵攻を阻む。
 展開されるシルバースキンと《フォース・シールド》。
 だが崩壊寸前のシルバースキンと残り僅かな魔力で編んだ防御魔法では魔剣の一撃を防ぎきる事は叶わず。
 二つの壁はそれまでの堅牢さが嘘かのようにあっさりと打ち砕かれ、魔剣の一撃はそれに護られた剛太を切り裂いた。
「―――!!」
 しかしその刹那、既にモーリーの意識には剛太など存在しなかった。
 瓦解寸前の総身を奮い立たせ、振り返ると同時に渾身の斬撃で薙ぎ払う。
 そこには拳を構える一人の男。纏っていた銀のコートは既になく、場に不釣合いなツナギを纏っていた。
 振り返り様の一撃。避けられる間合いではない。
 しかも絶対の防御を誇っていたシルバースキンを纏っていないブラボーがその剣閃を防げる道理もなく。
 その刃はブラボーの脇腹を抉り、切り裂き、その胴体を一文字に断ち割


 ブラボーの渾身の拳が、突き出された。
「っ!?」
 間違いなく身体を真っ二つに断ち割った。その感触が確かに手に残っている。
 だが、ブラボーの身体は満身創痍なれど二つに割られていない。
 それどころか、モーリーは”魔剣を振るってすらいなかった”。
(《時、戻――》)
 因果を歪めて僅かな時間を逆行させる夢使いの異能、《時戻し》。
 それに気付いた瞬間には、既に彼女は攻撃の機を失っていた。
「おぉおぉおおぉおおっ!!!」
「ちぃいっ!!」
 放たれた拳を魔剣で持って受け止める。
 どこにそれほどの力が残っているのか、魔剣越しに貫いてくる衝撃にモーリーは顔を歪める。
 拮抗しせめぎあう拳と刃。
 結局の所最後に残るのは、己が持つ得物の一撃のみ。
 二人は残された力の総てを振り絞り――




 出遅れてなお、ブラボーの拳撃に刃を合わせるモーリーの技量は文字通りの意味で神がかっていた。
 ――だが、次の瞬間に彼女の目の前に訪れた光景は、総てを超越する魔王の思考をすら、凌駕した。



「ば……っ!」
 驚愕にモーリーが呻く。
 拳を受け止めたモーリーの魔剣。彼女の魂ともいえる、その刃に。
 亀裂が走った。
「馬鹿な……! 我が魔剣が、たった一人の人間に……!!」
「否ッ!! この拳が纏う力は、俺一人のものでは――ない!!」
 モーリーの魂の刃に突きつけられた拳。
 シルバースキンを纏わぬが故に付与された《レイ・ソード》の輝き。
 そしてもう一つ。
 拳に装着され唸りを上げて回転する、戦輪の武装錬金―― モーターギア・ナックルダスターモード。


 ――あるいは、始めからこの方法を取っていればブラボーとモーリーの戦いはより優位に進められていたかもしれない。
 だが、優位なだけでは意味がないのだ。
 モーターギアによる打撃力の強化がモーリー=グレイに看破されてしまえば、当然彼女はその使い手たる中村 剛太を標的に定めていただろう。
 そうなれば、ブラボーにモーターギアを装着させ丸腰となった剛太には抵抗の余地も回避の余地も存在しない。
 かといって彼を護るためにブラボーかナイトメアの戦力を削ぐのでは本末転倒だった。
 だが、ここに至ってしまえばもはや防御や戦力の維持など無意味。
 必要なのは――


「……教えてやるよ、大魔王」
 驚愕するモーリーの背後で、怨嗟のような声が響いた。
 しかし彼女には振り返る余裕などなく、彼が何をしているかさえも推し量れない。
「道端の小石だって、躓けば怪我をするって事をな――!!」
 そんな彼女の背中を睨みながら、剛太は胸を裂かれた痛みを押し切って手を伸ばした。
 その先に張るのは砕かれたシルバースキン。
 彼がその欠片を掴むと同時、銀鱗のコートは光と共に核鉄へと変貌する。
 ひび割れた六角の核鉄を握り締める。
 決意。
 掌握。
 そして、咆哮。

「――ダブル武装錬金ッ!! モーターギア・アナザータイプ!!」

 その手に新たなチャクラムが生み出される。
 現出すると同時、彼はフルスピードでそれを回転させて射出する。
 細やかな軌道や回転を定める必要などない。
 必要なのは――


 ――相手を打ち斃す『力』、ただ一つ。



 銀光が疾走しモーリーの両脇を駆け抜ける。
 向かうは彼女に立ちはだかるキャプテンブラボー。
 彼が突き出し、握り締めるその拳。
 試した事などないが、剛太には確信があった。
 モーターギアが彼の意思によって生み出されたモノである以上、それは何よりも確実な保証だった。
 既にナックルダスターによって強化された拳に、もう一つのモーターギアが重ね当てられる。
 激しく回転する二つのチャクラムがせめぎあい、軋み合い、重ね合わされる。

 モーターギア・ダブルナックルダスター!!

 拳が刃を打ち砕く。
 砕け弾け散っていく己が魂を、魅入られたように凝視したまま動かない女公爵。
 ブラボーが強く深く一歩を踏み込む。
 地を砕き大気を割る震脚。
 螺旋を描き巻き上がる力が集う先は、己が信ずるその剛拳。


「これが、武装錬金!!」


    一  撃


「これが!!!」


    必  殺


「―――――人間の力だぁああぁああぁぁぁっっ!!!」



   ブラボー正拳!!



 人間の拳が魔王の身体を討ち貫く。
 苛烈なる闘いの幕引きは呆気ないほどに簡単に。
 末期の声を上げる事もなく、”女公爵”モーリー=グレイはこの世界から姿を消した。




 ※ ※ ※



「――」
 剛太が眼を覚ました時、眼に入ったのは瓦礫の世界だった。
 状況を思い出せずに一瞬だけ呆然とし、すぐにそれを思い出した剛太は慌てて周囲を見回す。
「気が付いたか」
 始めに眼に入ったのはツナギを纏ったブラボーだった。
 彼は剛太に背を向けたまま、周囲の瓦礫の世界を――その先にある小高い丘を見据えていた。
 あそこには銀成学園――月匣の内部には巨大な洋館が立っていたはず。
 だが、おそらくはそこで行われている戦闘の影響なのだろうか、現在は跡形もなく消え去っていた。
「……って。ちょっと待った!」
 そこでようやく剛太は総て思い出した。
 そう、闘いはまだ続いているのだ。
「なんでこんなトコにいるんですか、戦士長! 俺なんか放っておいて斗貴子先輩達の援護に――ッ痛」
 叫んで身を起こした拍子に身体に激しい痛みが走りぬけ、剛太は顔を顰めた。
 身体を傾がせた事で彼の胸においてあったモノがするりと地面に落ちた。
 それは二つの核鉄。剛太とブラボーの物だ。
「……あ」
「……そういう事だ」
 地面に落ちた核鉄を見て剛太は眼を見開く。
 二つの核鉄は、崩壊寸前にまでひび割れていた。
 それらは剛太の傷の治癒に当てられていたのだが、ほとんど治癒されていない。
 核鉄の機能がほぼ停止しているのだ。
「核鉄――武装錬金がなければ俺達はあいつらの力になれん。悔しいが、やはりアンゼロット嬢の言うとおり錬金の戦士ではウィザード達の一助になる事はできない」
「……公爵位の魔王を真正面から捻じ伏せた男の言う台詞ではないな」
 少し離れた場所で0-PHONEを使っていたナイトメアが苦笑混じりに漏らし、二人の許へ歩み寄ってくる。
 そのおぼつかない足取りが、彼もまた限界に達している事を如実に顕していた。
「ロンギヌスのサポートメンバーが間もなく来るそうだ。後は柊 蓮司や武藤 カズキ等に任せるしかない」
「………」
 そうせざるを得ない状況ではあったが、二人としてはそれに沈黙して返すしかなかった。
「ああ見えて柊 蓮司は優秀なウィザードだ。武藤 カズキもそうなのだろう?」
「無論だ。アイツは――」
 ブラボーがナイトメアに言いさした、その時。

 閃光が奔った。
 そして柊 蓮司と武藤 カズキが向かった先、その戦場に。
 黎明のような輝きが溢れ出した。



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