―――281年・2月中旬
―――北海付近・川辺
―――北海付近・川辺
痛い。全身が、痛い。
視界を埋めるのは、まだ夜が明けきっていない、空。
春とはいえ、早朝。
少々肌寒く…その寒さが、一層痛みを助長していた。
視界を埋めるのは、まだ夜が明けきっていない、空。
春とはいえ、早朝。
少々肌寒く…その寒さが、一層痛みを助長していた。
「…えーっと。
何でこんなことになってるんだっけ」
「少々訓練に付き合っていただく、と。
そういった約束のはずでしたが」
何でこんなことになってるんだっけ」
「少々訓練に付き合っていただく、と。
そういった約束のはずでしたが」
声を聞きながら、よろよろと立ち上がる。
そこには、紺色の女中服を着た、甘寧―――あるいは思春という名の少女。
そこには、紺色の女中服を着た、甘寧―――あるいは思春という名の少女。
「うん。でも、流石に百本近く打ち込みされるなんて聞いてないなあ」
「当たり前でしょう。言っておりませんので」
「…うわあ」
「それでは、もう一本」
「流石にそろそろ死ぬからっ!?
いや死なないまでもしばらく動けなくなるから勘弁!?
というか怒ってませんか思春さん!?」
「怒らない理由があるとでも?」
「当たり前でしょう。言っておりませんので」
「…うわあ」
「それでは、もう一本」
「流石にそろそろ死ぬからっ!?
いや死なないまでもしばらく動けなくなるから勘弁!?
というか怒ってませんか思春さん!?」
「怒らない理由があるとでも?」
視線の冷たさ、というものを測れたならば、それはきっと氷点下を示していたんじゃないかなあ、とかなんとか。
そんなことを思ってる余裕もない。とりあえず。
そんなことを思ってる余裕もない。とりあえず。
「言い訳を!?
そ、そりゃあさ、俺の召使い扱いってのは思春も気に入らないと思うけど。
ただ、俺たちは、新参なんだ。
すぐさま将扱いってわけにもいかないだろ?
しばらくしたら、正式な爵位が言い渡されるから、しばらく我慢してくれって、王修さんが」
「…そのようなことはどうでもいい」
「え?」
「北郷一刀、貴方は自分の立場をお忘れか。
恩に対しては、謝儀で応えるのが我々の流儀。
恩ある貴方がそう命じたならば、蓮華様や小蓮様の異論がない限り、私には拒否することはできない」
「あれ?えっと…それなら、その服?
いや、でも。
あの、丈のない上着と布の格好は勘弁してほしいんだ。ただでさえ、女性の苦手な人がいて」
「…そのようなことでもない。
貴様…本当にわからないのか?」
そ、そりゃあさ、俺の召使い扱いってのは思春も気に入らないと思うけど。
ただ、俺たちは、新参なんだ。
すぐさま将扱いってわけにもいかないだろ?
しばらくしたら、正式な爵位が言い渡されるから、しばらく我慢してくれって、王修さんが」
「…そのようなことはどうでもいい」
「え?」
「北郷一刀、貴方は自分の立場をお忘れか。
恩に対しては、謝儀で応えるのが我々の流儀。
恩ある貴方がそう命じたならば、蓮華様や小蓮様の異論がない限り、私には拒否することはできない」
「あれ?えっと…それなら、その服?
いや、でも。
あの、丈のない上着と布の格好は勘弁してほしいんだ。ただでさえ、女性の苦手な人がいて」
「…そのようなことでもない。
貴様…本当にわからないのか?」
あ、と。
思春の口調が徐々に乱暴なものに変わってきているものに、気づく。
まずい、と思うのと同時。
思春の口調が徐々に乱暴なものに変わってきているものに、気づく。
まずい、と思うのと同時。
「何故、私があの者と同列に扱われている」
思春が指をさした先には、水浴びをしている恋。
ふるふる、と頭を振って雫を落とし。
ふるふる、と頭を振って雫を落とし。
「……?」
こっちを向いて首をかしげる。
「え、いや、そりゃ恋も一応今は俺の召使い扱いでして…」
「貴様がどう思っていようが、周囲から見たらあれは貴様の愛玩動物にしか見えん。
百歩譲っても、貴様が手綱を握っている猛獣だ」
「そういえば、星が前にそんなことを言ってたような…。
で、でもちょっと待ってくれって!
何で、思春がそんな風に周りの人たちに思われてるんだ!?」
「貴様がどう思っていようが、周囲から見たらあれは貴様の愛玩動物にしか見えん。
百歩譲っても、貴様が手綱を握っている猛獣だ」
「そういえば、星が前にそんなことを言ってたような…。
で、でもちょっと待ってくれって!
何で、思春がそんな風に周りの人たちに思われてるんだ!?」
と、そこまで言って、あることを思い出す。
下ヒで月匣から出たときに、自分は確か、思春を抱きしめた格好で目を覚ましたような。
確か、ソレを見て、傍にいた劉備がニヤニヤ笑っていたような。
下ヒで月匣から出たときに、自分は確か、思春を抱きしめた格好で目を覚ましたような。
確か、ソレを見て、傍にいた劉備がニヤニヤ笑っていたような。
「ま、まさか、あのおっさん!?」
「どうやら心当たりがあるようだな」
「だから待って!それは多分俺のせいじゃないっ!?
いや、一部は俺のせいかもしれないけどっ!」
「問答無用…!!」
「どうやら心当たりがあるようだな」
「だから待って!それは多分俺のせいじゃないっ!?
いや、一部は俺のせいかもしれないけどっ!」
「問答無用…!!」
迫り来る、思春の得物。
うわー、もうだめだー、と。
そんな幻聴を、北郷一刀は耳の奥で聞いた。
そんな幻聴を、北郷一刀は耳の奥で聞いた。
■■■
―――281年・2月中旬
―――北海付近・川辺
―――北海付近・川辺
「人間って、丈夫なもんだな…」
よろよろと。
訓練用にと持出した剣を杖代わりに歩く。
おそらく、王修や劉備と約束した会合の時間までには、政庁に戻れるだろう。
訓練用にと持出した剣を杖代わりに歩く。
おそらく、王修や劉備と約束した会合の時間までには、政庁に戻れるだろう。
しかし、疲労があろうが、痛みがあろうが、どうにかこうにか動けるようになれたのはいつからだったか。
政務を抜け出し、鈴々といろんな意味で遊びまくった後で、執務室の机の上にあった大量の書簡を、軍師にこれみよがしに見せ付けられたときか。
風呂で散々月や詠と愛し合った挙句、笑顔で深く怒りに燃えた未亡人に風呂の掃除を命じられたときか。
翠のことをいろんな意味でからかった後で、訓練を申し込まれたときか。
風呂で散々月や詠と愛し合った挙句、笑顔で深く怒りに燃えた未亡人に風呂の掃除を命じられたときか。
翠のことをいろんな意味でからかった後で、訓練を申し込まれたときか。
「はは…思い出せないなあ…」
「やれやれ…キミはそればかりだな。
エロスはほどほどにしておきたまえよ」
「いや、そんなつもりは…つもりは…」
「やれやれ…キミはそればかりだな。
エロスはほどほどにしておきたまえよ」
「いや、そんなつもりは…つもりは…」
ない、とは言い切れないよな、と続けようとしたところで。
ぼんやりと、振り返る。
流石に、このような登場の仕方を何度もされると、慣れてくるものである。
ぼんやりと、振り返る。
流石に、このような登場の仕方を何度もされると、慣れてくるものである。
振り返ると、妙に色っぽい美女がいた。
年齢は二十代半ば頃だろうか。
とりあえず、一刀は頭に思い浮かんだ言葉をそのまま口にした。
年齢は二十代半ば頃だろうか。
とりあえず、一刀は頭に思い浮かんだ言葉をそのまま口にした。
「……ウィザード関連の方ですか?」
「ふむ…そうだな。
確かに関係があるといえばあるか」
「ふむ…そうだな。
確かに関係があるといえばあるか」
やっぱりそうか、と考えながら。
この間会った麋竺という名の男の言葉を思い出す。
ウィザードは常識に縛られてはいけない。
全くもってその通りだ。
この間会った麋竺という名の男の言葉を思い出す。
ウィザードは常識に縛られてはいけない。
全くもってその通りだ。
「王修さんか劉備さん、呼んできます?」
「いや、私が用があるのはキミだよ」
「え?俺?」
「ああ。
元々、色恋沙汰の願いというものは多いものだが、最近、やけに強い願いが多くてね。
それも、一人の人間に対するものばかりだ」
「…はぁ?」
「いや、私が用があるのはキミだよ」
「え?俺?」
「ああ。
元々、色恋沙汰の願いというものは多いものだが、最近、やけに強い願いが多くてね。
それも、一人の人間に対するものばかりだ」
「…はぁ?」
これもウィザード特有の、常識に縛られないしゃべり方、という奴だろうか。
首をかしげる一刀に特に注意も払わず、美女は言葉を続ける。
首をかしげる一刀に特に注意も払わず、美女は言葉を続ける。
「あるいは、恋ですらなく、色に直結した願いも少々あったが…なに、割と珍しいことだったのでね」
「えっと、理解できないんだけど」
「キミに助言すれば他の者達も少しは困るだろうという下心もある。
まあ、冗談と思って聞いてくれたまえ」
「えっと、理解できないんだけど」
「キミに助言すれば他の者達も少しは困るだろうという下心もある。
まあ、冗談と思って聞いてくれたまえ」
何故、頷いたのかは、一刀にもわからない。
ただ、そこはかとなく、その女性は神秘的だった。
どこか有無を言わせぬような存在感があったのだ。
ただ、そこはかとなく、その女性は神秘的だった。
どこか有無を言わせぬような存在感があったのだ。
「とりあえず…寿春、濮陽、呉。
そこからは非常に強い願いが感じられた。
あとは、下ヒ、南皮か。それぐらいだな。
まあ、健闘を祈る」
「いや、なんのことだか、さっぱり…」
「まだ、わからないのかね?
キミのことを思っている少女や女性が、それだけこの世界に来ているということだ。
全く、キミのいた世界には…」
そこからは非常に強い願いが感じられた。
あとは、下ヒ、南皮か。それぐらいだな。
まあ、健闘を祈る」
「いや、なんのことだか、さっぱり…」
「まだ、わからないのかね?
キミのことを思っている少女や女性が、それだけこの世界に来ているということだ。
全く、キミのいた世界には…」
■■■
第四話『恋する姫が多すぎる』
■■■
―――281年2月下旬
―――北海・政庁内
―――北海・政庁内
「麋、探索の結果は?」
「いくらかの軍資金は手に入りました。
といっても、雀の涙程度ですが」
「いや、ないよりかましだろう。
で、孫。兵の方は…集まったか?」
「ああ。お前の眼に適うかはわからんがな。
すでに北海には三万以上の兵がおる。足らんか」
「…いや、予定通りさ。
そう多くの兵がこの短期間で集まるとは思ってない」
「いくらかの軍資金は手に入りました。
といっても、雀の涙程度ですが」
「いや、ないよりかましだろう。
で、孫。兵の方は…集まったか?」
「ああ。お前の眼に適うかはわからんがな。
すでに北海には三万以上の兵がおる。足らんか」
「…いや、予定通りさ。
そう多くの兵がこの短期間で集まるとは思ってない」
劉備は言って、笑う。
政庁の一室。
比較的広い部屋に、孔融軍に所属する武将たちはいた。
劉備玄徳に、孫、麋の両夫人。
加えて、王修、北郷一刀、そして新たに加わった甘寧の6人である。
比較的広い部屋に、孔融軍に所属する武将たちはいた。
劉備玄徳に、孫、麋の両夫人。
加えて、王修、北郷一刀、そして新たに加わった甘寧の6人である。
ちなみに、武安国は兵の調練に当たっており、呂布は、いても意味がないだろうということで席をはずしていた。
まあ、いつの間にかいなくなっていた、とも言うが。
まあ、いつの間にかいなくなっていた、とも言うが。
上座にいるはずの孔融もまた、ここにはおらず。
代わりに、劉備が議事の進行を務めていた。
代わりに、劉備が議事の進行を務めていた。
「あとは、兵の熟練か。
その辺りはどうだ、北郷」
「見た限り、歩兵部隊は思春のおかげで、割と戦えるようにはなってると思う。
まあ、恋と騎馬部隊は予想通りなことになっちゃってるけど。
どう思う、思春?」
その辺りはどうだ、北郷」
「見た限り、歩兵部隊は思春のおかげで、割と戦えるようにはなってると思う。
まあ、恋と騎馬部隊は予想通りなことになっちゃってるけど。
どう思う、思春?」
と、一刀は隣に座っている甘寧に伺いを立てる。
女中服を着た彼女は、いつもどおりの無表情で、呆れたのか軽蔑しているのか、よくわからない視線を一刀に返す。
女中服を着た彼女は、いつもどおりの無表情で、呆れたのか軽蔑しているのか、よくわからない視線を一刀に返す。
「貴方がわかっていなくてどうするのです」
「実際、前もし愛紗と星にまかせきりだったしなあ」
「実際、前もし愛紗と星にまかせきりだったしなあ」
溜息もなし。
是非もない…とは彼女の本当の主の口癖ではあるが、そう言わんばかりの様子で甘寧は口を開いた。
是非もない…とは彼女の本当の主の口癖ではあるが、そう言わんばかりの様子で甘寧は口を開いた。
「…歩兵部隊の仕上がりは良好です。
弩兵部隊については、攻城、野戦、共に高い練度で纏まっているといえるでしょう。
最も、弩兵部隊は元々いた武将が有能だったのでしょうが」
「だ、そうです」
「了解…と。
この数とある程度の練度があれば、野戦については、とんでもない化け物がでてこない限りどうにかなるか。
悪くはないが…何せ、陶謙軍の兵は五万、張角軍の兵は四万以上…かよ。
もう少し減らんことには、攻城は厳しいか」
弩兵部隊については、攻城、野戦、共に高い練度で纏まっているといえるでしょう。
最も、弩兵部隊は元々いた武将が有能だったのでしょうが」
「だ、そうです」
「了解…と。
この数とある程度の練度があれば、野戦については、とんでもない化け物がでてこない限りどうにかなるか。
悪くはないが…何せ、陶謙軍の兵は五万、張角軍の兵は四万以上…かよ。
もう少し減らんことには、攻城は厳しいか」
どこか、呆れた様子で劉備は地図を見る。
「陶謙軍の兵の増え方が異常ですね…やはりベール=ゼファーの力でしょうか」
「さあな。どちらにしろ、防戦を始めることから考えたことがよさそうだがね」
「さあな。どちらにしろ、防戦を始めることから考えたことがよさそうだがね」
眉間に皺を寄せている王修に対し、劉備は笑っている。
ちなみに、北郷一刀といえば。
甘寧が汲んできた茶を飲みながら、のんびりとしていた。
ちなみに、北郷一刀といえば。
甘寧が汲んできた茶を飲みながら、のんびりとしていた。
「先手を打って攻めるには、どうあがいても兵力不足…となれば、待つしかないかな。
どうだろ、劉備さん」
「その通り、だな」
「だからと言って、日和っている状況ではないと思いますが」
どうだろ、劉備さん」
「その通り、だな」
「だからと言って、日和っている状況ではないと思いますが」
ちくり、と指摘する甘寧の言葉にも、さして一刀は動じない。
というか、むしろ―――以前より、余裕があるようにも見える。
というか、むしろ―――以前より、余裕があるようにも見える。
「手厳しいなあ」
「ま…のんびりするなら今のうち…という気はするがね」
「ま…のんびりするなら今のうち…という気はするがね」
同じように、肩をすくめる劉備と一刀。
それを見た甘寧は、眼を細める。
また、孫夫人と麋夫人は、互いに顔を見合わせていた。
それを見た甘寧は、眼を細める。
また、孫夫人と麋夫人は、互いに顔を見合わせていた。
口を開いたのは、王修。
「―――まるで、劉備さんが二人いるみたいですね」
「そうですかね?」
「そうかぁ?」
「そうですかね?」
「そうかぁ?」
返す言葉も、同期して。
ほら、という王修の言葉に顔を見合わせるのも同期する。
ほら、という王修の言葉に顔を見合わせるのも同期する。
「そっくりじゃな」
「全くですね」
「全くですね」
苦笑い、というか、疲れた、というか。
そのような感じの二人の夫人の声。
劉備は、というと。眼を伏せたまま、顔に手を当てていた。
そのような感じの二人の夫人の声。
劉備は、というと。眼を伏せたまま、顔に手を当てていた。
「…そうかよ。
ところで、北郷。
お前さんの知り合いに…孫権、って名乗る女はいないか?」
ところで、北郷。
お前さんの知り合いに…孫権、って名乗る女はいないか?」
言葉は返さず、眼を見開く一刀。
加えて、その横では、甘寧がその視線を鋭くする。
加えて、その横では、甘寧がその視線を鋭くする。
「寿春に偵察に行ってる文長…魏延から連絡があった。寿春に、そう名乗る女の武将がいるらしい。
呂布奉先、甘寧候覇ときて、孫権仲謀ときたもんだからな、まさかと思って」
呂布奉先、甘寧候覇ときて、孫権仲謀ときたもんだからな、まさかと思って」
その言葉を言い切る前に、甘寧が席を立つ。
「その話、詳しく聞かせてもらおう…劉備玄徳」
「ったく…血の気の多い女が多いな」
「劉備さん。俺からもお願いできますか?」
「構わんさ。もとよりそのつもりだったからな」
「ったく…血の気の多い女が多いな」
「劉備さん。俺からもお願いできますか?」
「構わんさ。もとよりそのつもりだったからな」
ま、すぐ終わる、と。
そう言って、劉備は懐に手を入れた。
そう言って、劉備は懐に手を入れた。
■■■
―――281年2月下旬
―――???
―――???
「おぉい…雷薄…」
「どうした陳蘭」
「生きてるかあ…」
「どうにかな。が…流石に気が狂いそうだな。
感覚がおかしくなってきた」
「やべぇなあ…このまま…土の中に閉じ込められて…俺たちは死ぬのか…」
「…待て、陳蘭。
今なんて言った」
「死ぬのか…」
「その前だ」
「土の中に閉じ込められて…」
「…それだ。
何で今まで気づかなかったんだ、俺たちは。
いやまあ実際は石に囲まれてるわけだが…やらねえ意味はない」
「ああ…もうだめだ…」
「…チ。本当にこっちはもう駄目かもわからんな。
いいか、陳蘭。まだ正気が残ってるなら聞け。
お前、『アレ』を使えたはずだな?」
「アレって何だよ」
「わからねえのか。
だからな…」
「どうした陳蘭」
「生きてるかあ…」
「どうにかな。が…流石に気が狂いそうだな。
感覚がおかしくなってきた」
「やべぇなあ…このまま…土の中に閉じ込められて…俺たちは死ぬのか…」
「…待て、陳蘭。
今なんて言った」
「死ぬのか…」
「その前だ」
「土の中に閉じ込められて…」
「…それだ。
何で今まで気づかなかったんだ、俺たちは。
いやまあ実際は石に囲まれてるわけだが…やらねえ意味はない」
「ああ…もうだめだ…」
「…チ。本当にこっちはもう駄目かもわからんな。
いいか、陳蘭。まだ正気が残ってるなら聞け。
お前、『アレ』を使えたはずだな?」
「アレって何だよ」
「わからねえのか。
だからな…」
■■■
―――281年2月下旬
―――寿春・政庁内
―――寿春・政庁内
「一刀!一刀なの!?
まさか…貴方もこの世界に来てたなんて…!
え?思春もいる?
…思春!よかった…。穏もこの世界に来ているの?
はぐれた?ええ、わかってる。
とりあえず、合流しましょう…今すぐ来る?それは無理…」
「ちょっとお姉ちゃん!
私にも替わってよ!」
「小蓮!?わ、わかっている…思春。すまないけど、一刀に替わって。
ほら、小蓮?けれど、あまり」
「やーっほ――っ!か・ず・と!
貴方の妻が…って何?その声?
あー、まさかお姉ちゃんの方がよかったの?
そんなことはない?本当?」
「小蓮!少しは落ち着きを持て!
見ろ!魏延殿も呆れているではないか!」
「なぁにぃ~?
さっきまでお姉ちゃんだって一刀一刀ってはしゃいでたじゃない。
それを棚にあげて何言ってるのよ」
「むぅっ…!?」
「一刀?うぅん、なんでもないよ。
それで、一刀は元気だった?
思春や呂布がいるから大丈夫?
むむむむ…それはそれで何かやだなー」
まさか…貴方もこの世界に来てたなんて…!
え?思春もいる?
…思春!よかった…。穏もこの世界に来ているの?
はぐれた?ええ、わかってる。
とりあえず、合流しましょう…今すぐ来る?それは無理…」
「ちょっとお姉ちゃん!
私にも替わってよ!」
「小蓮!?わ、わかっている…思春。すまないけど、一刀に替わって。
ほら、小蓮?けれど、あまり」
「やーっほ――っ!か・ず・と!
貴方の妻が…って何?その声?
あー、まさかお姉ちゃんの方がよかったの?
そんなことはない?本当?」
「小蓮!少しは落ち着きを持て!
見ろ!魏延殿も呆れているではないか!」
「なぁにぃ~?
さっきまでお姉ちゃんだって一刀一刀ってはしゃいでたじゃない。
それを棚にあげて何言ってるのよ」
「むぅっ…!?」
「一刀?うぅん、なんでもないよ。
それで、一刀は元気だった?
思春や呂布がいるから大丈夫?
むむむむ…それはそれで何かやだなー」
と、そんなことを『携帯電話』越しに話している小蓮―――孫尚香。
彼女の姉であるところの蓮華―――孫権は、溜息をついた。
彼女の姉であるところの蓮華―――孫権は、溜息をついた。
「…何がむむむか。
すまぬ魏延殿、助かった。
貴方のおかげで、北郷一刀と連絡をとることができた。礼を言う」
「おう。ま、大したことじゃねえって」
すまぬ魏延殿、助かった。
貴方のおかげで、北郷一刀と連絡をとることができた。礼を言う」
「おう。ま、大したことじゃねえって」
やや離れた場所では、腕を組んだ青年が、穏やかな笑みを浮かべている。
「にしても、偶然に偶然が重なってよかったぜ。
まさか、あんたたちが北郷の知り合いとはな。
見張りに見つかったときはどうなるかと思ったけどよ。
かばってくれて、こっちも助かった。
しかし大丈夫か?あんたらも、一応ここじゃ結構な立場の武将じゃないのか?」
「それこそ気にするな。
私達は、もうここにいる必要はない。
もとより、ここの主に立てる義理などないしな」
「そうか。
ま、俺ももう少し寿春を探してみたら、蘆江に行くか。
孫権も知らねえんだよな?
陳蘭と雷薄って名前の奴らなんだが」
まさか、あんたたちが北郷の知り合いとはな。
見張りに見つかったときはどうなるかと思ったけどよ。
かばってくれて、こっちも助かった。
しかし大丈夫か?あんたらも、一応ここじゃ結構な立場の武将じゃないのか?」
「それこそ気にするな。
私達は、もうここにいる必要はない。
もとより、ここの主に立てる義理などないしな」
「そうか。
ま、俺ももう少し寿春を探してみたら、蘆江に行くか。
孫権も知らねえんだよな?
陳蘭と雷薄って名前の奴らなんだが」
魏延の問いに、孫権は首を横に振る。
そうか、と言って、魏延はいままで寄りかかっていた壁から背を離す。
そうか、と言って、魏延はいままで寄りかかっていた壁から背を離す。
「すまないな、力になれないで」
「いや、さっきも言ったろ?
あれで十分だって…と。そういや、あんたらはこれからどうするんだ?」
「ああ…と、しばし待て。
小蓮!いい加減にしないか!そろそろその通話機を魏延殿に返せ!」
「えー」
「えー、じゃない!」
「でも、もう一度だけ一刀がお姉ちゃんと話をしたいって言ってるよ?」
「そ、そう?それなら…」
「案外あんたも現金だな…」
「いや、さっきも言ったろ?
あれで十分だって…と。そういや、あんたらはこれからどうするんだ?」
「ああ…と、しばし待て。
小蓮!いい加減にしないか!そろそろその通話機を魏延殿に返せ!」
「えー」
「えー、じゃない!」
「でも、もう一度だけ一刀がお姉ちゃんと話をしたいって言ってるよ?」
「そ、そう?それなら…」
「案外あんたも現金だな…」
肩をかくり、と片方だけ落とす魏延。
そして。
そして。
「全くだね。
袁術も、人を見る眼がないよ。
まあ、そのために僕が詰めていたんだけどサ?」
袁術も、人を見る眼がないよ。
まあ、そのために僕が詰めていたんだけどサ?」
声は、壁の向こうからした。
空間を歪め、壁から現れるのは少年。
黒い滑らかな素材で作られた奇怪な衣服と、マント。
空間を歪め、壁から現れるのは少年。
黒い滑らかな素材で作られた奇怪な衣服と、マント。
「…何者!?」
「その格好…夢使い!?」
「ご名答。残念ながら、人間じゃないけどね」
「新手のエミュレイターかっ!」
「その格好…夢使い!?」
「ご名答。残念ながら、人間じゃないけどね」
「新手のエミュレイターかっ!」
魏延は虚空に手をかざす。
空間が開き、そこから一本の『薙刀』が現れる。
空間が開き、そこから一本の『薙刀』が現れる。
『月衣』から己の武器を抜いた魏延に。
自ら人間ではないと名乗った夢使いの少年は、言う。
自ら人間ではないと名乗った夢使いの少年は、言う。
「ふ…どうやら、ベール=ゼファーの情報は真実みたいだね。
魔剣はどこにやったのかい、魏延文長?」
魔剣はどこにやったのかい、魏延文長?」
■■■
―――281年2月下旬
―――???
―――???
「プラーナの反応だと!?
それも複数か!?」
「へっ…どうでもいいぜ。
俺はこの一撃に全てを賭ける!
プラーナを全て解放!
全て魔導力の達成値に!!」
「待て、陳蘭!状況がわからねえ!
ここはしばらく様子見を」
「待ったなしだぁっ!!
もう宣言は終わっちまったぜぇっ!!」
「この弩阿呆!
状況を確認してから動けといつも言ってるだろうが!」
「土よ、鉄よ、石よ!
そこに住まう精霊たちよ!!
我が意志に従い、その形を変えよ!
穿つは穴、徹すは虚空!!」
「聞いちゃいねえ!?
くっ…どうにでもなりやがれ…!!」
「くらいやがれっ…!!」
それも複数か!?」
「へっ…どうでもいいぜ。
俺はこの一撃に全てを賭ける!
プラーナを全て解放!
全て魔導力の達成値に!!」
「待て、陳蘭!状況がわからねえ!
ここはしばらく様子見を」
「待ったなしだぁっ!!
もう宣言は終わっちまったぜぇっ!!」
「この弩阿呆!
状況を確認してから動けといつも言ってるだろうが!」
「土よ、鉄よ、石よ!
そこに住まう精霊たちよ!!
我が意志に従い、その形を変えよ!
穿つは穴、徹すは虚空!!」
「聞いちゃいねえ!?
くっ…どうにでもなりやがれ…!!」
「くらいやがれっ…!!」
■■■
―――281年2月下旬
―――寿春・政庁内
―――寿春・政庁内
現れた少年の姿は、どこか、ナイトメア―――徐庶に似通っていた。
だから夢使い、というわけでもないのだろうが。
だから夢使い、というわけでもないのだろうが。
「お前なんぞに姓名と字で呼ばれる筋合いはねえ。
ったく、なんだってどいつもこいつも」
「じゃあ、反骨の飛竜、とでも呼ぼうか?」
「反骨って言うなっ!?」
「…やれやれ、わがままだね。
それでは、『下がる男』、と。これで満足かい?」
「下がるって言うなあっ!?」
ったく、なんだってどいつもこいつも」
「じゃあ、反骨の飛竜、とでも呼ぼうか?」
「反骨って言うなっ!?」
「…やれやれ、わがままだね。
それでは、『下がる男』、と。これで満足かい?」
「下がるって言うなあっ!?」
叫ぶ魏延に対し、夢使いの少年は肩をすくめる。
「魔剣もない、ただの『使い』の分際で随分とえらそうな物言いだね」
「つかっ…!」
「だってそうだろう?
己の半身である魔剣がない魔剣使いなんて、恐れるに足らず。
たとえキミが世界を幾度も救った、高レベルのウィザードだとしてもね」
「つかっ…!」
「だってそうだろう?
己の半身である魔剣がない魔剣使いなんて、恐れるに足らず。
たとえキミが世界を幾度も救った、高レベルのウィザードだとしてもね」
罵詈雑言、というにもほどがあるだろう。
魏文長の怒り、ここに極まれり。
最早その腕は振るえ、薙刀を今にも振り出さんとするその様子に、孫権と孫尚香が何かを言おうとする前に。
最早その腕は振るえ、薙刀を今にも振り出さんとするその様子に、孫権と孫尚香が何かを言おうとする前に。
魏延の体から、急に力みが抜けた。
瞳からは怒りが消え、かわりに宿るのは闘志。
まるで、別人のような変化に、動きを止める、孫権と孫尚香…そして、夢使い。
まるで、別人のような変化に、動きを止める、孫権と孫尚香…そして、夢使い。
「…そんなこと言っといて、後で吠え面かくなよ」
もはや緩みも力みも消えている。
薙刀を構え。
魏延は近くにいる、孫権と孫尚香に呼び掛ける。
薙刀を構え。
魏延は近くにいる、孫権と孫尚香に呼び掛ける。
「ここは俺が引き受けた。
あんたらは、逃げろ。
こっからずっと北にいけば、北海って都市につく。
そこに、北郷がいるはずだ」
あんたらは、逃げろ。
こっからずっと北にいけば、北海って都市につく。
そこに、北郷がいるはずだ」
しかし、姉妹はその呼びかけを無視。
孫権は直刀を。
孫尚香は円形の武具を手にし、それぞれ戦の構えを取る。
孫権は直刀を。
孫尚香は円形の武具を手にし、それぞれ戦の構えを取る。
「魏延殿。
残念だが、その言葉は聞けん」
「そーそー。恩人の危機を見捨てるわけにはいかないの。
せっかくだから、一刀にみやげ話の一つもほしいしね」
残念だが、その言葉は聞けん」
「そーそー。恩人の危機を見捨てるわけにはいかないの。
せっかくだから、一刀にみやげ話の一つもほしいしね」
至極生真面目な孫権。そして、言葉だけは気楽な彼女の妹。
立ちはだかる二人の少女に、夢使いは不快な感情も顕に顔をゆがめる。
立ちはだかる二人の少女に、夢使いは不快な感情も顕に顔をゆがめる。
「簡単に言ってくれるね。そんなに僕が弱くみえるかい?」
「うん」
「うん」
あっさりと。
言って頷いたのは別の世界の孫呉の姫。
言って頷いたのは別の世界の孫呉の姫。
「…何?もう一度言ってくれないか?
そんなに僕が弱く見えるのかい…?」
「うん。だって、まるっきり雑魚って感じじゃない。
三下根性が染み出てるしぃ?」
「貴様ッ…!
袁術が重用しているからと調子に乗って…!!
生け捕りにしようと思っていたけど、止めだ。
その心、悪夢で壊してやるッ…!」
そんなに僕が弱く見えるのかい…?」
「うん。だって、まるっきり雑魚って感じじゃない。
三下根性が染み出てるしぃ?」
「貴様ッ…!
袁術が重用しているからと調子に乗って…!!
生け捕りにしようと思っていたけど、止めだ。
その心、悪夢で壊してやるッ…!」
怒りに飲み込まれなかった魏延。
片や、大した捻りもない挑発に飲み込まれた夢使い。
片や、大した捻りもない挑発に飲み込まれた夢使い。
結果から言えば、すでにこのとき、勝敗は見えていたのだろう。
妹と夢使いのやり取りを聞いていた孫権は、妹にこれ見よがしに溜息をつく。
「…ふぅ。いらぬ挑発をするな、小蓮。
それとも、これは何かの策か?」
「てへ。思わずやっちゃった」
「いくぞ、魏延文長!そして孫権仲謀、孫尚香!
この僕の力、とくと見せてやる…!」
それとも、これは何かの策か?」
「てへ。思わずやっちゃった」
「いくぞ、魏延文長!そして孫権仲謀、孫尚香!
この僕の力、とくと見せてやる…!」
美しい顔を怒りに歪める少年の姿をしたエミュレイター。
「来るぞっ!!」
思い思いの体勢をとる魏延と、孫姉妹。
転機はここで訪れる。
声は、下から。
異変もまた、下から。
終末は、下。
声は、下から。
異変もまた、下から。
終末は、下。
つまり。あるいはこれも、魏延文長の力、ということなのだろうか。
彼自身に言わせれば、ただの偶然だ、と顔を真っ赤にして否定するだろう。
とはいえ、偶然にしてはできすぎているのも事実ではあった。
彼自身に言わせれば、ただの偶然だ、と顔を真っ赤にして否定するだろう。
とはいえ、偶然にしてはできすぎているのも事実ではあった。
『くらいやがれっ…!!
トンネルゥウウウウウウウウウウウウウウ!!』
トンネルゥウウウウウウウウウウウウウウ!!』
叫びと同時、巨大な穴が。
夢使いの少年と、魏延の足元に、開いた。
夢使いの少年と、魏延の足元に、開いた。
■■■
―――281年2月下旬
―――寿春・政庁内
―――寿春・政庁内
そしてこれが、結末。
「と、いうことがあったのよねー。
傑作だと思わない、一刀」
『…魏延さんに同情するよ』
「あはははははは!」
『冗談じゃないんだけどね』
「うん、うん、わかってるって」
『笑いをこらえながら言われてもなあ…』
「あ、お姉ちゃんがうずうずしてるから、替わるね?」
「小蓮!…全く。
それで、一刀?これから、どうするの?」
『ああ、もう北海から出て、そっち向かってる。
俺と、知り合いのウィザードの人が迎えに行くよ』
「うぃ…ざーど?
それは一体、なんなの?」
『後で説明する。
長くなりそうだし。
それより、状況を整理してもいいかい?』
「ええ」
『二人は、こっちの世界に来てから、袁術―――寿春を治めてる人の下で働いてたんだよな?』
「そう」
『で、給料分以上働かせられて、そろそろ袁術に我慢がならなくなったところで。
寿春に潜入してた魏延さんに会った』
「そうだねー」
『って小蓮に替わったのか。
まあいいや。
魏延さんをかばった蓮華と小蓮は、話をするうちに、俺と魏延さんが会ったことがあるって知ったんだな?
いや、俺は実際は魏延さんと話したことはないわけだけど』
「うん」
『魏延さんが、劉備さん経由で俺と連絡をとってくれて。
で、俺と電話…“0-phone”だっけ?…で話をしてる最中にエミュレイター…まあとにかく、なんか変な格好をした男が出てきて。
そいつと戦おうとしたら、地面に穴が開いて。
蓮華と小蓮は巻き込まれなかったけど、魏延さんは落っこちて。
で、落ちるときに魏延さんの持ってた薙刀がそいつにささって、その男は消えた、と』
傑作だと思わない、一刀」
『…魏延さんに同情するよ』
「あはははははは!」
『冗談じゃないんだけどね』
「うん、うん、わかってるって」
『笑いをこらえながら言われてもなあ…』
「あ、お姉ちゃんがうずうずしてるから、替わるね?」
「小蓮!…全く。
それで、一刀?これから、どうするの?」
『ああ、もう北海から出て、そっち向かってる。
俺と、知り合いのウィザードの人が迎えに行くよ』
「うぃ…ざーど?
それは一体、なんなの?」
『後で説明する。
長くなりそうだし。
それより、状況を整理してもいいかい?』
「ええ」
『二人は、こっちの世界に来てから、袁術―――寿春を治めてる人の下で働いてたんだよな?』
「そう」
『で、給料分以上働かせられて、そろそろ袁術に我慢がならなくなったところで。
寿春に潜入してた魏延さんに会った』
「そうだねー」
『って小蓮に替わったのか。
まあいいや。
魏延さんをかばった蓮華と小蓮は、話をするうちに、俺と魏延さんが会ったことがあるって知ったんだな?
いや、俺は実際は魏延さんと話したことはないわけだけど』
「うん」
『魏延さんが、劉備さん経由で俺と連絡をとってくれて。
で、俺と電話…“0-phone”だっけ?…で話をしてる最中にエミュレイター…まあとにかく、なんか変な格好をした男が出てきて。
そいつと戦おうとしたら、地面に穴が開いて。
蓮華と小蓮は巻き込まれなかったけど、魏延さんは落っこちて。
で、落ちるときに魏延さんの持ってた薙刀がそいつにささって、その男は消えた、と』
「…ええ。
最期に『これが下がる男の力か…』と言っていたけど、何のことだったのかしら」
『今度は蓮華ですか。
いや、何も言わずに替わらないでね?』
「ご、ごめんなさい」
『俺も久しぶりに二人と喋れるのは嬉しいけどさ』
「だよね~」
『だからせめて替わるときは一言欲しいなー、と思ったり思わなかったり』
「ぶーぶー!声を聞けばシャオかお姉ちゃんかなんてわかるじゃない!」
『いや、そうなんだけどね?
こっちとしても、いろいろと事情があるんだ』
「あ、そうだ!
実は、もう一つ、一刀にはおみやげがあるの!」
「小蓮…まさか、本気であれをやる気なの?」
『な、何?何をやる気?
ちょっと心配なんだけど』
「だいじょーぶっ!
ほら、黙って妻を待つのも夫の役目なんだからねっ!
一刀はどっしり構えて、シャオ達を迎えにくればいいのっ!」
『何か所々逆のような気がするなあ…』
最期に『これが下がる男の力か…』と言っていたけど、何のことだったのかしら」
『今度は蓮華ですか。
いや、何も言わずに替わらないでね?』
「ご、ごめんなさい」
『俺も久しぶりに二人と喋れるのは嬉しいけどさ』
「だよね~」
『だからせめて替わるときは一言欲しいなー、と思ったり思わなかったり』
「ぶーぶー!声を聞けばシャオかお姉ちゃんかなんてわかるじゃない!」
『いや、そうなんだけどね?
こっちとしても、いろいろと事情があるんだ』
「あ、そうだ!
実は、もう一つ、一刀にはおみやげがあるの!」
「小蓮…まさか、本気であれをやる気なの?」
『な、何?何をやる気?
ちょっと心配なんだけど』
「だいじょーぶっ!
ほら、黙って妻を待つのも夫の役目なんだからねっ!
一刀はどっしり構えて、シャオ達を迎えにくればいいのっ!」
『何か所々逆のような気がするなあ…』
楽しげに『0-phone』で想い人との会話に興じる二人。
一方、捕らわれの身だったウィザードと、下がったウィザードは、暗い空気を纏っていた。
一方、捕らわれの身だったウィザードと、下がったウィザードは、暗い空気を纏っていた。
「と、ところで魏延様。
俺達はこれから…」
「…お前らのこと、アンゼロットが呼んでるぜ」
「うわあああああああああああああああああ!?
なんてこったぁ!?終わりだ!この世の終わりだぁっ!?」
「落ち着け陳蘭」
「逃げるぞ雷薄!とりあえず山賊にでもなって袁術の財宝を奪うんだ!」
「馬鹿野郎。逃げても余計状況が悪化するだけだろうが」
「…いや、俺が嘘の報告してもいいんだけどな」
「いえ、ロンギヌスのイレギュラーメンバーである魏延様にそのような手間をかけるわけには参りません」
「待てっ!?俺はロンギヌスじゃねえ!?
いつの間にそんな肩書きができてんだ!?
「いやだーっ!?俺は逃げるー!!逃げて山賊になるー!!」
「逃げ切れる算段がありゃあそうしてもいいけどな。
ほれ、行くぞ…それでは失礼します、魏延様」
「な、なんつーか……お前らも、大変なんだな」
「魏延様ほどではありません」
俺達はこれから…」
「…お前らのこと、アンゼロットが呼んでるぜ」
「うわあああああああああああああああああ!?
なんてこったぁ!?終わりだ!この世の終わりだぁっ!?」
「落ち着け陳蘭」
「逃げるぞ雷薄!とりあえず山賊にでもなって袁術の財宝を奪うんだ!」
「馬鹿野郎。逃げても余計状況が悪化するだけだろうが」
「…いや、俺が嘘の報告してもいいんだけどな」
「いえ、ロンギヌスのイレギュラーメンバーである魏延様にそのような手間をかけるわけには参りません」
「待てっ!?俺はロンギヌスじゃねえ!?
いつの間にそんな肩書きができてんだ!?
「いやだーっ!?俺は逃げるー!!逃げて山賊になるー!!」
「逃げ切れる算段がありゃあそうしてもいいけどな。
ほれ、行くぞ…それでは失礼します、魏延様」
「な、なんつーか……お前らも、大変なんだな」
「魏延様ほどではありません」
そういいながらも、憂鬱そうな雷薄の顔は、かぶった土と同じような色をしていた。
【孫権の登用に成功しました】