(flag.X1-2 黒き落としの神子)
―――輝明学園校長室
日曜日。
輝明学園の理事長代理であるくれはは、休日だからと言って軽々しく休めない。
執行部の顔役として年がら年中忙しい彼女の幼馴染ほどではないにせよ、この学園世界で多数の仕事を抱えている。
輝明学園の運営代表であるため、健康やストレスを考えて休暇にも一定の配慮がなされてはいるが、仕事が溜まった時などはこうして休日に"出勤"することになる日も多かった。
「はわっ?」
目を通し、本日の急な仕事の書類に書かれた"ちょっとした予想外"の部分に眉をひそめる。
「…なんで?」
書類に書かれたその部分…『クラス分類欄』に首をかしげる。
「てっきり大いなるものか転生者辺りかな~と思ってたんだけど…」
彼女の経歴を見るにその辺が妥当だろう、そう考えていたのと違う。
それが何を意味するのかを考えていたところで…
輝明学園の理事長代理であるくれはは、休日だからと言って軽々しく休めない。
執行部の顔役として年がら年中忙しい彼女の幼馴染ほどではないにせよ、この学園世界で多数の仕事を抱えている。
輝明学園の運営代表であるため、健康やストレスを考えて休暇にも一定の配慮がなされてはいるが、仕事が溜まった時などはこうして休日に"出勤"することになる日も多かった。
「はわっ?」
目を通し、本日の急な仕事の書類に書かれた"ちょっとした予想外"の部分に眉をひそめる。
「…なんで?」
書類に書かれたその部分…『クラス分類欄』に首をかしげる。
「てっきり大いなるものか転生者辺りかな~と思ってたんだけど…」
彼女の経歴を見るにその辺が妥当だろう、そう考えていたのと違う。
それが何を意味するのかを考えていたところで…
コンコン
「失礼します。赤羽理事長代理、夜見様がお見えです」
くれはの秘書が待っていた客人の来訪を告げ、くれはは思考の海から引き上げられる。
「はわっ。通しちゃって」
先ほどまでの疑問はとりあえず脇に置いておくとして、くれははそのウィザード…幼馴染でもある夜見トオルを迎えた。
くれはの秘書が待っていた客人の来訪を告げ、くれはは思考の海から引き上げられる。
「はわっ。通しちゃって」
先ほどまでの疑問はとりあえず脇に置いておくとして、くれははそのウィザード…幼馴染でもある夜見トオルを迎えた。
「新米ウィザードの教育係か…ですか?」
くれは直々に頼みたいことがある。そう聞かされて輝明学園にやってきた夜見トオルは、ぎこちなくくれはの『依頼』を聞き返した。
「はわ~。別にそんなにかしこまらないくていいよ?」
そんな、明らかに慣れていない敬語に苦笑しながらくれはが言う。
「え?いいの?一応こっちではくれは先輩えらい人だからちゃんとした方がいいかなって思ったんだけど」
「いいよいいよ。むしろ変にかしこまられても肩こるしさ。っつーわけでいつも通りよろしく」
「…分かった。それでいいっつうんなら」
「うん。それでよし。そんで話戻すけどさ、教育係制度のことは知ってるよね?」
「え?そりゃあ、まあ…」
くれはの問いにトオルは頷く。
くれは直々に頼みたいことがある。そう聞かされて輝明学園にやってきた夜見トオルは、ぎこちなくくれはの『依頼』を聞き返した。
「はわ~。別にそんなにかしこまらないくていいよ?」
そんな、明らかに慣れていない敬語に苦笑しながらくれはが言う。
「え?いいの?一応こっちではくれは先輩えらい人だからちゃんとした方がいいかなって思ったんだけど」
「いいよいいよ。むしろ変にかしこまられても肩こるしさ。っつーわけでいつも通りよろしく」
「…分かった。それでいいっつうんなら」
「うん。それでよし。そんで話戻すけどさ、教育係制度のことは知ってるよね?」
「え?そりゃあ、まあ…」
くれはの問いにトオルは頷く。
輝明学園に通う学生の大半はイノセント…ウィザードでは無い普通の人間である。
学園世界において彼らイノセントはなんら特殊な力を持たない輝明学園の生徒として、日々暮らしている。
しかし、彼らの中にはある日ウィザードに覚醒するものがいる。
モンスターの類に襲われて、運命の導きで、この世界で異世界の何かから力を得て、異世界の技術を学ぶうちに自然と…
理由は様々だが、とにかくある日突然力に目覚め、非日常の側に立つ生徒は結構多い。
学園世界において彼らイノセントはなんら特殊な力を持たない輝明学園の生徒として、日々暮らしている。
しかし、彼らの中にはある日ウィザードに覚醒するものがいる。
モンスターの類に襲われて、運命の導きで、この世界で異世界の何かから力を得て、異世界の技術を学ぶうちに自然と…
理由は様々だが、とにかくある日突然力に目覚め、非日常の側に立つ生徒は結構多い。
そんな、"学園世界産"ウィザードの発生に伴って、この世界で唯一ウィザードの扱い方を心得ている組織として輝明学園はいくつかの制度を設けた。
輝明学園のウィザードであることを証明する『ウィザード学生証』の発行をはじめとして覚醒したウィザードに装備を整えるための資金を渡す『ウィザード奨学金』、
本人の適性に合わせて必要な知識や技術を教える『ウィザード教習』など、基本的には新たに覚醒したウィザードがその力を使いこなせるようになるまでの間見守るものである。
輝明学園のウィザードであることを証明する『ウィザード学生証』の発行をはじめとして覚醒したウィザードに装備を整えるための資金を渡す『ウィザード奨学金』、
本人の適性に合わせて必要な知識や技術を教える『ウィザード教習』など、基本的には新たに覚醒したウィザードがその力を使いこなせるようになるまでの間見守るものである。
そしてその1つに、『ウィザード教育係』と言うものがある。それは…
「新しく覚醒したウィザード生徒に同じ学生のウィザードを紹介するって奴だよな?確かその人に近しい人が選ばれるって…ん?」
制度のことを口にしていて、トオルは疑問を覚える。
「ってことはつまり俺に近しい奴がウィザードになったってことで…まさか!?」
そして、気づく。この1年、ただ1人を除いて誰とも関わらぬよう暮らしてきた『夜見トオル』に近しいイノセントは、ただ1人だと言う事に。
その様子にくれはは頷いて答える。
「そう。入ってきていいよ」
「新しく覚醒したウィザード生徒に同じ学生のウィザードを紹介するって奴だよな?確かその人に近しい人が選ばれるって…ん?」
制度のことを口にしていて、トオルは疑問を覚える。
「ってことはつまり俺に近しい奴がウィザードになったってことで…まさか!?」
そして、気づく。この1年、ただ1人を除いて誰とも関わらぬよう暮らしてきた『夜見トオル』に近しいイノセントは、ただ1人だと言う事に。
その様子にくれはは頷いて答える。
「そう。入ってきていいよ」
ガチャ
「はい。失礼しま~す。それと、おはよ。トオル」
その言葉と共に入って来たのは…
「ユリっ!?」
彼の幼馴染の少女、朱野ユリだった。
「何でユリが…?」
「うん。昨日モンスターに襲われて、そのとき、ウィザードになったみたい」
驚いているトオルにユリが嬉しそうに説明する。
「なったみたいって…いや、まあよくある話だけどさ」
素質もつものが命の危機から生き残るために覚醒したと言うのは、ウィザードの覚醒の理由としては非常にポピュラーなものではある。
実際学園世界でもモンスターの類に襲われて力に目覚めたウィザードは数多い。
それに元々大地の護符をその身体に有していたユリはウィザードになる才能の1つ"非日常を受け入れられる心の強さ"は持っていた。
「けど、ユリが覚醒するなんて…」
だがトオルは知っている。ユリにはウィザードに必要なもう1つの才能が欠けている。
朱野ユリはウィザードに必要なもう1つの才能、"強いプラーナ"をとある事件で失った。
逆に言えば何らかの要因で解消されればいつウィザードに覚醒してもおかしくは無い状態ではあったのだが、ならば何が起こったのか。
「まあ、ユリちゃんのことはこっちでも色々調べてるからさ、しばらくユリちゃんのことはよろしくね」
そんなトオルの疑問を察したのか、くれはが先んじて答える。
「まあ、そんなわけみたいだから。よろしくね。トオル」
ユリも零れるような笑みでトオルを見る。
「…おう。とにかく、形はどうあれくれは先輩の頼みだしな。よろしくな、ユリ」
そんなユリが眩しくてぶっきらぼうに、承諾する。目をそらしながら。
「…もう。そこはもうちょっと『ああ!これからはずっと一緒だYO!愛しいマイスイートハニーユリ!』とか言わないと」
からかうように言う。
「んな恥ずかしいセリフ言えるかっ!?」
そんなユリのセリフに顔を赤くする。そんな様子に満足したようにユリは付け加える。
「まあ、あたしもトオルがそんなこと言ったら笑うけどね」
「ひでえっ!?」
「ま、冗談はさておき」
そんな、青春ディスタンス街道まっしぐらな会話を打ち切り、ユリがこほんと咳ばらいを1つする。
「これからはウィザードとして、一緒だよ」
心底嬉しそうに、言う。
「…おう」
それにぶっきらぼうに同意するトオル。
その言葉と共に入って来たのは…
「ユリっ!?」
彼の幼馴染の少女、朱野ユリだった。
「何でユリが…?」
「うん。昨日モンスターに襲われて、そのとき、ウィザードになったみたい」
驚いているトオルにユリが嬉しそうに説明する。
「なったみたいって…いや、まあよくある話だけどさ」
素質もつものが命の危機から生き残るために覚醒したと言うのは、ウィザードの覚醒の理由としては非常にポピュラーなものではある。
実際学園世界でもモンスターの類に襲われて力に目覚めたウィザードは数多い。
それに元々大地の護符をその身体に有していたユリはウィザードになる才能の1つ"非日常を受け入れられる心の強さ"は持っていた。
「けど、ユリが覚醒するなんて…」
だがトオルは知っている。ユリにはウィザードに必要なもう1つの才能が欠けている。
朱野ユリはウィザードに必要なもう1つの才能、"強いプラーナ"をとある事件で失った。
逆に言えば何らかの要因で解消されればいつウィザードに覚醒してもおかしくは無い状態ではあったのだが、ならば何が起こったのか。
「まあ、ユリちゃんのことはこっちでも色々調べてるからさ、しばらくユリちゃんのことはよろしくね」
そんなトオルの疑問を察したのか、くれはが先んじて答える。
「まあ、そんなわけみたいだから。よろしくね。トオル」
ユリも零れるような笑みでトオルを見る。
「…おう。とにかく、形はどうあれくれは先輩の頼みだしな。よろしくな、ユリ」
そんなユリが眩しくてぶっきらぼうに、承諾する。目をそらしながら。
「…もう。そこはもうちょっと『ああ!これからはずっと一緒だYO!愛しいマイスイートハニーユリ!』とか言わないと」
からかうように言う。
「んな恥ずかしいセリフ言えるかっ!?」
そんなユリのセリフに顔を赤くする。そんな様子に満足したようにユリは付け加える。
「まあ、あたしもトオルがそんなこと言ったら笑うけどね」
「ひでえっ!?」
「ま、冗談はさておき」
そんな、青春ディスタンス街道まっしぐらな会話を打ち切り、ユリがこほんと咳ばらいを1つする。
「これからはウィザードとして、一緒だよ」
心底嬉しそうに、言う。
「…おう」
それにぶっきらぼうに同意するトオル。
それが朱野ユリのウィザードとしての生活の始まりであった。
―――輸入百貨店『オクタマート』
オクタヘドロンを始めとした、異世界を渡り歩く複数の企業が共同出資して作った学園世界最大の超☆巨大ショッピングモール。
それがオクタマートである。
食品、日用品や服、アクセサリなどのファッション用品、各種ポーションや魔道具などの冒険用アイテム。果ては刀剣類や銃器、魔装に鎧などの武具まで。
ここでは学園世界の学生たちの出身世界から"輸入"したありとあらゆる物品が売られている。
0-phoneを用いた電子マネーにも対応し、更に休日には本物の量産型(市価200万円にて絶賛販売中)を使った「ボン太くんショー」などの各種イベントも満載。
その異様なまでの品揃えと行き届いたサービスのお陰で、開店から1ヶ月ほどにも関わらず既にその名は学園世界中に知れ渡っている。
そして、その一角で経営している、中華飲茶店で。
「…遅いわよ2人とも」
ゆったりとしたワンピースを着た鳳来寺麒麟は優雅に温かい烏龍茶を飲みつつ、約束の時間を大分遅れてきた2人をじろっと見る。
「…悪い。ここ来るのは初めてだから、迷った」
余りファッションに興味のなさげな普通の服の上からいつものマントをつけたトオルと。
「ごめ~ん。アタシもこの区画にはほとんど来たこと無かったから、迷っちゃった」
ひざ丈のフレアスカートにブラウス、それに薄手のカーディガンを着こみ、手を合わせすまなそうな顔をしたユリの2人。
「…まあいいわ。初めてなら迷うのも分かるから」
そんな2人に、仕方がないかと言うように麒麟は溜息をついた。気持は分からないでもない。
この辺りはオクタマートでも特に初心者お断りの場所なのだ。
それがオクタマートである。
食品、日用品や服、アクセサリなどのファッション用品、各種ポーションや魔道具などの冒険用アイテム。果ては刀剣類や銃器、魔装に鎧などの武具まで。
ここでは学園世界の学生たちの出身世界から"輸入"したありとあらゆる物品が売られている。
0-phoneを用いた電子マネーにも対応し、更に休日には本物の量産型(市価200万円にて絶賛販売中)を使った「ボン太くんショー」などの各種イベントも満載。
その異様なまでの品揃えと行き届いたサービスのお陰で、開店から1ヶ月ほどにも関わらず既にその名は学園世界中に知れ渡っている。
そして、その一角で経営している、中華飲茶店で。
「…遅いわよ2人とも」
ゆったりとしたワンピースを着た鳳来寺麒麟は優雅に温かい烏龍茶を飲みつつ、約束の時間を大分遅れてきた2人をじろっと見る。
「…悪い。ここ来るのは初めてだから、迷った」
余りファッションに興味のなさげな普通の服の上からいつものマントをつけたトオルと。
「ごめ~ん。アタシもこの区画にはほとんど来たこと無かったから、迷っちゃった」
ひざ丈のフレアスカートにブラウス、それに薄手のカーディガンを着こみ、手を合わせすまなそうな顔をしたユリの2人。
「…まあいいわ。初めてなら迷うのも分かるから」
そんな2人に、仕方がないかと言うように麒麟は溜息をついた。気持は分からないでもない。
この辺りはオクタマートでも特に初心者お断りの場所なのだ。
この区画一帯は通称"オカルトエリア"と呼ばれている。
ここでは各種魔法の習得や儀式魔法に使う材料や魔道具、黒魔術や呪術なども含む魔法が記された魔導書、その他霊能者、魔法使い向けの装備などを主に扱っている。
そのため、普通に蝙蝠の羽根だの正体不明の触手が量り売りで売っていたり、人肌の温度と手触りの装丁が施された魔導書が本棚に並んでいたり、この世のものとは思えぬ何かの鳴き声がどこからか聞こえてきたりする。
やってくる客も霊能者やオカルトマニア、魔術師や錬金術師と言った『本格派』ばっかりと言う一般人がほとんど近づかない一角なのだ。
この辺りはその手の、怪しい人間が多い場所なためかやたら豪華なマントをつけた少年と言うトオルの姿も余り目立っていないのが救いと言えば救いである。
ここでは各種魔法の習得や儀式魔法に使う材料や魔道具、黒魔術や呪術なども含む魔法が記された魔導書、その他霊能者、魔法使い向けの装備などを主に扱っている。
そのため、普通に蝙蝠の羽根だの正体不明の触手が量り売りで売っていたり、人肌の温度と手触りの装丁が施された魔導書が本棚に並んでいたり、この世のものとは思えぬ何かの鳴き声がどこからか聞こえてきたりする。
やってくる客も霊能者やオカルトマニア、魔術師や錬金術師と言った『本格派』ばっかりと言う一般人がほとんど近づかない一角なのだ。
この辺りはその手の、怪しい人間が多い場所なためかやたら豪華なマントをつけた少年と言うトオルの姿も余り目立っていないのが救いと言えば救いである。
「それで、本当なの?その、ウィザードに覚醒したって」
気を取り直し、麒麟はユリに尋ねる。
「うん。間違いないみたい。あたし、ウィザードになったって」
麒麟の問いに、こっくりと頷く。
「それでね。あたしはキャスター…だっけ?とにかく、攻撃魔法を使うのに向いてるらしいんだけど…」
「ユリは魔法って言うかウィザードのこと事態ほとんど知らんし、オレも箒とか武器なら分かるんだが、魔法はあんまし詳しくないからな。
だからさ、悪いんだけどユリの装備見立ててやってくんないかな?」
「なるほど、そういうことね…」
ユリとトオルから事情を聞き、麒麟は納得する。確かにそう言うことならタイプは違うが魔法の扱いには詳しい自分の方が向いているだろう。
「分かったわ。他ならぬ親友と戦友の頼みだし、そういうことなら私に任せなさい」
そう答え、立ち上がる。
「行きましょ。とりあえず、魔法からね」
気を取り直し、麒麟はユリに尋ねる。
「うん。間違いないみたい。あたし、ウィザードになったって」
麒麟の問いに、こっくりと頷く。
「それでね。あたしはキャスター…だっけ?とにかく、攻撃魔法を使うのに向いてるらしいんだけど…」
「ユリは魔法って言うかウィザードのこと事態ほとんど知らんし、オレも箒とか武器なら分かるんだが、魔法はあんまし詳しくないからな。
だからさ、悪いんだけどユリの装備見立ててやってくんないかな?」
「なるほど、そういうことね…」
ユリとトオルから事情を聞き、麒麟は納得する。確かにそう言うことならタイプは違うが魔法の扱いには詳しい自分の方が向いているだろう。
「分かったわ。他ならぬ親友と戦友の頼みだし、そういうことなら私に任せなさい」
そう答え、立ち上がる。
「行きましょ。とりあえず、魔法からね」
精算を済ませ、麒麟の知っているファー・ジ・アース系の魔法を扱う店に向かいながら、麒麟がユリに尋ねる。
「っと、そうだ。そう言えば、ユリの属性は?」
歩き出したところで魔法を買うなら重要なことである問いをユリにぶつける。
「え?属性?」
麒麟の問いにユリは首をかしげる。
「そう。ユリの属性。ウィザードは属性ごとに覚えられる魔法が違うから、魔法の使い手だと割と重要なのよ。攻撃魔法は特に」
「へぇ~そうなんだ。でもあたし自分の属性なんて知らないよ?」
「…ウィザード用の学生証は持ってる?それに書いてあるはずよ」
そんなユリの様子に、軽く溜息をついて、麒麟はユリに言う。
「あ、そっか。じゃあちょっと待ってね…」
ごそごそと手にしたバッグから真新しい学生証を取り出す。
「えっと…属性は『天』と『地』ってなってる」
「そう。天と地ね。それで予算が装備込みで50万となると…」
ユリの属性を聞き、何の魔法がいいかと色々プランを練り始めたときだった。
「おい…」
なんとはなしにユリの学生証を覗き込んだトオルが目を見開く。
「ん?どしたの?トオル?」
「いや…それ…よく見せてくれ」
「え?いいけど…」
怪訝そうな顔をしながら学生証を渡す。それをトオルはよく確認し…見間違いでないことを確認する。
「なあ…ユリ、お前のクラス…"落とし子"なのか?」
トオルの言葉に、麒麟がハッとして顔を上げ、トオルの顔を見る。
「え?うん。そうみたい。よく分からないけど、認定試験やってた先生も驚いてたよ。珍しいクラスだって」
「珍しいって…」
何の疑問も持っていない様子のユリに、麒麟は絶句する。
「どうしたの?トオルも麒麟も変な顔しちゃって」
ただ1人、落とし子と言うクラスがどういうものかを理解していないユリが不思議そうに首をかしげる。
「っと、そうだ。そう言えば、ユリの属性は?」
歩き出したところで魔法を買うなら重要なことである問いをユリにぶつける。
「え?属性?」
麒麟の問いにユリは首をかしげる。
「そう。ユリの属性。ウィザードは属性ごとに覚えられる魔法が違うから、魔法の使い手だと割と重要なのよ。攻撃魔法は特に」
「へぇ~そうなんだ。でもあたし自分の属性なんて知らないよ?」
「…ウィザード用の学生証は持ってる?それに書いてあるはずよ」
そんなユリの様子に、軽く溜息をついて、麒麟はユリに言う。
「あ、そっか。じゃあちょっと待ってね…」
ごそごそと手にしたバッグから真新しい学生証を取り出す。
「えっと…属性は『天』と『地』ってなってる」
「そう。天と地ね。それで予算が装備込みで50万となると…」
ユリの属性を聞き、何の魔法がいいかと色々プランを練り始めたときだった。
「おい…」
なんとはなしにユリの学生証を覗き込んだトオルが目を見開く。
「ん?どしたの?トオル?」
「いや…それ…よく見せてくれ」
「え?いいけど…」
怪訝そうな顔をしながら学生証を渡す。それをトオルはよく確認し…見間違いでないことを確認する。
「なあ…ユリ、お前のクラス…"落とし子"なのか?」
トオルの言葉に、麒麟がハッとして顔を上げ、トオルの顔を見る。
「え?うん。そうみたい。よく分からないけど、認定試験やってた先生も驚いてたよ。珍しいクラスだって」
「珍しいって…」
何の疑問も持っていない様子のユリに、麒麟は絶句する。
「どうしたの?トオルも麒麟も変な顔しちゃって」
ただ1人、落とし子と言うクラスがどういうものかを理解していないユリが不思議そうに首をかしげる。
落とし子とはファー・ジ・アースを揺るがした大事件『マジカル・ウォー・フェア』以降に新たに"世界を守る側"に立つこともあるようになったクラスである。
物理と魔法両方に対して強い攻撃力を持ち、特殊なプラーナを扱う事を得意とする、攻撃向けのクラス。
古くから存在は確認されていた彼ら落とし子が長らく"世界を守る側"とみなされなかった理由。それは。
「ユリ…まさかお前、侵魔と契約したのか!?」
魔王級の強力な侵魔と契約することで特殊なプラーナ…俗に『瘴気』と呼ばれる侵魔の力を得た、魔王の先兵であるがため。
ファー・ジ・アースが冥魔の脅威にさらされることによって利害が一致した侵魔と手を組む機会が増えたとはいえ、今なお多くの落とし子が世界を狙う魔王の手先として、日々暗躍している。
「侵魔と契約?何のこと?」
だが、ユリはそんなトオルをきょとんと見つめる。
「いや、何でも無い。ちょっと驚いただけだ」
ごまかすように、トオルは自らのウィザード学生証を取り出し、ユリに渡す。
「ほら、オレも"落とし子"だからな。まさかユリもそうなんだとは思ってなかったからな」
「そ、そう!ほらただでさえ珍しいクラスが2人もそろうなんて思ってなかったから、驚いたの!」
麒麟もそれに合わせる。
「え!?…あ、本当だ。トオルって落とし子だったんだ…」
改めてトオルの学生証を見て、感嘆の声を上げる。
「お揃いかあ。ちょっと嬉しいかも」
そしてトオルに学生証を返しながら無邪気に笑う。
そんなユリを見ながら、トオルは決意する。
(何でユリがウィザード…それも落とし子なんかに覚醒したのか、調べる必要があるな)
ちらりと麒麟と目くばせをする。その瞳を見て、麒麟も同じ考えであることを察する。
「…さてと、じゃあ、そろそろ行きますか」
そんな気配を微塵も感じさせず、麒麟が朗らかに言う。
「ユリの装備は私がしっかり見たててあげる。その代り、今日の晩御飯はあたしたちの分はトオルのおごり。ユリの覚醒祝いも兼ねるから盛大にね」
「へいへい。わーったよ。そん代わり、あんまり高いのは勘弁してくれよ」
溜息をついて、同意する…"いつものトオル"がやるように。
「了解。そうと決まったらさっさと見立てちゃいましょ。とりあえず、何か要望とかある?どんな魔法が欲しいとか、装備がいいかとか」
「え?あ~、え~っとね…」
ユリの希望を尋ねつつ、3人は買い物を始めるべく歩き出した。
ドロドロドロドロ…
何処からか聞こえてきた、ある意味この場所には相応しい怪しげな着メロと。
「はう!?」
シャギャー!
鳴き声と共に暴れる紙袋と箒を抱え、ユリの方を驚いた顔で見る、ドクロの髪飾りをつけた少女の存在には気づかずに。
物理と魔法両方に対して強い攻撃力を持ち、特殊なプラーナを扱う事を得意とする、攻撃向けのクラス。
古くから存在は確認されていた彼ら落とし子が長らく"世界を守る側"とみなされなかった理由。それは。
「ユリ…まさかお前、侵魔と契約したのか!?」
魔王級の強力な侵魔と契約することで特殊なプラーナ…俗に『瘴気』と呼ばれる侵魔の力を得た、魔王の先兵であるがため。
ファー・ジ・アースが冥魔の脅威にさらされることによって利害が一致した侵魔と手を組む機会が増えたとはいえ、今なお多くの落とし子が世界を狙う魔王の手先として、日々暗躍している。
「侵魔と契約?何のこと?」
だが、ユリはそんなトオルをきょとんと見つめる。
「いや、何でも無い。ちょっと驚いただけだ」
ごまかすように、トオルは自らのウィザード学生証を取り出し、ユリに渡す。
「ほら、オレも"落とし子"だからな。まさかユリもそうなんだとは思ってなかったからな」
「そ、そう!ほらただでさえ珍しいクラスが2人もそろうなんて思ってなかったから、驚いたの!」
麒麟もそれに合わせる。
「え!?…あ、本当だ。トオルって落とし子だったんだ…」
改めてトオルの学生証を見て、感嘆の声を上げる。
「お揃いかあ。ちょっと嬉しいかも」
そしてトオルに学生証を返しながら無邪気に笑う。
そんなユリを見ながら、トオルは決意する。
(何でユリがウィザード…それも落とし子なんかに覚醒したのか、調べる必要があるな)
ちらりと麒麟と目くばせをする。その瞳を見て、麒麟も同じ考えであることを察する。
「…さてと、じゃあ、そろそろ行きますか」
そんな気配を微塵も感じさせず、麒麟が朗らかに言う。
「ユリの装備は私がしっかり見たててあげる。その代り、今日の晩御飯はあたしたちの分はトオルのおごり。ユリの覚醒祝いも兼ねるから盛大にね」
「へいへい。わーったよ。そん代わり、あんまり高いのは勘弁してくれよ」
溜息をついて、同意する…"いつものトオル"がやるように。
「了解。そうと決まったらさっさと見立てちゃいましょ。とりあえず、何か要望とかある?どんな魔法が欲しいとか、装備がいいかとか」
「え?あ~、え~っとね…」
ユリの希望を尋ねつつ、3人は買い物を始めるべく歩き出した。
ドロドロドロドロ…
何処からか聞こえてきた、ある意味この場所には相応しい怪しげな着メロと。
「はう!?」
シャギャー!
鳴き声と共に暴れる紙袋と箒を抱え、ユリの方を驚いた顔で見る、ドクロの髪飾りをつけた少女の存在には気づかずに。
―――舞島学園 男子学生寮
夕刻。
「…これで60本攻略完了、か…」
6つの画面から同時に流れるスタッフロールに深く満足しながら、"落とし神"こと桂木桂馬は緊張を解いた。
心地よい疲れが肉体を包む。
「やはり、ギャルゲーは良い。人類の生み出した文化の極みだ」
その口から漏れるのは、惜しみない称賛の言葉。
先週は駆け魂に取りつかれた少女(どこかのファンタジー世界の魔法使いだ)とのリアルデートでプレイできなかったため、積みゲーが溜まっていた。
その遅れを取り戻すべく、昨日今日はずっとギャルゲー。お陰で溜まっていた積みゲーもたいぶ消化しきった。
「…それに、今日は邪魔も入らなかったしな」
休日、平日問わず頻繁に桂馬の部屋を訪れる少女が今日は珍しく顔を見せていない。
お陰でゲームに集中することができた、非常に有意義な休日の過ごし方と言える(桂馬的には)
「さて、現実(リアル)での栄養補給と新しいギャルゲーの調達にでも行くか…」
スタッフロールが終了したのを確認し、立ち上がったときだった。
ガチャガチャ…バーンッ!
鍵をかけたドアが勢いよく開かれる。中に入ってきたのは…
「か、駆け魂です!駆け魂を見つけましたぁ~!」
紙袋と箒を抱えたいつものへっぽこ悪魔。
「うるさい。落ち着けエルシィ」
一言で切り捨てながら、桂馬は再び椅子に座る。
「それで、駆け魂を見つけた。そう言ったな?」
そして、エルシィに再度確認を取る。
「あ、はい!駆け魂です!お菓子の材料買いに行ったら駆け魂がいたんです!」
シャギャー!
そこでようやく落ち着いたのか、紙袋を近くのテーブルに置き、桂馬に先ほど発見した駆け魂のことを伝える。
「そうか…お菓子?」
それをあっさり流そうとして、桂馬は眉をひそめた。あの紙袋の中身がお菓子の材料とは思えない。
こちらにまで変な匂いが漂ってきてるし、さっきからバスバス音を立てながら不自然に動いている。第一お菓子の材料はシャギャーとか鳴かない。
「はい。神様に食べてもらおうかと思いまして」
「食わんぞ。それで、どこの学校の誰だ?」
とりあえず紙袋は無視して話を進める。とりあえず"オカルトエリア"に出入りしているような奴である以上、舞島学園の生徒である確率は低い。
「…え?」
桂馬の問いが予想外だったとでも言うように、エルシィは一言声を上げる。
「…」
「……」
「……」
しばしの沈黙、そして。
「……え~っと、そう言えば、どこの誰なんでしょう?」
駆け魂を見つけた時点で急いで戻ってきたので、その辺さっぱりだということにエルシィは気づいた。
「そこからか…」
まずは、エンカウントイベントから。その事に気づいた桂馬がため息をつく。
どうやら今回の攻略も、前途多難となりそうである。
「…これで60本攻略完了、か…」
6つの画面から同時に流れるスタッフロールに深く満足しながら、"落とし神"こと桂木桂馬は緊張を解いた。
心地よい疲れが肉体を包む。
「やはり、ギャルゲーは良い。人類の生み出した文化の極みだ」
その口から漏れるのは、惜しみない称賛の言葉。
先週は駆け魂に取りつかれた少女(どこかのファンタジー世界の魔法使いだ)とのリアルデートでプレイできなかったため、積みゲーが溜まっていた。
その遅れを取り戻すべく、昨日今日はずっとギャルゲー。お陰で溜まっていた積みゲーもたいぶ消化しきった。
「…それに、今日は邪魔も入らなかったしな」
休日、平日問わず頻繁に桂馬の部屋を訪れる少女が今日は珍しく顔を見せていない。
お陰でゲームに集中することができた、非常に有意義な休日の過ごし方と言える(桂馬的には)
「さて、現実(リアル)での栄養補給と新しいギャルゲーの調達にでも行くか…」
スタッフロールが終了したのを確認し、立ち上がったときだった。
ガチャガチャ…バーンッ!
鍵をかけたドアが勢いよく開かれる。中に入ってきたのは…
「か、駆け魂です!駆け魂を見つけましたぁ~!」
紙袋と箒を抱えたいつものへっぽこ悪魔。
「うるさい。落ち着けエルシィ」
一言で切り捨てながら、桂馬は再び椅子に座る。
「それで、駆け魂を見つけた。そう言ったな?」
そして、エルシィに再度確認を取る。
「あ、はい!駆け魂です!お菓子の材料買いに行ったら駆け魂がいたんです!」
シャギャー!
そこでようやく落ち着いたのか、紙袋を近くのテーブルに置き、桂馬に先ほど発見した駆け魂のことを伝える。
「そうか…お菓子?」
それをあっさり流そうとして、桂馬は眉をひそめた。あの紙袋の中身がお菓子の材料とは思えない。
こちらにまで変な匂いが漂ってきてるし、さっきからバスバス音を立てながら不自然に動いている。第一お菓子の材料はシャギャーとか鳴かない。
「はい。神様に食べてもらおうかと思いまして」
「食わんぞ。それで、どこの学校の誰だ?」
とりあえず紙袋は無視して話を進める。とりあえず"オカルトエリア"に出入りしているような奴である以上、舞島学園の生徒である確率は低い。
「…え?」
桂馬の問いが予想外だったとでも言うように、エルシィは一言声を上げる。
「…」
「……」
「……」
しばしの沈黙、そして。
「……え~っと、そう言えば、どこの誰なんでしょう?」
駆け魂を見つけた時点で急いで戻ってきたので、その辺さっぱりだということにエルシィは気づいた。
「そこからか…」
まずは、エンカウントイベントから。その事に気づいた桂馬がため息をつく。
どうやら今回の攻略も、前途多難となりそうである。