「臓物を、ブチ撒けろっ!!」
咆哮と共に刃が一閃する。
章印とを言わず身体総てを微塵に切り刻まれて、その異形は四散して消えた。
崩れて欠片になったホムンクルスを革靴で踏みつけて、津村 斗貴子は安堵の息を吐き出す。
多少錆び付いてはいるが、戦士としての勘そのものを失った訳ではなかった。
恐らくは戦士として生きてきた時間の方が長かったためだろう、久方ぶりに武装錬金を纏い
戦いに身をおいた時、彼女の心に沸いたのは高揚感だった。
(……身に沁みついたモノはそうそう取れるモノではない、か)
斗貴子は知らず憂いを帯びた苦笑を漏らしていた。
ごく普通の学生として、ごく普通の生活を送っている現在よりも、ホムンクルスに対する憎悪を胸に
武器を振るっていた過去に郷愁を感じてしまう。
自分と同じ――いや、それ以上の力を背負った経験を持ちながらなお普通の人間と同じように生きる少年に
時折羨望と憧憬を抱いてしまうのも、その辺りが理由なのだろう。
度し難いと自分では理解しているものの、斗貴子は未だにそれを完全に取り払う事ができないでいた。
斗貴子は迷路に入りかけた思考を払うように頭を振り、空を見上げる。
静寂を吸い込むような夜空の闇に、鮮やかな紅の月が一人きりで浮かんでいた。
咆哮と共に刃が一閃する。
章印とを言わず身体総てを微塵に切り刻まれて、その異形は四散して消えた。
崩れて欠片になったホムンクルスを革靴で踏みつけて、津村 斗貴子は安堵の息を吐き出す。
多少錆び付いてはいるが、戦士としての勘そのものを失った訳ではなかった。
恐らくは戦士として生きてきた時間の方が長かったためだろう、久方ぶりに武装錬金を纏い
戦いに身をおいた時、彼女の心に沸いたのは高揚感だった。
(……身に沁みついたモノはそうそう取れるモノではない、か)
斗貴子は知らず憂いを帯びた苦笑を漏らしていた。
ごく普通の学生として、ごく普通の生活を送っている現在よりも、ホムンクルスに対する憎悪を胸に
武器を振るっていた過去に郷愁を感じてしまう。
自分と同じ――いや、それ以上の力を背負った経験を持ちながらなお普通の人間と同じように生きる少年に
時折羨望と憧憬を抱いてしまうのも、その辺りが理由なのだろう。
度し難いと自分では理解しているものの、斗貴子は未だにそれを完全に取り払う事ができないでいた。
斗貴子は迷路に入りかけた思考を払うように頭を振り、空を見上げる。
静寂を吸い込むような夜空の闇に、鮮やかな紅の月が一人きりで浮かんでいた。
――昨年の十月、ヴィクターに関する一連の事件に終幕を迎え、彼女の属する錬金戦団は段階的に行動の
凍結を行った。
その際に彼女を始め錬金の戦士達は自らの持つ核鉄を戦団へと返却――といっても武藤カズキは核鉄が
生命と同化してしまっているので不可能であったが――し、一般人として生活を始めたのだ。
だが、年の暮れから銀成市で行方不明事件が発生し、それがホムンクルス絡みであろう事が調査の末に
明らかになった。
行動凍結の指針を世界に発表して間もない手前、ブラボーや火渡といった戦士長クラスの人間がそうそう
現場に立ち入り動き回る事は憚られる。
加えて、活動凍結に前後して行われたホムンクルス勢の制圧作戦が概ね終わった現状、今回蠢動している
何者かもそれほどの脅威ではないと予想された。
そこで行方不明事件の調査に借り出されたのが、地元の学校に通っており力量も十二分にある斗貴子とカズキ、
剛太の三人だった。
凍結を行った。
その際に彼女を始め錬金の戦士達は自らの持つ核鉄を戦団へと返却――といっても武藤カズキは核鉄が
生命と同化してしまっているので不可能であったが――し、一般人として生活を始めたのだ。
だが、年の暮れから銀成市で行方不明事件が発生し、それがホムンクルス絡みであろう事が調査の末に
明らかになった。
行動凍結の指針を世界に発表して間もない手前、ブラボーや火渡といった戦士長クラスの人間がそうそう
現場に立ち入り動き回る事は憚られる。
加えて、活動凍結に前後して行われたホムンクルス勢の制圧作戦が概ね終わった現状、今回蠢動している
何者かもそれほどの脅威ではないと予想された。
そこで行方不明事件の調査に借り出されたのが、地元の学校に通っており力量も十二分にある斗貴子とカズキ、
剛太の三人だった。
年が明けてから三人で――正確にはホムンクルスの嗜好上狙われやすい寄宿舎に一人が残り、二人が別行動で
街を捜索している――調査を始めてから約二週間。
端的に言って成果は芳しくなかった。
ホムンクルス自体は三日ほどで確認されその場で撃滅された。
しかし行方不明事件は依然収まらず、ホムンクルスも出没する。
これまで対処したホムンクルスは総て人型ではなく動物型であり、敵自体は戦団の予想通り大した脅威でない事は
判明していた。
だが、最大の問題は日毎に増えていく行方不明者に対して出没するホムンクルスが少なすぎる事。
敵の姿が見えないにも関わらず、消えていく人間だけが増えているのだ。
街を捜索している――調査を始めてから約二週間。
端的に言って成果は芳しくなかった。
ホムンクルス自体は三日ほどで確認されその場で撃滅された。
しかし行方不明事件は依然収まらず、ホムンクルスも出没する。
これまで対処したホムンクルスは総て人型ではなく動物型であり、敵自体は戦団の予想通り大した脅威でない事は
判明していた。
だが、最大の問題は日毎に増えていく行方不明者に対して出没するホムンクルスが少なすぎる事。
敵の姿が見えないにも関わらず、消えていく人間だけが増えているのだ。
「……妙だな」
斗貴子はひとりごちて周囲に眼を走らせる。
彼女の佇む場所はビル街の隙間の路地裏で、人気がない。
行方不明事件が起きているのだからそれ自体はさほど不思議な事ではないが……
違和感を感じるのは、まさにその点だった。
人気がなさすぎる。
それはもはや人の気配がないというレベルではない。
人の存在そのものが欠落している雰囲気。
まるでこの場一帯が通常の世界から切り離されているような感覚。
斗貴子はもう一度空を見上げ、天に聳える紅の月を凝視しながら昔の記憶を呼び覚ましていた。
戦団に所属して訓練を積んでいた時に、彼女はとある話を聞いた事がある。
それは確か――
「誰だ!」
斗貴子は天を見上げたまま誰何の声を投げかける。
影のように伸びる黒いビルの塔、その屋上。
紅い月を背負うように、一人の少女が立っていた。
背格好はおそらく斗貴子と同年代。見た事のない服(恐らくは学校の制服だ)を着用。
何より特筆すべきは、その少女は自らの身長よりも大きな筒を携えている事。
(アレは……まさか)
つい先程まで呼び覚ましかけていた記憶を探り当て、斗貴子は眉をひそめた。
同時に屋上の少女が動く。手にしていた筒を軽々と振るい、斗貴子へと向ける。
紅い月の光が揺れて、少女の顔が映った。
およそ表情を感じさせない無貌。まるで機械のような目つき。
斗貴子はその少女を見た瞬間、鏡を――かつての自分を見ているような錯覚を感じた。
「――!」
筒の先から光が溢れる。ルーンの描かれた魔方陣が浮かび上がり、同時に静寂を切り裂く轟音。
飛来してくるソレを斗貴子は一足でとびすさりつつ、疑惑を確信に変えて叫んだ。
「ガンナーズブルーム……貴様、ウィザードかっ!」
「……」
少女は答えない。同時に二射目が斗貴子に向かって放たれる。
更に飛び退こうとして背後が壁であった事を思い出し、斗貴子は横に飛んでそれをやり過ごした。
壁に衝突した弾が爆ぜて壁を吹き飛ばす。爆風に呷られて僅かに体勢を崩した所に、続く三射目。
「ち……バルキリースカート!!」
印象通り機械のように精密な攻撃に斗貴子は舌打ちし、待機状態にしていた武装錬金を起動させる。
このまま避け続けるだけでは、狭すぎるこの場で鴨撃ちにされるだけだ。
即座に決断して斗貴子は地を蹴る。
疾風を思わせるような速さで上空からの斉射を潜り抜け、壁を跳ねながら斗貴子は紅の月へ昇っていく。
瞬く間にビルを上り詰めると、少女の頭上を飛び越えて屋上の中央へと着地した。
その瞬間、爆炎が斗貴子を包み込む。
巨大な箒を扱いながらなお精密な射撃を行うその少女が、着地の瞬間の隙を見逃すはずはなく――
斗貴子はひとりごちて周囲に眼を走らせる。
彼女の佇む場所はビル街の隙間の路地裏で、人気がない。
行方不明事件が起きているのだからそれ自体はさほど不思議な事ではないが……
違和感を感じるのは、まさにその点だった。
人気がなさすぎる。
それはもはや人の気配がないというレベルではない。
人の存在そのものが欠落している雰囲気。
まるでこの場一帯が通常の世界から切り離されているような感覚。
斗貴子はもう一度空を見上げ、天に聳える紅の月を凝視しながら昔の記憶を呼び覚ましていた。
戦団に所属して訓練を積んでいた時に、彼女はとある話を聞いた事がある。
それは確か――
「誰だ!」
斗貴子は天を見上げたまま誰何の声を投げかける。
影のように伸びる黒いビルの塔、その屋上。
紅い月を背負うように、一人の少女が立っていた。
背格好はおそらく斗貴子と同年代。見た事のない服(恐らくは学校の制服だ)を着用。
何より特筆すべきは、その少女は自らの身長よりも大きな筒を携えている事。
(アレは……まさか)
つい先程まで呼び覚ましかけていた記憶を探り当て、斗貴子は眉をひそめた。
同時に屋上の少女が動く。手にしていた筒を軽々と振るい、斗貴子へと向ける。
紅い月の光が揺れて、少女の顔が映った。
およそ表情を感じさせない無貌。まるで機械のような目つき。
斗貴子はその少女を見た瞬間、鏡を――かつての自分を見ているような錯覚を感じた。
「――!」
筒の先から光が溢れる。ルーンの描かれた魔方陣が浮かび上がり、同時に静寂を切り裂く轟音。
飛来してくるソレを斗貴子は一足でとびすさりつつ、疑惑を確信に変えて叫んだ。
「ガンナーズブルーム……貴様、ウィザードかっ!」
「……」
少女は答えない。同時に二射目が斗貴子に向かって放たれる。
更に飛び退こうとして背後が壁であった事を思い出し、斗貴子は横に飛んでそれをやり過ごした。
壁に衝突した弾が爆ぜて壁を吹き飛ばす。爆風に呷られて僅かに体勢を崩した所に、続く三射目。
「ち……バルキリースカート!!」
印象通り機械のように精密な攻撃に斗貴子は舌打ちし、待機状態にしていた武装錬金を起動させる。
このまま避け続けるだけでは、狭すぎるこの場で鴨撃ちにされるだけだ。
即座に決断して斗貴子は地を蹴る。
疾風を思わせるような速さで上空からの斉射を潜り抜け、壁を跳ねながら斗貴子は紅の月へ昇っていく。
瞬く間にビルを上り詰めると、少女の頭上を飛び越えて屋上の中央へと着地した。
その瞬間、爆炎が斗貴子を包み込む。
巨大な箒を扱いながらなお精密な射撃を行うその少女が、着地の瞬間の隙を見逃すはずはなく――
「――聞いておくぞ」
――着地時の無防備を容易に晒すほど、斗貴子は愚かではなかった。
放たれた弾を瞬斬した刃を紅い髪の少女――緋室 灯に向けたまま、斗貴子は彼女の無機質な瞳を睨みすえる。
「お前達ウィザードが戦う敵は異界の侵略者――エミュレイターと聞く。それが何故私を狙う?」
「……」
灯は答えない。
彼女の手にする箒の砲口が、その意思を示すように斗貴子に向けられた。
ソレを見て斗貴子は僅かに顔を俯ける。
彼女の纏う四つの刃が、意思を示すようにきちりと鳴いた。
「答えないのなら別にいい。だが、事情も聞かずに討たれてやるほど私は人間が――できていないっ!」
灯が引鉄をひく。斗貴子が地を蹴る。
今の今まで斗貴子が立っていた場所が砲撃に砕ける。
しかしその瞬間、斗貴子は既に灯を間合いに捉えていた。
灯は僅かに眉を歪め砲を斗貴子に向ける。だが、その箒は長大であるが故に動きが遅い。
箒を切り裂くつもりで放った斗貴子の斬撃は、しかしその砲身を弾く事しかできなかった。
だが、それで十分。
斗貴子は更に踏み込んで必殺の領域に侵入する。
その刹那――弾いたはずの砲口が、斗貴子の腹部に向けられていた。
完全に反らしたはずの箒がまるで踊るようにして跳ね上がり、斗貴子に照準を合わせたのだ。
(私の方が疾い!)
四つの斬撃が灯に殺到する。砲口から光と共に力が放たれる。
そして――
「お前達ウィザードが戦う敵は異界の侵略者――エミュレイターと聞く。それが何故私を狙う?」
「……」
灯は答えない。
彼女の手にする箒の砲口が、その意思を示すように斗貴子に向けられた。
ソレを見て斗貴子は僅かに顔を俯ける。
彼女の纏う四つの刃が、意思を示すようにきちりと鳴いた。
「答えないのなら別にいい。だが、事情も聞かずに討たれてやるほど私は人間が――できていないっ!」
灯が引鉄をひく。斗貴子が地を蹴る。
今の今まで斗貴子が立っていた場所が砲撃に砕ける。
しかしその瞬間、斗貴子は既に灯を間合いに捉えていた。
灯は僅かに眉を歪め砲を斗貴子に向ける。だが、その箒は長大であるが故に動きが遅い。
箒を切り裂くつもりで放った斗貴子の斬撃は、しかしその砲身を弾く事しかできなかった。
だが、それで十分。
斗貴子は更に踏み込んで必殺の領域に侵入する。
その刹那――弾いたはずの砲口が、斗貴子の腹部に向けられていた。
完全に反らしたはずの箒がまるで踊るようにして跳ね上がり、斗貴子に照準を合わせたのだ。
(私の方が疾い!)
四つの斬撃が灯に殺到する。砲口から光と共に力が放たれる。
そして――
「な……っ!?」
「……!?」
声の有無はあったが、二人の少女が浮かべたのは同じ驚愕の表情だった。
斗貴子の斬撃は間違いなく灯を捉えていた。そして灯の射撃もまた、同様に斗貴子を捉えていた。
にも拘らず、両者の攻撃――攻撃はおろか、互いを身体さえも"すり抜けて"通り抜けてしまった。
背中合わせに二人は対峙する。不可解な事象ではあったが、今だ戦闘が終わったわけではない。
二人はほぼ同時に思考を切り替えて振り向き様に己の得物を振るう。
――が、
「……!?」
声の有無はあったが、二人の少女が浮かべたのは同じ驚愕の表情だった。
斗貴子の斬撃は間違いなく灯を捉えていた。そして灯の射撃もまた、同様に斗貴子を捉えていた。
にも拘らず、両者の攻撃――攻撃はおろか、互いを身体さえも"すり抜けて"通り抜けてしまった。
背中合わせに二人は対峙する。不可解な事象ではあったが、今だ戦闘が終わったわけではない。
二人はほぼ同時に思考を切り替えて振り向き様に己の得物を振るう。
――が、
「……らしくないな」
二人の目の前には、視界総てを覆うように掌が添えられていた。
少女達の間に立ち塞がる一人の男。外套を纏い眼帯を嵌めた男は、それだけで二人の動きを完全に止めていた。
「貴様……!?」
「ナイトメア……?」
「……普段は静謐を保っているだけに、一度波立てば収まりがつかん、か。致し方ない」
言って男は僅かに唇を震わせる。
何事かを囁いているのだろうが、その響きは小さすぎて誰にも聞き取れない。
闖入した男の素性を知っている灯はともかく、彼の事を全く知らない斗貴子はその行動を黙認するいわれなどなかった。
だが何故か、彼女は目の前に翳された掌から意識を外せない。
魅入られたように完全に広がる闇を凝視しながら、斗貴子は頭の中枢にまで沁み込むような声を聞いた。
「……どりぃ~む」
(ばか、な)
力が抜ける。抵抗しようとあがいたが、その意思すらも闇に呑み込まれる様に溶けて混濁していく。
自分が床に膝を付いた事だけは、かろうじて認識できた。
だが、気付いた時には既に身体ごと倒れこんでしまっている。
男を挟んで反対側にいる灯も、自分と同じように倒れているのが見えた。
そこで斗貴子の意識は完全に途絶した。
少女達の間に立ち塞がる一人の男。外套を纏い眼帯を嵌めた男は、それだけで二人の動きを完全に止めていた。
「貴様……!?」
「ナイトメア……?」
「……普段は静謐を保っているだけに、一度波立てば収まりがつかん、か。致し方ない」
言って男は僅かに唇を震わせる。
何事かを囁いているのだろうが、その響きは小さすぎて誰にも聞き取れない。
闖入した男の素性を知っている灯はともかく、彼の事を全く知らない斗貴子はその行動を黙認するいわれなどなかった。
だが何故か、彼女は目の前に翳された掌から意識を外せない。
魅入られたように完全に広がる闇を凝視しながら、斗貴子は頭の中枢にまで沁み込むような声を聞いた。
「……どりぃ~む」
(ばか、な)
力が抜ける。抵抗しようとあがいたが、その意思すらも闇に呑み込まれる様に溶けて混濁していく。
自分が床に膝を付いた事だけは、かろうじて認識できた。
だが、気付いた時には既に身体ごと倒れこんでしまっている。
男を挟んで反対側にいる灯も、自分と同じように倒れているのが見えた。
そこで斗貴子の意識は完全に途絶した。
「うおおおおっ!!」
「でやぁああっ!!」
裂帛の咆哮が夜の静寂を打ち砕く。
二人の少年が鏡面のように突進し、魔剣とランスが衝突する。
正にその刹那に、
「――待ていっ!!」
その二人の気迫をなお凌駕する怒号が響き渡った。
二人の少年を烈風とするなら、その影は暴風。
割って入ったその影――青銀のコートを纏い帽子で顔を隠したその男は、カズキのランスをその脚で以って地面に叩きつけ、蓮司の魔剣をその手で以って受け止める。
「なっ!?」
「えっ!?」
渾身の一撃を受け止められた二人が驚愕に強張る。一瞬だけその動きを止めた両者に、拳と脚が飛んだ。
蓮司は頬に、カズキは胸に痛烈な衝撃を受けて吹き飛ばされて地面を派手に転がる。
「今度はなんだ…っ!?」
「ブ、ブラボー?」
カズキの呆気に取られた声にコートの男――キャプテンブラボーは頷いて返すと、振り返って反対側にいる蓮司に手に持っていた何かを放り投げた。
「柊 蓮司君だな? アンゼロット嬢から伝令を賜っている。任務を中断し宮殿に帰投するように、との事だ」
「なっ……」
蓮司は呻きながらブラボーに投げ渡された物を受け取り、それを確認する。
それはアンゼロットの直属部隊であるロンギヌスの印章だった。
「アンタ……ロンギヌスの?」
「いや、違う。ソレは俺の言の証左として彼女から借り受けた物だ」
「……」
幾度かブラボーと印章に目をやってから、蓮司は諦めたように息を吐いて魔剣を月衣に収めた。
頭をかきながら立ち上がる蓮司を見届けてから、ブラボーは今だ状況を飲み込めず呆然としているカズキに顔を向けた。
「カズキ。我々も彼と共に宮殿に向かうぞ」
「へ……宮殿?」
「行けばわかる。諸々の説明もそこでだ。……今回の一件は我々だけの問題ではなくなってしまった」
言ってブラボーは空を見上げた。
蓮司とカズキも彼につられるように天を仰ぐ。
「……丁度時間も切れたようだな」
夜闇に浮かんでいた紅の月は既にその座を辞し、白く光る三日月がそこに漂っていた。
「でやぁああっ!!」
裂帛の咆哮が夜の静寂を打ち砕く。
二人の少年が鏡面のように突進し、魔剣とランスが衝突する。
正にその刹那に、
「――待ていっ!!」
その二人の気迫をなお凌駕する怒号が響き渡った。
二人の少年を烈風とするなら、その影は暴風。
割って入ったその影――青銀のコートを纏い帽子で顔を隠したその男は、カズキのランスをその脚で以って地面に叩きつけ、蓮司の魔剣をその手で以って受け止める。
「なっ!?」
「えっ!?」
渾身の一撃を受け止められた二人が驚愕に強張る。一瞬だけその動きを止めた両者に、拳と脚が飛んだ。
蓮司は頬に、カズキは胸に痛烈な衝撃を受けて吹き飛ばされて地面を派手に転がる。
「今度はなんだ…っ!?」
「ブ、ブラボー?」
カズキの呆気に取られた声にコートの男――キャプテンブラボーは頷いて返すと、振り返って反対側にいる蓮司に手に持っていた何かを放り投げた。
「柊 蓮司君だな? アンゼロット嬢から伝令を賜っている。任務を中断し宮殿に帰投するように、との事だ」
「なっ……」
蓮司は呻きながらブラボーに投げ渡された物を受け取り、それを確認する。
それはアンゼロットの直属部隊であるロンギヌスの印章だった。
「アンタ……ロンギヌスの?」
「いや、違う。ソレは俺の言の証左として彼女から借り受けた物だ」
「……」
幾度かブラボーと印章に目をやってから、蓮司は諦めたように息を吐いて魔剣を月衣に収めた。
頭をかきながら立ち上がる蓮司を見届けてから、ブラボーは今だ状況を飲み込めず呆然としているカズキに顔を向けた。
「カズキ。我々も彼と共に宮殿に向かうぞ」
「へ……宮殿?」
「行けばわかる。諸々の説明もそこでだ。……今回の一件は我々だけの問題ではなくなってしまった」
言ってブラボーは空を見上げた。
蓮司とカズキも彼につられるように天を仰ぐ。
「……丁度時間も切れたようだな」
夜闇に浮かんでいた紅の月は既にその座を辞し、白く光る三日月がそこに漂っていた。