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ナイトウィザード!クロスSS超☆保管庫
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ナイトウィザード!クロスSS超☆保管庫

第03話

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匿名ユーザー

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「まことに申し訳ありませんでした」
 そこは次元の只中に浮かぶ宮殿。
 豪華な調度に包まれたその一室で、宮殿の主たる銀髪の少女――アンゼロットが静かにテーブルを囲む四人に頭を垂れた。
「こちらの不手際でお二人に迷惑をかけた事、依頼主として謝罪します」
「……いえ。私はともかく、カズキの方の落ち度はこちらにあります。
 必要な知識でなかったから話さなかったのですが……そちらの任務の邪魔をしてしまった」
 好奇心丸出しでしきりに周囲を眺めているカズキの肘を突付いて、斗貴子はアンゼロットに返す。
 正直に言えば斗貴子自身、この不可思議な空間に興味はあったのだが、カズキがこういった調子である以上彼女はそれを
納める側に立っていなければならない。
 アンゼロットは斗貴子の言葉に僅かに微笑むと、蓮司をちらりと見やって頭を振った。
「いいえ、知らなかったのなら仕方ありません。むしろ責められるべきは功を焦って荒事に持ち込んだ柊さんの方です」
「くっ……」
 蓮司は悔しそうに表情を歪めると、
「……ああ、その通りだよ。その点に関しては全面的に俺が悪かった。それは認める。ホント、すまねえ」
「いや、別にいいよ。最初に突っかかったのはオレの方なんだしさ。何を隠そうオレは早とちりの達じ痛っ!?」
「威張るな。あとそれは隠してないだろう」
 一瞬の間もおかずに脇腹に肘を叩き込まれてカズキが身体を折り曲げて身悶える。
「まったく……いくら追試に間に合わないからって野蛮すぎですよ柊さん?」
「その原因を作ってるお前が言うな!?」
 ふうと溜息をつくアンゼロットに蓮司が食ってかかる。
 しかし彼女は憤る彼を一顧だにせずに先程から沈黙を保っている灯に目を向けた。
「それにしても、柊さんはともかく灯さんまで先走るなんて……何かあったのですか?」
「………」
 アンゼロットの言葉に灯は僅かに顔を俯け、視線を彷徨わせる。
 目の前に置かれているティーカップをしばし見つめた後、彼女は小さく声を出した。
「……がっこう」
「?」
「最近調整が多くて、学校に行ってないから……」
 それだけを零すと、彼女は再び黙り込んでしまった。
 強化人間として任務に従事する彼女が蓮司と同じ理由で先走った戦闘を行ってしまった事に疑問を感じるのか、
アンゼロットは端整な眉を僅かにひそめて灯をみやる。
 だが、それに答えたのはアンゼロットの背後に控えているナイトメアだった。
「絶滅社で請け負っているミッションの影響だろう」
「絶滅社の……ああ、確かあの真行寺 命さんの――」
「命は関係ない。調整が不十分だっただけ」
 言いかけたアンゼロットの言葉を遮るようにして灯が口を開く。
 普段は冷静を保っている彼女には珍しく、その声は感情的だった。
 だからなのか、発言を遮られた形になったアンゼロットは僅かに目を丸くし、背後のナイトメアは小さく笑みを浮かべる。
 そんな時声を上げたのは斗貴子だった。



「……話を元に戻してもらっていいでしょうか?」
「ああ、すみません。それでは話を元に戻しましょう」
「それと、申し訳ありませんが貴女がたの事をカズキに説明しておいて貰いたい。
 彼は事情が特殊でこちら側の事をあまり知りませんし……私も正直、理解しているとは言い難い」
「……。わかりました。それではかいつまんで説明しましょう」
 こほん、と一つ咳をしてアンゼロットは居住まいを正す。
 それに釣られるようにして姿勢を正した斗貴子とカズキを確認した後、彼女はゆっくりと語り始めた。
 世界の常識の裏にある、真実の世界の形。
 裏界からこの世界を狙う侵略者、エミュレイター。
 それに抗して戦う夜闇の魔法使い、ウィザード。
 およそ普通の人間が聞けば一笑に伏すか真剣に相手の正気を疑うであろう話を、二人はただじっと聞き続けた。
「――大体こんな所ですね。詳しい部分まで突っ込んでしまうと一週間では足りなくなってしまいますから」
 概ねの説明を経て、アンゼロットがそう締めくくった。
 話し続けて喉が渇いたのか、彼女は紅茶を口に含みながら二人を観察する。
 斗貴子の方は眉をひそめて思案するように顎に手を添えていた。
 彼女自身も武装錬金を始めとする常識の枠外にある世界に触れているとはいえ、ウィザードの世界は彼女の
生きてきた世界よりも遥かに常識を逸脱したモノだ。
 斗貴子の不審そうな態度はある意味で妥当な所だろう。
 一方でカズキはと言えば。
 事情を理解したのかしていないのか、呆然としたままアンゼロットを見つめ返していた。
 僅かに拳が震えているのは気のせいだろうか。
 手にしていたティーカップをソーサーに置いてアンゼロットが口を開きかけると、それより早くカズキは何故か
喜色を称えて弾けるように叫んだ。
「すげえ……ファンタジーだ!」
「いや、錬金戦団(わたしたち)の世界も大概ファンタジーだと思うが……」
「でも魔法とか異世界とか、すごいじゃん! ねえ斗貴子さん、オレ達にもその魔法とかって使えるのかな!?」
「い、いや、それは……?」
 カズキの興奮に半ば呑まれたのか、斗貴子は普段の凛とした表情を崩して戸惑いを浮かべる。
 もっとも彼の疑問の答えは知らないらしく、彼女は助けを求めるようにアンゼロット――その背後でナイトメアと
並び控えているブラボーに目を向けた。
「……残念だが、俺達は使えないな」
「残念なんですか、戦士長……」
 場が場だけに帽子を外し素顔を見せているブラボーは苦笑を浮かべた。
「我々は柊君等ウィザードが分類する所の『力なき者』――イノセントにあたる。故に魔法は使えない。
 それでも先だってのように結界――月匣に侵入し行動の自由を得られるのは、我々が彼等と同じく常識の枠の外に
 あるモノ……核鉄を保有しているからだ」
「核鉄を?」
「そうだ。逆に言えば、核鉄を手放した時点で我々はエミュレイターに対して無力になってしまう」
「武装錬金の力そのものはエミュレイターに抗し得る力ではあるのですが、そういった弱点を抱えているのでわたくし達
 ウィザードは基本そちらには不干渉を保っていたのです」
 もっとも不干渉の主な理由は別の所なんですけどね、とブラボーの言を引き継いだアンゼロットがそう締めた。



「なあ、一つ聞いてもいいか?」
 そこで声を上げたのは、それまで黙って説明を聞いていた蓮司である。
「武装錬金っていうのは俺達の使ってる魔導具なんかとは違うのか? 確か灯の使ってるガンナーズブルームも錬金術を
 使ってたと思うんだが……同じ技術なのか?」
「……中々鋭い質問ですね。丁度良いのでざっくり説明してしまいましょう。本題にも少々かかることですし」
 アンゼロットは言いながら何かを操作するように指先を動かした。
 するとテーブルの中央にディスプレイが浮かび上がり、画像が次々と表示され始めた。
 「おお!」と一人喝采を上げるカズキはとりあえず置いておいて、アンゼロットは静かに語りだす。
「端的に言ってしまえば、わたくし達ウィザードの錬金術とブラボーさん達錬金戦団の錬金術は『同じだけど違うモノ』です」
「同じだけど違う?」
「はい。錬金術の分野においてのみで論じますが、両者の錬金術は元々その袂を同じくしているのです」
 元来一つであった錬金術の組織が分かれたのはおおよそ中世辺りにまで遡る。
 当時において『科学』という常識が構築され現代に連なる世界結界が安定され始めた際に、その組織は方向性によって二つの派閥に分裂した。
 一つは錬金術を『神秘』としてオカルティズムを容認し常識から逸脱した者達。
 そしてもう一つが錬金術を『学問』としてリアリズムを追求し常識と共存した者達。
 前者はウィザードとして常識の裏側に赴き洗練を重ね、後者は現代の科学の礎となり、またはその影に隠れて更なる研鑽を重ねた。
「……対極とも言える方向性であるが故に両者は反目しあい、不干渉を貫きました。
 時を経て我々ウィザードは錬金術の極みたる『賢者の石』にまで到達しましたが、錬金戦団の方は未だ到達できず……
 むしろ先を越されたという事実によって更に強硬に我々との接触を拒みました」
 語りながらアンゼロットはカズキと斗貴子の二人を見やる。
 『賢者の石』という単語に反応したのか、カズキは知らず己の胸に手を添えていた。
 なぜなら彼の身体の中には、錬金戦団が到達しようとした『賢者の石』の試作となっていたモノが埋まっているからだ。
 彼の様子を見てアンゼロットは一つ息を吐き、少しだけ声を調子を抑えた。
「結果としてわたくし達はヴィクターの叛乱に端を発する一連の事件に関しても何ら干渉を行う事ができませんでした。
 世界の守護者を名乗る者としてこの不始末……改めてお詫び致します」
「お気になさらず。ヴィクターの件は我々錬金戦団が引き起こした事。であれば……いえ、だからこそ我々の手で終結させなければならなかった。
 それに貴女にはもう十分に報いてもらっています」
「……戦士長?」
「最高責任者とはいえ、戦闘部門の長でしかない大戦士長の提案した活動凍結が受理されたのはアンゼロット嬢の後押しがあってのものだ。
 それに前後して行われたホムンクルスの制圧……今まで戦団がなし得なかった作戦が速やかに実行されたのも、彼女等の協力による」
「そうだったのですか……」
「最上層の歴々とは違って、照星さんは現場向きでしたからね。もっとも、彼も一線だけは越えさせてくれませんでしたが」
 アンゼロットはくすりと微笑を漏らすと、再び表情を引き締めてテーブルを囲む四人を見回した。
「……あの」
 それまで黙って話を聞いていたカズキが発言を求めるようにおずおずと手を上げる。
 彼はアンゼロットの視線を受け止めると、彼女を真っ直ぐに見返してから口を開いた。
「今戦団の方でやってるっていうホムンクルスの人間化の研究って奴……アレはアンゼロットさん達の技術でどうにかならないんですか?」
「……残念ながら。話した通り、わたくし達と彼等の技術は類似はあれど既に道を違えて別物になっています。
 技術提供はしていますが、問題を解決するためにはしばらくの時間が必要でしょう」
「……そうですか」
「今回の一件に関して私達ウィザードが錬金戦団と接触したのも、その違いに起因します」
「貴女達が戦うエミュレイターが、我々の錬金術の者と接触した、と?」
「はい、その通りです」
 斗貴子の推測にアンゼロットは首肯して答えると、カズキと斗貴子二人を見据えてから小さく微笑んだ。
「そんな訳でカズキさんに斗貴子さん。これからするわたくしのお願いにはいかYESで――」
「わかった。オレ達は何をすればいい?」
「お、答、え……」
 アンゼロットの言葉を遮るようにして発せられたカズキの言葉に、彼女は笑顔のままで固まってしまった。



 彼女の反応が予想外だったのか、カズキは首を傾げて彼女を見やる。
 するとアンゼロットは、
「――貴方は素晴らしいっ!」
「え? ええ?」
「なんて素直な子なんでしょう! どっかの捻くれて下がり気味な柊さんとは大違いです!」
「捻くれたって何だよ! っていうか、素直になって欲しかったら普段の態度を改めろ!」
 だん、とテーブルに拳を叩きつけて蓮司は叫ぶ。
 そして不貞腐れたように彼は椅子に背を預けると、ぽつりと声を漏らした。
「まったく……初対面の受け"だけ"はいいんだよな」
「……えい」
「!」
 アンゼロットが手元にあるボタンを押すと同時に、蓮司の足元に唐突に穴が開く。
 しかし、暗闇に向かって消えていったのは主を失った椅子だけだった。
 瞬間反応した蓮司は素早く飛び退り、勢い余って壁に激突しながらも勝ち誇った笑みを浮かべて見せた。
「いつもいつも俺がやられてばっかりと思ったら大間違いだぜ……!?」
「そうですか」
 しかしアンゼロットは動じずもう片方の手に握ったボタンを押し込んだ。
 同時に蓮司が張り付いていた壁がぐるんと裏返り、彼を暗闇の中に引きずり込む。
「うおぁあ!? て、てめえアンゼロットぉおぉおぉぉぉ……!?」
 蓮司の悲鳴がフェードアウトしながら響き渡る。
 そして部屋には何事もなかったかのような静寂が戻った。
 そのやり取りに慣れている灯とナイトメアは一切表情を動かす事はなく、ブラボーも全く動じる様子はない。
 斗貴子はなかば呆然として蓮司の消えていった壁を凝視し、
「…………すげえ!」
「なにぃ!?」
 カズキは嬉しそうに叫んだ。
「こんなのまであるんだ、まさに秘密基地!」
「あらあら、中々的を射た発言。せっかくですのでカズキさんもやっていきますか?」
「え、いいの?」
「ええ、勿論。好評を受けてわたくしとても嬉しいですから」
「せっかくだから斗貴子さんも――」
「断るッ!!」 
「えぇ……」
「えぇ、じゃない!」
「……一回やってみれば、意外とやみつき」
「なるか! あと哀しそうな顔をしてスイッチを弄くるな!」
 息を荒らげてアンゼロットを指差す斗貴子。
 そんな中、ブラボーが思い出したようにふと声を出した。
「……時にアンゼロット嬢。今の穴はどこに通じているのですか?」
 すると彼女はふふ、と微笑を漏らし、
「それは秘密です。
 何故ならそちらの方が面白いから!」
「…………」


 斗貴子はアンゼロットを差した指を小さく震わせながら、

”……帰ってもいいか?”

 という台詞が出てきそうになるのを必死に堪えるのだった。



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