5話 夜を駆ける - Hero's come back!- 後編
レベッカは、肩を揺すられて目を覚ました。
「宮本先生、宮本先生!何寝てるんですか!」
「んあー、早乙女?うるさいなぁ……」
「んあー、早乙女?うるさいなぁ……」
ゆっくりと目を開くとそこにいるのは同僚の隣のクラスの担任教師だ。
起こしに来たのだろう、ご苦労なことだ、と考えて、なぜ自分が早乙女のいる場所―――学校にいるのかという疑問に行き当たった。
起こしに来たのだろう、ご苦労なことだ、と考えて、なぜ自分が早乙女のいる場所―――学校にいるのかという疑問に行き当たった。
「あれ、なんで私学校にいるんだ?」
確か表彰式の直後、レベッカは迫り来る生徒達から逃げて近くの空き地の土管に逃げ込んだはずだ。
その後お節介が来て、結局土管から出ることになって、黒い本を見つけて、
その後お節介が来て、結局土管から出ることになって、黒い本を見つけて、
―――何か、赤い、ものが、自分じゃなく、どこかから、ばらまかれて
「何言ってるんです。生徒から逃げてる途中で転んで気絶して、そこを柊君とメディアに助けられたんでしょう」
「へ?あ、そうだったな。そうだ」
「へ?あ、そうだったな。そうだ」
その言葉で、赤い光景が吹き払われた。
もう、しっかりしてくださいね、と言って早乙女は職員室から出て行く。部活の顧問のためだろう。
その背中にうるさいバカ、と答えて、レベッカは一人職員室に残される。
外を見れば、相当に暗い。昨日言われた言葉を思い出して、さっさとメソウサを呼んで帰ろうと思い―――じっと携帯電話をみつめる。
その背中にうるさいバカ、と答えて、レベッカは一人職員室に残される。
外を見れば、相当に暗い。昨日言われた言葉を思い出して、さっさとメソウサを呼んで帰ろうと思い―――じっと携帯電話をみつめる。
彼女の携帯には一つのアドレスが登録されている。
それは昨日はじめて会った相手だ。ただの知り合った近所の子供に、危なくなったらいつでも電話しろと言って強制的に近い勢いで情報を交換させるお節介。
個人情報保護もなにもあったもんじゃない、とその時は思ったものだったが、不思議と断る気にはならなかった。
それだけの相手だ。それだけの相手でしかないはずだ。しかし。
それは昨日はじめて会った相手だ。ただの知り合った近所の子供に、危なくなったらいつでも電話しろと言って強制的に近い勢いで情報を交換させるお節介。
個人情報保護もなにもあったもんじゃない、とその時は思ったものだったが、不思議と断る気にはならなかった。
それだけの相手だ。それだけの相手でしかないはずだ。しかし。
「……別に、礼くらいしてもバチは当たらないよな」
そう、誰かに言い訳するように言って。彼女は一通のメールを送る。
送信ボタンを押す時に指が震えたのは秘密だ。断られたらどうしようとか不安と期待がない交ぜになっていたのも秘密だ。
ともかく、送った。送ってしまった。まだ足が震えている気がするが、無視することにした。
と、その時後ろから声がかけられる。
送信ボタンを押す時に指が震えたのは秘密だ。断られたらどうしようとか不安と期待がない交ぜになっていたのも秘密だ。
ともかく、送った。送ってしまった。まだ足が震えている気がするが、無視することにした。
と、その時後ろから声がかけられる。
―――おまたせしましたー。
「お、待ったぞー」
「お、待ったぞー」
やってきたのはメソウサだ。レベッカを見て、嬉しそうに笑っている。
その笑顔がやけに嬉しそうで、少し気になった彼女はたずねる。
その笑顔がやけに嬉しそうで、少し気になった彼女はたずねる。
「どうした、何かいいことでもあったのか?」
―――いいえ、一緒に帰れるって幸せだなーと思っただけですー。
「ヘンな奴だな」
―――そんなー!
―――いいえ、一緒に帰れるって幸せだなーと思っただけですー。
「ヘンな奴だな」
―――そんなー!
メソウサはやっぱり泣くものの、その表情はやはり嬉しそうだった。
彼は知っているからだ。この世の常識の外を。そこに引き込まれそうになった彼女を、引っぱり上げた奴がいたことを。妖怪同士のコミュニティもなめてはならない。
彼は知っているからだ。この世界がどれだけ脆いかを―――そして、脆い世界を守ろうとする人間がいることを。この、自分の腕を握ってくれる手の暖かさの有り難さを。
だから、この手を守ってくれたことはありがたいことなのだ。『有り』『難い』ことなのだ。かけがえのないものなのだ。
それに感謝を、そして武運をと祈る。この手を解く未来を望む者と戦う者たちに、自分の望む未来を託して。明日もまた、この手が自分を引いてくれることを祈る。
―――季節はずれの、星が流れた。
彼は知っているからだ。この世の常識の外を。そこに引き込まれそうになった彼女を、引っぱり上げた奴がいたことを。妖怪同士のコミュニティもなめてはならない。
彼は知っているからだ。この世界がどれだけ脆いかを―――そして、脆い世界を守ろうとする人間がいることを。この、自分の腕を握ってくれる手の暖かさの有り難さを。
だから、この手を守ってくれたことはありがたいことなのだ。『有り』『難い』ことなのだ。かけがえのないものなのだ。
それに感謝を、そして武運をと祈る。この手を解く未来を望む者と戦う者たちに、自分の望む未来を託して。明日もまた、この手が自分を引いてくれることを祈る。
―――季節はずれの、星が流れた。
柊の部屋に、メディアが入ってくる。
月匣内で着替え終え、ベホイミがともかく作戦会議をする場所を、という話になった時にここしかないという話になった。
ベホイミは「ウチ、今人が入れる状況じゃないんで……」と遠い目で涙すら浮かべ、メディアは「女の子の部屋に入るなんてダメですよ?」とにこやかにかわした。
居候の身で部屋に知り合いを連れ込むというのは激しく抵抗があったものの、贅沢も言ってられない。
……店長的には連れ込まれるのが女の子という方が激しく気になるのだろうが、柊 蓮司にその手のことは期待するだけ無駄だ。
月匣内で着替え終え、ベホイミがともかく作戦会議をする場所を、という話になった時にここしかないという話になった。
ベホイミは「ウチ、今人が入れる状況じゃないんで……」と遠い目で涙すら浮かべ、メディアは「女の子の部屋に入るなんてダメですよ?」とにこやかにかわした。
居候の身で部屋に知り合いを連れ込むというのは激しく抵抗があったものの、贅沢も言ってられない。
……店長的には連れ込まれるのが女の子という方が激しく気になるのだろうが、柊 蓮司にその手のことは期待するだけ無駄だ。
「ご苦労っス。宮本先生はどうでしたか?」
「早乙女先生が声をかけて、すぐに帰ったみたいです。これ以上通り魔が起きることはないですから、気をつけて帰ってくれれば大丈夫でしょう」
「早乙女先生が声をかけて、すぐに帰ったみたいです。これ以上通り魔が起きることはないですから、気をつけて帰ってくれれば大丈夫でしょう」
そうか、とベホイミと柊が安堵する。
彼らが柊の部屋に行く代わり、メディアには気絶したままのレベッカを学校に運んでもらっていたのだ。
その間にお互いの説明を行い、状況を把握する時間が必要だったのもある。
彼らが柊の部屋に行く代わり、メディアには気絶したままのレベッカを学校に運んでもらっていたのだ。
その間にお互いの説明を行い、状況を把握する時間が必要だったのもある。
今度はメディアがたずね返した。
「それで―――柊さん、でしたか。その子は一体どなたです?」
「……一応、命の恩人ってとこか。恩返ししろって言われたんだよ、仕方ねぇだろ」
「……一応、命の恩人ってとこか。恩返ししろって言われたんだよ、仕方ねぇだろ」
メディアが指差したのは、何故かこの場にいるノーチェだ。命を拾ってもらった手前、彼には彼女の宿泊場所の提供と食事の提供を断る術は残されていなかった。
もっきゅもっきゅと、店から材料を拝借して柊の作った腕一本サイズのバゲットに縦に切れ目を入れサラダとハムを詰めたまかないを縦笛を吹くように咀嚼して飲み込む。
……これだけ見ていると本当にのどかな光景である。
もっきゅもっきゅと、店から材料を拝借して柊の作った腕一本サイズのバゲットに縦に切れ目を入れサラダとハムを詰めたまかないを縦笛を吹くように咀嚼して飲み込む。
……これだけ見ていると本当にのどかな光景である。
ベホイミはそののどかな光景から目を逸らしつつ、シリアスな方向に話を持っていく。
「と、ともかく。状況を整理するっスよ。
敵はブランシェリーナ=セルジュって言う女ウィザード。狙いはこの町の妖怪と彼らに関わりの深い人間の排除。
そして、その得物―――<血の文書(クリムゾン・ロウ)>っていうのは、一定の儀式をして0時を超えればそれを速やかに執行する魔導具」
「プラーナを集めることで威力を増すこの魔導具には、製作者にして使用者の強い意思が乗り移ります。
今回の使用者、ブランシェリーナさんは人外に対して強い気持ちを持ってたんでしょうね。
人外とそれに深い関わりを持つ人間しか襲えないその魔導具でプラーナを集めるには、交流区域はぴったりだった。そして、彼女の目的にも合致したんでしょう」
敵はブランシェリーナ=セルジュって言う女ウィザード。狙いはこの町の妖怪と彼らに関わりの深い人間の排除。
そして、その得物―――<血の文書(クリムゾン・ロウ)>っていうのは、一定の儀式をして0時を超えればそれを速やかに執行する魔導具」
「プラーナを集めることで威力を増すこの魔導具には、製作者にして使用者の強い意思が乗り移ります。
今回の使用者、ブランシェリーナさんは人外に対して強い気持ちを持ってたんでしょうね。
人外とそれに深い関わりを持つ人間しか襲えないその魔導具でプラーナを集めるには、交流区域はぴったりだった。そして、彼女の目的にも合致したんでしょう」
それは、妖怪と人間の完全なる隔離。共にあっていい存在ではないと、ブランシェリーナはそう言った。
ベホイミはそれを鼻で笑う。
ベホイミはそれを鼻で笑う。
「はん、ご大層なこと抜かしてんじゃねぇっスよ時代遅れの選民思想者が。
やってることはただのテロリズムじゃないっスか」
「相変わらず言うことキツいな、お前……。
―――ま、やる前から諦めて他人に余計なちょっかいかける奴ってのは確かに俺も腹立つけどよ」
「私もです。ベホちゃんと同じで、私もこの町が大好きです。だから、私も戦います」
やってることはただのテロリズムじゃないっスか」
「相変わらず言うことキツいな、お前……。
―――ま、やる前から諦めて他人に余計なちょっかいかける奴ってのは確かに俺も腹立つけどよ」
「私もです。ベホちゃんと同じで、私もこの町が大好きです。だから、私も戦います」
そう言って不敵に笑う3人。
そこへ、声がかかった。
そこへ、声がかかった。
「そう簡単に止められる相手とも思えないでありますがね?」
けぷ、と可愛らしく生理現象を見せるノーチェだった。
全員の視線が集まったことを理解して、彼女はぴっと人差し指を立てる。
全員の視線が集まったことを理解して、彼女はぴっと人差し指を立てる。
「いいでありますか?複雑な儀式魔法っていうのは、術式をいくつかのブロックに分けてるものでありますよ。
儀式に必要なプラーナや魔力を集める術式、力を収束させる術式、収束した力を振り分け循環を起こす術式、その力を加工・変換する術式、望む結果を起こす術式、
邪魔の入らないように結界を敷く術式が必要な場合もあるでありますな。他にも色々たくさんであります。
聞いていた話では、すでに必要な力は集められているようでありますからいくつかの手間が省けるでありましょう。
術式そのものは<血の文書>に記されているもの。<血の文書>はある種使い魔のような魔導具とのことでありますから、ある程度の自律行動はできるでありましょうな」
儀式に必要なプラーナや魔力を集める術式、力を収束させる術式、収束した力を振り分け循環を起こす術式、その力を加工・変換する術式、望む結果を起こす術式、
邪魔の入らないように結界を敷く術式が必要な場合もあるでありますな。他にも色々たくさんであります。
聞いていた話では、すでに必要な力は集められているようでありますからいくつかの手間が省けるでありましょう。
術式そのものは<血の文書>に記されているもの。<血の文書>はある種使い魔のような魔導具とのことでありますから、ある程度の自律行動はできるでありましょうな」
近接専門職の竜使いと魔剣使い、諜報と人脈に特化した忍者には難解に過ぎる本格的な魔法用語がずらずらと並べ立てられ、当然きちんと理解ができた者はいない。
全員の心の声を代弁するように、ベホイミが問う。
全員の心の声を代弁するように、ベホイミが問う。
「え、ええっと……すいませんっス、わかりやすく説明してもらえないっスか?」
「つまり、<血の文書>は使用者が近くにいなくてもその効果を発揮できる、ということでありますよ」
「つまり、<血の文書>は使用者が近くにいなくてもその効果を発揮できる、ということでありますよ」
そう言われ嫌な予感に見舞われる三人。使用者がいなくても使用できるということは、使用者と<血の文書>が別の場所に設置されている可能性があるからだ。
その言葉を、ベホイミが曖昧に否定してみようとした。
その言葉を、ベホイミが曖昧に否定してみようとした。
「い、いくらなんでもそこまでは……」
「そうとも言い切れねぇな。そもそもお前らのとこにそいつが顔出したのは、宣戦布告もあるだろうがプラーナを吸収すんのを邪魔させないためだったんだろ?
だったら、自分の居場所をおとりにする程度のミスリードをやってのける可能性はある」
「そうとも言い切れねぇな。そもそもお前らのとこにそいつが顔出したのは、宣戦布告もあるだろうがプラーナを吸収すんのを邪魔させないためだったんだろ?
だったら、自分の居場所をおとりにする程度のミスリードをやってのける可能性はある」
柊が考えこんでそう言った。
ベホイミがあわてる。この町を守るために必要な情報は、ブランシェリーナの位置ではなく<血の文書>のある場所だ。
それを、まんまと出し抜かれている形になる。
ベホイミがあわてる。この町を守るために必要な情報は、ブランシェリーナの位置ではなく<血の文書>のある場所だ。
それを、まんまと出し抜かれている形になる。
「ど、どうするんスかっ?0時までに<血の文書>っていうのを止めないと、この町に被害が出るっスよ!
けど、場所がわかってるのは<血の文書>を持っていないかもしれない黒幕の居場所だけなんて―――時間がないのにっ!」
けど、場所がわかってるのは<血の文書>を持っていないかもしれない黒幕の居場所だけなんて―――時間がないのにっ!」
そう焦燥感に駆られるベホイミ。
部屋に嫌な沈黙が下りるかと思われたその時、その不安と焦燥を吹き飛ばしたのは、やはりノーチェだった。
部屋に嫌な沈黙が下りるかと思われたその時、その不安と焦燥を吹き飛ばしたのは、やはりノーチェだった。
「<血の文書>の場所がわかればいいでありますか?」
はい?と異口同音に彼女の言葉に思考を停止させる3人。
ノーチェは月衣に手を突っ込んで―――彼女の身長の半分ほどはありそうな唐草模様の大風呂敷の球状の包みを取り出した。
風呂敷からごろん、と現れるのは巨大な水晶球だ。
確認するようにノーチェはベホイミにもう一度問う。
ノーチェは月衣に手を突っ込んで―――彼女の身長の半分ほどはありそうな唐草模様の大風呂敷の球状の包みを取り出した。
風呂敷からごろん、と現れるのは巨大な水晶球だ。
確認するようにノーチェはベホイミにもう一度問う。
「調べたいのは黒幕と<血の文書>が一緒にいるかと、もしそうなら<血の文書>がどこにあるのか、でありましたな。
黒幕がいる場所はわかってるでありますから、<血の文書>の場所がわかれば一緒にいるかどうかもわかるでありましょう?それで間違ってないでありますか?」
「え。あ、はい。そうっスね」
黒幕がいる場所はわかってるでありますから、<血の文書>の場所がわかれば一緒にいるかどうかもわかるでありましょう?それで間違ってないでありますか?」
「え。あ、はい。そうっスね」
じゃあちょっと待つでありますよ。と笑顔で答えて、ノーチェは巨大な水晶球に向けて両手をかざす。
アブラ~、カダブラ~、はんにゃ~、テク○ク~となにやら(魔法系統的にも)怪しい呪文を唱えながら、彼女はプラーナを少し開放して怪しい身振りをする。
怪しい。この上なく怪しい。
が、時間がない中方法がないためにノーチェの姿をじっと見つめるしかない三人。
アブラ~、カダブラ~、はんにゃ~、テク○ク~となにやら(魔法系統的にも)怪しい呪文を唱えながら、彼女はプラーナを少し開放して怪しい身振りをする。
怪しい。この上なく怪しい。
が、時間がない中方法がないためにノーチェの姿をじっと見つめるしかない三人。
やがて、脈絡なく彼女は両手を天に掲げて叫んだ。
「―――喝ーっ!」
……だから、魔法系統的にツッコミどころしかないって。
しかしそれをスルーして、ノーチェが額の汗を腕で拭い水晶球をみつめると、そこにはぼんやりと町の風景が浮かぶ。
見えるのは夜景。家々の明かり。
次に見えたのは、不揃いな木々。東京のど真ん中で、木々が密集する場所はけして多くない。
そしてもう一つ見えたのは、ぼろぼろの白いベンチ。それでピンときたベホイミが叫んだ。
見えるのは夜景。家々の明かり。
次に見えたのは、不揃いな木々。東京のど真ん中で、木々が密集する場所はけして多くない。
そしてもう一つ見えたのは、ぼろぼろの白いベンチ。それでピンときたベホイミが叫んだ。
「4丁目の森林公園!そうか、あそこならある程度広いし儀式のスペースも確保できるはずっス!」
場所の特定ができたベホイミの声にあわせ、メディアが月衣から調査結果の封筒を取り出し、その中にある桃月町の地図を引っぱり出して印をつけた。
柊が腕を組んで唸る。
柊が腕を組んで唸る。
「結構離れてんな。こりゃ片側に時間かけてたら洒落になんねぇか」
彼らの勝利条件は<血の文書>の術式の発動を止めること。
だが、ブランシェリーナを無視して<血の文書>の発動を止めに行ったところで彼女が邪魔をしにくることは目に見えている。
一番安全で確実なのは、ブランシェリーナを倒して<血の文書>を破壊もしくは停止させることにほかならない。
となれば、力を分散して各個撃破が一番の対応策だ。寡兵を分けるのは失策とされるが、相手もまた数が多いわけではない。
3人で対応するのならそれが一番だろう、と柊が言ったその時、傍らにいたツインテールが不思議そうにぴこりとゆれた。
だが、ブランシェリーナを無視して<血の文書>の発動を止めに行ったところで彼女が邪魔をしにくることは目に見えている。
一番安全で確実なのは、ブランシェリーナを倒して<血の文書>を破壊もしくは停止させることにほかならない。
となれば、力を分散して各個撃破が一番の対応策だ。寡兵を分けるのは失策とされるが、相手もまた数が多いわけではない。
3人で対応するのならそれが一番だろう、と柊が言ったその時、傍らにいたツインテールが不思議そうにぴこりとゆれた。
「なんで3人でありますか?」
「なんでって……俺と、ベホイミとメディアで3人だろ?」
「なんでって……俺と、ベホイミとメディアで3人だろ?」
そう本気で不思議そうに彼が確認すると、ノーチェはやれやれとばかりに肩をすくめた。
「聞いてはいたでありますが、ホントに頭悪いでありますな、蓮司」
「毎度毎度うるっせぇよ!?どいつもこいつも人を好き勝手に頭悪い言いやがってっ!
っていうかてめぇに言われると死ぬほどむなしいわっ!?」
「毎度毎度うるっせぇよ!?どいつもこいつも人を好き勝手に頭悪い言いやがってっ!
っていうかてめぇに言われると死ぬほどむなしいわっ!?」
中の人的にな。
閑話休題。
ノーチェは自身を指差して、自信ありげに胸を張った。
ノーチェは自身を指差して、自信ありげに胸を張った。
「ここにもう一人、行きずりのウィザードがいるではありませんか」
自分もいるだろうと主張するノーチェに、ベホイミが不思議そうにたずねた。
「ノーチェさんも協力してくれるんスか?」
「もちろんでありますよ。協力しちゃダメでありますか?」
「いえ、そういうわけじゃないっスけど……なんでこんなに協力してくれるんスか?
ノーチェさんはこの街になんの関係もないのに……」
「もちろんでありますよ。協力しちゃダメでありますか?」
「いえ、そういうわけじゃないっスけど……なんでこんなに協力してくれるんスか?
ノーチェさんはこの街になんの関係もないのに……」
その言葉に、ノーチェは綺麗に笑う。
「この町は、いい町でありますな」
ノーチェは吸血鬼だ。
見た目どおりの年をとっているとは限らない、常識外の存在―――人外、妖怪とも呼ばれる括りに入るものだ。
おそらくはここにいる誰よりも長くを生きているのだろうが、しかしその表情は無垢な赤子のように。
見た目どおりの年をとっているとは限らない、常識外の存在―――人外、妖怪とも呼ばれる括りに入るものだ。
おそらくはここにいる誰よりも長くを生きているのだろうが、しかしその表情は無垢な赤子のように。
「人間だとか、人外だとか、そういった区切り(こと)はくだらないのでありますよ。
この町を見ていると、その考えは正しいと思うのであります。
みんなが対等に話して、みんなが笑う。それが、完璧とは言わなくてもここにはあるのでありますよ。
―――それに。商店街のたこ焼き屋でたこ焼きをおごってくれたみのりが、また一緒に食べようと言ってくれた約束、守らなければならないでありますし」
この町を見ていると、その考えは正しいと思うのであります。
みんなが対等に話して、みんなが笑う。それが、完璧とは言わなくてもここにはあるのでありますよ。
―――それに。商店街のたこ焼き屋でたこ焼きをおごってくれたみのりが、また一緒に食べようと言ってくれた約束、守らなければならないでありますし」
だから、私もこの町が続いていってほしいのでありますよ、と綺麗に笑った彼女を見て、ベホイミが肩を震わせる。
メディアがハンカチを取り出すのを受け取って、彼女はこみ上げてきたものを押し隠す。
柊は、携帯にメールが来ていたことに気づく。差出人は、この町で会った一人の少女のもの。彼は、それを見てふっと笑った。
メディアがハンカチを取り出すのを受け取って、彼女はこみ上げてきたものを押し隠す。
柊は、携帯にメールが来ていたことに気づく。差出人は、この町で会った一人の少女のもの。彼は、それを見てふっと笑った。
ベホイミは顔を上げる。前を向く。ただ、この町を守りたいという思いをかなえるために。
「柊さんと私は別れた方がいいっスよね」
「アタッカー同士だしな、どっちも倒さなきゃならねぇなら火力は分けた方がいいだろ。
そういうことなら、俺とノーチェで<血の文書>潰しに行ってやる。お前は敵さんのご招待受けたんだろ?だったら、『この町の敵』を真っ向からぶち抜いてやれ」
「アタッカー同士だしな、どっちも倒さなきゃならねぇなら火力は分けた方がいいだろ。
そういうことなら、俺とノーチェで<血の文書>潰しに行ってやる。お前は敵さんのご招待受けたんだろ?だったら、『この町の敵』を真っ向からぶち抜いてやれ」
それがこの町守るお前の仕事だろ?と聞くと、ベホイミは力強く頷いた。
もちろん、ベホイミとメディアは敵に面が確実に割れているので、相手にこちらが掌で踊っていると思わせて油断を誘うという意図もある。
もちろん、ベホイミとメディアは敵に面が確実に割れているので、相手にこちらが掌で踊っていると思わせて油断を誘うという意図もある。
4人は顔を見合わせると、ベホイミが手を差し出した。
「とりあえず、これが終わったら皆でバカ騒ぎするっスよ」
メディアがそれに手を重ねる。
「賛成です。ベホちゃん太っ腹♪」
誰がおごるか!?と言っているベホイミを無視して、そこにノーチェが手を重ねた。
「わたくしも行っていいでありますかっ!?お金がなくて今夜の宿にも困るのでありますよっ!」
最後に柊が手を重ねる。
「さっきメールがあったんだけどよ、レベッカが料理大会で特別賞もらって副賞に出た近所の焼肉屋の貸切招待券、日曜にクラスの連中に使うからついでに来ないかだと。
それでいいんじゃねぇのか?」
「お、いいっスね焼肉。ここは宮本先生の乙女心を理解しない柊さんの鈍感さに感謝するべきっスか」
「ちょっと宮本先生が可哀想ですけど……まぁ、ご厚意を無駄にするのはよくないですよね」
「蓮司!焼肉ってあれでありますよねっ!
食べる前にはリミッターを解除してかからねばならない伝説の肉の闘技場のことでありますよねっ!?わたくしも行っていいでありますかっ!?」
「ベホイミとメディア、お前らの言ってる意味がよくわかんねぇんだが。あとノーチェ、友達も連れてきていいぞって書いてあったからいいと思うぞ」
それでいいんじゃねぇのか?」
「お、いいっスね焼肉。ここは宮本先生の乙女心を理解しない柊さんの鈍感さに感謝するべきっスか」
「ちょっと宮本先生が可哀想ですけど……まぁ、ご厚意を無駄にするのはよくないですよね」
「蓮司!焼肉ってあれでありますよねっ!
食べる前にはリミッターを解除してかからねばならない伝説の肉の闘技場のことでありますよねっ!?わたくしも行っていいでありますかっ!?」
「ベホイミとメディア、お前らの言ってる意味がよくわかんねぇんだが。あとノーチェ、友達も連れてきていいぞって書いてあったからいいと思うぞ」
軽口が重なりながら、約束が積まれていく。
これで全員死ねなくなった。後は信じて走るだけ。
これで全員死ねなくなった。後は信じて走るだけ。
―――さぁはじめよう。大切なもの(やくそく)を守る戦いの、その第一歩を踏み出そう。
ベホイミが、叫ぶ。
「行くっスよ。帰ってこい!!」
おう!と3つの声が響き、重なった掌を拳に変えて、4つの拳がうちあった。
桃月町4丁目、森林公園。
その奥まった場所の地面に、青白い輝きを放つ奇妙な図形があった。
見るものが見れば、それが魔力を帯びた魔法陣であることがわかっただろう。
その図形の中心には、黒以外の色がなく、材質が何で出来ているのかも見ただけではわからない装丁のハードカバーの本が置いてあった。
黒の本は、風もなくめくるものもないのに、ぱらりぱらりと規則正しく一枚ずつめくられていく。まるで、本そのものに意思があるように。
見るものが見れば、それが魔力を帯びた魔法陣であることがわかっただろう。
その図形の中心には、黒以外の色がなく、材質が何で出来ているのかも見ただけではわからない装丁のハードカバーの本が置いてあった。
黒の本は、風もなくめくるものもないのに、ぱらりぱらりと規則正しく一枚ずつめくられていく。まるで、本そのものに意思があるように。
それこそは<血の文書>・『アンジュ』。
この町の人間や妖怪のプラーナを奪い、この町に数え切れぬほどある人と妖怪の絆を絶たんとする『町を襲う災厄』。
その本のページが全てめくられきった時、この町を襲う災厄は顕現する。
誰も気づかなければ、気づかれぬうちに数多の絆が今夜断ち切られただろう。
この町の人間や妖怪のプラーナを奪い、この町に数え切れぬほどある人と妖怪の絆を絶たんとする『町を襲う災厄』。
その本のページが全てめくられきった時、この町を襲う災厄は顕現する。
誰も気づかなければ、気づかれぬうちに数多の絆が今夜断ち切られただろう。
―――そう、『アンジュ』の使用者の意図に、誰もが踊らされているだけだったのなら。
深夜の森林公園に、赤土を踏みしめる音が響く。
足音は二人分。この町全てを相手取るものである『アンジュ』に対して、対峙するのはたったの二人。
足音は二人分。この町全てを相手取るものである『アンジュ』に対して、対峙するのはたったの二人。
けれどその二人、けしてあなどることなかれ。
「お、あれか。月匣先に展開しといて正解だったな、当たり前だけど隠そうとしてねぇ」
やれやれ、と不敵に笑うのは、これまでいくつもの世界を幾度となく守ってきた剣の担い手。
そのとなりで不満そうに腕を組むのは、大魔王の企みを退けた、絶滅社所属の吸血鬼傭兵。
そのとなりで不満そうに腕を組むのは、大魔王の企みを退けた、絶滅社所属の吸血鬼傭兵。
「迷惑にもほどがあるでありますな。それじゃあちょっと小手試しに―――<シューティングダーク>!」
彼女の近くに常に存在している魔法の一つが、名を呼ばれると同時にすぐに効果を生み、闇をこごらせ一矢と成す。
その矢は夜闇を引き裂き―――魔法陣の真上から球状に展開された結界によって弾き散らされた。
そんな光景に、吸血鬼少女はむ、とうめいた。
その矢は夜闇を引き裂き―――魔法陣の真上から球状に展開された結界によって弾き散らされた。
そんな光景に、吸血鬼少女はむ、とうめいた。
「結界―――結構硬そうでありますな」
「だな。まぁ、この程度で済ます気はあっちにもないらしいぞ?」
「だな。まぁ、この程度で済ます気はあっちにもないらしいぞ?」
はい?と少女がたずねようとすると、すぐ近くまで炎の渦が迫っていた。
わひゃっ!?と悲鳴を上げ、彼女が頭をすくめようとするより早く、すでに剣を抜いている担い手がそれを剣で叩き斬る。
彼は、少女に言う。
わひゃっ!?と悲鳴を上げ、彼女が頭をすくめようとするより早く、すでに剣を抜いている担い手がそれを剣で叩き斬る。
彼は、少女に言う。
「行くぞ。援護頼んだ」
「頼まれた、であります。さぁ好きなだけ突っ込んでくるがいいでありますよ!」
「そうさせてもらうぜっ!」
「頼まれた、であります。さぁ好きなだけ突っ込んでくるがいいでありますよ!」
「そうさせてもらうぜっ!」
剣士は力強く赤土を踏み蹴り、吸血鬼は不敵に笑って。互いに己の内から最善の戦術を選び出す―――!
桃月西口公園。
人が集まらないこの時間帯に、一人の女が人待ち顔で立っていた。
亜麻色の髪の、グラマーな黒革のスーツの女は、腰布がひらひらと風に揺られるのを気にもせずに待っている。
公園の空気は青かった。月匣は、音一つなく静かなものだった。
月匣とは、多かれ少なかれ当人の心情を反映する。
例え世界と乖離していない形であったとしても、『自身の世界』である月衣の延長である以上は、術者の『自分』を反映する形になるのだ。
音のない世界は、彼女の内が静かで固い決意があるということの証左。
亜麻色の髪の、グラマーな黒革のスーツの女は、腰布がひらひらと風に揺られるのを気にもせずに待っている。
公園の空気は青かった。月匣は、音一つなく静かなものだった。
月匣とは、多かれ少なかれ当人の心情を反映する。
例え世界と乖離していない形であったとしても、『自身の世界』である月衣の延長である以上は、術者の『自分』を反映する形になるのだ。
音のない世界は、彼女の内が静かで固い決意があるということの証左。
その音のない世界に、二つの足音が入り込んだ。
女は待ち人を見据える。
そこにいたのは、金髪のメイドとこの町を守る魔法少女。
女は、冷徹な瞳のままで言った。
女は待ち人を見据える。
そこにいたのは、金髪のメイドとこの町を守る魔法少女。
女は、冷徹な瞳のままで言った。
「よく来たな、私の敵。こうやって会うのははじめてになる。
はじめまして、だ。知っているだろうが、私の名はブランシェリーナ=アンジュ=リヴァル。名を聞いてもいいか、私の敵よ」
はじめまして、だ。知っているだろうが、私の名はブランシェリーナ=アンジュ=リヴァル。名を聞いてもいいか、私の敵よ」
言われ、少女達はブランシェリーナに厳しい目を向けながら答える。
「魔法少女、ベホイミ」
「メイドのメディアといいます。よろしくお願いしますね」
「短い間になるだろうがな。このまま私が時間を稼げば、『アンジュ』が術式を完成させ―――」
「メイドのメディアといいます。よろしくお願いしますね」
「短い間になるだろうがな。このまま私が時間を稼げば、『アンジュ』が術式を完成させ―――」
つまらなそうにブランシェリーナが告げようとしたその時、彼女はこの町に二つ目の月匣が発生するのを感じとった。
それまで無表情だったブランシェリーナの顔に、はじめて少しとはいえ驚愕が刻まれる。
ベホイミは、胸のすく思いで不敵に笑った。
それまで無表情だったブランシェリーナの顔に、はじめて少しとはいえ驚愕が刻まれる。
ベホイミは、胸のすく思いで不敵に笑った。
「アンタ、まさかこの町を守りたいと思ってるウィザードが私達しかいないとか勘違いしてたっスか?
―――この町を、なめるな」
この町を、この町に住む人々を、その人々がつないだ絆をなめるなと。町を守る魔法少女は『町の脅威』の元凶に向けて言い放つ。
ブランシェリーナは驚愕を一瞬の内に己の鉄面皮の下に戻すと、眼前の敵を睨んだ。
ブランシェリーナは驚愕を一瞬の内に己の鉄面皮の下に戻すと、眼前の敵を睨んだ。
「少しはまともな思考ができる者が残っていたか。
侮っていたことをここに謝罪しよう。しかし、これ以上はない。『アンジュ』には防衛用の攻撃術式も組み込んである。
さらにアレを守る防御結界は、条件次第では公爵級以上の魔王の一撃すら止めてみせる代物だ」
侮っていたことをここに謝罪しよう。しかし、これ以上はない。『アンジュ』には防衛用の攻撃術式も組み込んである。
さらにアレを守る防御結界は、条件次第では公爵級以上の魔王の一撃すら止めてみせる代物だ」
そう言って、彼女は腰布をばさりと脱ぎ落とす。その腰布には魔法陣が描かれていた。そして、とブランシェリーナは足を踏み鳴らして告げる。
「お前たちが仲間の心配をする必要がないよう、ここで私が終わらせてやろう―――<ミリオン>」
名を呼ばれたものが、魔法陣から現れる。
それは巨大な金属の塊だった。おそらく金属だけでできているわけではないのだろうが、目に付く部分はすべて鈍い銀色で覆われている。
高さは7mほど。標準的な建物の二階弱ほどの高さのそれは、頭と胴と手足の区別があるだけの、不恰好な人間のようにも見える。
ブランシェリーナは、威厳をもって言い放つ。
それは巨大な金属の塊だった。おそらく金属だけでできているわけではないのだろうが、目に付く部分はすべて鈍い銀色で覆われている。
高さは7mほど。標準的な建物の二階弱ほどの高さのそれは、頭と胴と手足の区別があるだけの、不恰好な人間のようにも見える。
ブランシェリーナは、威厳をもって言い放つ。
「これは<ミリオン>。<真理の箒(エメスブルーム)>を知っているか?
錬金術師の一つの到達点、他の錬金術師に認められる一人前の証の一つは、己の手で物言わぬ自身の命令だけを聞く人形―――ゴーレムを作りだすことだ。
そのゴーレムのうち、もっともポピュラーで最低限のスペックを詰め込んだとされる最低限の品(ボーダーライン)が<真理の箒>と呼ばれるもの。
ゴーレムを作ることに特化して錬金術を学ぶものはな、そのスペックをさらに自身にあったように改正していくものだ。
そして―――これが、私専用のゴーレム。もの言わぬ我が手足にして敵を消すための道具」
錬金術師の一つの到達点、他の錬金術師に認められる一人前の証の一つは、己の手で物言わぬ自身の命令だけを聞く人形―――ゴーレムを作りだすことだ。
そのゴーレムのうち、もっともポピュラーで最低限のスペックを詰め込んだとされる最低限の品(ボーダーライン)が<真理の箒>と呼ばれるもの。
ゴーレムを作ることに特化して錬金術を学ぶものはな、そのスペックをさらに自身にあったように改正していくものだ。
そして―――これが、私専用のゴーレム。もの言わぬ我が手足にして敵を消すための道具」
つま先で腰布をひっくり返すと、違う魔法陣が現れる。その魔法陣を上に立てば、彼女ごと腰布は姿を消し―――<ミリオン>と呼ばれた箒のコクピットに収まった。
ブランシェリーナは、言う。
ブランシェリーナは、言う。
『そろそろはじめよう、私の敵。
この場は口上を並べ立てる所ではない。私の20年にわたる思いが勝つか、お前達のこの町への思いが勝つか。ただそれだけをぶつけ合うために用意された場だ』
この場は口上を並べ立てる所ではない。私の20年にわたる思いが勝つか、お前達のこの町への思いが勝つか。ただそれだけをぶつけ合うために用意された場だ』
ベホイミははは、と力なく笑う。
「なんスかそれ。反則にも程がないっスか?」
「わぁぁ……流石にこれだけ大きな代物は初めて見ますねぇ」
「わぁぁ……流石にこれだけ大きな代物は初めて見ますねぇ」
メディアの声にもやや呆けが入っている気がしないでもない。
二人は同じタイミングでため息をついて―――前を向く。
二人は同じタイミングでため息をついて―――前を向く。
「けど、魔法少女としては負ける気はないんでしょ、ベホちゃん」
「当然だ。背中任すぞ」
「当然だ。背中任すぞ」
はい、と笑うメディアを置き去りにする勢いで、ベホイミは矢のような疾駆を開始する―――!