「七つの大罪 セブンデイズ ~盗賊と聖少女~(漫画版)の第1話」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら
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騎士「聖女・・・様・・!もっ・・・もう二度と森には入りませんっ。どうかっご慈悲・・・・」
聖女と呼ばれたその少女が拳を握ると、その騎士を締め付ける木々がより強く締め付け―――
騎士「をおおああああああああ・・・・・」
#center(){|&big(){&bold(){第1話 七百年の孤独}}|}
その森のふもとの町にある酒場。
酒のジョッキなどが積まれた席で、一人の青年が仰向けになったまま動かずにいて、
周りの客達がざわめいていた。
客たち「あのデケぇ兄ちゃん、ぴくりとも動かねえな・・・」
「酔いつぶれてんのか?」
「おい、まさか死んでんじゃねぇよな・・・」
客(ヒゲ)「死んだと言えばよぉ・・・この前ここに立ち寄った騎士様・・・あの森さ行ったきり行方不明だと!」
客(目隠れ)「うぅ~~~おっかねぇ!!永遠の命どころか早死にしに行くようなもんだ!」
客(ヒゲ)「んだ・・・`妖精王の森‘に入るなんて・・・・・」
その言葉を聞いた青年が話していた二人組の机に足を叩きつけた。
客(目隠れ)「!?」
青年「‘妖精王の森‘だと・・・?」
バン「面白そーな話してんじゃねーか~、俺も混ぜてくれよ~~~~♫」
青年は、後に七つの大罪の一員、&ruby(フォックス・シン){強欲の罪}となる、バンだった。
バン「ヘイヘ~イ、続けて続けて~♪」
二人組((何だこの酔っぱらい兄ちゃん・・・死んでなかった・・・)
客(ヒゲ)「‘妖精王の森‘はこの町からさらに北、ブリタニア最大の森だ。アレ、見えんべ?」
「山よりもデカい薄紅色の樹、‘妖精王の森‘の中心、‘大樹‘だ」
バン「あんなクソでけ~~~^樹の頂上にあんのかよ~~~~~、「生命の泉」は♫」
客(ヒゲ)「兄ちゃん、まさか泉目当てじゃねぇべな!?泉を守る聖女様に殺されるぞ!五つの目玉に足は八本・・・全身、毛で覆われ口から強酸を吐く・・・おつそろしい聖女様だ!」
バン「それもう聖女じゃなくね?つかその聖女サマ・・・姿見たってやついんの?」
客(ヒゲ)「いるわけねぇべ!会ったが最後、命はねえ!!・・・とにかく冷酷無比な聖女様なんだ!命が惜しけりゃ森には行かねぇこった・・・!」
バン「もうカラだ~~~♪」
バンが飲み終えたジョッキを置き、席から立った。
バン「だいたいわかったわ、ごっつぉ~~~さ~~~~ん♫」
客(目隠れ)「・・・・?」
客(ヒゲ)「ごっつぉ~~~さん・・・?」
二人組「「!!!」」
客(ヒゲ)「財布が無ぇッ!!盗りやがったあのツンツン頭!!」
店主「おっとダンナ、三人分のお勘定」
客(目隠れ)「三人!?アイツは連れじゃねぇ!!」
他の客「おおっ、喰い逃げか?」
客(ヒゲ)「だから俺らは財布をスラれ・・・」
ヒゲの客が店主に殴られた。
客(目隠れ)「まってくれ!!本当に喰い逃げじゃ・・・」
バンは屋根の上から二人組の様を見ていた。
バン「カカカッ♫んじゃ、まっ♪腹ごしらえも済んだし行くとすっか~~~、飲めば永遠の命を得られるっつう・・・・「生命の泉」を奪いに♪」
妖精界と人間界の境界兼、妖精界への入り口、‘妖精王の森‘。ここは古より‘神樹‘に選ばれし‘妖精王‘によってその平穏が保たれていた。
しかしこの森は、七百年の間、守護者である妖精王を失っていた。
聖女「・・・・・・兄さん・・・・」
七百年前。
エレイン「兄さ―――ん、兄さぁーん」
後に聖女となる妖精族の少女、エレインが誰かを探していた。
エレイン「もう・・・まだ帰ってきてないのかしら・・・嫌だなァ・・・変なことが起きないといいけど・・・」
小鬼たち「エレイン!エレイン!」
「姫―!」
三匹の小鬼がエレインに近寄ってきた。
小鬼たち「エレインはきっと」
「散歩!」
「だな!」
エレイン「違うわ、兄さんを探しに行くの。散歩じゃないのよ!」
小鬼たち「エレインはたぶん」
「暇!」
「なんだな!」
エレイン「・・・・ねぇ、兄さんがどこにいるか知らないわよね・・・・」
小鬼たち「エレインは俺たちと!」
「遊んでくれる!」
「んだな!」
エレイン「あ・・・遊ばないったら・・・話聞いてる?はあ・・・・」
ヘルブラム「エレイン!」
エレインの元に、妖精のヘルブラムが降りてきた。
エレイン「ヘルブラム!兄さんは?森の巡回から帰ってきた?」
ヘルブラム「うんにゃ。どっかで寄り道でもしてるのかもねぇ~~~~」
エレイン「そう・・・・」
ヘルブラム「まーまー、そう心配しなさんなって。チミの足下、臆病な小鬼がチミの側にいるんだ。変わったことなんてな~んも起こっちゃいないって証拠さ」
小鬼たち「?」
「エレインは最近」
「なーばす!」
「なんだな!」
エレイン「・・・・」
「別に心配はしてないわ。帰りが遅いって話をしてるだけ!」
ヘルブラム「ま、何かあったとしても自分でなんとかしちまうだろうしねぇ。なんたって、チミの兄さんは――――この‘神樹‘に選ばれた、妖精王ハーレクインなんだから」
ヘルブラムが口笛を吹きながら、エレインの前を飛び、首に下げた笛が揺れる。
エレイン「・・・」
ヘルブラムが口笛を吹きながら、エレインの前を飛び、首に下げた笛が揺れる。
エレイン「・・・・ねぇヘルブラム、首に下げてるそれ・・・」
ヘルブラム「おほっ!!気づいちゃった!?流石目さどいねえエレイ~~~~ン!!」
エレイン「い・・いや・・・・というか・・・・・」
(気づくも何もそんな見せつけてたら・・・・)
ヘルブラム「人間がつくった笛なのだよ、コレ!」
ヘルブラムが笛を吹くが、出てきたのは変な音だった。
ヘルブラム「変な音だろ~?人間はこの笛吹いて球磨や狼から逃げるんだってさ~~~~!!プハハハハッ!!」
エレイン「・・・ヘルブラム、また人間界に遊びに行ったの?」
ヘルブラム「・・・・・」
エレイン「兄さんにも止められてるでしょ!?人間には近づいちゃダメって・・・」
ヘルブラム「まーまー、というかさ―――そう怖がったもんでもないよ、人間は」
エレイン「怖がってはないわ!」
ヘルブラム「西の集落の連中は妖精のこと、幸運を招く使者だって敬ってくれるし・・・」
エレイン「でも、北の蛮族は襲ってくることもあるって聞いたわ」
ヘルブラム「あ~~~~アイツらはまあ・・・ちょっとおバカだから・・・」
エレイン「ほら!やっぱり人間は危ないじゃない」
ヘルブラム「う―――ん・・・そうじゃなくてだねぇ・・・」
小鬼たち「ツギはアッチで!」
「アソぶ!!」
「んだな!」
ヘルブラム「とにかく人間にもいろんなやつがいるってことだねぇ」
エレイン「・・・・・」
(ほんとヘルブラムは理解できない。人間なんてろくでもない種族の何がいいのかしら・・・)
ヘルブラム「おっ」
神樹の幹に光の穴が開き、そこから出てきたのは、後に七つの大罪の一員、&ruby(グリズリー・シン){怠惰の罪}のキングとなる、妖精王ハーレクインだった。
エレイン「兄さん!!」
「ん?」
ハーレクインも、あの笛を取り出し、吹いた。
ヘルブラム「フハッ」
エレイン「・・・・」
ハーレクイン「ん~?変な音だな・・・獣避けってより道化師の小道具みたいだ・・・それともオイラの吹き方の問題・・・」
エレイン「に・い・さ・ん?_」
ハーレクイン「!!」
ハーレクインが慌てて、笛をポケットにしまった。
ハーレクイン「や・・やあエレインただいま。いま帰ったよ」
ヘルブラム「ハーレクインもその笛貰ったのかィ?西の集落に来てる行商人だろ?」
ハーレクイン「違う!貰ったんじゃない!拾ったんだ!」
エレイン(笛を隠した意味がないわ兄さん・・・というか隠れてないし・・・)
ハーレクイン「たまたまさ!森の近くを通りかかった人間が落としたのをたまたま拾って・・・・」
ヘルブラム「ほ~~~~~~~?俺っちには散々人間には近付くなって言ってるのにねぇ~」
ハーレクイン「あっ・・・当たり前じゃないか!!人間なんか信用しちゃダメだ!」
ヘルブラム「けど、興味はあるから自分は近付くこともある・・・と」
ハーレクイン「うっ・・・そ・・・れは・・・」
エレイン「あのねぇ兄さん・・・」
ハーレクイン「エッ・・・エレインッ、そのッ・・・」
エレイン「兄さんは王なのよ?その服だって・・・人間の真似して自作したってこの前言ってたわよね?」
ハーレクイン「え・・・うん・・・・」
エレイン「そんなことしてる王様が!人間を信じるな、近付いちゃダメだなんて言っても!説得力がないでしょ!?」
ハーレクイン「わ・・・わかってるよエレイン・・・」
ヘルブラム「仲の良い兄妹だにィ~~~~」
エレイン「いいえ!だいたい兄さんがそんなだから、ヘルブラムの悪癖だって止まないのよ!」
ヘルブラム「悪癖とは聞き捨てならんねぇ~~~~、人間はあれで、妖精にはない文化や考えを持ってるんだぜ?ああ・・・チミは知らないかな?」
エレイン「ムッ、興味ないわ。私たちには必要ないものでしょ?」
ヘルブラム「まあ、そうかもしれんけど・・・そういうチミは、人間を直接見たことはないだろう?」
エレイン「・・・・・ない・・・けど知ってるわ!昔、兄さんが神樹に映してくれた人間を見たことがあるもの」
エレイン「武器を手にして・・・・ギラギラした目で・・・・これが人間・・・・!!」
エレイン「目は欲にまみれ、赤く血走って・・・あれの・・・あの姿のどこに興味を持てばいいの・・・」
ヘルブラム「あ~チミ、そりゃダメだ!」
エレイン「!?」
ヘルブラム「人間のいっっっっっっちばん悪いところしか見てない!少なくとも「知っている」とは言えないねぇ」
エレイン「そんなことない!」
ヘルブラム「ケンカしないで~~~~」
ヘルブラム「まっ、ないと言い切りたいなら、チミも一度くらい人間と話をしてみることだね~俺っちみたいに!」
エレイン「む~~~」
ヘルブラム「フフン」
ハーレクイン(き・・・気まずい・・・)
エレイン「ヘルブラムはわかってないのよ。自分がどれだけ危険なことをしているのか・・・」
ハーレクイン「まあ確かに・・・最近ちょっと頻繁に行きすぎな気がする。人間のとこ・・・」
エレイン「いい傾向じゃじゃないわ・・・」
エレインが下に視線を向けると、そこで二人の妖精がヘルブラムが持ってきたアクセサリーを見せ合っていた。
妖精たち「ねぇコレ!ヘルブラムがね、ぎょーしょーから貰ったんだって!」
「西の集落の?い~な~」
「ステキ~!!」
「どう?」
エレイン「・・・・・」
エレインがその妖精たちから目を反らすと、ハーレクインがコケモモの実を浮かばせてきた。
ハーレクイン「エレイン、ほら口をあけて!このコケモモすごくおいしいから!」
エレイン「・・・・もう・・・自分で食べられるわよ・・兄さんはのんきね・・・」
「!、おいしい」
ハーレクイン「だろう?オイラだけが知ってる内緒の場所に生ってるコケモモなのさ・・・!」
エレイン「あのね兄さん・・・・・」
ハーレクイン「ん――――?」
エレイン「私ね、最近何だかすごく不安なの・・・・・」
ハーレクイン「ヘルブラムのことかい?」
エレイン「・・・・うん・・・いつかとり返しのつかないことになったらって・・・・」
(それだけじゃないの、兄さんがここから消えてしまう気がして・・・・・)
「・・・ねぇ、兄・・・」
エレインがハーレクインの方を向いたが、ハーレクインはいなかった。
エレイン「にっ・・・」
ハーレクイン「コケモモ落としちゃった」
ハーレクインは下から浮かんできた。
エレイン「コケ・・・モモ・・・」
ハーレクイン「大丈夫さ。全部オイラが守るから。妖精界もこの森も妖精族も、全部。もちろんエレイン、キミのことも」
エレイン(・・・そうよ、兄さんはこの森の絶対守護者。妖精王ハーレクインなんだもの)
ハーレクイン「あ―――ん」
エレイン「もうっ、また落としちゃうわよ?」
エレイン(ずっとここで守ってくれる。兄さんがいれば大丈夫。そう・・・思っていた)
人間の乗る馬車が道を進んでいた。
御者「どうっ・・・・」
御者がリュートを弾きだした所にヘルブラムが来ていた。
御者「やぁ妖精さん。これはね、リュートって楽器」
ヘルブラム「この前の笛と違って美しくて繊細な音色だねぇ~~~~」
御者「今日は友だちいっぱい連れてきたかい?」
ヘルブラム「うん!」
「みんな―――出てきなよ!」
妖精たち「「「・・・・・・」」」
茂みの中から、大勢の妖精族が出てきた。
妖精たち「「「わぁ――――ッ!!!」」」
妖精たちは御者の持ってきた多くの品物に目を輝かせていた。
妖精「本当に好きなの一つくれるの!?」
御者「ああ、来てくれたお礼だよ!」
妖精たち「どれにしよー!」
「これなんだろー」
妖精「おじさん!これはなーに?」
御者「イヤリングだよ、耳につける飾り」
ヘルブラム「人間は身につける物で身分の違いまでわかるんだぜ!」
妖精たち「ヘルブラムもの知り~!」
「ミブンってなに~?」
ヘルブラム「まあにィ~」
ヘルブラム(俺っちい~こと思いついたっ!)
ハーレクインが森の様子を見ていたが・・・
ハーレクイン「・・・いない・・・」
エレイン「兄さんどうしたの?」
ハーレクイン「エレイン、ヘルブラムのやつ知らないかい?」
エレイン「見てないけど・・・まさかまた人間のとこへ?」
ハーレクイン「・・・・多分・・・」
エレイン「仕方ないわねヘルブラムは-・・・兄さんももっときつく言わなきゃ・・・」
ハーレクイン「・・・・・」
エレイン(兄さん?)
ハーレクイン「ヘルブラムの言うようにさ・・・・人間は妖精にはないものを持っていて、一部の仲間にはそれが魅力的に映ることもあるかもしれない・・・でも・・・人間なんて絶対に信用しちゃいけないんだ。年がら年中平気で騙し合い殺し合ってる・・・同族同士で!そんな種族とわかり合えるわけがない!」
「なぁんてさ!オイラがヤキモキしたって今日もきっと、得意げな顔で帰ってくるんだ、アイツは」
ヘルブラム「い、よーしッ!!俺っちはこの冑に決めた!」
妖精「それ頭に被るのぉ?」
ヘルブラム「そっ!でも、俺っちのじゃない。プレゼントなのさ!親友へのね。ほら、うちの王様、威厳のカケラも無いからさ~~~~、本人も気にしてるらしいのヨ!これでも被ればそれっぽそうじゃないかィ?」
妖精たち「「いいかも~!!!」」
御者「なぁんだ、その親友も連れてくればよかったのに」
ヘルブラム「あ~彼は結構忙しい身でね!残念だけど」
御者「そっか・・・惜しいねぇ~、う~ん・・・来てくれたら金貨もう三枚もうけたのに!」
ヘルブラム「?、きんか?それって・・・」
妖精「ギャアアッ!!」
妖精たちの悲鳴が響いた。
馬車の中から、左目を眼帯で覆い、左手で二人の妖精を掴んだ老剣士、アルドリッチが出てきた。
妖精「くっ・・・いやぁっ!!放してよぉ!!」
「くっ」
妖精たち「「「!?」」」
ヘルブラム(何だ・・・?なんで武器を持った人間が・・・)
御者「だんなぁ!くれぐれも商品だけは傷つけねぇよう頼んますよぉ!金にならなくなっちまう!」
ヘルブラム「!!」
アルドリッチ「案ずるな、羽根は無傷だ」
ヘルブラム「羽根!?金・・・??」
御者「妖精の羽根ってのはよう・・・い~い金になるんだわ。二束三文で商売してるよりずっと」
妖精「たすけてぇぇ!!」
御者「お前さんに出会えて良かった、こんなに大量の金ヅルを連れてきてくれて・・・ありがとなぁ。幸運の妖精さんよ!」
ヘルブラム「騙したのかッ!!」
ヘルブラムが魔力を発動させ、御者の持ってきた品物の中から剣を浮かばせ、アルドリッチに向けた。
アルドリッチ「!」
ヘルブラム「仲間を放せ人間ッ・・・」
「!?」
しかし、ヘルブラムは後ろから御者にリュートで殴られた。
御者「妙な力使いやがって・・・おとなしくしてろっ!」
御者がヘルブラムの頭を踏みつける。
妖精「ヘッ、ヘルブラッ・・エッ!!」
また二人の妖精がアルドリッチに骨が砕けるほど握りしめられ、捕まった。
ヘルブラム(あぁ・・・俺っちの・・・俺っちのせいでみんなが・・・)
妖精たちは次々にアルドリッチによって切り倒され、御者の虫かごに入れられていった。
エレイン(目は欲にまみれ、赤く血走って・・・あれの・・・あの姿のどこに興味を持てばいいの・・・)
そうエレインが言った通りの所行を見させられたヘルブラムの左目は潰れ、残った右目から涙を流していた・・・
ハーレクイン「何・・・だって・・・!?」
老妖精「つっ・・・捕まったのはヘルブラムと一緒に出た連中で・・・相手は西の集落にいた行商が雇ったとみられる眼帯の老戦士とのことっ!」
エレイン(西の集落・・・行商・・・あの笛の・・・!)
ハーレクインが右手をかざすと木の幹に、妖精たちを捕らえたアルドリッチと行商が映った。
妖精たち「!!!」
「仲間が檻に入れられてるぞ!」
「あの檻、魔力が込もってるのか!?」
ハーレクイン「!、くっ・・・」
エレイン「・・・・ヘ・・・」
右目を潰されたヘルブラムも映っていた。
エレイン「ヘル・・・ブラム・・・・!!!」
行商「いひひひっ!!ガラクタをくれてやったら向こうから何度も現れて・・・こっちを信用しきったらあとはもう・・・!
もっと面白いものプレゼントするから友達もたくさん連れといで~ってな。いひはははは!!」
エレイン「なんて・・・なんて卑劣なの・・・」
妖精「ごめんなさいっ私だけ逃げて・・・どうしよううう王さまぁああっ!!」
妖精たち「妖精王、このままでは彼らは―――」
「王!!」
「妖精王!」
「ハーレクイン様!!」
「王ッ!!」
「王様ぁ!!」
エレイン「兄さん・・・」
幹の映像が消えた。
妖精「!!」
ハーレクインがエレインに背を向ける。
エレイン「兄・・・さん・・・?ダメッ!!行かないで!!兄さんはいなくなってはダメ・・・守るって・・・言ったでしょ・・・ねぇ・・・私を一人にしないで・・・!
兄さんなしにどうやって・・・どうやってこの森を守ればいいの・・・」
ハーレクイン「・・・・あいつは親友なんだ・・・エレイン・・少しの間だけ森を頼む!!」
ハーレクインが飛び出していった。
エレイン「兄さん!兄さあああああんんッッ・・・」
そして七百年後。
エレイン「・・・兄さん・・・あれからもう七百年も経つのよ・・・少しの間って一体いつまでなの・・・」
「森に・・・誰か入った・・・人間・・・!」
バン「うははっ!マジかよ~♪間近で見ると樹っつーかもはや壁だな。こりゃ~登りがいがありそーだ♫待ってろよ~‘生命の泉‘、このバンデット・バン様が頂きにあがるぜ~♫」
これは、一人の盗賊の人間と一人の孤独な妖精が出会い、紡いだ運命の七日間の物語
(続く)
騎士「聖女・・・様・・!もっ・・・もう二度と森には入りませんっ。どうかっご慈悲・・・・」
聖女と呼ばれたその少女が拳を握ると、その騎士を締め付ける木々がより強く締め付け―――
騎士「をおおああああああああ・・・・・」
#center(){|&big(){&bold(){第1話 七百年の孤独}}|}
その森のふもとの町にある酒場。
酒のジョッキなどが積まれた席で、一人の青年が仰向けになったまま動かずにいて、
周りの客達がざわめいていた。
客たち「あのデケぇ兄ちゃん、ぴくりとも動かねえな・・・」
「酔いつぶれてんのか?」
「おい、まさか死んでんじゃねぇよな・・・」
客(ヒゲ)「死んだと言えばよぉ・・・この前ここに立ち寄った騎士様・・・あの森さ行ったきり行方不明だと!」
客(目隠れ)「うぅ~~~おっかねぇ!!永遠の命どころか早死にしに行くようなもんだ!」
客(ヒゲ)「んだ・・・`妖精王の森‘に入るなんて・・・・・」
その言葉を聞いた青年が話していた二人組の机に足を叩きつけた。
客(目隠れ)「!?」
青年「‘妖精王の森‘だと・・・?」
バン「面白そーな話してんじゃねーか~、俺も混ぜてくれよ~~~~♫」
青年は、後に「七つの大罪」の一員、&ruby(フォックス・シン){強欲の罪}となる、バンだった。
バン「ヘイヘ~イ、続けて続けて~♪」
二人組((何だこの酔っぱらい兄ちゃん・・・死んでなかった・・・)
客(ヒゲ)「‘妖精王の森‘はこの町からさらに北、ブリタニア最大の森だ。アレ、見えんべ?」
「山よりもデカい薄紅色の樹、‘妖精王の森‘の中心、‘大樹‘だ」
バン「あんなクソでけ~~~^樹の頂上にあんのかよ~~~~~、「生命の泉」は♫」
客(ヒゲ)「兄ちゃん、まさか泉目当てじゃねぇべな!?泉を守る聖女様に殺されるぞ!五つの目玉に足は八本・・・全身、毛で覆われ口から強酸を吐く・・・おつそろしい聖女様だ!」
バン「それもう聖女じゃなくね?つかその聖女サマ・・・姿見たってやついんの?」
客(ヒゲ)「いるわけねぇべ!会ったが最後、命はねえ!!・・・とにかく冷酷無比な聖女様なんだ!命が惜しけりゃ森には行かねぇこった・・・!」
バン「もうカラだ~~~♪」
バンが飲み終えたジョッキを置き、席から立った。
バン「だいたいわかったわ、ごっつぉ~~~さ~~~~ん♫」
客(目隠れ)「・・・・?」
客(ヒゲ)「ごっつぉ~~~さん・・・?」
二人組「「!!!」」
客(ヒゲ)「財布が無ぇッ!!盗りやがったあのツンツン頭!!」
店主「おっとダンナ、三人分のお勘定」
客(目隠れ)「三人!?アイツは連れじゃねぇ!!」
他の客「おおっ、喰い逃げか?」
客(ヒゲ)「だから俺らは財布をスラれ・・・」
ヒゲの客が店主に殴られた。
客(目隠れ)「まってくれ!!本当に喰い逃げじゃ・・・」
バンは屋根の上から二人組の様を見ていた。
バン「カカカッ♫んじゃ、まっ♪腹ごしらえも済んだし行くとすっか~~~、飲めば永遠の命を得られるっつう・・・・「生命の泉」を奪いに♪」
妖精界と人間界の境界兼、妖精界への入り口、‘妖精王の森‘。ここは古より‘神樹‘に選ばれし‘妖精王‘によってその平穏が保たれていた。
しかしこの森は、七百年の間、守護者である妖精王を失っていた。
聖女「・・・・・・兄さん・・・・」
七百年前。
エレイン「兄さ―――ん、兄さぁーん」
後に聖女となる妖精族の少女、エレインが誰かを探していた。
エレイン「もう・・・まだ帰ってきてないのかしら・・・嫌だなァ・・・変なことが起きないといいけど・・・」
小鬼たち「エレイン!エレイン!」
「姫―!」
三匹の小鬼がエレインに近寄ってきた。
小鬼たち「エレインはきっと」
「散歩!」
「だな!」
エレイン「違うわ、兄さんを探しに行くの。散歩じゃないのよ!」
小鬼たち「エレインはたぶん」
「暇!」
「なんだな!」
エレイン「・・・・ねぇ、兄さんがどこにいるか知らないわよね・・・・」
小鬼たち「エレインは俺たちと!」
「遊んでくれる!」
「んだな!」
エレイン「あ・・・遊ばないったら・・・話聞いてる?はあ・・・・」
ヘルブラム「エレイン!」
エレインの元に、妖精のヘルブラムが降りてきた。
エレイン「ヘルブラム!兄さんは?森の巡回から帰ってきた?」
ヘルブラム「うんにゃ。どっかで寄り道でもしてるのかもねぇ~~~~」
エレイン「そう・・・・」
ヘルブラム「まーまー、そう心配しなさんなって。チミの足下、臆病な小鬼がチミの側にいるんだ。変わったことなんてな~んも起こっちゃいないって証拠さ」
小鬼たち「?」
「エレインは最近」
「なーばす!」
「なんだな!」
エレイン「・・・・」
「別に心配はしてないわ。帰りが遅いって話をしてるだけ!」
ヘルブラム「ま、何かあったとしても自分でなんとかしちまうだろうしねぇ。なんたって、チミの兄さんは――――この‘神樹‘に選ばれた、妖精王ハーレクインなんだから」
ヘルブラムが口笛を吹きながら、エレインの前を飛び、首に下げた笛が揺れる。
エレイン「・・・」
ヘルブラムが口笛を吹きながら、エレインの前を飛び、首に下げた笛が揺れる。
エレイン「・・・・ねぇヘルブラム、首に下げてるそれ・・・」
ヘルブラム「おほっ!!気づいちゃった!?流石目さどいねえエレイ~~~~ン!!」
エレイン「い・・いや・・・・というか・・・・・」
(気づくも何もそんな見せつけてたら・・・・)
ヘルブラム「人間がつくった笛なのだよ、コレ!」
ヘルブラムが笛を吹くが、出てきたのは変な音だった。
ヘルブラム「変な音だろ~?人間はこの笛吹いて球磨や狼から逃げるんだってさ~~~~!!プハハハハッ!!」
エレイン「・・・ヘルブラム、また人間界に遊びに行ったの?」
ヘルブラム「・・・・・」
エレイン「兄さんにも止められてるでしょ!?人間には近づいちゃダメって・・・」
ヘルブラム「まーまー、というかさ―――そう怖がったもんでもないよ、人間は」
エレイン「怖がってはないわ!」
ヘルブラム「西の集落の連中は妖精のこと、幸運を招く使者だって敬ってくれるし・・・」
エレイン「でも、北の蛮族は襲ってくることもあるって聞いたわ」
ヘルブラム「あ~~~~アイツらはまあ・・・ちょっとおバカだから・・・」
エレイン「ほら!やっぱり人間は危ないじゃない」
ヘルブラム「う―――ん・・・そうじゃなくてだねぇ・・・」
小鬼たち「ツギはアッチで!」
「アソぶ!!」
「んだな!」
ヘルブラム「とにかく人間にもいろんなやつがいるってことだねぇ」
エレイン「・・・・・」
(ほんとヘルブラムは理解できない。人間なんてろくでもない種族の何がいいのかしら・・・)
ヘルブラム「おっ」
神樹の幹に光の穴が開き、そこから出てきたのは、後に七つの大罪の一員、&ruby(グリズリー・シン){怠惰の罪}のキングとなる、妖精王ハーレクインだった。
エレイン「兄さん!!」
「ん?」
ハーレクインも、あの笛を取り出し、吹いた。
ヘルブラム「フハッ」
エレイン「・・・・」
ハーレクイン「ん~?変な音だな・・・獣避けってより道化師の小道具みたいだ・・・それともオイラの吹き方の問題・・・」
エレイン「に・い・さ・ん?_」
ハーレクイン「!!」
ハーレクインが慌てて、笛をポケットにしまった。
ハーレクイン「や・・やあエレインただいま。いま帰ったよ」
ヘルブラム「ハーレクインもその笛貰ったのかィ?西の集落に来てる行商人だろ?」
ハーレクイン「違う!貰ったんじゃない!拾ったんだ!」
エレイン(笛を隠した意味がないわ兄さん・・・というか隠れてないし・・・)
ハーレクイン「たまたまさ!森の近くを通りかかった人間が落としたのをたまたま拾って・・・・」
ヘルブラム「ほ~~~~~~~?俺っちには散々人間には近付くなって言ってるのにねぇ~」
ハーレクイン「あっ・・・当たり前じゃないか!!人間なんか信用しちゃダメだ!」
ヘルブラム「けど、興味はあるから自分は近付くこともある・・・と」
ハーレクイン「うっ・・・そ・・・れは・・・」
エレイン「あのねぇ兄さん・・・」
ハーレクイン「エッ・・・エレインッ、そのッ・・・」
エレイン「兄さんは王なのよ?その服だって・・・人間の真似して自作したってこの前言ってたわよね?」
ハーレクイン「え・・・うん・・・・」
エレイン「そんなことしてる王様が!人間を信じるな、近付いちゃダメだなんて言っても!説得力がないでしょ!?」
ハーレクイン「わ・・・わかってるよエレイン・・・」
ヘルブラム「仲の良い兄妹だにィ~~~~」
エレイン「いいえ!だいたい兄さんがそんなだから、ヘルブラムの悪癖だって止まないのよ!」
ヘルブラム「悪癖とは聞き捨てならんねぇ~~~~、人間はあれで、妖精にはない文化や考えを持ってるんだぜ?ああ・・・チミは知らないかな?」
エレイン「ムッ、興味ないわ。私たちには必要ないものでしょ?」
ヘルブラム「まあ、そうかもしれんけど・・・そういうチミは、人間を直接見たことはないだろう?」
エレイン「・・・・・ない・・・けど知ってるわ!昔、兄さんが神樹に映してくれた人間を見たことがあるもの」
エレイン「武器を手にして・・・・ギラギラした目で・・・・これが人間・・・・!!」
エレイン「目は欲にまみれ、赤く血走って・・・あれの・・・あの姿のどこに興味を持てばいいの・・・」
ヘルブラム「あ~チミ、そりゃダメだ!」
エレイン「!?」
ヘルブラム「人間のいっっっっっっちばん悪いところしか見てない!少なくとも「知っている」とは言えないねぇ」
エレイン「そんなことない!」
ヘルブラム「ケンカしないで~~~~」
ヘルブラム「まっ、ないと言い切りたいなら、チミも一度くらい人間と話をしてみることだね~俺っちみたいに!」
エレイン「む~~~」
ヘルブラム「フフン」
ハーレクイン(き・・・気まずい・・・)
エレイン「ヘルブラムはわかってないのよ。自分がどれだけ危険なことをしているのか・・・」
ハーレクイン「まあ確かに・・・最近ちょっと頻繁に行きすぎな気がする。人間のとこ・・・」
エレイン「いい傾向じゃじゃないわ・・・」
エレインが下に視線を向けると、そこで二人の妖精がヘルブラムが持ってきたアクセサリーを見せ合っていた。
妖精たち「ねぇコレ!ヘルブラムがね、ぎょーしょーから貰ったんだって!」
「西の集落の?い~な~」
「ステキ~!!」
「どう?」
エレイン「・・・・・」
エレインがその妖精たちから目を反らすと、ハーレクインがコケモモの実を浮かばせてきた。
ハーレクイン「エレイン、ほら口をあけて!このコケモモすごくおいしいから!」
エレイン「・・・・もう・・・自分で食べられるわよ・・兄さんはのんきね・・・」
「!、おいしい」
ハーレクイン「だろう?オイラだけが知ってる内緒の場所に生ってるコケモモなのさ・・・!」
エレイン「あのね兄さん・・・・・」
ハーレクイン「ん――――?」
エレイン「私ね、最近何だかすごく不安なの・・・・・」
ハーレクイン「ヘルブラムのことかい?」
エレイン「・・・・うん・・・いつかとり返しのつかないことになったらって・・・・」
(それだけじゃないの、兄さんがここから消えてしまう気がして・・・・・)
「・・・ねぇ、兄・・・」
エレインがハーレクインの方を向いたが、ハーレクインはいなかった。
エレイン「にっ・・・」
ハーレクイン「コケモモ落としちゃった」
ハーレクインは下から浮かんできた。
エレイン「コケ・・・モモ・・・」
ハーレクイン「大丈夫さ。全部オイラが守るから。妖精界もこの森も妖精族も、全部。もちろんエレイン、キミのことも」
エレイン(・・・そうよ、兄さんはこの森の絶対守護者。妖精王ハーレクインなんだもの)
ハーレクイン「あ―――ん」
エレイン「もうっ、また落としちゃうわよ?」
エレイン(ずっとここで守ってくれる。兄さんがいれば大丈夫。そう・・・思っていた)
人間の乗る馬車が道を進んでいた。
御者「どうっ・・・・」
御者がリュートを弾きだした所にヘルブラムが来ていた。
御者「やぁ妖精さん。これはね、リュートって楽器」
ヘルブラム「この前の笛と違って美しくて繊細な音色だねぇ~~~~」
御者「今日は友だちいっぱい連れてきたかい?」
ヘルブラム「うん!」
「みんな―――出てきなよ!」
妖精たち「「「・・・・・・」」」
茂みの中から、大勢の妖精族が出てきた。
妖精たち「「「わぁ――――ッ!!!」」」
妖精たちは御者の持ってきた多くの品物に目を輝かせていた。
妖精「本当に好きなの一つくれるの!?」
御者「ああ、来てくれたお礼だよ!」
妖精たち「どれにしよー!」
「これなんだろー」
妖精「おじさん!これはなーに?」
御者「イヤリングだよ、耳につける飾り」
ヘルブラム「人間は身につける物で身分の違いまでわかるんだぜ!」
妖精たち「ヘルブラムもの知り~!」
「ミブンってなに~?」
ヘルブラム「まあにィ~」
ヘルブラム(俺っちい~こと思いついたっ!)
ハーレクインが森の様子を見ていたが・・・
ハーレクイン「・・・いない・・・」
エレイン「兄さんどうしたの?」
ハーレクイン「エレイン、ヘルブラムのやつ知らないかい?」
エレイン「見てないけど・・・まさかまた人間のとこへ?」
ハーレクイン「・・・・多分・・・」
エレイン「仕方ないわねヘルブラムは-・・・兄さんももっときつく言わなきゃ・・・」
ハーレクイン「・・・・・」
エレイン(兄さん?)
ハーレクイン「ヘルブラムの言うようにさ・・・・人間は妖精にはないものを持っていて、一部の仲間にはそれが魅力的に映ることもあるかもしれない・・・でも・・・人間なんて絶対に信用しちゃいけないんだ。年がら年中平気で騙し合い殺し合ってる・・・同族同士で!そんな種族とわかり合えるわけがない!」
「なぁんてさ!オイラがヤキモキしたって今日もきっと、得意げな顔で帰ってくるんだ、アイツは」
ヘルブラム「い、よーしッ!!俺っちはこの冑に決めた!」
妖精「それ頭に被るのぉ?」
ヘルブラム「そっ!でも、俺っちのじゃない。プレゼントなのさ!親友へのね。ほら、うちの王様、威厳のカケラも無いからさ~~~~、本人も気にしてるらしいのヨ!これでも被ればそれっぽそうじゃないかィ?」
妖精たち「「いいかも~!!!」」
御者「なぁんだ、その親友も連れてくればよかったのに」
ヘルブラム「あ~彼は結構忙しい身でね!残念だけど」
御者「そっか・・・惜しいねぇ~、う~ん・・・来てくれたら金貨もう三枚もうけたのに!」
ヘルブラム「?、きんか?それって・・・」
妖精「ギャアアッ!!」
妖精たちの悲鳴が響いた。
馬車の中から、左目を眼帯で覆い、左手で二人の妖精を掴んだ老剣士、アルドリッチが出てきた。
妖精「くっ・・・いやぁっ!!放してよぉ!!」
「くっ」
妖精たち「「「!?」」」
ヘルブラム(何だ・・・?なんで武器を持った人間が・・・)
御者「だんなぁ!くれぐれも商品だけは傷つけねぇよう頼んますよぉ!金にならなくなっちまう!」
ヘルブラム「!!」
アルドリッチ「案ずるな、羽根は無傷だ」
ヘルブラム「羽根!?金・・・??」
御者「妖精の羽根ってのはよう・・・い~い金になるんだわ。二束三文で商売してるよりずっと」
妖精「たすけてぇぇ!!」
御者「お前さんに出会えて良かった、こんなに大量の金ヅルを連れてきてくれて・・・ありがとなぁ。幸運の妖精さんよ!」
ヘルブラム「騙したのかッ!!」
ヘルブラムが魔力を発動させ、御者の持ってきた品物の中から剣を浮かばせ、アルドリッチに向けた。
アルドリッチ「!」
ヘルブラム「仲間を放せ人間ッ・・・」
「!?」
しかし、ヘルブラムは後ろから御者にリュートで殴られた。
御者「妙な力使いやがって・・・おとなしくしてろっ!」
御者がヘルブラムの頭を踏みつける。
妖精「ヘッ、ヘルブラッ・・エッ!!」
また二人の妖精がアルドリッチに骨が砕けるほど握りしめられ、捕まった。
ヘルブラム(あぁ・・・俺っちの・・・俺っちのせいでみんなが・・・)
妖精たちは次々にアルドリッチによって切り倒され、御者の虫かごに入れられていった。
エレイン(目は欲にまみれ、赤く血走って・・・あれの・・・あの姿のどこに興味を持てばいいの・・・)
そうエレインが言った通りの所行を見させられたヘルブラムの左目は潰れ、残った右目から涙を流していた・・・
ハーレクイン「何・・・だって・・・!?」
老妖精「つっ・・・捕まったのはヘルブラムと一緒に出た連中で・・・相手は西の集落にいた行商が雇ったとみられる眼帯の老戦士とのことっ!」
エレイン(西の集落・・・行商・・・あの笛の・・・!)
ハーレクインが右手をかざすと木の幹に、妖精たちを捕らえたアルドリッチと行商が映った。
妖精たち「!!!」
「仲間が檻に入れられてるぞ!」
「あの檻、魔力が込もってるのか!?」
ハーレクイン「!、くっ・・・」
エレイン「・・・・ヘ・・・」
右目を潰されたヘルブラムも映っていた。
エレイン「ヘル・・・ブラム・・・・!!!」
行商「いひひひっ!!ガラクタをくれてやったら向こうから何度も現れて・・・こっちを信用しきったらあとはもう・・・!
もっと面白いものプレゼントするから友達もたくさん連れといで~ってな。いひはははは!!」
エレイン「なんて・・・なんて卑劣なの・・・」
妖精「ごめんなさいっ私だけ逃げて・・・どうしよううう王さまぁああっ!!」
妖精たち「妖精王、このままでは彼らは―――」
「王!!」
「妖精王!」
「ハーレクイン様!!」
「王ッ!!」
「王様ぁ!!」
エレイン「兄さん・・・」
幹の映像が消えた。
妖精「!!」
ハーレクインがエレインに背を向ける。
エレイン「兄・・・さん・・・?ダメッ!!行かないで!!兄さんはいなくなってはダメ・・・守るって・・・言ったでしょ・・・ねぇ・・・私を一人にしないで・・・!
兄さんなしにどうやって・・・どうやってこの森を守ればいいの・・・」
ハーレクイン「・・・・あいつは親友なんだ・・・エレイン・・少しの間だけ森を頼む!!」
ハーレクインが飛び出していった。
エレイン「兄さん!兄さあああああんんッッ・・・」
そして七百年後。
エレイン「・・・兄さん・・・あれからもう七百年も経つのよ・・・少しの間って一体いつまでなの・・・」
「森に・・・誰か入った・・・人間・・・!」
バン「うははっ!マジかよ~♪間近で見ると樹っつーかもはや壁だな。こりゃ~登りがいがありそーだ♫待ってろよ~‘生命の泉‘、このバンデット・バン様が頂きにあがるぜ~♫」
これは、一人の盗賊の人間と一人の孤独な妖精が出会い、紡いだ運命の七日間の物語
(続く)