高速戦隊ターボレンジャーの第28話

「高速戦隊ターボレンジャーの第28話」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら

高速戦隊ターボレンジャーの第28話 - (2022/01/19 (水) 17:45:23) の1つ前との変更点

追加された行は緑色になります。

削除された行は赤色になります。

木の上で昼寝をしている流れ暴魔ヤミマルこと&ruby(ながれ){流}&ruby(ぼし){星} &ruby(ひかる){光}に、何者かがナイフを投げつけてきた。 木から飛び降り、周囲を見回す流星。その頭上から、ナイフを投げた何者かが舞い降り、流星を押し倒す。 流星が襲撃者の後頭部に反撃の蹴りを見舞う。その勢いを利用して前方回転で距離を置く襲撃者。 流星「何者!?」 襲撃者の正体は、赤・白・金の華美な衣装に身を包んだ少女だった。 流星「女……!?」 少女は何も言わず、流星をじっと見つめている。 流星「男の顔は履歴書。俺の顔に傷つけた奴は、許さないぜ?」 流星がナイフを投げ返す。ナイフは少女の頬をかすめ、その背後の木に突き刺さった。 流星「ふっ、安心しな。女の顔を切るほど、俺は下衆な男じゃないぜ」 少女がナイフを引き抜き、不敵に笑うと、その身が宙に浮く。 目を見開く流星。 少女は宙を舞いながら流星を指さす。 少女「さすがは流星…… いや、流れ暴魔ヤミマル。お前こそ暴魔百族を背負って立つ男」 流星「なんだと?」 少女「そういう宿命になっているのよ」 流星「宿命……」 少女が緑色の粒子光を流星に浴びせる。流星の学ランの背中にある、流れ星の刺繡に吸い込まれていく粒子光── 流星「うあぁっ!!」 流星が目を覚ました。現実の流星は、愛用のバイクと共に深夜の波止場にいる。 すべては夢だったのだ。 流星「夢か…… 妙な夢だったぜ……」 「さすがは流星…… いや、流れ暴魔ヤミマル。お前こそ暴魔百族を背負って立つ男」 夢の中の少女の言葉を思い返しながら、流星が出港するフェリーを見送る。 流星「それが俺の宿命だという…… 感じるぜ、新しい俺の時代の到来を……!」 #center(){|&br()&big(){&big(){&bold(){ロボ合体不能}}}&br()&br()|} ところ変わって、暴魔城── 暴魔大帝ラゴーン「いったいお前たちは、いつになったらターボレンジャーを倒すのだ!?」 これまで度重なる失敗と敗北に、怒り心頭のラゴーンが体から触手を伸ばし、レーダ、ジンバ、ジャーミンを次々と打ち据える。 ジャーミンの腕にできた切り傷から、緑色の血がしたたり落ちる。 ズルテン「恐ろしや……」 ズルテンは柱の陰に逃げ隠れて震えていた。 ジャーミン「ラゴーン様、今度こそ……」 ジンバ「待てジャーミン、拙者が! 今度こそ、このジンバが、必ず!!」 ラゴーン「聞き飽きたわい、その言葉! もはや言葉は要らん、身をもって示せ! ターボレンジャーを倒さぬ限り、生きて戻ってくることは許さん!!」 ラゴーンのあまりの剣幕と最後通告に、恐れおののく幹部たち。 ジンバ「もはや、覚悟の上でござる……」 ジンバが懐から鈴を取り出し、宙に放り投げ、刀で一閃── ジンバ「……ターボレンジャーを真っ二つに」 それだけ言って、ジンバが暴魔城を出ていく。 一方のターボレンジャーは夜間パトロール中。 力のターボブレスに通信が入る。 シーロン「こちら、シーロン!」 力「どうした、シーロン!?」 シーロン「パトロールご苦労様。こちら異常なし!」 力「驚かすなよな~!」 洋平「シーロン、めっ!」 シーロン「いけなかったかな~」 シーロンがてへっと笑って頭を軽くコツンと叩くと、そこから出た光が太宰博士のラジカセに降り注ぎ、ひとりでに大音量で曲を再生する。 太宰博士「うわ~! なんだこりゃ~!!」 卒倒する太宰博士。 パトロールとは言っても、5人でツーリングしているような状態。気楽に車道を流す5人を、真っ赤な火の玉が追い抜く。 力がバランスを崩し転倒、ヘルメットが地面に転がる。 大地「力!」 洋平「大丈夫か、力!?」 急停車して駆け寄り、力を抱き起こす4人。そこに火の玉の正体、ジンバが現れる。 力「ジンバっ!」 ジンバ「暗闇魔神剣、二刀流!!」 腰の刀を抜いて構えるジンバ。 力「行くぞ!」 大地、洋平、俊介、はるな「おう!!」 5人「&bold(){ターボレンジャー!!}」 5人もターボレンジャーに変身。 ジンバ「命、いただく!!」 後に退けなくなったジンバの壮絶な攻撃がターボレンジャーを襲う。 ジンバが2本の暗闇魔神剣に炎を纏わせ、投げつけると、剣が巨大な炎の刃となって宙を飛び回り、ターボレンジャーを次々に切り裂いていく。 レッドターボ「いつものジンバとは違う!」 ジンバ「くたばれ、ターボレンジャー!!」 その時、青い流星が天から舞い降り、ターボレンジャーとジンバの間に割って入った。 ジンバ「何者っ!?」 現れたのは、流れ暴魔ヤミマル。 ヤミマル「ターボレンジャーを倒すのは流れ暴魔ヤミマル」 ジンバ「ヤミマル、これは拙者の獲物でござる!」 ヤミマル「バカめ。先に仕留めた方が勝ちよ!!」 言うが早いが、ヤミマルがターボレンジャーに切りかかってゆく。 ジンバも暗闇魔神剣を手に向かってきた。 ジンバ「どけぇ、ヤミマルぅぅ!!」 ヤミマル「むっ!?」 ジンバ「死ねぇぇっ!!」 ジンバが暗闇魔神剣を振り下ろした瞬間、ヤミマルの体からあの緑の粒子光があふれ出し、ジンバとターボレンジャーを吹き飛ばした。 ターボレンジャーのスーツから色が失われて真っ白になる。 そして太宰研究所でも、シーロンがいつも持っているステッキを落とし、苦痛にあえいでいた。 太宰博士「シーロンっ!!」 暴魔城── ラゴーン「なぜ、あの光がヤミマルごときに出たのか……」 瞑目していたラゴーンがカッと目を見開く。 ラゴーン「……ということは! ヤミマルこそが……!!」 三つ巴の戦いは痛み分けに終わった。 戦いを終えた流星は再び、夢の中の少女を思い返していた。 流星「今の光は……! 夢の中の光と同じものが現実になろうとは。しかも俺を助けてくれた。やはりあれはただの夢ではなかった…… 何かわからぬ巨大な力が、確かにこの俺に働きかけているのだ」 「お前こそ暴魔百族を背負って立つ男」 少女の言葉を噛みしめながら、流星が天を睨む。 一夜明けて、太宰研究所。 傷ついた5人は点滴を打ちつつ、ベッドや回復カプセルで体を休めていた。 はるな「博士、いったいあの光はなんだったんですか?」 太宰博士「『悪魔のオーラ』……」 俊介「悪魔のオーラ!?」 太宰博士「妖精のパワーを一瞬にして打ち消してしまう、恐ろしい光だ」 洋平「そうか…… それでシーロンも倒れたのか」 ドールハウスの中のシーロンは今だ苦しんでいる。 大地「シーロン……」 洋平「かわいそうに、シーロン……」 力「俺たちのパワーの基は、この世にたった1人生き残った、妖精シーロンの魂だった」 太宰博士「あの悪魔のオーラを浴びた時、パワーも消えてしまったんだ」 大地「流星め…… いったいどこでそんな力を身に着けたのか!」 大地が悔しそうにベッドのパイプを叩く。 俊介「これから俺たち、どう戦えばいいんだよ……」 その時、何者かの攻撃で回復カプセルが爆発し、中にいたはるなが転げ出た。 はるな「きゃああ──っ!!」 力、大地、洋平、俊介「はるな!!」「はるなっ!!」 直後、ノイズが走る研究所のモニターから、ジンバの声が響く。 ジンバ「ターボレンジャー!! 今度という今度こそ貴様らを倒す、出てこいっ!! さもなくば……」 モニターにジンバの姿が映る。 ジンバは2本の暗闇魔神剣を十字に組み合わせ、モニター越しに炎を放ってきた。 爆発炎上する研究所の内装。 洋平「なんて奴だ!! モニターを通して攻撃してくるなんて!!」 そしてモニターも爆発── 力「おのれ、ジンバぁ!!」 ジンバと戦いに行こうとする力を太宰博士が引き留める。 太宰博士「待て!! 君たちは悪魔のオーラを浴びた、変身もできないんだぞ!?」 力「博士! 俺たちはこれまで、妖精の力に頼りすぎていたんです! でも今、自分の力で戦う時が来たんです……」 太宰博士を振り切って研究所を飛び出す力。大地たちも次々とそれに続く。 1人残された太宰博士は、床に転がったキャップとジャケットを見据える。 太宰博士「もうここもダメか…… 急がねば!」 町はずれの森で、力たちとジンバが再び相対した。 身構える5人。 ジンバ「来たな、ターボレンジャー。バカめ、変身もできないのに勝てると思っているのか」 ジンバが口から火炎弾を連射。それをまともに喰らい、5人が吹き飛ばされる。 俊介「イエローターボ!!」 俊介がターボブレスのスイッチを押すが、やはり無反応。 俊介「ああっ、やっぱりダメか!」 力「焦るな!! 必ず、俺たち自身の力で変身できる……! &bold(){ジンバぁ──っ!!}」 力がジンバに立ち向かっていくが、軽くいなされ、水たまりに叩きつけられる。 意を決した4人も次々と挑むものの、全く歯が立たない。 ジンバ「とどめだぁ!!」 ジンバが暗闇魔神剣で4人を一気に袈裟切りに。 傷つき、倒れ伏した4人にジンバが迫る── 力「&bold(){やめろ──っ!!}」 大地、洋平、俊介、はるな「&bold(){力──っ!!}」 それをかばって立ちふさがった力に、暗闇魔神剣が振り下ろされた! 一瞬の静寂── ジンバ「のぉっ……!?」 力の両肩に食い込んだかと思われた暗闇魔神剣の刀身は、寸でのところでレッドターボに変身できた力の手に受け止められていた。 ジンバ「レッドターボ……!!」 大地「レッド!」 はるな「変身できたわ!」 俊介「ああ……」 大地「やればできるんだ!」 レッドターボ「でやぁーっ!!」 レッドがジンバを殴り飛ばす。 ジンバ「おのれレッドターボ、勝負っ!!」 レッドとジンバ、二刀流同士の戦いが始まった。 昨夜ジンバが繰り出した、暗闇魔神剣に炎を纏わせて投げつける攻撃を紙一重でかわし、一太刀浴びせるレッド。 大地「やったぞ!」 しかし、炎の刃となった暗闇魔神剣は宙を飛び回り、背後からレッドに突き刺さった。 倒れるレッド。 レッドターボ「ぐあぁーっ!!」 大地、洋平、俊介、はるな「レッドーっ!!」 ジンバ「暗闇魔神剣を侮ったからだ。レッド、共に地獄へ落ちろ!!」 大地「危ない!!」 レッドにとどめを刺そうとするジンバに、今度は大地たちが立ちはだかる。 そして暗闇魔神剣を受け止めた4人の体がまばゆく輝き、ジンバを吹き飛ばし── ジンバ「おのれぇぇっ!!」 ブルーターボ「あっ……! みんな、変身できたぞ!!」 再び立ち上がったジンバが暗闇魔神剣を振りかざして迫り来る。 レッドターボ「行くぞぉっ!!」 レッドがGTソードでジンバの胴を切りつけ、続けざまに必殺技を繰り出す。 レッドターボ「&big(){&bold(){GTクラッシュ!!}}」 ブラック、ブルー、イエロー、ピンク「ターボレーザー!!」 4人もレッドを援護し、ジンバに反撃の隙を与えない。 体から次々と爆発を起こしながらも、執念でレッドを斬ろうと暗闇魔神剣を振りかぶるジンバだったが── ジンバ「……無念……!!」 ついにジンバが爆死を遂げた。 暴魔城では幹部たちが驚きに目を見張る。 レーダ「ジンバ……」 ラゴーン「おのれ!」 ジャーミン「さらば…… ジンバよ……」 ジャーミンの手には、ジンバが出陣の時に切り捨てた鈴が握られている。 その時、戦場にヤミマルが姿を現した。 ヤミマル「この時を待っていたのだ。やれ、ヤミクモ!」 ヤミマルの左肩に現れた使い魔・ヤミクモが暴魔再生巨大化光線を照射。 ジンバが巨大な姿となって蘇生される。 ヤミマル「行け! ジンバ!!」 巨大ジンバは物言わぬ操り人形と化していた。 ヤミマルの命ずるまま、ターボレンジャーに迫る巨大ジンバ。 レッドターボ「ターボロボ!」 太宰研究所からターボロボが出撃。 巨大ジンバは口から火炎弾を連続発射するが、全弾回避され、暗闇魔神剣を抜いて立ち向かう。 ターボロボの高速剣と巨大ジンバの暗闇魔神剣が真っ向から激突する。互いの力量は全くの互角。 レッドターボ「ターボカノン!!」 光線銃・ターボガンの連射で巨大ジンバを攻撃するターボロボ。爆炎の中を突っ切って巨大ジンバが迫る。 ジャンプの勢いをつけた急降下斬りで胸を切り裂かれ、続けざまに衝撃波を浴びせられてターボロボが高速剣を取り落とす。 地面に突き刺さる高速剣。 レッドターボ「しまった!!」 ヤミマル「今だ、ジンバ!!」 巨大ジンバが口から投網光線を発射。直撃を受け、ターボロボのコクピットの計器類が次々と狂い始める。 イエローターボ「合体システムに異常が!!」 レッドターボ「何っ!?」 「EMERGENCY」のレッテルが貼られた赤ランプが激しく点滅している。 スパークを放ち、壊れ始めるターボロボ。 レッドターボ「コクピットが危ない。自分のマシンへ急ぐんだ」 巨大ジンバの攻撃はなおも続く。急いでターボロボを5台のターボマシンに分離させ、撤退しようとするターボレンジャーだが、各々のターボマシン自体のダメージが深刻で思うように動かない。 中でもブラックターボの乗るターボトラックが特に重篤なダメージを負っており、車体から黒い煙を噴いていた。 レッドターボ「ブラック、どうした!!」 ターボトラックは思うように走れない。 ヤミマル「見たか、流れ暴魔ヤミマルの力! ジンバが倒したのではないぞ。ジンバの体を借りて、このヤミマルがターボロボを倒したのだ!!」 暴魔城── ラゴーン「奴が!?」 レーダ「ターボロボを!?」 ズルテン「な、なんと!!」 ターボトラックはとうとう完全に動かなくなってしまった。 コクピットからも煙が噴き出している。 ブラックターボ「やられた! 操縦不能!!」 ヤミマル「とどめを刺せ!」 巨大ジンバがゆっくりとターボトラックに歩み寄る。 ブラックターボ「あっ…… やられてたまるものか!」 巨大ジンバの投網光線で爆炎に包まれるターボトラック。 そのコクピットからブラックが投げ出され、地面に墜落すると同時に変身が解ける── 力、洋平、俊介、はるな「大地!!」「大地ーっ!!」 4人が大地に駆け寄る。 大地は気絶している。 力「しっかりしろ、大地!!」 力に揺さぶられて大地が目を覚ます。 大地「俺の…… &bold(){俺のターボトラックが!!}」 再びターボトラックに乗り込もうとする大地の叫び声に巨大ジンバが気づいた。 力「ジンバが来る!!」 洋平「危ない!」 はるな「危なーい!」 力「早く降ろすんだ!」 力たちがタラップをよじ登る大地を懸命に引き留め、無理やりターボトラックから引き離す。 逃げる5人に追い打ちをかける巨大ジンバ。吹き飛ばされる5人。 もはやこれまでかと思われた、その時──突如として地面が揺れ、強風が巻き起こった! 巨大ジンバが体勢を崩し、倒れる。 あっけにとられる5人の前に、地面を割って巨大な“何か”が姿を現す。 洋平「なんだ、あれは……!」 力「今度は何が出てきやがったんだ!?」 立ち込める砂煙が晴れた時、そこにあったのはいくつもの砲門を持つ巨大な要塞だった。 要塞の全砲門から放たれる光線を一身に浴びて、さしもの巨大ジンバもなすすべがない。 巨大ジンバは投網光線で反撃するが、要塞は無傷のまま、立ち上がるかのように変形を遂げる。 大地「どうなってるんだ!?」 要塞からの砲撃はなおも続く。巨大ジンバは剣を抜く暇すら与えられぬまま粉々に吹き飛ばされた。 暴魔百族の幹部・暗闇暴魔ジンバは完全に最期を遂げた。 ヤミマル「何者!?」 ズルテン「いったいあれはなんだってんだ!? なんだ、あれは!?」 慌てふためく暴魔幹部たち。 ラゴーンは何も言わず、謎の要塞を睨んでいる。 そして、力たちも──。 #center(){|CENTER:&br()果たして、この巨城の正体は何か!?&br()&br()危ういところを助かった&br()ターボレンジャーだが、果たして&br()ターボロボは、復活できるのであろうか!?&br()&br()|} #center(){|BGCOLOR(#000006):COLOR(white):CENTER:&br()&big(){&big(){&bold(){つづく}}}&br()&br()|} ※ この続きは[[高速戦隊ターボレンジャーの第29話]]をご覧ください。
木の上で昼寝をしている流れ暴魔ヤミマルこと&ruby(ながれ){流}&ruby(ぼし){星} &ruby(ひかる){光}に、何者かがナイフを投げつけてきた。 木から飛び降り、周囲を見回す流星。その頭上から、ナイフを投げた何者かが舞い降り、流星を押し倒す。 流星が襲撃者の後頭部に反撃の蹴りを見舞う。その勢いを利用して前方回転で距離を置く襲撃者。 流星「何者!?」 襲撃者の正体は、赤・白・金の華美な衣装に身を包んだ少女だった。 流星「女……!?」 少女は何も言わず、流星をじっと見つめている。 流星「男の顔は履歴書。俺の顔に傷つけた奴は、許さないぜ?」 流星がナイフを投げ返す。ナイフは少女の頬をかすめ、その背後の木に突き刺さった。 流星「ふっ、安心しな。女の顔を切るほど、俺は下衆な男じゃないぜ」 少女がナイフを引き抜き、不敵に笑うと、その身が宙に浮く。 目を見開く流星。 少女は宙を舞いながら流星を指さす。 少女「さすがは流星…… いや、流れ暴魔ヤミマル。お前こそ暴魔百族を背負って立つ男」 流星「なんだと?」 少女「そういう宿命になっているのよ」 流星「宿命……」 少女が緑色の粒子光を流星に浴びせる。流星の学ランの背中にある、流れ星の刺繡に吸い込まれていく粒子光── 流星「うあぁっ!!」 流星が目を覚ました。現実の流星は、愛用のバイクと共に深夜の波止場にいる。 すべては夢だったのだ。 流星「夢か…… 妙な夢だったぜ……」 「さすがは流星…… いや、流れ暴魔ヤミマル。お前こそ暴魔百族を背負って立つ男」 夢の中の少女の言葉を思い返しながら、流星が出港するフェリーを見送る。 流星「それが俺の宿命だという…… 感じるぜ、新しい俺の時代の到来を……!」 #center(){|&br()&big(){&big(){&bold(){ロボ合体不能}}}&br()&br()|} ところ変わって、暴魔城── 暴魔大帝ラゴーン「いったいお前たちは、いつになったらターボレンジャーを倒すのだ!?」 これまで度重なる失敗と敗北に、怒り心頭のラゴーンが体から触手を伸ばし、レーダ、ジンバ、ジャーミンを次々と打ち据える。 ジャーミンの腕にできた切り傷から、緑色の血がしたたり落ちる。 ズルテン「恐ろしや……」 ズルテンは柱の陰に逃げ隠れて震えていた。 ジャーミン「ラゴーン様、今度こそ……」 ジンバ「待てジャーミン、拙者が! 今度こそ、このジンバが、必ず!!」 ラゴーン「聞き飽きたわい、その言葉! もはや言葉は要らん、身をもって示せ! ターボレンジャーを倒さぬ限り、生きて戻ってくることは許さん!!」 ラゴーンのあまりの剣幕と最後通告に、恐れおののく幹部たち。 ジンバ「もはや、覚悟の上でござる……」 ジンバが懐から鈴を取り出し、宙に放り投げ、刀で一閃── ジンバ「……ターボレンジャーを真っ二つに」 それだけ言って、ジンバが暴魔城を出ていく。 一方のターボレンジャーは夜間パトロール中。 力のターボブレスに通信が入る。 シーロン「こちら、シーロン!」 力「どうした、シーロン!?」 シーロン「パトロールご苦労様。こちら異常なし!」 力「驚かすなよな~!」 洋平「シーロン、めっ!」 シーロン「いけなかったかな~」 シーロンがてへっと笑って頭を軽くコツンと叩くと、そこから出た光が太宰博士のラジカセに降り注ぎ、ひとりでに大音量で曲を再生する。 太宰博士「うわ~! なんだこりゃ~!!」 卒倒する太宰博士。 パトロールとは言っても、5人でツーリングしているような状態。気楽に車道を流す5人を、真っ赤な火の玉が追い抜く。 力がバランスを崩し転倒、ヘルメットが地面に転がる。 大地「力!」 洋平「大丈夫か、力!?」 急停車して駆け寄り、力を抱き起こす4人。そこに火の玉の正体、ジンバが現れる。 力「ジンバっ!」 ジンバ「暗闇魔神剣、二刀流!!」 腰の刀を抜いて構えるジンバ。 力「行くぞ!」 大地、洋平、俊介、はるな「おう!!」 5人「&bold(){ターボレンジャー!!}」 5人もターボレンジャーに変身。 ジンバ「命、いただく!!」 後に退けなくなったジンバの壮絶な攻撃がターボレンジャーを襲う。 ジンバが2本の暗闇魔神剣に炎を纏わせ、投げつけると、剣が巨大な炎の刃となって宙を飛び回り、ターボレンジャーを次々に切り裂いていく。 レッドターボ「いつものジンバとは違う!」 ジンバ「くたばれ、ターボレンジャー!!」 その時、青い流星が天から舞い降り、ターボレンジャーとジンバの間に割って入った。 ジンバ「何者っ!?」 現れたのは、流れ暴魔ヤミマル。 ヤミマル「ターボレンジャーを倒すのは流れ暴魔ヤミマル」 ジンバ「ヤミマル、これは拙者の獲物でござる!」 ヤミマル「バカめ。先に仕留めた方が勝ちよ!!」 言うが早いが、ヤミマルがターボレンジャーに切りかかってゆく。 ジンバも暗闇魔神剣を手に向かってきた。 ジンバ「どけぇ、ヤミマルぅぅ!!」 ヤミマル「むっ!?」 ジンバ「死ねぇぇっ!!」 ジンバが暗闇魔神剣を振り下ろした瞬間、ヤミマルの体からあの緑の粒子光があふれ出し、ジンバとターボレンジャーを吹き飛ばした。 ターボレンジャーのスーツから色が失われて真っ白になる。 そして太宰研究所でも、シーロンがいつも持っているステッキを落とし、苦痛にあえいでいた。 太宰博士「シーロンっ!!」 暴魔城── ラゴーン「なぜ、あの光がヤミマルごときに出たのか……」 瞑目していたラゴーンがカッと目を見開く。 ラゴーン「……ということは! ヤミマルこそが……!!」 三つ巴の戦いは痛み分けに終わった。 戦いを終えた流星は再び、夢の中の少女を思い返していた。 流星「今の光は……! 夢の中の光と同じものが現実になろうとは。しかも俺を助けてくれた。やはりあれはただの夢ではなかった…… 何かわからぬ巨大な力が、確かにこの俺に働きかけているのだ」 「お前こそ暴魔百族を背負って立つ男」 少女の言葉を噛みしめながら、流星が天を睨む。 一夜明けて、太宰研究所。 傷ついた5人は点滴を打ちつつ、ベッドや回復カプセルで体を休めていた。 はるな「博士、いったいあの光はなんだったんですか?」 太宰博士「『悪魔のオーラ』……」 俊介「悪魔のオーラ!?」 太宰博士「妖精のパワーを一瞬にして打ち消してしまう、恐ろしい光だ」 洋平「そうか…… それでシーロンも倒れたのか」 ドールハウスの中のシーロンは今だ苦しんでいる。 大地「シーロン……」 洋平「かわいそうに、シーロン……」 力「俺たちのパワーの基は、この世にたった1人生き残った、妖精シーロンの魂だった」 太宰博士「あの悪魔のオーラを浴びた時、パワーも消えてしまったんだ」 大地「流星め…… いったいどこでそんな力を身に着けたのか!」 大地が悔しそうにベッドのパイプを叩く。 俊介「これから俺たち、どう戦えばいいんだよ……」 その時、何者かの攻撃で回復カプセルが爆発し、中にいたはるなが転げ出た。 はるな「きゃああ──っ!!」 力、大地、洋平、俊介「はるな!!」「はるなっ!!」 直後、ノイズが走る研究所のモニターから、ジンバの声が響く。 ジンバ「ターボレンジャー!! 今度という今度こそ貴様らを倒す、出てこいっ!! さもなくば……」 モニターにジンバの姿が映る。 ジンバは2本の暗闇魔神剣を十字に組み合わせ、モニター越しに炎を放ってきた。 爆発炎上する研究所の内装。 洋平「なんて奴だ!! モニターを通して攻撃してくるなんて!!」 そしてモニターも爆発── 力「おのれ、ジンバぁ!!」 ジンバと戦いに行こうとする力を太宰博士が引き留める。 太宰博士「待て!! 君たちは悪魔のオーラを浴びた、変身もできないんだぞ!?」 力「博士! 俺たちはこれまで、妖精の力に頼りすぎていたんです! でも今、自分の力で戦う時が来たんです……」 太宰博士を振り切って研究所を飛び出す力。大地たちも次々とそれに続く。 1人残された太宰博士は、床に転がったキャップとジャケットを見据える。 太宰博士「もうここもダメか…… 急がねば!」 町はずれの森で、力たちとジンバが再び相対した。 身構える5人。 ジンバ「来たな、ターボレンジャー。バカめ、変身もできないのに勝てると思っているのか」 ジンバが口から火炎弾を連射。それをまともに喰らい、5人が吹き飛ばされる。 俊介「イエローターボ!!」 俊介がターボブレスのスイッチを押すが、やはり無反応。 俊介「ああっ、やっぱりダメか!」 力「焦るな!! 必ず、俺たち自身の力で変身できる……! &bold(){ジンバぁ──っ!!}」 力がジンバに立ち向かっていくが、軽くいなされ、水たまりに叩きつけられる。 意を決した4人も次々と挑むものの、全く歯が立たない。 ジンバ「とどめだぁ!!」 ジンバが暗闇魔神剣で4人を一気に袈裟切りに。 傷つき、倒れ伏した4人にジンバが迫る── 力「&bold(){やめろ──っ!!}」 大地、洋平、俊介、はるな「&bold(){力──っ!!}」 それをかばって立ちふさがった力に、暗闇魔神剣が振り下ろされた! 一瞬の静寂── ジンバ「のぉっ……!?」 力の両肩に食い込んだかと思われた暗闇魔神剣の刀身は、寸でのところでレッドターボに変身できた力の手に受け止められていた。 ジンバ「レッドターボ……!!」 大地「レッド!」 はるな「変身できたわ!」 俊介「ああ……」 大地「やればできるんだ!」 レッドターボ「でやぁーっ!!」 レッドがジンバを殴り飛ばす。 ジンバ「おのれレッドターボ、勝負っ!!」 レッドとジンバ、二刀流同士の戦いが始まった。 昨夜ジンバが繰り出した、暗闇魔神剣に炎を纏わせて投げつける攻撃を紙一重でかわし、一太刀浴びせるレッド。 大地「やったぞ!」 しかし、炎の刃となった暗闇魔神剣は宙を飛び回り、背後からレッドに突き刺さった。 倒れるレッド。 レッドターボ「ぐあぁーっ!!」 大地、洋平、俊介、はるな「レッドーっ!!」 ジンバ「暗闇魔神剣を侮ったからだ。レッド、共に地獄へ落ちろ!!」 大地「危ない!!」 レッドにとどめを刺そうとするジンバに、今度は大地たちが立ちはだかる。 そして暗闇魔神剣を受け止めた4人の体がまばゆく輝き、ジンバを吹き飛ばし── ジンバ「おのれぇぇっ!!」 ブルーターボ「あっ……! みんな、変身できたぞ!!」 再び立ち上がったジンバが暗闇魔神剣を振りかざして迫り来る。 レッドターボ「行くぞぉっ!!」 レッドがGTソードでジンバの胴を切りつけ、続けざまに必殺技を繰り出す。 レッドターボ「&big(){&bold(){GTクラッシュ!!}}」 ブラック、ブルー、イエロー、ピンク「ターボレーザー!!」 4人もレッドを援護し、ジンバに反撃の隙を与えない。 体から次々と爆発を起こしながらも、執念でレッドを斬ろうと暗闇魔神剣を振りかぶるジンバだったが── ジンバ「……無念……!!」 ついにジンバが爆死を遂げた。 暴魔城では幹部たちが驚きに目を見張る。 レーダ「ジンバ……」 ラゴーン「おのれ!」 ジャーミン「さらば…… ジンバよ……」 ジャーミンの手には、ジンバが出陣の時に切り捨てた鈴が握られている。 その時、戦場にヤミマルが姿を現した。 ヤミマル「この時を待っていたのだ。やれ、ヤミクモ!」 ヤミマルの左肩に現れた使い魔・ヤミクモが暴魔再生巨大化光線を照射。 ジンバが巨大な姿となって蘇生される。 ヤミマル「行け! ジンバ!!」 巨大ジンバは物言わぬ操り人形と化していた。 ヤミマルの命ずるまま、ターボレンジャーに迫る巨大ジンバ。 レッドターボ「ターボロボ!」 太宰研究所からターボロボが出撃。 巨大ジンバは口から火炎弾を連続発射するが、全弾回避され、暗闇魔神剣を抜いて立ち向かう。 ターボロボの高速剣と巨大ジンバの暗闇魔神剣が真っ向から激突する。互いの力量は全くの互角。 レッドターボ「ターボカノン!!」 光線銃・ターボガンの連射で巨大ジンバを攻撃するターボロボ。爆炎の中を突っ切って巨大ジンバが迫る。 ジャンプの勢いをつけた急降下斬りで胸を切り裂かれ、続けざまに衝撃波を浴びせられてターボロボが高速剣を取り落とす。 地面に突き刺さる高速剣。 レッドターボ「しまった!!」 ヤミマル「今だ、ジンバ!!」 巨大ジンバが口から投網光線を発射。直撃を受け、ターボロボのコクピットの計器類が次々と狂い始める。 イエローターボ「合体システムに異常が!!」 レッドターボ「何っ!?」 「EMERGENCY」のレッテルが貼られた赤ランプが激しく点滅している。 スパークを放ち、壊れ始めるターボロボ。 レッドターボ「コクピットが危ない。自分のマシンへ急ぐんだ」 巨大ジンバの攻撃はなおも続く。急いでターボロボを5台のターボマシンに分離させ、撤退しようとするターボレンジャーだが、各々のターボマシン自体のダメージが深刻で思うように動かない。 中でもブラックターボの乗るターボトラックが特に重篤なダメージを負っており、車体から黒い煙を噴いていた。 レッドターボ「ブラック、どうした!!」 ターボトラックは思うように走れない。 ヤミマル「見たか、流れ暴魔ヤミマルの力! ジンバが倒したのではないぞ。ジンバの体を借りて、このヤミマルがターボロボを倒したのだ!!」 暴魔城── ラゴーン「奴が!?」 レーダ「ターボロボを!?」 ズルテン「な、なんと!!」 ターボトラックはとうとう完全に動かなくなってしまった。 コクピットからも煙が噴き出している。 ブラックターボ「やられた! 操縦不能!!」 ヤミマル「とどめを刺せ!」 巨大ジンバがゆっくりとターボトラックに歩み寄る。 ブラックターボ「あっ…… やられてたまるものか!」 巨大ジンバの投網光線で爆炎に包まれるターボトラック。 そのコクピットからブラックが投げ出され、地面に墜落すると同時に変身が解ける── 力、洋平、俊介、はるな「大地!!」「大地ーっ!!」 4人が大地に駆け寄る。 大地は気絶している。 力「しっかりしろ、大地!!」 力に揺さぶられて大地が目を覚ます。 大地「俺の…… &bold(){俺のターボトラックが!!}」 再びターボトラックに乗り込もうとする大地の叫び声に巨大ジンバが気づいた。 力「ジンバが来る!!」 洋平「危ない!」 はるな「危なーい!」 力「早く降ろすんだ!」 力たちがタラップをよじ登る大地を懸命に引き留め、無理やりターボトラックから引き離す。 逃げる5人に追い打ちをかける巨大ジンバ。吹き飛ばされる5人。 もはやこれまでかと思われた、その時──突如として地面が揺れ、強風が巻き起こった! 巨大ジンバが体勢を崩し、倒れる。 あっけにとられる5人の前に、地面を割って巨大な“何か”が姿を現す。 洋平「なんだ、あれは……!」 力「今度は何が出てきやがったんだ!?」 立ち込める砂煙が晴れた時、そこにあったのはいくつもの砲門を持つ巨大な要塞だった。 要塞の全砲門から放たれる光線を一身に浴びて、さしもの巨大ジンバもなすすべがない。 巨大ジンバは投網光線で反撃するが、要塞は無傷のまま、立ち上がるかのように変形を遂げる。 大地「どうなってるんだ!?」 要塞からの砲撃はなおも続く。巨大ジンバは剣を抜く暇すら与えられぬまま粉々に吹き飛ばされた。 暴魔百族の幹部・暗闇暴魔ジンバはついに最期を遂げた。 ヤミマル「何者!?」 ズルテン「いったいあれはなんだってんだ!? なんだ、あれは!?」 慌てふためく暴魔幹部たち。 ラゴーンは何も言わず、謎の要塞を睨んでいる。 そして、力たちも──。 #center(){|CENTER:&br()果たして、この巨城の正体は何か!?&br()&br()危ういところを助かった&br()ターボレンジャーだが、果たして&br()ターボロボは、復活できるのであろうか!?&br()&br()|} #center(){|BGCOLOR(#000006):COLOR(white):CENTER:&br()&big(){&big(){&bold(){つづく}}}&br()&br()|} ※ この続きは[[高速戦隊ターボレンジャーの第29話]]をご覧ください。

表示オプション

横に並べて表示:
変化行の前後のみ表示: