#center(){|&big(){&bold(){第1章 のら犬イチの国・・・}}|} とある研究所の中、犬と人間をかけ合わせた様な姿をした種族の老人がいた。 老人「長かった・・・・。このタイムマシンが完成する日まで。いよいよ出発のときじゃ!」 老人が乗り込んだタイムマシンは時空間の中に飛び込んだ。 老人「これでやっと会いに行けるのだ。あの人に・・・」 老人は、ひらがなの「の」の字を崩した様な文字が書かれた玉を首にかけていた。 しかし、タイムマシンが大きく振動しだした。 老人「な、なんだ!?トラブルか?いったいこれはなんだ!?目的地はまだはるか先だというのに」 「ウッ!!ウワ~ッ」 老人が若返っていく。 そして、タイムマシンが光に包まれ――― 山中に墜落したタイムマシンに、あの老人と同じように犬や猫と人間をかけ合わせた様な姿をした種族の男女が近寄って来た。 男「ウム?事故らしい・・・」 女「これはなんの乗り物かしら?」 男「操縦士がいるのでは?」 女「助けないと!!」 「まあ!!な・・・、なぜ、こんな赤ん坊が!?」 タイムマシンの中に居たのは、あの玉を首にかけた赤ん坊だった。 現代。 野球場でジャイアンとスネオがのび太にノックをしていた。 それを一匹の野良犬が見ていた。 ジャイアン「のび太!!今度エラーしやがったらしょうちしねえかんな!!」 のび太「わ、わかったよ・・・」 ジャイアン「行くぞ―――――っ!」 のび太「わ、わ。オーライ、オーライ」 ボールはのび太の後ろの茂みに落ちた。 スネ夫「またやった・・・さっきのが最後のボールだよ」 ジャイアン「ウヌ~~~~今日はもう終わりだ!」 「のび太はなくしたボールを探せ!!見つけるまで試合には出さねえからな!」 のび太「エ――――ッ、そんな!!」 のび太「たしかこの辺に落ちたと思うんだけど・・・・」 野良犬「ワン」 のび太「わ~~~~~!なんだ、子犬かあ。おどかすなよ!」 野良犬がのび太の服を引っ張る。 のび太「わっ、はなせよ!ぼくは今遊んでいるひまないんだよ」 野良犬「ワン」 野良犬がボールを見つけていた。 のび太「ああ!ボールだ。でかした!わっ!」 のび太が石に躓いて転び、その拍子にボールが川に落ちた。 のび太「しまった、落としちゃった」 野良犬「クウン・・・・・」 野良犬が川に飛び込んだ。 のび太「あっ!ボールを取ってくれるんだね。もうすこし、がんばれがんばれ!」 「・・・・・・・」 野良犬は溺れだした。 野良犬「え~~~~~~~!?犬なのに泳げないの!?助けたくてもぼくも泳げないし・・・・でも、みんな帰っちゃたし・・・・」 野良犬が沈んだ。 のび太「ワ~~~~!!もう、グズグズしてられない!!えいっ!!」 のび太が川に飛び込んで、野良犬を掴まえた。 のび太「うっ!息がつづかない・・・おぼれる~~~~!!・・・・ん!?」 のび太と野良犬は川から出た。 のび太「はあ。はあ。はあ。足が届くところでよかったね」 野良犬「ワン」 野良犬はボールをくわえていた。 のび太「あー、ボール取れたのか!わ~~~~い、ありがとう!!」 野良犬「ワンワン」 空き地。女性が3匹の子猫を入れたダンボールを置いていった。 女性「ごめんね・・・」 子猫「ミャ~~~ミャ~~~ミャ~~~!」 女性の乗る車とのび太がすれ違った。 のび太「はあはあ。もう!」 のび太の後ろにはあの野良犬がついてきていた。 のび太「だからついてきちゃだめだって。うちにはこわ~いママがいて・・・・」 ドラえもん「のび太!!」 のび太「なんだ、ドラえもんかあ。びっくりさせないでよ!!」 ドラえもん「そんなびっくりするようなこと言ってないぞ」 野良犬「ワン!」 ドラえもん「ははあ、また拾ってきたな・・・・」 のび太「しようがないじゃない!ついてきちゃったんだもの・・・・」 ドラえもん「ペットなんて、ママのお許しが出るわけないだろ」 のび太「で、でもほっとくのもかわいそうだろ!なんとかならないかなあ?」 ドラえもん「しようがないなあ。とにかく家の中へ・・・・」 「よし、パパとママはテレビに夢中だ。今のうちだ」 キャスター「今回発見された遺跡は、人類が誕生するはるか前にかなりの文明を持っていたらしく・・・、歴史的大発見として注目を集めています」 ドラえもん「なんとか連れてこられたけど・・・いつまでママにかくれて飼えるやら・・・・・」 のび太「なんとかママに見つからないようにできない?」 ドラえもん「このままじゃ見つかるのも時間の問題だ。「かべかけ犬小屋」を使おう。この辺でいいや」 ドラえもんが犬小屋の書かれたポスターを壁に貼り付けた。 ドラえもん「さ、ここがきみの家だよ、入ってごらん」 野良犬「ワン♪」 ドラえもん「ほら、見かけはポスターだよ」 のび太「うれしいかい?」イヌ」 野良犬「ワン」 ドラえもん「イヌっていうのはおかしいよ。名まえをつけなきゃ」 のび太「名まえかあ・・・・」 野良犬「ワンワン」 のび太「そうだ、ワンといえば英語で1のことじゃないか。名まえはイチにしよう。今日からきみはイチだ」 ドラえもん「イチか。いいんじゃない。ちょっと安直だけど」 イチ「ワンワン」 野良犬改めイチがのび太に飛びついた。 のび太「ほら、気に入ってる」 魚屋「さあ、今日はもう店じまいだ」 魚屋、魚政に空き地に捨てられた子猫の一匹が近寄ってきた。 野良猫「ミイ」 魚屋「あれ?おまえ、こないだのどろぼー猫じゃねえか。シッシッ!おまえにやる魚なんてねえよ!!あっち行きな!!」 魚屋に追い払われた野良猫は車に轢かれかけた。 野良猫「フギャー」 運転手「ばか猫、気をつけろ!」 翌日、しずかがのび太の家に来た。 しずか「へえ。イチちゃんっていうの」 のび太「とってもかわいい子犬だよ」 しずか「まあ、かわいいワンちゃん」 イチ「ワン」 イチ「ワンワン!」 のび太「ちょっと待ってろ、イチ。宿題かたづけたら、遊んでやるよ」 イチ「ワンワン!」 イチは押し入れの奥の箱を倒してしまった。 のび太「あ、こら!じっとしてなさい、イチ!」 イチ「ワンワン」 イチはけん玉をくわえていた。 のび太「あ~~~、これはまちがいない!!おばあちゃんがくれたケン玉だ!!なつかしいなあ」 ドラえもん「あ、玉に名まえが書いてある。のび・・・・・犬・・・・?」 のび太「幼稚園のころ、ぼくが書いたんだ」 ドラえもん「「太」と「犬」をまちがえたか、きみらしい・・・」 おばちゃん「もしもしカメよカメさんよ~~~~。世界のうちでおまえほど~~~、歩みののろいものはない~~~」 のび太「どうしてそんなにのろいのか~~~~」 しずか「イチちゃんも楽しいのね」 イチ「ワン!」 のび太「あ!」 けん玉の糸が切れて、玉が飛んで行った。 のび太「ああ、玉がっ!」 イチ「ワン!!ワグ!」 イチが玉に飛びついて、くわえた。 のび太「わ~~~~!!イチ、えらいぞ!!」 イチ「ワグワグ!ワウウウ」 のび太「ありがとう、イチ」 夜、外では雨が降っていた。 イチ「クウン。ワウ」 ドラえもん「どうした?」 のび太「ずっと外を見て鳴いてるんだ。あ、何かいるぞ。ほら、向かいの屋根の上に」 ドラえもん「猫だ。雨にぬれてズブぬれだ・・・・」 イチ「クウンクン」 のび太「かわいそうだっていうの?」 「しかたない。つかまえてこよう」 のび太とドラえもんが「タケコプター」を付けて、屋根の上に向かった。 のび太「こらっ、おとなしくしろっ!!」 ドラえもんとのび太が引っかき傷だらけになりながらも、家に連れて来たのは、 あの野良猫だった。 ドラえもん「やっと連れてこられた・・・」 のび太「いっぱいひっかかれた・・・いてて・・・・ずいぶんつらい思いをしてきたみたいだ」 ドラえもん「ずっと1匹だったのかな?今日からきみも仲間だ」 のび太「ズブぬれだったから、名まえはズブにしよう」 ドラえもん「しかし、2匹も飼うとなると、エサが問題だ」 のび太「何か考えなくちゃ」 のび太が冷蔵庫からイチとズブのエサを取ってきた。 のび太「ほら、イチにはソーセージ。ズブにはちくわを取ってきたよ」 「ずっとこのまま冷蔵庫からエサを取ってくるわけにもいかないなあ・・・・かといって、おこづかいもないし・・・・・」 ドラえもん「そうだなあ。「自動買いとり機」でも使ってみるか」 のび太「それでどうするの?」 ドラえもん「たとえば」 「とっておきのどら焼き!!ものを入れると、そのものにふさわしい値段で買ってくれるんだ」 ドラえもんが「自動買いとり機」にどら焼きを入れると、20円が出てきた。 のび太「やったあ!!って、たったの20円?」 ドラえもん「ちょっと古いどら焼きだったからね・・・・・」 のび太「まんがにおまちゃ、古新聞、古雑誌」 ドラえもん「なんでもいいから、放りこめ!」 のび太「こないだ買ったこのまんが・・・・・まだ半分も読んでないだけど・・・・・ええい、入れちゃえ、イチたちのためだ!!」 「それでもまだこれだけ?」 ドラえもん「これじゃエサも買えないよ」 のび太「なんかほかの方法を考えないと!」 ドラえもん「う~~~~・・・ん。しばらくおし入れで考える。きみは散歩でも行ってきな」 のび太「よし、ママがいない今のうちだ。おおい!ズブもいっしょに来いよ」 ズブはのび太から離れていった。 のび太「変なやつ」 のび太とイチは空き地に行った。 のび太「しずちゃん!!」 しずか「のび太さん、いいところへ」 しずかは、段ボールに入った3匹の子猫を見せてきた。 のび太「え~~~~!!捨て猫!?」 しずか「このままじゃかわいそう。なんとかならないかしら?」 のび太「うちはこれ以上飼えないよ」 しずか「そうなの・・・?」 イチ「クウン・・・・・」 のび太「イチ、だめだよ」 イチ「ワグワグ!」 イチがのび太の服を引っ張る。 のび太「いいかげんにしろ、イチ!!ぼくとドラえもんがどんなにきみたちのためにがんばってるか、わからないのか!!もう限界なんだ。これ以上飼えないんだ!」 イチ「クウン・・・・・」 しずか「のび太さん・・・・・」 のび太「もう知らない」 イチが子猫と一緒に去って行こうとしていた。 のび太「!、ど、どこへなりと行けばいいじゃない・・・・」 「ク・・・クゥ~~~~。待ってよ、イチ~~~~!!」 のび太がイチたちを追いかけた。 のび太「行くなよ、イチ!!なんとかがんばってみるから!!」 イチ「ワン!」 のび太としずかがイチ達と家に戻った。 のび太「おーい、ドラえも~~~~ん!あれ?いないぞ」 「かんじんなときにいつもいないんだ」 そう言うのび太に引き出しをぶつけながら、ドラえもんが出てきた。 ドラえもん「ついに手に入れた!!」 しずか「ドラちゃん!」 ドラえもん「食糧問題は解決だ。「無料フード製造器」!水と空気でクロレラを培養して、犬と猫の好みに合わせて食べ物を作れる。これでいくらでもエサが出てくる」 のび太「やったあ!!よかったなあイチ、これでみんな飼えるぞ!」 イチ「ワン」 ママ「ワン・・・・・・?んだか2階がさわがしいわね・・・あの子まさか!!のび太!!」 ママがのび太の部屋に向かった。 のび太「わっ!!ママが来る!!大変だ!」 ドラえもん「よし!「どこでもドア」で逃げよう。どこかの山奥へ!!」 ママ「のび太!!あら?おかしいわね・・・・」 ドラえもん「ふ、ふう。なんとかセーフ」 のび太「ママはカンがするどいなあ・・・・」 山奥に向かったドラえもん達の周りには、大勢の野良犬や野良猫がいた。 ドラえもん「わ~~~~!!なんだこりゃ!?」 のび太「どうして山奥にこんなにたくさん犬や猫が!?」 ドラえもん「みんな、のら犬やのら猫だ・・・・・」 しずか「きっと飼うのに困った人たちがこの山に捨てていったんだわ!」 ドラえもん「なんだ、この音は!?」 のび太「ああ~っ!!ブルドーザーがあんなに!!」 のび太達から少し離れた所で、ブルドーザーやショベルカーといった重機が 木々を切り倒し、整地していた。 ドラえもん「わかった。開発業者だよ。ここも別荘かなんかになっちゃうんだ」 のび太「そんな・・・・じゃあ、ここにいる犬や猫たちはどうなるの?」 ドラえもん「う・・・・ん・・・どうにもならない・・・・な。とりあえず「スモールライト」で小さくしてここから連れだそう」 鉄橋の下に、4枚の「かべがけ犬小屋」が張られた。 のび太「もっといい場所はなかったの?」 ドラえもん「とりあえず今はここでがまんしてもらおう」 しずか「みんな、けんかしちゃだめよ」 ドラえもん「う~~~~ん、これからどうするかなあ・・・・」 そこへ一匹のネズミが来た。 ドラえもん「ん!?わ~!!ネズミ!!ネズミ!!」 スネ夫とジャイアンもいた。 スネ夫「ハハハ、おくびょうだなあ、ドラえもんは。おもちゃなのに」 のび太「おーい、ネズミはおもちゃだよ!」 ドラえもんは既に逃げ出していた。 ジャイアン「やい、のび太!こんなところで何やってんだ?」 のび太「え・・・・・、いや・・・・・・」 ネズミのおもちゃが「かべがけ犬小屋」の中に入っていった。 スネ夫「ん?これはなんだ」 「ニャア~ッ」 スネ夫「へ!?」 野良猫たちが「かべがけ犬小屋」から飛び出し、ジャイアンとスネ夫に飛びかかった。 ジャイアン「うおお~~~^!!」 スネ夫「なんだよ、こりゃあ~~^!!」 スネ夫「なるほど、そういうわけか。かわいそうだよな。せっかく生まれてきたのに住むとことがないなんて・・・」 しずか「人間って自分勝手すぎるわよ」 のび太「そうだ、人間が悪い!!ん?そうだ!!「タイムマソン」でう~~^んと大昔にイチたちを連れていってやろう!!人間とか恐竜とかイチたちをいじめる動物たちがいない、ず~~~~っと大昔に!!」 「さあ、みんないったん「かべがけ犬小屋」の中へ!」 「これでみんなを一度に部屋まで運べる」 しずか「なるほど!」 ズブは逃げ回っていた。 のび太「ズブもおとなしく来いよ、いいところへ連れてってやるから」 しずか「はい、つかまえたわ」 のび太「ところで恐竜がいないくらいの昔って・・・・、どのくらい昔だろう?」 スネ夫「恐竜だいたのは1~2億年くらい前だから、恐竜がいない時代となると・・・」 しずか「ざっと3億年くらい前かしら?」 のび太「よし、じゃあ、イチたちの新世界は3億年前に決定!!」 のび太たちは「タイムマシン」で3億年前の過去に向かった。 スネ夫「ワア!!これが恐竜もまだいない大昔?」 のび太「そう、3億年前の世界だよ!」 「さあ、イチ!!ここがきみたちの新しい世界だよ」 イチ「ワンワン!!」 スネ夫「でも、この世界にイチたちのエサはあるのかい?」 のび太「ふふふ~だいじょうぶ!ちゃ~~~んと「スペアポケット」を持ってきたもんね!!この「無料フード製造機」があれば、いくらでもエサが出るんだ」 スネ夫「犬や猫にこの機械があやつれるのかい?」 のび太「あやつれるようにすればいいんだよ!!「進化退化放射線源」で進化させよう」 「進化退化放射線源」の光線を受けたイチが後ろ足で立った。 のび太「ほ~~~~ら、イチが立ったあ!」 スネ夫「すげえ」 ジャイアン「こりゃけっさく。のび太より利口そうな顔してるぜ」 のび太「いいかい、イチ。このボタンをね・・・」 イチの操作で、「無料フード製造機」からフードが出てきた。 のび太「やったあ!!できたぞ、イチ!わ~~~~い、さすがイチだ!!」 しずか「1回で覚えたわ。お利口さんね」 ジャイアン「よ~~~し、エサの心配もなくなったし、パーッと遊んでいこうぜ」 ジャイアンとスネ夫と犬猫達がサッカーで遊ぶ。 ジャイアン「そら~~~!!パスパス」 のび太としずかはイチとけん玉をしていた。 のび太「もしもしカメやカメさんよ~~~~」 しずか「わあ、上手や、イチちゃん!」 のび太「イチは物覚えが早いね」 イチ「ワンワン」 のび太「わーいわーい」 ズブ「フン」 ズブは1匹だけ離れて、「無料フード製造機」を見ていた。 のび太「よーし、できたあ!!この世界の旗だよ」 のび太はひらがなの「の」の字を崩したようなマークを書いた旗を立てた。 しずか「国旗ってわけね。すてきじゃない」 のび太「のら犬、のら猫。そして、のび太の「の」をマークにしたんだ!」 ジャイアン「おーい、そろそろ帰ろうぜ」 のび太「そうだね」 イチ「クウン・・・・・」 のび太「イチ・・・・ぼくだってさびしいんだよ。でも、明日また会えるじゃないか」 イチ「クウンクン」 のび太「約束だよ、イチ。明日かならず来るからね」 ジャイアン「いつまでやってんだ、早くしろ!」 のび太「わっ!!あ!!またちぎれた!!」 ジャイアンがタイムホールの方にのび太を引っ張った拍子にけん玉の糸が切れて、玉が落ちて行った。 イチ「ワン!ワグ!!」 イチが玉を追いかけて、くわえたが、振り返ると、既にのび太達は帰っていた。 のび太(きっと明日来るからね。きっと・・・・・) イチ「クウン・・・・・」 #center(){&big(){&bold(){続く}}}