Xio橘副隊長の娘・かおるが、ベッドの中で目を覚ます。 窓から、巨大な目が覗いている。 かおる「きゃああああ!!」 橘「かおる!?」 橘が悲鳴を駆けつけ、部屋に飛び込む。 かおる「お母さぁん! お母さぁん!」 橘「かおるぅっ!」 橘は娘を助けるべく、手を伸ばす。 その手が空間を飛び越え、光に満ちた空間で、何かに触れる。 神秘の石碑、ストーンフリューゲル── 橘が夢から目覚める。 夜のXio基地、オペレーションベースX司令室。 #center(){|BGCOLOR(darkblue):COLOR(red):CENTER:&br()&big(){&bold(){&big(){&i(){絆&br()─ Unite ─}}}}&br()&br()|} 橘は娘を気にかけ、連絡をとる。 画面に、かおるの姿が映る。 かおる『あれ? お母さんだ! 元気?』 橘「うん。そっちはどう? みちるも元気にしてる?」 次女・みちるも、顔を出す。 みちる『元気! あのね、今お父さんとキャンプに来てる!』 橘「楽しそう」 かおる『お母さんも来られたら最高なのに』 橘「……お母さんも、そっちに飛んでいきたい」 かおる『もう行くね。お母さん、ケガとかしちゃ駄目だよ?』 橘「あなたたちも、気をつけてね」 みちる『大丈夫。こっちには怪獣、全然出ないもん。じゃあね!』 大地がコーヒーを入れながら、声をかける。 大地「チャットですか? 娘さんと」 橘「まだ作業中なの?」 大地「屋上で、宇宙の声を」 橘「お母さんの宇宙電波受信機?」 大地は橘にもコーヒーを勧める。 橘「ありがと」 大地「カナダでしたっけ? 副隊長のご家族」 橘「まだ怪獣が出てない地域だって、旦那がね」 大地「Xioの副隊長でなければ、一緒に移住しましたか?」 橘「……そうね」 大地は屋上で、宇宙電波受信機で電波を測定しつつ、いつしか身を横たえ、夜空を見上げる。 エックス『大地、起きろ。大地!』 翌朝。 いつの間にか眠っていた大地が、エクスデバイザーからのウルトラマンエックスの声で跳び起きる。 大地「怪獣!? 宇宙人!?」 エックス『そうじゃない。これを聞いてみろ』 宇宙電波受信機からは、ノイズまみれの奇妙な音声が響いている。 大地「普通の宇宙電波じゃなさそうだ」 エックス『解析してみたらどうだ?』 大地「だね」 大地はラボに場所を移し、解析に取りかかる。 音声&i(){『解析します』} 橘『エリアT-1、地下駐車場に、未確認生命が群れで出現!』 橘からの警報を耳に、大地は解析を機械に任せ、ラボを飛び出す。 音声&i(){『解析中──』} 一同が司令室に結集する。 橘「体長は2メートル前後」 神木「フェイズ2! 大地、現場に出ろ。アスナ、ハヤト、ワタル、大地の分析を待って、必要ならこれを攻撃!」 一同「了解!」 橘「今回は私も行きます」 神木「頼む」 橘を含め、隊員たち一同が出動する。 現場の地下駐車場。 大地が様子を探っていると、スペースビースト・バグバズンブルードが闊歩している。 大地「こいつは、地球の生き物じゃないな」 エックス『宇宙から飛来してきたのか?』 大地「地球の何がこいつらを引き寄せてるんだろ?」 エックス『生命体の恐怖を餌にする『スペースビースト』の話は聞いたことがある』 大地「スペースビースト?」 エックス『大地!』 バグバズンブルードが会話に気づき、大地に襲いかかって来る。 アスナが大地を突き飛ばし、バグバズンブルードを狙撃する。 アスナ「大丈夫?」 大地「いつもごめん」 アスナ「見た目最悪だけど、この生物は駆除? 捕獲?」 大地「攻撃と捕食しか探知できない…… 仕方ない」 アスナ「大地から駆除判断が出ました」 アスナが銃撃で、バグバズンブルードを撃破する。 他の隊員たちも、バグバズンブルードを仕留めていく。 橘もバグバズンブルードを倒すが、逃げ遅れた女性がいる。 女性「きゃああっ!」 橘「民間人を発見。保護に向かいます。──大丈夫ですか? しっかり!」 衝撃で、天井が崩れ落ちてくる。 橘「危ない!」 橘が女性に覆いかぶさり、自らの身を盾とする。 降り積もった瓦礫の下、女性は橘に守られたものの、気を失っている。 橘「大丈夫ですか!? しっかりして! 聞こえますか?」 橘もまた、脚を瓦礫に挟まれ、身動きがとれない。 ジオデバイザーが鳴る。 画面には「かおる・みちる」の表示。 橘「今、話せない!」 みちる『話せなかったらお姉ちゃんが死んじゃう!』 橘「えっ……!?」 みちる『怪獣! 湖からいきなり怪獣が出て来て、カヌーが飛んで来て、お姉ちゃんの頭に当たって!』 カナダのキャンプ地、みちるのそばでは、かおるが倒れて気を失っている。 橘「お父さんは!?」 みちる『水汲みに行って戻って来ない! 電話にも出ないの!』 橘「ケガしたの? 血が出てる?」 みちる『出てない!』 橘「息はしてるよね!?」 みちる『──してる』 橘「みちる、よく聞いて。お姉ちゃんは今、仰向け?」 みちる『うん』 橘「なら、もし吐いたりしても息できるように、お顔を右に向けて」 みちる『うん!』 湖に出現した宇宙怪獣ベムラーが、湖面を目がけて熱線を吐き、みちるたちに激しい水しぶきが掛かる。 みちる『きゃあぁっ!!』 橘「みちる、どうしたの!? みちる!!」 その声を聞きつけ、バグバズンブルードがやって来る。 橘は、床に転がっているジオブラスターを掴もうとするが、依然として身動きが取れず、手が届かない。 橘「みちる!! 大丈夫!?」 みちる『怪獣、こっちに来るぅ!! お母さんぁ!! お母さんぁぁん!!』 バグバズンブルードが近づいてくる。 橘は瓦礫を投げて抵抗するが、到底、歯が立たない。 みちる『お母さんぁん!! お母さんぁん!! お母さんぁぁん!!』 さらに、もう1体のバグバズンブルードが出現する。 計2体のバグバズンブルードの前に橘も、そしてベムラーの前にみちるたちも、絶体絶命。 みちる『お母さんぁん!! お母さんぁぁん!!』 そのとき──! 光が満ち溢れ、神秘のアイテム・エボルトラスターが、虚空より出現する。 橘は導かれるようにそれを手に取り、天に掲げる。 眩い光が満ち溢れ、次の瞬間、巨大な拳がバグバズンブルード2体を叩き潰す。 攻撃の主は、橘が変身した神秘の銀色の巨人、[[ウルトラマンネクサス>http://neoending.web.fc2.com/animeop/agyou/nexsus.htm]]であった。 その手には、先の気絶した女性が優しく抱かれている。 ネクサスが地を蹴って空へ飛び立ち、雲を駆け抜け、あっという間にカナダに降り立つ。 かおるたちのそばで、熱線を吐く寸前のベムラーに、ネクサスが一撃を加える。 みちるのもとに、父の祥悟が駆けつける。 祥悟「みちる!」 みちる「お父さん、お姉ちゃんが! お母さんに電話したの」 祥悟「かおる!? かおる!」 みちる「お姉ちゃん、お姉ちゃん!」 祥悟が手当てを施し、かおるは意識を取り戻す。 祥悟「良かった。もう大丈夫だ!」 かおる「……お父さん? ずっと。お母さんの声が聞こえてた気がする」 祥悟「よし、ここを離れるよ。おいで」 ネクサスとベムラーの戦いが続く。 祥悟がネクサスを見つめ、何かを悟ったように、微かに笑んで頷く。 ネクサスが静かに頷き返し、再びベムラーへ立ち向かってゆく。 Xioの司令室。 タケル「もう一度再生します」 モニターには、スペースビーストたちの現場から、ネクサスが飛び発つ姿が映っている。 チアキ「巨人はこの後、カナダでベムラーを倒して、消え去ったようです」 ワタル「カナダ? なんでいきなりカナダ?」 橘「私が未熟だから」 橘が現れ、神木のもとに進み出る。 橘「処分してください。副隊長の立場にありながら、私は命ぜられた現場を離れ、自分の娘のもとに向かいました」 橘が神木に、隊員証とジオブラスターを差し出す。 神木「待て。話が見えない」 橘「この巨人は……」 画面に映っているウルトラマンを指す。 橘「私です!」 一同「……!?」 アスナ「副隊長がウルトラマンに変身したってこと?」 マモル「マジで!?」 グルマン博士「選ばれたということか」 ルイ「凄い!」 橘「ヒカルやショウ、それにトウマ・カイト。彼らの世界では、彼らがウルトラマンに変身していた。だとしたら同じように、私たちの世界にも、エックスに変身して戦ってくれてる誰かがいるはず。それはわかっていました。けれど…… 私自身がそうなるだなんて、思いもしなかった…… 理由はわかりません。気付いたら、私は──」 大地「変身していた……?」 神木「そして自分の娘を助けるために、カナダまで飛んだ」 橘「はい…… 任務遂行中に、独断で現場を離れるなど、許されない命令違反です」 大地「待ってください! 娘さんは助かったんですか?」 橘は頷く。 大地「逃げ遅れていた女性も、あの巨人が病院に降ろしてくれたおかげで、一命を取り留めました。俺たちも全員無事です! なら、何が問題なんですか?」 神木「次に同じことが起こっても、同じことをする。そういう顔だ」 橘「恐らく…… 次も、その次も…… 何十回でも、私は命令より、娘を守ることを優先し…… 今は、副隊長の職務を全うできません! 失礼します!」 橘が立ち去る。 ワタル「副隊長!?」 神木「何も言うな!」 アスナ「でも!?」 神木「突然ウルトラマンになったんだ…… 冷静でいられるか」 屋上にいる橘のもとに、大地がやって来る。 大地「ウルトラマンになったとき…… どんな気持ちでしたか?」 橘「『やるべきことがある』『出来ることがある』── そんな確信だけ、抱えてた気がする。ウルトラマンになるって、その使命を背負うことなのかもしれない。でもそれは、人として生きることも、同じね」 橘のジオデバイザーが鳴る。 かおるたち『お母さん!』 みちる『もうお姉ちゃん、元気になったよ!』 かおる『うん、もう全然大丈夫!』 橘「ごめん、娘たちから」 橘は娘たちと話しながら、立ち去る。 エックス『君に戦いを強いたのは私だ。君には、辛いことの連続だったろうな』 大地は、首を横に振る。 大地「君のおかげで、怪獣との共存っていう夢と、向き合えてる」 翌日、空からダークサンダーエナジーが降り注ぎ、巨大化したバグバズンブルードが現れる。 Xioの隊員たちが迎え撃つものの、苦戦を強いられる。 エックス『大地、昨日の生き残りだ!』 大地「エックス、ユナイトだ!」 エックス『よぉし! 行くぞぉ!』 音声&i(){『エックス・ユナイテッド』} 大地もウルトラマンエックスにユナイトし、巨大バグバズンブルードに立ち向かう。 橘は神木と共に司令室から、エックスの苦戦の様子を見ている。 橘「やはり私は謹慎です。また任務を離れます!」 神木「橘!?」 エックスのカラータイマーが点滅し、危機を報せる。 橘は屋上に立ち、エボルトラスターを引き抜き、ネクサスに変身して飛び立つ。 さらに戦闘形態の[[ジュネッス>http://neoending.web.fc2.com/anime/agyou/nexsus.htm]]へと変身し、エックスのもとへ向かう。 エックスに飛びかかろうとしたバグバズンブルードに、ネクサスのキックが決まる。 大地「副隊長!?」 ネクサスは異空間メタフィールドを展開して、自分たちを包み込む。 大地「これは!?」 2大ウルトラマンとスペースビーストとの戦いが始まる。 メタフィールドで力を得たネクサスとエックスが連携し、次第にバグバズンブルードを追いつめてゆく。 音声&i(){『ウルトラマンエックス・パワーアップ』} 大地「&bold(){エクシード・エ──ックス!!}」 エックスがエクシードエックスに強化変身する。 大地「&bold(){エクスラッガーショット!!}」 エックスのエクスラッガーショット、ネクサスのオーバーレイ・シュトローム、2大必殺光線が炸裂する。 バグバズンブルードが爆発四散し、最期を遂げる。 橘が橋の上で、エボルトラスターをじっと見つめている。 大地が駆けつける。 大地「副隊長、大丈夫ですか!? ……副隊長?」 橘「……『諦めるな』」 大地「えっ?」 エボルトラスターが、忽然と消える。 橘「あのウルトラマンがそう言ったの。なぜかな…… あなたに伝えろと、そう言われた気がする」 大地「俺に、ですか?」 橘「……ごめん、意味わかんないよね。ただ、これだけは言える。私はウルトラマンと繋がりを持った。一瞬だったけど、その絆は確かに存在したし、遠い国にいる子供たちとも、確かに繋がってる。だから──」 大地「俺と、父さんや母さんとの絆は、消えていない…… なんか、ウルトラマンに励まされてる気がします」 橘「実際、そうだもの。今は、力は消えたみたいだけど。私はたった1日だけ、ウルトラマンだったのよ」 橘が悪戯っぽく笑い、大地も笑みを返す。 大地「名前…… 何ていうのかな? あのウルトラマン」 橘「絆…… ネクサス」 大地「ウルトラマン…… ネクサス!」 大地の声に応えるように、エクスデバイザーに「ウルトラマンネクサス」のサイバーカードが出現する。 その頃、Xio本部のラボでは、無人のまま宇宙電波の解析が続いている。 音声&i(){『ノイズの解析を終了しました。再生します』} 『──大地、お母さんの声が聞こえますか? 大地、大地、お母さんの声が聞こえますか? ──」 ※ この続きは[[ウルトラマンXの第21話]]をご覧ください