ランティスがモコナに、剣を突きつける。
ランティス「もう一度『柱への道』を開けろ!」
モコナ「『柱への道』は一度しか開かれない ……オートザムのイーグル いま新たな『柱』ヒカルが ともに連れ帰ろうとしている しかし『道』を通れるのは『柱』のみ…… このままでは二人とも…… 消える!」
モコナの放つ衝撃がランティスを襲い、血が滲む。
ランティス「もう一度『柱への道』を開けろ……! ……『創造主』だろうが関係ない もしイーグルと異世界の少女が死んだら お前を 殺す! 開けろ!!」
光のレイアースは、イーグルのFTOを抱えたまま、必死にセフィーロへの道を通ろうとする。
道が阻まれ、光は次第に傷だらけになる。
イーグル「手を離してください! セフィーロへ帰っても ぼくは長くは生きられません! このままではあなたが……!!」
光「それでも!! それでもせいいっぱい 最後まで生きなきゃ あなたのたいせつな人たちのために そして、あなたのために 海ちゃん風ちゃんと約束したんだ こんなところで負けられない!」
海「光──!!」
風「光さん──!!」
海「モコナ 道を開けて!!」
風「開けてください!!」
レイアースが渾身の力で道へ突っ込む。
光の体が次第に消滅してゆく。
光「わああああああ……」
すんでのところで、海のセレス、風のウィンダムが、レイアースを支える。
光「海ちゃん!! 風ちゃん!! どうして……!?」
海「約束したでしょ!!」
風「私たちはぜったい負けない!」
光「たいせつな仲間と 大好きな人たちのために…… 絶対に負けない!!」
レイアースとセレスとウィンダムが合体する。
合体レイアースが大きな翼をはためかせ、道を通り抜け、セフィーロへと帰還する──!
光「……モコナ…… この魔神は 『柱』を殺すために作られたものだ…… でも」
レイアースの手の中で、イーグルが守られている。
光「私たちはこの人を助けることができた この魔神で」「私が新しい『柱』だといったよね」
モコナ「……そうだ」
光「私が新しいこの世界の『約束』を作っていいんだね」
モコナ「そうだ」
光「『信じる心が力になる』 この『世界』の理は素敵だと思う でも…… 一人の肩にこの『国』のすべてを背負うのは ……重すぎる だから…… いっしょに戦ってきた海ちゃんや風ちゃん このセフィーロで出会えたたいせつな人たち そして オートザムやチゼータ ファーレン…… この世界の別の国の人たちと…… この国にはなにが必要なのか 幸せになるにはこれからどうすればいいのか ゆっくり考えていきたいと思う 私たち なにもできないかもしれないけど モコナが作ったもうひとつの世界『地球』からきた私たちにしか見えないこともあるかもしれないから……」
モコナ「それは 『柱』制度をなくすということか」
光「『セフィーロ』はこの国を愛してるみんなのものだよ ……私の大好きなみんなも そう願ってる…… モコナは今の地球を見て この『セフィーロ』を創ったんだよね」
モコナ「そうだ」
海「モコナが悲しくなるのはわかるわ」
風「今の『地球』はみんなが幸せだとは 決していえませんもの」
光「でもね すくなくとも クレフ…… ランティス…… フェリオ…… 『セフィーロ』のみんなは エメロード姫の悲しい最後を知っている私たちは…… 心から思ってるよ もう二度と誰も犠牲にしたくない 大好きな人たちみんなと生きて幸せになりたい この『セフィーロ』で!」
モコナ「エメロード姫は『セフィーロ』を そしてみんなを愛していた しかし信じてはいなかったのかもしれない 姫は生命をかけて愛するものたちを守ろうとしたが 自らの重責を分かち合い ともに歩こうとはしなかった 『セフィーロ』は『柱』がすべてを司る世界 『柱』制度を無くす事も姫にはできたのだ それでもエメロード姫は己の死を選び この制度の存続を望んだ 一人がすべてを決める『変化のない明日』を…… しかしセフィーロの新しい『柱』は 『己の死』ではなく『制度の死』を願ったのだ 己を犠牲にせず 愛する者をただ庇護するのではなく 喜びも苦しみも分かち合い 背おい合い 共に未来を築いていける『昨日とは違う明日』を お前たちは愛する者を信じている」
羽毛が舞い散り、レイアースの合体が解け、元の3体の精獣の姿となる。
光「モコナ!」
モコナ「この世界の行く末は汝らの手の内にある 我らは新たな次元へと旅立とう」
風「モコナさん 私たちを『柱の道』へ送ってくださったのは モコナさんですわね」
海「私たちのことが『好き』だから…… 『仲間』だから助けてくれたのよね」
モコナ「…… ぷぅ」
モコナは創造主としての正体を現す前の、愛らしい鳴き声と笑みを残し、精獣たちと共に、空の彼方へと飛び去る。
クレフ「……『セフィーロ』に新たな『道』が開かれた……」
海をアスコットが、風をフェリオが、光をランティスが迎える。
セフィーロ、オートザム、チゼータ、ファーレンの一同も、笑顔で光たちを迎えている。
クレフ「魔法騎士 いや 異世界の三人の少女たちが その『道』を示してくれた ほんとうの『信じる心が力になる』世界を」
それから何日か後の、東京。
海がバスケットを手に、自宅を発つ。
海「いってきまーす!」
母「いってらしゃーい!」
父「海は最近ますます元気だね ママ」
母「本当に 誰か素敵な彼でも見つかったのかしら パパみたいな♥」
父「だと いいね♥」
風も自宅を発つ。
風「いってまいります!」
空「きょうも東京タワー? また ひよこまんじゅう買ってきてね──♥」
風「はい!」
光も自宅を発とうとし、飼い犬の閃光がじゃれつく。
光「遅れる──! ごめんね 閃光! これからでかけるんだ 帰ってきたらお散歩いこうね」
翔「でかけるのか──?」
光「うん 海ちゃん風ちゃんと」
覚「夕飯までには戻るか?」
光「うん! かならず!」
優「きょうはどこいくんだ──?」
光「異世界ー!」
優・翔「?」
東京タワーの展望台。
海と風のもとに、光が息を切らしつつ駆けつける。
海「さすが光! 時間ぴったりね」
光「よ よかった 間に合って」
風「さ まいりましょう」
光「うん!」
光たち3人が、手を取り合う。
眩い閃光が3人を包む──
セフィーロ城のフェリオやアスコットのもとに、光たち3人が降り立つ。
アスコット「あ! こんにちは!」
フェリオ「よ!」
海「うふふ じゃーん! ケーキを焼いてきました」
アスコット「このまえ話してた地球のお菓子だね」
フェリオ「ちょうどいい きょうはオートザム チゼータ ファーレンの人たちもそろってる」
海「グッドタイミングね! お茶会にしましょ! アスコット 手伝ってくれる?」
風「では私も」
海「二人でだいじょうぶよ ね!」
光「私 さきにイーグルのところへいってくる!」
風「……平和ですね」
フェリオ「ああ おまえたちのおかげだ」
風「幸せは 誰か一人で作れるものではありませんわ」
フェリオ「そうだな」
フェリオがそっと、風の手を取る。
フェリオ「俺の幸せは おまえが運んできてくれたし」
海はアスコットと、茶会の準備をしている。
アスコット「あ あ あ あ あ あの あの……!」
海「?」
アスコット「……ウミは その…… お付き合いしている人とか いる?」
海「ん── いないわよ」
アスコット「じゃ! その そのお付き合いしたい人はいる?」
アスコット「やった~っ」
海「ど ど ど ど ど どうしたの」
アスコット「さ お茶いれよう! ね!!」
光は、ベッドで眠っているイーグルのもとへ顔を出す。
光「……イーグル 具合どう?」
イーグル (だいじょうぶですよ 眠っていても ちゃんとあなたの声が聞こえますから あなたの強い『願い』で すこしずつですが回復に向かっていると 導師クレフがおっしゃっていました 『信じる心が力になる』 ほんとうに不思議な国ですね)
そこへ、ランティスが現れる。
光「あ こんにちは!」
ランティス「ガッコウは終わったのか」
光「きょうは日曜日だから」
ランティス「ニチヨウ?」
光「お休みだよ」
イーグル (みなさんにはもう会われましたか?)
光「ううん まだ イーグルの顔 見たかったから」
イーグル (きょうはうちのジェオや チゼータ ファーレンのお姫様たちもいらっしゃってますよ ランティス ヒカルをみなさんのところへ連れていってあげてください ずっと会いたがっていましたし)
ランティス「……ああ」
光「あ! 一人でいけるよ! だいじょぶ!!」
イーグル (いいえ ランティスが案内したいそうですから くすくす)
光「あとでランティスといっしょにくるね!」
イーグル (……ヒカル ありがとう)
光「イーグル ほんとうに素敵な人だよねっ 私もあんなふうになれたらいいな」
ランティス「……お前たちはよく似ているがな……」
光「?」
ランティス「その『強い心』が そっくりだ」
ランティスを慕う小妖精プリメーラが飛び出す。
プリメーラ「ちょっとおおぉお! ランティスは私のなのよ──ぅ!!」
ランティス「……ヒカル おまえの国では愛を告白するとき なんという?」
光「『結婚してください』……かなぁ」
ランティス「ケッコン……?」
光「好きな人とずっといっしょにいるって約束することだよ!」
ランティス「ケッコンしたいやつはいるのか?」
光「ランティスと イーグル!」
ランティス「……ケッコンは二人とするものなのか?」
光「でも ランティスもイーグルも大好きなんだもん 海ちゃんも風ちゃんも クレフもプレセアもフェリオもアスコットもカルディナもラファーガも みんなみーんな大好きだよ! ずっとずっといっしょにいたい!」
ランティス「お前のその『心』が…… セフィーロをほんとうに美しい国へと変えたんだな」
光「みんなの『心』で だよ」
プリメーラ「ちょっとおおお “今”の どういうい意味よおおお まさか まさか……」
海と風は、クレフたち、オートザムの副官ジェオたち、チゼータの姫タトラたち、ファーレンの姫アスカたちと、茶会を開いている。
ジェオ「すみません うちの司令官がずっとお世話になりっぱなしで」
クレフ「いや…… こちらも新しいセフィーロの制度を作るのに オートザム チゼータ ファーレン それぞれのよいところを参考にさせてもらっている」
ジェオ「そのかわり うちは環境汚染を止める術を そちらに研究してもらっていますし」
タトラ「完璧なものなどありません それぞれ足りないものを足りたもので補いあえれば 素敵ですわね」
アスカ「しかし あの白いふわふわがこの世界を創ったとは…… わらわもびっくりなのじゃ」
クレフ「私は…… 『創造主』は『セフィーロ』の『変革』を望んでいたのではないか と思っているのだ」
プレセア「え?」
クレフ「……もし セフィーロに変化を望まないのなら 側に別の摂理形態を持つ国など置かない 『魔法騎士』などという存在も 異世界の者である必要はないだろう 自分以外のものを見 ふれあい 理解し よりよい『世界』を作ることを『創造主』は望んでいたのかも知れない…… ヒカルが乗っていた『魔神』は『レイアース』 『地球』の言葉で『光る大地』という意味だとヒカルたちが教えてくれた すべての『世界』が『光あふれる』ところであれとの 願いが込められていたのかもしれない
風「では…… 私たちをもう一度招喚したのは やはり……」
クレフ「『柱』なきセフィーロで異世界の者を招喚できるのは 『創造主』だけだろう もう一度セフィーロにいきたい…… そして この国を変えたいという異世界の少女たちの強い『願い』が 『創造主』を動かした…… お前たちならこの世界に『変化』をもたらせると『信じた』のかも知れんな」
海「だって私たち 『仲間』ですもの ね!」
風「はい!」
光とランティスが現れる。
海「さきにはじめちゃってるわよ──!」
風「そういえば 新しい国の名まえはお考えになりました?」
光「まだなんだ── むずかしくて」
海「そろそろ決めないと ずっと『元セフィーロ』になっちゃうわよ!」
一同「ハハハハ……」
光「ん── そうだ!!」
光が読者の方を振り向く。
光「新しい国の名まえは あなたがつけて! 私たちをずっと見守ってくれた あなたが!!」
最終更新:2020年01月19日 04:50