ターボレンジャーの5人が通う都立武蔵野学園高校3年A組では、担任の山口先生が数学を教えている。 山口先生「漸近線というのは、どこまで行っても決して交わることのない線を言いまして…… まぁ、なんと言いましょうかね~、いくら想っても叶うことのない、私の片思いのような…… そんな切ない線なんですよね~」 山口先生の珍妙な例えに、生徒たちが笑いを漏らす。 洋平「先生! 僕でよかったら、相手になりますけど?」 振り向く山口先生。 山口先生「えぇ?」 洋平「嘘に決まってんじゃないすか~!」 山口先生「コラッ!」 山口先生が竹刀を手に、授業そっちのけで洋平を追い回す。 一方、校庭に鬼のような冷たい目で校舎を見上げる学ラン姿((武蔵野学園高校の制服はブレザー。))の学生がいた。 その学生が傍らにあったサッカーボールを蹴飛ばすと、ボールは窓ガラスを割って3年A組の教室に叩き込まれ、「真実」の字を記した色紙を収めた額縁に命中し、額縁を落として粉々に砕いた。 にぎやかなムードは一瞬にして崩れ、騒ぎ出す生徒たち。 山口先生「誰なの!?」 校庭を見渡すが、すでにボールを蹴り込んだ学生はいない。 唖然となっている一同の耳に、どこからか口笛が響き渡り──ターボレンジャーの面々が振り向いた直後、件の学生が足で扉を開け、ずかずかと教室に乗り込んできた。 山口先生が学生の前に立ちはだかる。 山口先生「なんですか、あなたは?」 学生「人呼んで『高校流れ者』、さすらい転校生・&ruby(ながれ){流}&ruby(ぼし){星}!」 ぶっきらぼうにそう名乗ると学生は後ろを向き、流れ星の刺繡が施された学ランの背中を見せつけた。 #center(){|&br()&big(){&big(){&bold(){参上&i(){!}さすらい転校生}}}&br()&br()|} 流星が黒板に自分の名前を書いていく。 流星「&ruby(ながれ){流}&ruby(ぼし){星} &ruby(ひかる){光}。よろしく」 山口先生「転校生? そんなの聞いてません!」 流星「だから今入ったのさ。このクラスが気に入ったんでね」 山口先生をしり目に、流星が大地の席の前まで歩いていき、彼のコンパスを手に取る。 流星と大地の目が合う。 流星「席はここに決めたぜ!」 コンパスを机に振り下ろす流星。 コンパスが突き刺さろうとした瞬間、大地が流星の腕を払いのけ、弾かれたコンパスが黒板に突き刺さった。 流星「ほう…… やるな」 放課後。 室内プールで、洋平たち水泳部が練習に励んでいる。 そこに流星が現れ、上階から跳び降りてクロール中の洋平の首をつかむと、体を全く水につけずに水面を蹴って再び跳び上がり、洋平の体を上階の床に叩きつけた。 洋平「何をする!」 何も言わず、洋平をプールに蹴り落とす流星。 洋平は素早く跳び上がりプールサイドに立ち、流星を睨む。 流星「また遊ぼうぜ」 流星は次に、体操部でバック転の練習をしている俊介の前に現れた。 俊介が着地した瞬間に足を出し、転倒させるが、俊介は素早く体勢を立て直して平均台に着地。 流星「おみごと」 またも立ち去る流星。 野球部の力は校庭で練習中。 力の剛速球を受け止めた捕手が、あまりの勢いに背後のネットに激突した。 力「もう一丁いくぞ!」 捕手「おう! お手柔らかに頼むぜ!」 そこに流星が現れ、金属バットを手に取る。 力が投げた瞬間、捕手の前に現れて球を打ち返す流星。力の顔を目がけて飛んでいくピッチャー返し──だが、力は空中で回転し足で球を挟むという離れ業でこれを受け止めた。 流星「やるじゃねえか。……お前、ターボレンジャーだな」 流星が金属バットを投げつける。が、力はそれをあっさりキャッチしてみせた。 流星の発言を、バトン部の練習のために移動中のはるなが耳にする。 力「なんだって!?」 不敵に笑う流星。 力「……なんのことだかさっぱりわからんな。仮にもしそのターボなんとかだったらどうだって言うんだ」 流星「お友達になりたくってさ」 流星がはるなに視線を向ける。 はるなはごまかすようにバトンを振るったが、手元が狂ってすっぽ抜けたバトンが木に引っ掛かってしまった。 はるな「あっ!」 流星はバトンが引っ掛かった瞬間に跳んでバトンを取り着地、さらに流れ星の刺繍が入ったハンカチでバトンを拭いてみせる。 バトンをはるなに手渡し、誇らしげに去っていく流星。 力とはるなは、その背中を黙って見送るしかできなかった。 音楽室から響き渡る美しいピアノの音色に、女子生徒たちが黄色い声を上げている。 それを見たターボレンジャーの5人が音楽室を覗くと──そこにはピアノを弾く流星の姿が。 立ち上がってギャラリーの方に向き直り、背に回した両手だけでピアノを弾く流星。その絶技に力たちは声も出ない。 小太りの女子生徒「『ハンガリー狂詩曲第2番』…… 素敵……!! 流星くん!!」 俊介「な~にが『素敵』だよ……」 洋平「キザな奴!」 再び座ってピアノを弾いていた流星だが、それもつかの間、今度はなんと逆立ちしてピアノを弾き始めた。 小太りの女子生徒「素敵~!!」 失神する女子生徒。 流星はアクロバティックな空中回転を織り交ぜながらピアノを弾き続ける。 後を追うように失神する女子生徒が続出。力が変身アイテム・ターボブレスで流星の演奏を撮影し、太宰博士に報告する。 力「どう見てもただ者じゃない…… 暴魔百族に関係ある奴だと思うんですけど」 流星の超絶演奏に、妖精シーロンが目を見張る。 太宰博士「君たちをターボレンジャーと疑うなんて、暴魔としか考えられない」 シーロン「でも、暴魔の匂いは感じられません。暴魔百族とは関係ありません!」 力「なんだって……?」 はるな「暴魔でもないなんて…… じゃあいったい、彼は何者なの?」 5人が再び音楽室を探る──が、すでに流星の姿はなかった。 吹き抜ける風で楽譜が地面に落ちる。 洋平「いつの間に……」 そこへ、再び太宰博士から通信。 太宰博士「大変だ! 兜山古墳が…… 暴魔獣の封印が出たぞ!」 発掘作業中の土地から暴魔特有の邪悪な気が噴き出し、暴魔獣の姿となった。 ドグウボーマ「暴魔獣・ドグウボーマ!!」 ドグウボーマの暴魔力で地面に巨大な蟻地獄が作られ、発掘作業中の人々を飲み込んでゆく。 生き埋めにされて苦しむ人々。 姫暴魔ジャーミン「ドグウボーマは2万年もの間、土の中に埋められていた。今度は人間どもが埋められる番なのだ!」 そこにターボレンジャーが駆けつける。 ジャーミン「ターボレンジャー!」 レッドターボ「何を企んでいる、ジャーミン!! ……早くみんなを!」 ブルーターボ「おう!」 ピンクターボ「しっかりして!」 レッド以外の4人が生き埋めにされた人々を掘り起こそうとする。 ジャーミン「おのれ、小癪な!」 鞭を振り上げるジャーミン──その腕にどこからか飛んできた光弾が命中し、ジャーミンが鞭を取り落とす。 驚く一同の前に、蛮族のような姿をした怪しい男が姿を見せた。 男「そいつらは俺の獲物だ……」 ジャーミン「何者だ!?」 男「流れ流れて2万年、&bold(){流れ暴魔ヤミマル}! ただいま参上!!」 レッドターボ「流れ暴魔、ヤミマル……?」 ジャーミン「流れ暴魔……?」 ブラックターボ「暴魔百族め、新手を送り出してきたか!」 ヤミマルを指さして言うブラックターボ。ヤミマルはそれを鼻で笑う。 ヤミマル「俺はそいつらのように徒党は組まん。さすらいの一匹狼よ……」 ジャーミン「何ぃ!?」 ヤミマル「暴魔百族も見ておけ! 流れ暴魔のすごさ…… 今、見せてやるぜ!!」 言うが早いが、ヤミマルがターボレンジャーに切りかかってゆく。 ヤミマルが振り下ろした剣を真剣白刃取りで受け止めるレッドターボ。 ヤミマル「やるじゃないか…… 暴魔百族が手を焼くはずだ! だが俺の敵ではないぞ!!」 ヤミマルの剣がレッドのスーツを切り裂く。 残りの4人もヤミマルに立ち向かっていくが、手も足も出ない。 ブラックターボ「Tハンマー!!」 ブラックが跳びながら振り下ろした固有武器・Tハンマーを剣で受け止め、蹴り飛ばすヤミマル。 斜面に激突して転がるブラック。 イエローターボ「Bボーガン!!」 ヤミマルは固有武器・Bボーガンから放たれた矢を剣で切り払い、ドロップキックを浴びせてイエローを迎撃。 ブルーターボ「Jガン!!」 固有武器・Jガンと光線銃・ターボレーザーを合体させたJマシンガンでヤミマルを狙い撃つブルー。 連続して撃ち出される青い光弾を剣で弾きながらヤミマルが肉薄、重い突きを食らわせる。 ピンクターボ「ステッキブーメラン!!」 固有武器・Wステッキを投げつけるピンク。 だがヤミマルは剣を野球のバットのように振るってWステッキを打ち返し、ピンクにジャストミートさせた。 最後に残ったレッドが固有武器・GTソードでヤミマルと切り結ぶ。 実力伯仲──だがヤミマルの剣の一撃でレッドのスーツが切り裂かれ、その痕が黒く焼け焦げる。 傷ついたレッドに4人が駆け寄る。 レッドターボ「プラズマシュートだ!!」 ターボレンジャー「&big(){&bold(){ターボレーザー・プラズマシュート!!}}」 5人が一斉にターボレーザーを発砲。5つの光線がヤミマルの頭上で収束、巨大なプラズマ火球となり、ヤミマルめがけて振り下ろされる。 プラズマシュートはこれまで幾多の暴魔獣を倒した最強技。さしもの流れ暴魔もこれで終わりか── ヤミマル「でやあああっ!!」 しかしヤミマルは、プラズマ火球を剣で真っ二つに切り裂いてしまった! 綺麗に割れたプラズマ火球が地面に接触して大爆発を起こす。 ターボレンジャー「うわあああああっ!!」 ジャーミン「なんという奴だ!」 ピンクターボ「プラズマシュートが負けるなんて……」 ヤミマル「わかったか、流れ暴魔ヤミマルのすごさ! ターボレンジャー、覚悟!!」 ヤミマルが次々にターボレンジャーを切り捨てていく。 レッドターボ「退けーっ!!」 ターボレンジャーが撤退。それを見たヤミマルはジャーミンとドグウボーマに向き直ると、額から光線を放ち、ドグウボーマを土偶に変えてしまった。 ジャーミン「あっ、何をする!」 ヤミマル「もらっとくぜ」 ヤミマルはジャーミンを無視して掌から光の鞭を放ち、土偶化したドグウボーマを絡め捕って姿を消した。 太宰博士の研究所。 ヤミマルに斬られた力の左肩に貼られたガーゼには血が色濃くにじんでいる。 力「博士…… 悔しいです!」 太宰博士「恐ろしい奴だ…… 奴はいったい何者なんだ?」 大地「シーロン、いったい流れ暴魔とは何なんだ?」 シーロン「すみません、知らないのです。私も今、初めて知ったのです」 はるな「シーロンも知らない……!?」 太宰博士「今は一刻も早く、プラズマシュートに代わる必殺武器を開発することだ…… さもなければ、流れ暴魔ヤミマルには勝てない」 暴魔百族の根城・暴魔城では、暴魔博士レーダがジャーミンたちに流れ暴魔について説明している。 レーダ「流れ暴魔とは、暴魔百族にも加えてもらえぬ半人前の暴魔よ。おそらく2万年前、封印を免れたのであろう」 ジャーミン「しかし、そのような半人前の暴魔が、なぜプラズマシュートを破るほどの技を持っていたのでしょうか?」 暴魔大帝ラゴーン「おそらく2万年の間に腕を上げたものと思え。小癪な奴だが、果たして本当にターボレンジャーを倒せるかどうか、見てみるとしよう」 力「ヤミマルの奴……」 緑豊かな道を歩く5人の前に流星が現れる。 力「流星……」 流星「どうした? 暗いなぁ。失恋でもしたのか?」 流星が力の左肩を叩く。痛みに悶える力。 流星「おおっと、すまんすまん。怪我してたのか。……どうしたんだい。いったい、誰にやられたんだい?」 力「ほっといてくれ」 5人が歩き去る。 力、ふと自分の左肩に触れて── 力「……もしかして、&ruby(あいつ){流星}が!?」 振り向く力。しかし、すでに流星の姿は消え失せている──。 流星を探して自然公園に出た5人。そこにドグウボーマが現れ、土偶型の光弾を放ってきた。 5人「&bold(){ターボレンジャー!!}」 5人はターボレンジャーに瞬間変身して攻撃を防ぐ。そこにヤミマルも現れた。 ヤミマル「ターボレンジャー、今度は逃がさんぞ。勝負!!」 ヤミマルの左肩に現れた使い魔・ヤミクモが吐き出した糸が固まって槍となる。 レッドターボ「行くぞ!!」 ブラック、ブルー、イエロー、ピンク「おう!!」 駆け出すターボレンジャー。 だがヤミマルは見事な槍さばきで5人を圧倒、さらにヤミマルの下僕となったドグウボーマも加勢する。 続いて鎖鎌を取り出し、レッドとイエローを切りつけ、ピンクを締め上げるヤミマル。 太宰博士「ターボレンジャー…… 新必殺武器さえあれば……!」 悔しさに拳を握り締める太宰博士。 シーロン「神様、ターボレンジャーを助けてください!」 何もできずに地面を転がるターボレンジャー。 ヤミクモが吐き出した糸が固まって剣となり、ヤミマルの手に握られる。 ヤミマル「とどめはプラズマシュートを打ち破ったこの剣で刺してやる」 レッドターボ「そうはさせるものか……!」 傷ついた体をおして、レッドが単身ヤミマルに近づいていく。 ピンクターボ「レッド!」 ヤミマル「ほぉー、さすがはレッドターボ…… だがこの剣は誰にも防げぬ!」 ヤミマルの攻撃に吹き飛ばされ、岩を背にして立つレッド。ヤミマルの剣が振り下ろされる。 レッドは紙一重で回避。背後にあった岩が真っ二つに切り裂かれた。 レッドターボ「くっ、ターボレーザー!」 ヤミマル「ぐああっ!」 ターボレーザーの一撃がヤミマルの剣を弾く。 剣は宙を舞い──なんと、ドグウボーマの脳天に突き刺さった! 苦しむドグウボーマにレッド以外の4人の連続攻撃が決まる。 レッドターボ「&big(){&bold(){GTクラッシュ!!}}」 最後は4人を踏み台にして跳躍したレッドがGTソードを振るい、ドグウボーマを撃破した。 ヤミマル「くっ…… おのれ!!」 ヤミマルの指笛を合図に、ヤミクモが暴魔再生巨大化光線を照射。 ドグウボーマが巨大な姿となって蘇生される。 レッドターボ「ターボマシン、発進!」 太宰研究所から5台のターボマシンが出撃。 レッドターボ「&bold(){合体シフト・ターボロボ!!}」 ターボレンジャー「&big(){&bold(){チャージアップ! ターボロボ!!}}」 ターボマシンが合体してターボロボとなる。 向かってきたドグウボーマの腹に連続ボディブローを食らわせ、投げ飛ばすターボロボ。 ドグウボーマは土偶の姿になり、目から光線を放って反撃する。 ターボロボが跳躍して土偶姿のドグウボーマを蹴飛ばすと、ドグウボーマは元に戻った。 レッドターボ「高速剣だ!!」 ブラック、ブルー、イエロー、ピンク「おう!!」 ターボロボの両目が輝き、高速剣が取り出される。 高速剣でドグウボーマの腹を貫き、そのまま投げ飛ばした後、逆手でX字に切り裂く! ドグウボーマが爆発四散し、最期を遂げる。 戦いを終えた5人の耳に、流星の口笛が聞こえてきた。 流星は人気のない河原で、小石を弄んでいる。 流星と対峙する5人。 力「流星……」 流星は何も言わず、小石で水切りをした後、口笛を吹きながら立ち去った。 #center(){|CENTER:&br()果たして、流星 光とは何者?&br()そして…… もう一人の敵・&br()流れ暴魔ヤミマルとは何者?&br()&br()謎の強敵を迎えて、&br()果たしてターボレンジャーは、&br()プラズマシュートに代わる必殺武器を&br()完成させることができるのであろうか?&br()&br()|} #center(){|BGCOLOR(#000006):COLOR(white):CENTER:&br()&big(){&big(){&bold(){つづく}}}&br()&br()|}