宇宙空間。 異形の石像が、空間を漂っている。 隕石が衝突して、表面の外郭が砕け飛ぶ。 闇の女戦士、妖麗戦士カルミラが、石化状態から甦る。 カルミラ「よくも、よくもこの私を…… トリガァァ──ッッ!!」 ところ変わって、主人公の青年、マナカ ケンゴ。 自ら手がけた植物「ルルイエ」を、丹念に世話している。 ケンゴ「焦らなくていいからね。いつか素敵な花を咲かせて、みんなを笑顔にするんだよ。スマイル、スマイル!」 銀髪の謎の巫女ユザレが、虚空より姿を現す。 ユザレ「ケンゴ──」 ケンゴ「君は…… 誰?」 ユザレ「あなたは── 光であり──」 黒い霧が立ち込め、ユザレの姿が消え、ケンゴの周囲も黒い霧に覆われる。 ケンゴ「わぁ、わぁっ!?」 真っ暗となった中、二つの瞳が光り、闇の中に巨大な人型の姿が見える。 ケンゴ「闇の…… 巨人?」 その巨人が、ケンゴ目がけて闇の光線を放つ──! ケンゴ「わあぁぁっ!?」 ケンゴが自宅のベッドで、汗びっしょりで飛び起きる。 ケンゴ「はぁ、はぁ…… また、あの夢……」 居間に降りると、母のレイナが食事の支度をしつつ、出かける準備をしている。 ケンゴ「おはよう、母さん」 レイナ「おはよう、ケンゴ」 ケンゴ「あれ、もう行くの?」 レイナ「うん。今日は会長を、遺跡に案内することになってるから。ケンゴも花の世話ばかりしてないで、ちゃんと自分のごはん食べて、遅刻しないよう、会社行きなさいよ」 ケンゴ「いや、もう子供じゃないんだし、大丈夫だよ」 レイナ「同じシズマ財団の一員として、母さんに恥、かかせないでよね」 ケンゴ「はいはい」 レイナ「じゃ、お先に」 ケンゴ「行ってらっしゃい!」 レイナ「はぁい、行ってきま──す!」 レイナが出かけると、ケンゴはすかさず食事そっちのけで、ルルイエに水をやる。 ケンゴ「おなかすいた? いっぱいお食べ~」 ケンゴは、ルルイエを収めたカプセルを大事に抱えたまま、出かける。 ケンゴ「今日は、16時から雨の散布か…… よぉし」 頭上には、赤い空が広がっている。 人類が火星進出を果たした時代、ここは火星に築かれた居住区である。 #center(){|BGCOLOR(#201000):COLOR(white):CENTER:&br()&big(){&big(){&bold(){光を繋ぐもの}}}&br()&br()|} #center(){((本作は『ウルトラマンティガ』の一部の設定を流用し一新した作品で。サブタイトルの元はティガの第1話「光を継ぐもの」。))} 街頭ビジョンで、地球平和同盟TPUにより対怪獣部隊「&ruby(ガッツセレクト){GUTS-SELECT}」の結成が報じられ、隊長のタツミ セイヤが説明をしている。 タツミ『今から6年前、突如地球を襲った怪獣たち。これらの脅威に対抗するため、地球平和同盟TPUが総力を挙げ、対怪獣用戦闘艇を完成させました。その名も『ナースデッセイ号』! そして、AI制御による遠隔操作で、怪獣への攻撃だけではなく、災害時での迅速な救助活動を可能にする、『GUTSファルコン』です!』 ケンゴ「すごぉい!」 タツミ『これらの最新技術を運用するために結成されたのが、我々『GUTS-SELECT』です!』 ケンゴ「怪獣かぁ…… 地球は大変だなぁ」 大財団・シズマ財団による火星開拓局。 ケンゴの勤める、植物研究センター。 ケンゴや多くの局員が植物栽培の研究をしているものの、ほとんどの植物はうまく育たずに、枯れている。 ケンゴ「駄目だ、枯れてる…… 有機物を加えず、火星の土壌で植物を根づかせるのは、やっぱり無理なのかなぁ? 火星にも重金属の少ない土壌さえあれば…… うぅん、地表じゃなくて、もっと地下深く…… 遺跡周辺の土なら? あっ、そうだ! 母さんにお願いしてみよう」 ケンゴは、レイナの勤め先を訪れる。 レイナと共に、シズマ財団の会長であるシズマ ミツクニがいる。 レイナ「シズマ会長。わざわざ地球からお越しいただき、ありがとうございます」 シズマ「私も研究者だからね。遺跡のこととあらば、じっとしていられないよ」 ケンゴ「これから遺跡の調査か…… ちょうどいいや!」 レイナはシズマと調査団たちを、火星の遺跡へと招く。 レイナ「こちらです」 ケンゴも密かに、何食わぬ顔で跡を追い、遺跡の中へと入って行く。 シズマ「約20年前、この遺跡を発見したのは、火星開拓局の一員としてやって来た、マナカレイナくん。あなたでしたね」 レイナ「はい。発見当初、遺跡は浅い地中に広がっているだけだと思われていました。ですが、さらなる調査により、遺跡はもっと地中深く、逆ピラミッド状に存在することがわかりました。そして、地下へと発掘を広げる過程で、先日見つかったのが、こちらです」 そこには、巨大な剣の形をした遺跡が、地面から突き出している。 シズマ「おぉっ……!」 レイナ「成分分析の結果、この剣は、シズマ会長が地球で発見した遺跡と、同じであることがわかりました。つまり、今から3000万年前──」 シズマ「超古代文明…… やはり光の巨人は、火星に!」 剣の切っ先が、ぼんやりと光る。 シズマ「こ、この光は!?」 レイナ「わかりません! こんな現象は、初めてです!」 ケンゴが陰でそれを見ている。 無意識にそばの壁面に触れていた両手が、剣と同様に、ぼんやりと光り始める。 ケンゴ「えっ!? 僕 光ってる…… なんで!?」 レイナの手にするタブレットが、警報を鳴らす。 音声&i(){『ドーム外壁付近に、未確認エネルギーを探知』} 遺跡の外では、巨大な怪獣・超古代闇怪獣ゴルバーが、地中から姿を現している。 ゴルバーが地面に向かって激しい光線を吐きかけ、シズマやケンゴたちのいる空間が激しく揺れる。 シズマ「みんな、早く! 早く表へ逃げるんだ!!」 その衝撃で、ケンゴの頭上に、大きな瓦礫が落ちてくる。 シズマ「危ない!!」 ケンゴの頭上に光の壁が張られ、瓦礫を防ぎ、ケンゴは無傷で済む。 ケンゴ「えっ!? 僕は…… どうなってんの!?」 シズマ「君は、一体……!?」 レイナ「ケンゴ!? あなた、なんでこんなところに!?」 ケンゴ「ごめん、母さん。遺跡の土が欲しくて……」 音声&i(){『第2隔壁、起動します』} 地中から隔壁が出現してゴルバーを防ごうとするものの、ゴルバーはそれをものともしない。 ケンゴやシズマたちが、遺跡の外へと脱出し、ゴルバーを目にする。 ケンゴ「怪獣!? どうして火星に怪獣が!?」 シズマ「ゴルザ! いや、メルバが融合されているのか!!」 音声&i(){『自動迎撃システム、起動します』} 砲塔が現れ、ゴルバーに攻撃を加える。 しかしゴルバーには通じず、ゴルバーは砲塔をやすやすと破壊する。 ケンゴたちのもとがさらに激しく揺れ、レイナが転倒する。 ケンゴ「母さん!?」 レイナ「私はいいから、早く逃げなさい!!」 シズマは、GUTSスパークレンス・ハイパーガン(銃)を手にし、スマートキー型のアイテム・GUTSハイパーキーを装填する。 音声&i(){『Boot Up ! Shock wave !』} シズマの銃撃により、[[怪獣ゴモラ>http://neoending.web.fc2.com/animeop/agyou/op-ultgalax.htm]]の力を込めた衝撃波が放たれる。 ゴルバーが強烈な銃撃を受けて、地中へと逃れる。 その光景を、カルミラが見ている。 カルミラ「見つけたよ…… トリガー」 ケンゴたちのもとでは、負傷した多くの調査員たちが、救助や手当を受けている。 ケンゴ「こんなときに…… 僕には、何ができるんだ?」 傍らに、ユザレが姿を現す。 ケンゴ「君は…… 夢に出てきた!?」 ユザレ「あなたは── 光であり──」 ユザレが姿を消す。 代わって、シズマがケンゴの前に現れる。 シズマ「君が、夢見る未来は何だ?」 ケンゴ「……えっ?」 シズマ「夢見る未来は、人それぞれにきっとあるはずだ。私にも、そして、君にも」 ケンゴが、自分の抱いているルルイエを見つめる。 ケンゴ「……この花、僕の研究で生まれた新種で、『ルルイエ』って名づけました。火星の土で根づく花を研究して、成功したのは、たった1株だけ。でも…… ずっと、つぼみのままなんです」 周囲では、未だ大勢の人々が、ケガで苦しんでいる。 ケンゴ「どんなに苦しいときにも、悲しいときでも、見た人がみんな、思わず笑顔になる! そんな花を咲かせたい。みんなを笑顔にしたい! それが、僕の夢見る未来です」 シズマ「だったら、君は自分の手で、未来を切り拓かなければいけない」 シズマが、自分のアタッシュケースを開けて見せる。 中には、GUTSスパークレンス、GUTSハイパーキーなどの一揃いの装備品がある。 シズマ「かつて、勇敢に戦い、運命を切り拓いた者がいた──」 [[ウルトラマンティガ>ウルトラマンティガの第1話]]のイメージが重なる── シズマ「夢見る未来を手に入れるため、自分に何ができるのか。それは、誰も教えてはくれない。自分自身で、出さなきゃならない答もある」 ケンゴ「僕は……」 カルミラ「暴れな、ゴルバー!」 カルミラの指示で、ゴルバーが再び地上に現れ、暴れ始める。 レイナ「ケンゴ! あなたの、思うままになさい」 ケンゴ「僕は…… みんなを笑顔にしたい!!」 シズマ「ならば、光をその手に継ぐんだ!!」 レイナ「……」 ケンゴ「母さん…… スマイル、スマイル! ほら、ルルイエのこと、頼んだよ」 ケンゴはレイナに笑顔を残し、ルルイエを預けて、シズマの装備品を受け取って駆けだす。 ケンゴは、あの剣の遺跡のもとへとやって来る。 突如、足元に穴が開き、ケンゴは真下へと落下する。 ケンゴ「わぁ、わぁ──っっ!?」 ケンゴが落ちた場所は、さらに下層の空間。 ケンゴ「ここは…… 遺跡の最下層!?」 巨大な石像が鎮座している。 その姿は、ケンゴが夢で見た闇の巨人に酷似している。 ケンゴ「わぁっ!? 闇の、巨人……! いや、違うのか……?」 (ユザレ『あなたは── 光であり──』) ケンゴの両手が再び、ぼんやりと光りだす。 ケンゴ「これは…… 光?」 突如としてカルミラが現れ、その巨人の石像に攻撃を加える。 カルミラ「ハッハッハ!」 ケンゴ「異星人!?」 カルミラ「やっと見つけたよ」 ケンゴ「なんで僕、異星人の言葉がわかるんだ?」 カルミラ「もっと情熱的な再会を想像していたんだけどねぇ。3000万年分の想い、受け取ってくれるかい!? トリガー!!」 ケンゴ「トリガー……?」 カルミラが光の鞭カルミラウィップを振るい、巨人像に攻撃を続ける。 ケンゴ「やめろぉ!!」 カルミラ「何だい、人間。邪魔だよ!」 カルミラがケンゴにも攻撃の手を向ける。 ケンゴ「わぁっ!?」 ケンゴが倒れるが、口に血を滲ませながらも、必死に立ち上がる。 ケンゴ「やめろぉぉ──っ!!」 カルミラ「邪魔って言ったの、聞こえなかったのかい!!」 ユザレが現れ、光の壁を作り出して、カルミラの攻撃を防ぐ。 カルミラ「ユザレ!? また会うとはねぇ!」 ユザレがカルミラの防御し続けるものの、数度の攻撃を食らい、その姿がかき消える。 ケンゴ「や、やめろ…… 僕は、僕は……! みんなを笑顔にしたいんだぁぁ!!」 必死の叫びに呼応するように、巨人像から光が放たれて、カルミラを吹き飛ばす。 光がケンゴの周囲を漂い、ケンゴのGUTSハイパーキーに集まり、ハイパーキーに光の巨人の姿が浮かび上がる。 ケンゴの脳裏に浮かぶイメージ。 光り輝く遺跡の前で、誰かが神器を手にし、宙に掲げている。 ケンゴ「このイメージは……?」 ハイパーキーのスイッチを入れると、音声が応答する。 音声&i(){『Ultraman Trigger ! Multi Type !』} ケンゴ「ウルトラマントリガー……? よし、やってみる!!」 GUTSスパークレンスを、イメージで見た神器の形、スパークレンスモードに変形させ、さらにハイパーキーを装填する。 音声&i(){『Boot Up ! Zeperion !』} ケンゴ「&bold(){未来を築く、希望の光!! ウルトラマントリガ──ッッ!!}」 ケンゴがスパークレンスを宙に掲げるや、ケンゴ自身が光と化して、巨人像の中へと吸い込まれてゆく。 カルミラ「何っ!?」 ケンゴは巨人像と一体化して巨大変身を遂げ、光の巨人、ウルトラマントリガー・マルチタイプとなる。 音声&i(){『&bold(){Ultraman Trigger !! Multi Type !!}』} シズマ「光の巨人…… やはりこの世界にも、ウルトラマンが」 レイナ「ケンゴ……!」 トリガーとゴルバーの戦いが始まる。 巨体同士がぶつかり合い、ゴルバーの光線をトリガーが光線で撃ち落とす。 そこへカルミラも参戦し、トリガーを羽交い絞めにする。 カルミラ「私に会うために、人間を取り込んで復活したのかい? ずいぶん情熱的じゃないか!」 シズマ「闇の巨人…… とうとうこの時が来たのか!」 1対2の戦いとなり、トリガーは苦戦を強いられる。 トリガーのインナースペース(内部空間)で、ケンゴ自身も苦しんでいる。 ケンゴ「どうすれば……!?」 その脳裏に、トリガーが剣を振るっている姿がよぎる。 ケンゴ「そうか、あの剣は!!」 ケンゴが手をかざす。 レイナがシズマに見せていた剣型の遺跡が、地上へと飛び出し、巨大剣「サークルアームズ・マルチソード」となって、トリガーの手に収まる。 トリガーが武器を得て反撃に転じ、カルミラの拘束を振りほどき、ゴルバーに斬撃を加える。 ケンゴがGUTSハイパーキーを、マルチソードに装填する。 音声&i(){『&bold(){Maximum boot up ! Multi ! Zeperion sword finish !!}』} マルチソードの必殺の斬撃技ソードフィニッシュにより、巨大な光の刃が放たれる。 ゴルバーが強烈な攻撃を受けて、倒れる。 カルミラがカルミラウィップで攻撃をしかけるが、トリガーはマルチソードでことごとくかわす。 さらにトリガーがソードを地面に突き立て、必殺光線の構えをとる。 カルミラはすかさず、ゴルバーを目覚めさせる。 必殺のゼペリオン光線が炸裂──! ゴルバーがカルミラの盾となり、木端微塵に爆散する。 人々から歓喜の声が上がる。 シズマ「やはり、ケンゴくんは……」 カルミラ「ハッハッハ! そうじゃないと、つまらないねぇ!」 カルミラが黒い霧に包まれて、姿を消す。 ケンゴが装備一式を、シズマに返そうとする。 ケンゴ「ありがとうございました!」 シズマ「これは、君が持っていなさい」 ケンゴ「えっ?」 シズマ「ケンゴくん。私と一緒に、地球に来て欲しい。GUTS-SELECTの、一員として」 ケンゴ「えぇっ!?」 地球、シズマの邸宅。 豪華な一室で、テレビがトリガーの戦いを報じている。 『こちらが、火星を襲撃した怪獣の映像です。怪獣は、突如現れた巨人によって倒され、巨人も姿を消しました』 シズマの1人娘、シズマ ユナがテレビに見入っている。 その顔は、黒髪以外は、なぜかユザレと瓜二つ。 ユナ「本当にいたんだ、光の巨人! やっぱり、お父様は正しかったってわけね!」 隣で幼馴染みの青年、ヒジリ アキトが、複雑な面持ちをしている。 アキトの手にも、GUTSハイパーキーがある。 スイッチを入れるが、何も起こらない── #center(){&big(){(続く)}}