スパイダーマン=ピーター・パーカーは、電気人間となったマックス・ディロンことエレクトロ、ピーターの幼馴染で危険な薬の副作用で自我を失ったハリー・オズボーンことグリーン・ゴブリンとの戦いの最中、父リチャードの失踪の手がかりがあるルーズベルト駅に隠された列車の中の秘密研究所にあったデータとメッセージから、生物兵器を作ろうと企むオズコープ社の陰謀を突き止めた。
一方で、留守電で恋人のグウェン・ステイシーがオックスフォード大学に合格しイギリスに行くことを知ったピーターはグウェンを追って一緒にイギリスに行こうと決断。
しかしその矢先、グリーン・ゴブリンとエレクトロにより大都市が停電となり、スパイダーマンは2人と戦う。
加勢したグウェンによって発電所は稼働し、大停電による混乱は免れたが、ゴブリンによってグウェンが人質にされ、戦う中でグウェンが落ちてしまう。
スパイダーマンは糸で救おうとしたものの間に合わず、落下の衝撃でグウェンは命を落としてしまったのだった。
グウェンの死で失意したピーターはグウェンの墓を無言のまま見続けていた。
その頃、とある家庭では、スパイダーマンのファンであるホルヘ少年が、以前スパイダーマンが逮捕したアレクセイ・シツェビッチが脱獄したことを報じるニュースを見ていた。
リポーター『ロシアのギャング、アレクセイ・シツェビッチはヴォルトと呼ばれる秘密刑務所から正体不明の男達の手引きにより脱獄しました。スパイダーマンが5か月前に姿を消して以来、犯罪は増え続けています。スパイダーマンの不在はニューヨーカーに心に大きな穴をあけました。スパイダーマンを問題視していたニューヨーク市警さえも待ち望んでいます』
ピーターと叔母のメイもそのニュースを見ていた。
リポーター『世界は同じ質問を繰り返しています──スパイダーマンはどこにいるのか?』
ピーターはテレビの電源を消す。
メイ「残念ね、あのスパイダーの人。皆が必要としてるのに消えちゃうなんて…… どこ行くの?」
ピーター「別にこっちで食べる」
メイ「ピーター、どこに行くのよ」
ピーターは立ち上がり、メイに呼ばれる。
ピーター「わからない」
自室へ向かうピーター。
メイ「不思議なんけどね。私、このところ家の中を片付けてて、まとめて入れたのよ。ベンのものもこの箱に。そしたらね、箱が重くなった分、気持ちが軽くなった」
ピーター「それ、捨てるの?」
メイ「いいえ、捨てるわけがない! 捨てられないわ、私の一部だから。ただ整理したの。前よりいい場所に。最後にもう一度よく見て、しまうべきところにしまう」
ピーターは自室でグウェンの写真などを見、思い出を思い返していた。
その中で「グウェンのスピーチ」と書かれたUSBメモリを見つけ、ピーターがパソコンにそれを挿入すると、グウェンが卒業後のスピーチが映り、ピーターはそれを見る。
グウェン『今日のように天気がいい希望を感じるのは簡単なことです。ですが、この先そうでない日もあります。孤独だと感じる日もあるでしょう。そんな時こそ希望が必要なのです。どれほど落ち込んでいても、どれほど喪失感にさいなまれていても忘れないでほしい。希望をいだきつづけばならないと』
グウェンの過ごした日々を振り返るピーター。
グウェン『希望を捨てず苦しみに負けない強さを持つのです。私は皆さんに希望そのものになってもらいたい。希望が必要なのです。たとえ失敗に終わっても、それこそが最高の生き方です』
そのスピーチを聞きながらピーターは書類や地図などいろいろと片付け段ボール箱にしまう。
グウェン『周りにいるのは、今の私たちを作ってくれた人たちです。お別れするのは寂しいですが、お互いに与えあった者がこれからの人生で私たちに教えてくれるはずです。自分が、何者なのか。何をすべきなのか。素晴らしい4年間を共に過ごした仲間を私は忘れません』
ピーターは自分とグウェンの写真のホルダーを置いた後、クローゼットを開け、中にあったスパイダーマンのマスクを見る。
ニューヨーク市街地では──
客「何?」「何だろう?」「避難してる?」
人々が何かから逃げていた。
パワードスーツ「ライノ」を装着したアレクセイが街で暴れている。
銀行を破壊し金を奪うライノ。ピーターはスパイダーマンのマスクを手にそれを見ていた。
警官隊が攻撃するが頑丈な装甲の前には無力であり、ライノは銃器で警官隊を攻撃する。
警官「伏せろ! 身を隠せ!」
リポーター『私がいるパーク・アベニューと56丁目の交差点は現在大変な混乱となっています。兵器を装備したアーマースーツを身につけた男がミッドダウンを破壊し続けています』
ライノことアレクセイはコックピットを展開する。
アレクセイ(ライノ)「俺はライノだ! 戻ってくると言っておいただろうが!」
警官隊が攻撃を繰り返すが、ライノはコックピットを閉じて銃撃を防ぎ、銃器で再び攻撃する。
スパイダーマンの服を着たホルヘがライノの元に行く。
母親「駄目よ、駄目!」
警官「子供が!」
母親「あれは、うちの子なの! 駄目!」
警官「撃つのをやめろ! 全員発砲をやめるんだ!!」
慌てて発砲をやめる警官隊。
警官「市民が前に出ました、子供です。発砲しないでください」
ホルヘはライノの前に立ち続けている。
命を犠牲にする覚悟で、怯えない。
警官「坊や! こっちに戻れ!」
警官が呼びかけるも、ライノに攻撃され、慌てて避難。
ライノ「見ろニューヨーク。スパイダーマンが戻って来たぞ?」
母親「あれはうちの子なの。止めて!」
ホルヘがスパイダーマンのマスクをかぶる。
ライノ「ほう、勇敢な子だ。アレクセイが怖くねえのか? 坊や」
ライノはゆっくりと歩行しホルヘに近づいていく。
市民「おい!」「ほら!」
ホルヘを見守ってた市民たちが、何かの音に気付く。
スパイダーマン「やぁ、スパイダーマン」
ホルヘが後ろを振り返ると、そこには本物のスパイダーマンがいた。
ピーターはグウェンのスピーチに言葉を揺さぶられたのか、再びスパイダーマンとなって戦う勇気を取り戻したのだった。
ホルヘ「戻ってくると思ってた」
スパイダーマン「代役をありがとう。君ほど勇敢な子を見たことはない。悪党は僕に任せて? ママは君に任せる。よし、じゃあ行くんだ」
ホルヘは母親の元へ戻り、市民や警官らは歓声を上げる。
ライノ「俺と戦う気か? 俺とやる気だな? ああ?」
スパイダーマンはメガホンでライノに話しかける。
スパイダーマン「ニューヨークの善良な市民と世界中のサイに代わって言う。機械仕掛けの前足を挙げて、観念しろ!」
ライノ「断る! お前を叩きつぶす! 殺す! 粉々にする!!」
スパイダーマン「やりやすいようにそっちに行こうか」
ライノ「来いよ!」
スパイダーマン「今、行くよ!!」
ライノのミサイル攻撃が迫る中、スパイダーマンは道路のマンホールを糸にくっつけミサイルを防ぎ、弾く。
スパイダーマン(ああ──ここが僕の居場所だ)
スパイダーマンがライノに向かっていくところで物語は終わる。
最終更新:2022年03月09日 17:35