宇宙刑事ギャバンの第43話

宇宙刑事ギャバンこと一条寺 烈の目の前で、
父ボイサーがマクーの魔女キバの拷問に遭っている。

キバ「さぁ、吐かぬか」
烈「やめてくれぇ! やめろぉ、やめろぉ!」

烈が夢から目覚める。

ミミー「ギャバン、悪い夢でも見たの?」
烈「拷問で、殺されてしまう…… 父さんは毎日、地獄の苦しみを味わされているんだ」
ミミー「あまり心配し過ぎるとギャバン、あなたが参ってしまうわ」
マリーン「ギャバン。残念だけど、剣山に連なる飛竜山や旭山には、反応がないわ。マクーの基地らしい反応がね」
烈「そうか……」

ギャバンは、父ボイサーを救出するために、
剣山のマクー基地に突入した。
だがボイサーはすでに、別の基地に移された後であった。
果たして、ボイサーはどこへ連れ去られたのであろうか?
「早く救出しなければ」
──烈の心は焦った。



再 会



鬼首島に築かれた、マクーの総本部基地。

サン・ドルバ「拷問に次ぐ拷問にも、ビクともしない。何という奴だ、あのボイサーという男は! 我々が欲しいのは、レーザー増幅システムの設計図なのだ。ホシノスペースカノンは、もう90パーセント完成している!」
キバ「ボイサーめ…… わしの自白液に耐えるとは」
サン・ドルバ「普通の男なら、とっくの昔にくたばっている。言うなれば、不死身としか言いようがない。レーザー増幅システムの設計図さえ手に入ればな」
キバ「なぁに、今度は必ず吐かせてみせる。今度は必ず」
サン・ドルバ「頼むぞ、キバ」
キバ「任せておけ。ハハハハハ!」


ボイサーは基地奥の牢屋に囚われ、虫の息となっている。

ボイサー「あの薬をもう一度注射されたら、私の命は…… あぁ、逢いたい…… 成長した息子に一目、逢いたい……」

その脳裏に、幼い頃の烈の姿がよぎる。

(烈『父さぁん! 父さぁ──ん!』)

ボイサー「ギャバン…… ギャバン……」


一方の烈は、港で海を見つめている。
彼方の景色に、ボイサーの姿がだぶる。

烈「はっ…… 父さん!? 見えた。確かに父さんの姿が」

ボイサー「ギャバァァ──ン!!」

烈「沖のほうから、父さんの声が!?」


ギャバンは、沖から微かに聞こえたボイサーの声を頼りに
ドルギランを飛ばせた。

烈がミミーやマリーンとともに、地上の光景に目を凝らす。

ミミー「ギャバン、あそこに島が見えるわ」
マリーン「鬼首島よ」
烈「レーダーで調べてみてくれ。──どうだ?」
マリーン「おかしいわ、何の反応もない」
ミミー「島にはコンクリートの壁があるわね」
烈「バリアだ、赤外線を弾いているんだ」
ミミー「じゃあ……」
烈「よし、着陸だ!」

ドルギランが降下。たちまち島に築かれた基地から、砲撃が響く。
さらに、マクーの戦闘円盤も飛来する。

烈「ギャビオン、出動!」

烈がコンバットスーツを纏って宇宙刑事ギャバンとなり、重戦車ギャビオンで出動する。

ギャバン「ギャビオンレーザー!」「スクーパー、出動!」「スクーパーレーザー、発射!」

ギャビオンの砲撃、さらにドリルタンク・スクーパーのスクーパーの攻撃で、島の地下のマクー基地が激しく揺れる。

サン・ドルバ「おのれ、ギャバンめ!」
ダブルガール「早く避難なさってください!
サン・ドルバ「ボイサーを連れて行く」

基地を脱出しようとするサン・ドルバたちの前に、ギャバンが立ち塞がる。

ギャバン「父さんには指1本触れさせないぞ!」

頭上から瓦礫が次々に降り注ぎ、サン・ドルバたちの姿が掻き消える。

ギャバン「スクーパー、出動!」

スクーパーが壁面を砕く。
蒸着を解いた烈がその突破口を抜け、奥へと突入してゆく。
基地奥の牢屋の中、倒れている人影が見える。

烈が懐から、ボイサーの形見の懐中時計を取り出し、蓋を開く。
幼い自分と亡き母の写真。オルゴールの音色が響く。
その音色に気づいた牢屋内の人影──ボイサーが、うっすらと目を開く。

ボイサーがふらふらと身を起こし、鉄格子の向こうの烈の姿に、目を凝らす。
烈の目に、次第に涙が滲む。

ボイサー「ギャ……バン……」

逞しく成長した息子の手を、ボイサーが握りしめる。
烈の顔は子供のように綻び、涙が滝のようにあふれてくる。


ボイサーは無事に、ドルギラン艦内に収容される。

ミミー「ドルギラン特製のスープですよ。元気が出ますよ。どうぞ」
ボイサー「ありがとう」

烈が、ボイサーの親友である星野博士の娘、月子を連れて来る。

ボイサー「月子……か?」
月子「おじ様! おじ様ぁ!」

月子が涙ぐみながら、ボイサーに抱きつく。

ボイサー「元気で何よりだ……」
月子「おじ様こそ、よくご無事で……」
ボイサー「秘密はな、守り通したぞ。君のお父様の秘密はな。ホシノシステムは、太陽熱を数万倍に増幅するシステムだ。これを平和利用すれば、石油に頼らなくて済むのだぞ」
烈「それをマクーは、悪魔の兵器に?」
ボイサー「そうだ。だからな、どんなことがあっても、守り通したかった……」
マリーン「よく耐えて、生き抜いてこられましたね」
ボイサー「たとえ、手足をもがれてもな。ハハハ」
ミミー「信じられないわ。マクーの拷問に耐えて、秘密を守り通すなんて」
烈「それが宇宙刑事、筋金入りさ。ねぇ、父さん?」
ボイサー「そうだ。いや、実はな。増幅システムの設計図は、わしの記憶の中には無かったんだよ。だから、いくら拷問されても、喋りようがなかったわけさ。ハハ……」
月子「じゃあ、秘密はどこに?」
ボイサー「ゴ、ゴホ、ゴホッ!」
烈「父さん!?」
マリーン「まだ安静が必要よ」
烈「さぁ、少し休みましょう」


ボイサーは病室のベッドに横になり、烈が寄り添う。

ボイサー「ギャバン…… 元気になったら、一緒に戦おうな。マクーと……」
烈「マクーは、僕に任せてください。とことん追いつめて、必ず!」
ボイサー「わしもやるぞ。フフ…… ゴ、ゴホッ」
烈「……まず、ゆっくりとお休みください。それからです」

ミミーが入室してくる。

ミミー「ギャバン、少し休んだら? 疲れたでしょう?」
烈「いや、俺は大丈夫だ。ずっとついていてあげたいんだ。今夜はな」
ミミー「……わかったわ」

ボイサーを烈に任せ、ミミーは病室を去る。


親子2人きりの病室で、静かに時が流れてゆく。

ボイサー「母さんに見せてやりたかったなぁ…… 大きくなったギャバンを」
烈「母さん……」
ボイサー「あれは、お前が6歳のときに死んだ。今ごろ、悔しがっているだろうなぁ…… 2人だけで逢ったりして」
烈「……お墓、参りに行きましょう。お父さんが、元気になったら」
ボイサー「うむ…… 地球は美しい星だ。一条寺民子も美しい娘だった……」

ボイサーが懐の懐中時計を開く。幼い烈と妻の写真。
オルゴールの音色が流れ始める。
音色の中、烈の脳裏に様々な想い出がよぎる。

幼い烈と両親と両親との思い出。
生き別れになったボイサーの懐中時計を見つけたときのこと。
父との再会を願い、ボイサーを捜し続けていた頃の思い出──

オルゴールの音色が終わる。
ボイサーの手に握られていたはずの懐中時計が、いつの間にか、彼の手からこぼれ落ちている。

烈「父さん? ……父さん!?」

返事は返らない。

烈「父さぁぁ──ん!! うっ、うぅっ……」

ミミー、マリーン、月子が入室し、ボイサーの死に気づく。

月子「おじ様ぁ──っ!」

烈「どうしてだ、父さん…… マクーの、地獄ような拷問に、耐えたのに……」

烈が涙を流しつつ、ボイサーの手を握り、顔を寄せる。
気づくと、ボイサーの手の平に、設計図の図面が浮かび上がっている。

レーザー増幅システムの設計図は、
ボイサーの皮膚に刻み込まれていた。
体温がある限り、
秘密が浮かび上がることはなかったのである。

ミミー「秘密を守るために、生き続けたのよ。お父さんは……」


烈が海岸に立ち、夕陽を見つめつつ、打倒マクーの決意を新たにする。

烈「父さん…… あなたが命がけで守り通りしたこの宇宙の平和を、これからは俺が守ります! 見ていてください!」



ギャバンは、父ボイサーに
本当の勇気と優しさを学んだ。
ギャバンの闘志は、
今まで以上に激しく燃えていた。

マクーを許すな!
蒸着せよ、宇宙刑事ギャバン!!



つづく


※この続きは本家エンディングドットコムをご覧ください。

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最終更新:2018年08月03日 17:37