超獣戦隊ライブマンの第46話

武装頭脳軍ボルトのドクター・アシュラは、大教授ビアスに切り捨てられ、天才の頭脳を失い、人間・(ぶす)(じま) (あらし)に戻ってしまった。
入院先の病院で、嵐が指を折って数を数えている。

嵐「4+8は…… えーと、えーっと…… わ、わぁっ、できん!! 俺はやっぱり、指が足りねぇと計算ができねぇんだ!」

自嘲する嵐。
ライブマンの面々が見舞いに来る。

勇介「完全に元の毒島 嵐に戻ってるぞ……」
嵐「なんて俺は間抜けなんだ……」


一方、ボルトの本拠地ヅノーベースでは、幹部の中で最後まで残ったドクター・ケンプとドクター・マゼンダが話し合っていた。

マゼンダ「アシュラもまた、利用されてただけだったなんて」
ケンプ「一体、ビアス様は何を考えておられるのか……」

そこに大教授ビアスとガードノイド・ガッシュが現れる。

ビアス「彼ら*1はみんな、君たちの競争相手としての役割を果たしたに過ぎないのだ。過酷な競争をさせてきたが、私は最初から、君たち2人に期待していたのだ…… その期待に応え、君たちは才能を伸ばした! 素晴らしき若者たちよ……」

ビアスがケンプとマゼンダの顔に触れる。
直々に称賛の言葉を受けて、2人の頬が緩む。

ビアス「見たまえ……」

得点表はケンプ、マゼンダ、共に920点。

ビアス「千点頭脳まであと少し! どちらが先に千点になるか…… 頑張りたまえ、若き天才たちよ」


町はずれの教会に、かつてボルトに参加したものの、嵐と同じように無能の烙印を押されて切り捨てられ、ライブマンとの戦いの果てに人間に戻ったドクター・オブラーこと尾村 豪がいる。
人間に戻って改心した豪はキリスト教に帰依し、日々、贖罪のために祈りを捧げていた。
その時、ボルトのボフラー戦闘機の編隊が教会のある町を爆撃し始めた。崩れる教会。
ビル群が炎上し、人々が逃げ惑う。
病院からその光景を目撃したライブマンが駆け出す。

勇介「みんな、行くぞ!」
鉄也「おう!」
めぐみ「OK!」
嵐「おのれぇ、ビアスめぇ!!」
丈「待て、嵐! 無茶するな! やめろ!」

窓から飛び出そうとする嵐を必死に引き止める丈。



オトコ嵐! 最後の戦い



嵐「ビアスめぇーっ!!」

制止を振り切り、がむしゃらに瓦礫の中を走る嵐。それを追う勇介たち。
次々に砲撃が降り注ぎ、爆炎が上がる。吹き飛ばされ、転がる嵐。
すぐさま起き上がった嵐の目の前で、爆炎が何かに吸い込まれるように消えていく。

嵐「……どうなってんだ!?」

爆炎を吸い取った「何か」がいる場所へ向かう嵐。
そこには頭脳獣バトルヅノーがいた。

純一「頭脳獣!」

身構える嵐。
バトルヅノーの右腕が火炎放射器に変化し、激しい火炎を吹き出す。

丈「危ない、嵐!!」

丈が飛び出し、火炎攻撃に苛まれる嵐をかばう。
バトルヅノーの腕や頭が武器に変化し、ガスや光線を放って勇介たちを襲ってきた。

めぐみ「一体、どうなってるの!?」

ドクター・ケンプも現れる。

ケンプ「フッハッハッハッハ! 教えてやろう。頭脳獣バトルヅノーはな、自分自身で武器を作り出すことができるのさ。灼熱の炎を吸って、灼熱の火炎放射器を…… 猛毒ガスを吸って、ガス噴射装置を! バトルヅノーは俺が作った、究極の最強頭脳獣なのだ!!」

バトルヅノーの両肩と腰に武器が増設される。その姿はまさに動く要塞と言うべきである。
バトルヅノーが左掌からミサイルを連射。それをかわして勇介たち5人がライブマンに瞬間変身を遂げる。

ライオン「ライオンバズーカ!」

イエローライオンがライオンバズーカで先制攻撃を見舞う。
しかしバトルヅノーはその攻撃を吸収、左腕をバズーカ砲に変化させ、イエローライオンに砲撃を返してきた。
吹き飛ばされるイエローライオン。

ライオン「うわぁっ!?」
ドルフィン「しっかりして!」
ビアス「素晴らしい頭脳獣だ。ケンプ、960点を与えよう」

ケンプの得点表が加算される。

ケンプ「もはや千点頭脳は俺に決まったも同然! どうだ、嵐、羨ましいか? とは言ってももうお前のようなバカには、縁のない世界のことだがな」
嵐「黙れ、黙れぇ!!」

嵐が果敢にバトルヅノーに挑むが、あっさりと吹っ飛ばされる。

ケンプ「バカは引っ込んでろ! ……恐獣ケンプ!!」

ケンプも獣人態の恐獣ケンプに変身。バトルヅノーとの連続攻撃がライブマンを襲う。

恐獣ケンプ「まさに最高傑作の頭脳獣! おぉ…… こんなものを作り出すとは、我ながら己の頭の良さに、惚れぼれするぜ!」
嵐「この野郎ぉぉ!!」

嵐が恐獣ケンプに挑むが、生身の人間の力はまったく通用しない。

恐獣ケンプ「しつこいぞ、ザコめ!」

片手であしらわれ、殴り飛ばされる嵐。

恐獣ケンプ「こんな下品な言葉は使いたくないのだが…… バカは死ななきゃ治らねぇようだな!!」
嵐「おのれぇぇぇっ!!」

バトルヅノーが嵐に狙いを定める。

ライオン「嵐っ!」

とっさにイエローライオンが盾となり、自ら砲弾を浴びる。

ドルフィン「ライオン!?」
ファルコン「ライオン!!」

さらにライブマンの面々にも砲撃が浴びせられ、一同は爆炎の中に消える。

コロン「ライブマン、応答せよ!」


丈が目を覚ますと、そこは廃墟同然の教会。
豪が松葉杖を突きながら、水を運んでくる。

丈「豪じゃないか!」
豪「気がついたのか? ……水を」
丈「ありがとう……」

放心状態の嵐もいる。

豪「一体、どうしたんだ?」
丈「元へ戻っちまったんだ。アシュラはギルドスたちと同じように、作られた天才に過ぎなかったんだ」
豪「ビアス…… どこまで恐ろしいことを……!」

丈が嵐にも水を分けようとする。

丈「嵐、ほら……」

しかし再び、ボルトの爆撃が開始され、教会内にも火の手が上がる。
丈は嵐を背負い、豪と共に避難しようとするが、瓦礫で扉が閉ざされてしまう。

豪「もう、駄目だぁ!」
丈「諦めるな!」

丈が力づくで、瓦礫をどかす。

丈「嵐を頼むぞ」
豪「丈! やめろ、死にに行くようなもんだぞ?」
丈「バカ! 罪のない人間がたくさん殺されてんだぞ!」
豪「でも…… あんな凄い奴らと、どう戦うというんだ!?」
丈「豪…… やっぱりお前は頭が良すぎるんだな……」
豪「えっ……?」
丈「全てが見えすぎて…… だから敵わないと思ってしまうんだ! 心配すんなって、俺はいつだって根性だけで戦ってきた。そしていつも切り抜けてきたんだ…… 頼むぞ」


戦場へ駆け出した丈の前に、ケンプとバトルヅノーが立ちはだかる。

ケンプ「丈、生きていたのか!」
丈「この地球はみんなのもんだ。1人や2人の天才の勝手にはさせやしないぜ!」
ケンプ「フン、お前らの台詞はいっつもワンパターンだ。そんな台詞は聞き飽きたぜ! スプリットカッター!!」

丈がケンプの攻撃をかわして飛びかかろうとするが、バトルヅノーの炎を浴びてしまう。
しかし丈は傷ついてもなお、バトルヅノーに何度も挑んでゆく。
豪が教会の中で、その様子を見つめている。

豪「丈っ!!」

その声で、嵐が我に返る。

豪「丈…… すまん、丈…… 俺がもっと強くて、もっと勇気があれば……」

松葉杖を握りしめる豪。
嵐が、そんな彼の肩をポンと叩く。

嵐「豪、4+8はいくつだ?」
豪「12だけど、なぜそんなことを?」

嵐が満足げに頷く。

嵐「答えを知りたかったんだ。これで思い残すことは無くなったぜ」
豪「えっ……?」
嵐「豪よ。俺たち、妙な人生だったなぁ……」

嵐は満面の笑みを見せ、教会から駆け出す。


丈はバトルヅノーの攻撃を浴び続け、もはや満身創痍。

ケンプ「とどめを刺せ!」

左腕を構えるバトルヅノー。
その時、嵐の投げつけたドラム缶が、バトルヅノーに叩きつけられる。

丈「嵐……」
嵐「言ったはずだぜ、落とし前は俺がつけるとな。ビアスに見せてやるぜ、俺みたいなバカでも、貴様らには負けねぇことをなぁ!!」
ケンプ「行け、バトルヅノー」

嵐がさらにドラム缶を投げつけるが、バトルヅノーはそれをたやすく跳ね返し、ビームの雨を降らせる。


バトルヅノーの攻撃で丈とは別の地点に吹き飛ばされ、倒れ伏している勇介とめぐみのもとへ、コロンが駆けつける。

コロン「みんなぁ! めぐみ、しっかりして! 勇介、勇介!」
勇介「う…… 鉄也と純一は!?」

鉄也と純一を探す3人。
鉄也と純一は失神したまま木に引っかかっていた。


嵐「野郎っ!!」

嵐は鉄パイプを振りかざし、必死にバトルヅノーに挑む。
丈も、ケンプも、そして豪も、固唾を飲んでその様を見つめている。

生身の人間では頭脳獣に敵わないにもかかわらず、嵐は何度もバトルヅノーに挑み続ける。
ついに鉄パイプがへし折れるが、嵐は素拳を握りしめて立ち向かってゆく。

嵐「えぇやぁ──っ!!」

嵐が胴にまともに攻撃を食らい、ついに崩れ落ちる。
とどめを刺そうと迫るバトルヅノー。
そこへレッドファルコンが駆けつけ、バトルヅノーにキックを見舞う。

ドルフィン「嵐!」
バイソン「嵐!」
ファルコン「ケンプ! 俺たちが相手だ!」
丈「イエローライオン!

丈もイエローライオンに変身する。

ケンプ「身の程知らずのバカどもが、わざわざ死にに来るとはな。歓迎するぜ…… 恐獣ケンプ!!」
ファルコン「行くぞ!!」

ケンプも恐獣ケンプに変身。戦闘員のジンマー兵たちも参戦する。
ブラックバイソンがバトルヅノーに挑むが、毒ガス攻撃を浴びてしまう。

バイソン「うわぁっ!」
サイ「バイソン!」
ドルフィン「しっかり!」

やはりバトルヅノーは手ごわい。その猛攻が、再びライブマンを責め苛む。


倒れ伏している嵐の目に、近くの小屋が映る。
「火気厳禁」「危険物」の看板──。
嵐が傷ついた体を引きずり、必死にその小屋へ向かう。


恐獣ケンプとバトルヅノーの連続攻撃の前に、ライブマンは為す術もない。

恐獣ケンプ「思い知ったか! 貴様らがいくら足掻いたところで、所詮我ら天才には敵わんのだぁ!!」

万事休す──その時!

嵐「待てぇぇ!!」

傷だらけの嵐が現れる。
両手にはダイナマイト、胴にもびっしりとダイナマイトの束が巻かれている。

嵐「見てろよ、ビアスぅぅ!!」

嵐がバトルヅノー目がけて突進する。
恐獣ケンプはその気迫に、言葉を失う。
バトルヅノーが砲撃を放つが、爆発の雨の中、嵐は捨て身で突進する。

嵐「うぅおおぉぉ──っっ!! でやああぁぁ──っっ!!

嵐が、バトルヅノーに体当たりする。
バトルヅノー諸共、自ら大爆発──!!

ライブマン「嵐っ!!」
豪「嵐ぃぃ……!!」

もうもうと立ち込めた爆炎がやむ。
そこには、肉片一つ残されていない。

豪「嵐……」
恐獣ケンプ「お、おのれぇ! よくも、俺の最高傑作の頭脳獣をぉ!!」

そこにガッシュが現れる。

ガッシュ「ギガ・ファントム」

バトルヅノーが巨大な姿となって蘇生される。
何も言わず引き上げるガッシュ。

ファルコン「ライブボクサー!!」

巨大ロボ・ライブボクサーが飛来する。
ライブマンが乗り込み、巨大バトルヅノーに挑む。
バトルヅノーの攻撃が炸裂し、ライブボクサーが倒れ伏す。

ファルコン「みんな、頑張れ!」
ライオン「バカ正直に向かってくのも、嵐に捧げる戦いらしくていいぜ!」

ライブボクサーが力を振り絞って立ち上がり、バトルヅノーに反撃のパンチを見舞う。

ファルコン「いくぞ!」
ライブマン「ミラクルビッグブロー!!

エネルギーを込めた必殺パンチが炸裂!
バトルヅノーが爆発四散し、最期を遂げる。


激しい雪と風の吹きすさぶ中、勇介たち5人が立ちすくむ。

めぐみ「毒島 嵐…… 急に天才にされ、また元に戻ったり…… 最大の被害者は、あの人かもしれないわね……」

『俺たち、妙な人生だったなぁ……』

廃墟となった戦場跡の片隅に、小学生のものと思しきランドセルがある。
子供らしい字で「ぼくのゆめ」を語る作文。
紙面が血で滲んでいる。

丈「罪のない子まで…… 人を虫けらのように扱うなんて…… ビアスめ、絶対に許さねぇぞ!!」
鉄也「ケンプたちはなぜこんなひどいことをしてまで、千点頭脳を目指すんだ!?」
勇介「みんな、これからが本当の戦いだ。だが…… 絶対に負けるわけにはいかないんだ!」

勇介たちを物陰から見つめる豪。
そしてヅノーベースの最奥部「ヅノールーム」では、千点頭脳となった脳髄が入ることになっている空のカプセルをいとおしそうに撫で、ビアスがほくそ笑んでいる──。



勇介の言葉通り、
まさにこれからが、本当の天才たちとの
最後の戦いが始まるのだ。

来たるべき厳しい戦いを暗示するような、
激しい雪と風の中に、いつまでも立ち尽くす、
ライブマンであった。




つづく



※ この続きは超獣戦隊ライブマンの第47話をご覧ください。

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最終更新:2022年03月07日 00:19

*1 嵐(アシュラ)、ギルド星人ギルドス、チブチ星人ブッチー。