救急戦隊ゴーゴーファイブの第34話

災魔一族の花粉サイマ獣・バイラが、草原に出現する。
自らの左腕を、地面に突き立てる。

バイラ「これでいい。フフフ…… ハッハッハァ!」



死 さもなくば 破滅



災魔一族の本拠地、北極の魔宮サイマパラディコ。

グランディーヌ「サラマンデス、お前のサイマ獣が動いているようだな」
サラマンデス「はっ、バイラを呼び寄せました」
ディーナス「畏れ多くも、冥王サラマンデスのサイマ獣。さぞ、目覚ましい働きをしてくれるんでしょうね?」
サラマンデス「大いに期待してもらおうか。私のサイマ獣は、兄上たちのそれとは、決定的に違うからな。ここの出来が」

サラマンデスが一同を嘲笑うように、頭を指してみせる。

コボルダ「何ぃっ!?」
ディーナス「くッ……!」


一方のゴーゴーファイブの拠点、巽防災研究所。
アナライズロボ・ミントが警報を鳴らす。

ミント「災魔のエネルギー反応です! 場所は、G-02ポイント!」


ゴーゴーファイブこと、巽マトイ、ナガレ、ショウ、ダイモン、マツリの5兄妹が、先ほどの草原に到着する。

ショウ「G-02ポイントっつったら、ここら辺だよな」
マトイ「みんな、気を付けろよ ……ん? 何だ、ありゃ」

サイマ獣バイラの腕だけが、地面に植物のように突き立っている。

ダイモン「なんだろ?」
マトイ「やめろよ」

触れようとするダイモンを、マトイが制する。
突然、蔓草が飛び出して、イバラとなって5人の左腕に巻きつく。

ダイモン「わっ、何だよ、これ!?」
マツリ「きゃあっ!」

サイマ獣バイラが現れ、地面に突き立っていた腕が、バイラの体に戻る。

バイラ「うまく、かかってくれたな」
マトイ「災魔!?」

変身ブレスレット・ゴーゴーブレスが、イバラの花弁に覆われてしまっている。

ヘリ「ブレスが!?」
マツリ「着装できない!」
バイラ「心配するな、戦うつもりはない」
マトイ「何ぃ!?」
ナガレ「一体、何の真似だ!?」
バイラ「数時間後、そのイバラから、大量の花粉が飛ぶ。地上にあるもの、すべてを腐らせる、毒の花粉がな。花粉を阻む(すべ)は無い。地球は死の星となるだろう」
マトイ「……冗談じゃねぇ!」

一同が腕のイバラを、必死に引きちぎろうとする。

バイラ「無駄だ。そいつは花粉を飛ばし終わるまでは絶対に外れんし、傷つけることさえできん」
一同「……!?」
バイラ「だが、ひとつだけ、それを防ぐ方法がある」
三なん「何!?」
バイラ「焼き尽くすのだよ。お前たちの体ごと、な」
一同「……!?」
バイラ「花粉をばら撒き、地球を滅ぼすか、自ら命を断って地球を守るか、道は2つ。まぁ、どちらを選んでも、お前たちは終わりだがな」
マトイ「ふざけるなぁ!」

マトイが飛びかかるが、バイラは忽然と姿を消す。

バイラの声「ハッハッハ! ワ──ッハッハッハ!」

マトイ「こんなもん…… すぐに外してやる! すぐにな!」


巽防災研究所。
巽モンド博士のもと、ミントがコンピューターに向かって分析にあたる。

モンド「どうだ、ミント!? 分析の結果は!?」
ミント「これを見てください! 体中にイバラの根が張り巡らされてて、手術での除去は不可能です!」
モンド「花粉が飛ぶ、予測時間は?」
ミント「計算してみます」


マトイたち5人は必死に、ナイフでイバラを切ろうとしている。

マトイ「切れねぇ……」
モンド「ミントがタイムリミットを割り出した! 今日の午後3時だ!」

時計を見ると、すでに午後0時半。

ショウ「あと、2時間半……!?」
ダイモン「駄目だ、全然切れないよ!」
モンド「焦るな。こいつを試してみよう」

モンドが電流装置を用意し、マトイの腕のイバラに、電極を繋げる。

モンド「我慢しろよ。ギリギリまで上げるからな」

モンドが装置を操作し、イバラに電流が流れ始める。
マトイは歯を食いしばり、電圧に耐える。

マトイ「うぅっ、うぅっ……!」
モンド「耐えるんだ!」

モンドが次第に電圧を上げ、ついに最大電圧に達する。
マトイが衝撃で、ひっくり返る。

マトイ「うわあぁっ!?」
マツリ「お兄ちゃん!?」
ダイモン「マトイ兄さん!?」

イバラは大量の電流を浴び、煙を吹いて朽ちている。

ナガレ「あっ、やったぁ!」

一同が歓喜したのも束の間、イバラはあっという間に、元の姿に戻る。

ナガレ「駄目か……」
ダイモン「そんなぁ!?」
ショウ「あいつの言った通りってことかよ……」

時計は1時を指す。


バイラは、魔宮サイマパラディコへ帰還している。

サラマンデス「よくやった、バイラ」
ピエール「さっすが、サラマンデス様のサイマ獣! ようやくゴーゴーファイブも終わりですねぇ」
バイラ「お褒めいただき、光栄でございます」
ディーナス「まだ、成功したわけじゃないわ」
コボルダ「ゴーゴーファイブが自殺すりゃあ、地上は無傷だからなぁ!」
サラマンデス「奴らさえいなければ、地上など、どうとでもなる」
ピエール「私は、ゴーゴーファイブが花粉をばら撒いてしまう方に賭けます。いくら地球を守るといっても、自分の命を自分で断つなどと、とてもとても!」


巽防災研究所。

ミント「巽博士! 医師、科学者、植物学者などに、イバラのデータを送信しましたが、回答はどれも悲観的です……」
モンド「続けて協力を要請してくれ。絶対に、何か方法があるはずだ!」
ミント「はい!」

ナガレも独自にコンピューターに向かい、作戦を練っている。

ナガレ「災魔は『花粉を飛ばし終わるまでイバラは外れない』と言った。ということか、花粉を飛ばした後なら外せるということだ」
マツリ「でも、それじゃ、外れても意味ないじゃない」
ナガレ「確かにな。けど……」

画面の中で、自分たちの姿を壁で覆い囲ってみせる。

ナガレ「こうして密室にすれば」
ダイモン「そっか、花粉は外に飛ばない!」
ショウ「ただし…… 中にいる俺たちは、死ぬ。防護服なんて、役に立たないだろうからな」
ナガレ「あぁ。それに、花粉がすべてを腐らせるというのが本当なら、結局は密室の壁もやられて、花粉は外へ飛ぶ!」
マトイ「災魔にしちゃ…… 出来すぎだぜ!」

(バイラ『花粉をばら撒き、地球を滅ぼすか、自ら命を断って地球を守るか、道は2つ──』)

ダイモン「あ、あのさ…… もし、もしだよ? 災魔の言う道を、どっちか選ぶとしたら……」
マトイ「……決まってんだろ? 俺たちはゴーゴーファイブなんだぜ」
一同「……」
ダイモン「そう……だよね。ゴーゴーファイブだもんね! 僕たち……」

時計の針は、2時を指す。
タイムリミットまで、あと1時間──

モンド (もしイバラは外せなかったら、あの子たちは、きっと……)

ミント「博士! 中央植物研究所から、協力の申し出が!」

モンド「みんな、イバラを取り除けるかもしれん!」
一同「えぇっ!?」
モンド「中央植物研究所が開発した、新しい除草剤のサンプルを、提供してくれるそうだ! すでに手配された救急車で、こっちへ向かっている」
ミント「B埠頭で落ち合えば、30分です」
ショウ「急ごうぜ!」

一同が勢いづくが、マトイは複雑な面持ちを浮かべている。

ダイモン「マトイ兄さん、早く!」
モンド「その除草剤は、あらゆる植物に有効らしい。それをイバラに注入するんだ!」


ナガレの運転する研究所専用車で、一同が埠頭を目指す。

ショウ「時間から見ても、これが最後のチャンスか!」
マツリ「ナガレ兄ちゃん、急いで!」
ナガレ「わかってる!」

埠頭に到着する。
研究所員を乗せた救急車も到着する。

所員「ゴーゴーファイブの皆さんですね? 早く、これを!」
マトイ「ありがとうございます。みんな、急ぐんだ!」

所員が、除草剤のアタッシュケースを差し出す。
しかしバイラが出現、攻撃が炸裂し、除草剤は破壊されてしまう。

一同「あぁっ!?」
バイラ「ワーッハッハ!」
マトイ「災魔ぁ!? てめぇ!!」
バイラ「言ったろう? 道は2つ。死、さもなくば、破滅。ハーッハッハ!」

バイラが姿を消す。
イバラの花弁が、徐々に開きかけている。
所員たちは恐れおののき、救急車で走り去る。
マトイが専用車に飛び乗る。

マトイ「みんな、乗るんだ!」


モンド「他に、手は……? 他に……」
ミント「博士! 研究用に取り寄せてあったテルミット弾が、1つ無くなってるんですが」
モンド「何?」
ミント「あれは数千度の熱を発しながら燃え尽きる爆弾です。もしかして、マトイさんたちが!?」
モンド「マトイ、応答しろ! お前、まさか…… マトイ! 聞こえ──」

マトイは通信を切る。
一同の視線がマトイに集まるが、マトイは無言でハンドルを握っている。
時計は2時45分。

やがて、人里離れた池のほとりに到着する。
マトイがポケットから、テルミット弾を取り出す。

ナガレ「兄さん、それ……!?」
マトイ「命の重さは測れねぇっつっても、俺たち5人と地球全部じゃよ……」

ナガレは絶句しつつも、かすかに頷く。
ダイモンは歯を食いしばり、視線を逸らす。
ショウは呆然と、宙を見据えている。
マツリは──

マツリ「私…… 嫌ぁ! 私、死にたくなぁい!!」
ショウ「マツリ!?」

マツリが車外に飛び出し、ショウたちが追う。

ナガレ「マツリ。どっちにしたって、俺たちは……」
マツリ「死にたくない…… ゴーゴーファイブがそう思っちゃいけないの!?」
一同「……」
ダイモン「それは…… 本当は、僕だって……」
マツリ「この青い空と、緑の大地と、別れるのなんて嫌ぁ!!」

頭上には美しい青空が広がり、足元の池は穏やかに波立っている。

マツリ「まだ、時間はあるよ……」

時計は2時27分。
マトイがテルミット弾をしまい、車外に出る。

マトイ「らしくねぇか、やっぱり! 俺たち、救急戦隊だもんな。自分の命を救っても…… 構わねぇよな」

マトイが笑顔を作り、ナガレとショウの肩を抱く。

ショウ「俺たちが要救助者、ってことか」
ダイモン「最後の瞬間まで諦めないのが、レスキュー!」
マトイ「その通りだ」

マトイはダイモン、マツリの肩を叩き、笑顔を交す。
一同が笑顔を取り戻す。

ナガレが頭上を仰ぐ。
青空を横切る飛行機雲──

ナガレ「あっ…… 宇宙だ!」


時計は2時50分。
防災研のモンドのもとに、マトイの通信が届く。

マトイ「父さん!」
モンド「マトイか!? お前……」
マトイ「ライナーボーイを出してくれ!」
モンド「「何!?」
マトイ「時間が無いんだ! 早くしてくれ!」
モンド「──わかった! マックスシャトル、発進!」

ボーイ「シャトルチェンジ! 特急武装!」

ライナーボーイが、マトイたちのもとに降り立つ。

マトイ「ライナーボーイ! 俺たちを宇宙に連れてってくれ!」
ボーイ「宇宙!? りょ、了解!」

マトイたちがライナーボーイの中に乗り込み、座席に着き、ベルトを締める。

ボーイ「行きますよ!」

ライナーボーイがマックスシャトルに変形し、空へと飛び立つ。

マトイ「ライナーボーイ、時間が無い! 急いで大気圏を出るんだ!」

その様子を、バイラが見上げている。

バイラ「宇宙を墓場に選んだか? 終わったな」


マックスシャトルが大気圏を突破し、宇宙空間へ飛び出す。
マトイたちの腕のイバラは、花弁がどんどん開いてゆく。

ナガレ「兄さん、早くしないと!」
マトイ「みんな、準備はいいな? ライナーボーイ、ハッチを開け!」
ボーイ「そんなことをしたら、空気が無くなって、マトイさんたちが!?」
マトイ「すぐに死ぬわけじゃねぇ!」
ボーイ「でも……」

時計は2時59分、タイミリミット1分前。

ダイモン「早くぅ!」
マトイ「開けろ! 命令だぁ!」
ボーイ「はい!」

ついに3時。
ハッチを開かれ、猛烈な勢いで、空気が外へと飛び出す。
イバラの花弁が完全に開いて花粉が吹き出し、気流と共に機外へ流れてゆく。

一同「うわあぁ──っ!」「ぐうぅぅ」

マトイたちは必死に座席にしがみ付き、気流と衝撃に耐える。

ボーイ「もう空気が! ハッチを閉めます!」
マトイ「駄目だ! 今閉めたら、花粉が残る!」
ショウ「俺たちも、お前も死んじまうぞ!」

マツリのベルトが弾け飛び、マツリが機外へ飛び出しそうになる。
とっさにマトイが、マツリの腕をつかむ。

マトイ「マツリ!?」
マツリ「マトイ兄ちゃぁん!!」

一同も必死に、マツリを支える。

一同「マツリ……」「マツリぃぃ!!」」

モンドが固唾を呑んで、その光景をモニターしているが、映像が途切れてしまう。

モンド「みんな!?」
ミント「まさか…… マトイさんたち!?」


サイマ獣バイラが街中へ出現し、ビル街を攻撃する。
ビルが砕け、人々が逃げ惑う。

バイラ「ゴーゴーファイブは死んだ。地上は我ら、災魔のもの!」
マトイの声「災魔ぁ!!」

マトイたち5人が駆けつける。

マトイ「これ以上、お前らの好き勝手にはさせねぇぜ!」
バイラ「ゴーゴーファイブ、生きていたのか!?」

モンドも安堵の息をつく。

ミント「良かったぁ!」

マトイ「フン、俺たちは往生際が悪くてな!」
ナガレ「花粉もイバラも、宇宙できっちり処分させてもらったよ」

マトイたちの作戦により、花粉がすべて吹き出した後、イバラは朽ちてブレスから外れ落ちていた。
ライナーボーイはハッチを閉じてマトイたちを救い、機外の花粉を焼き払ったのだ。

バイラ「おのれぇ!」
ボーイ「ゴーゴーファイブを甘く見ちゃいけないよ!」
ショウ「今度はこっちが、道を選ばせてやるぜ!」
ダイモン「戦うか、逃げるか!」
マツリ「どっちにしても、災魔は倒す!」
バイラ「むぅっ…… もう一度、俺のイバラの餌食にしてやる!」
マトイ「みんな、行くぞ!」
一同「おぅ!」「着装!!」

5人がアンチハザードスーツを着装し、ゴーゴーファイブとなる。

レッド「ゴーレッド!」
ブルー「ゴーブルー!」
グリーン「ゴーグリーン!」
イエロー「ゴーイエロー!」
ピンク「ゴーピンク!」
レッド「人の命は地球の未来!」
ブルー「燃えるレスキュー魂!」
グリーン「救急戦隊!」
イエロー「ゴー!」
ピンク「ゴー!
一同「ファイブ!!」
レッド「出場!!」

バイラ「インプス!」

使い魔のインプスたちが遅いかかる。

グリーン「ブイモードチョップ!」
ブルー「ゴーブラスター!」
ピンク「ファイブレイザー!」
ブルー・ピンク「ハイパーモード!」

ゴーゴーファイブの連続攻撃の前に、インプスたちは一掃される。

レッド「俺たちはもう絶対、死なんか選ばねぇ! 死を選ぶのは災魔、てめぇらの方だぁ!!」

残されたバイラが攻撃を繰り出すが、レッドは臆せずに突き進む。

レッド「ブイモードパンチ!」

レッドの鉄拳、一同のブイランサーが炸裂する。

レッド「とどめだぁ!!」
一同「ビッグブイバスタ──ッ!!

5人の繰り出す必殺攻撃により、バイラが大爆発する。

ピエール「闇の世界の力よ、最後の力を! アミアス・アミアス・アミグロス・災魔復活──!」
サラマンデス「暗黒災魔空間(ゾーン)!」

ピエールの再生カードにより、バイラが巨大化して復活。
さらにサラマンデスが、マイナスエネルギーの空間を作り出す。

一同「マーズマシン!」「流星合体!」「ビクトリーマーズ!」

マーズマシンが出動、合体し、巨大ロボ・ビクトリーマーズとなる。

サラマンデスが作りだした暗黒災魔空間は
サイマ獣のパワーを十万倍に高めるのだ。

巨大バイラが、凄まじい攻撃を繰り出し、周囲に次々に火の手が上がる。
ゴーゴーファイブ乗ったビクトリーマーズは、爆炎の中を力強く突き進む。

レッド「もう俺たちは、誰にも止められないぜ!」
一同「ジェットランス!」「トップジェット!」「マーズフレア!!
バイラ「グワアアァ──ッッ!!」

ビクトリーマーズの必殺武器の前に、巨大バイラは大爆発し、最期を遂げる。


すでに夕暮れとなった防災研に、マトイたちが帰り着く。
モンドが5人を迎えつつ、マトイのポケットから、テルミット弾を抜き取る。

マトイ「父さん……」
モンド「よく、使わなかったな。それでこそ、私が望んでいる救急戦隊だ」
マツリ「父さぁん!」
ダイモン「父さん!」

マツリとダイモンが、泣きながらモンドに抱きつく。
マツリ、ナガレ、ショウも、目に涙をためつつ、笑顔で視線を交す。


Mission Complete

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最終更新:2019年07月20日 03:41