希望を願い、呪いを受け止め、戦い続ける者たちがいる。
それが魔法少女。
奇跡を掴んだ代償として、戦いの運命を課された魂。
その末路は、消滅による救済。
この世界から消え去ることで、絶望の因果から解脱する。
いつか訪れる終末の日。
円環の理の導きを待ちながら、私たちは戦い続ける。
悲しみと憎しみばかりを繰り返す、この救い様のない世界で、あの懐かしい笑顔と、再び巡り会うことを夢見て…。
ネオン輝く夜の見滝原市。
その上空を駆け抜ける幾つもの光の帯。
やがて街の灯りが消え、空が継ぎ接ぎ模様に変わる。
階段に落ちた白い滴が、そこを滑る様に降りて手すりの上に登り、バレリーナを象った白い影となる。
壁に映ったバレリーナの影が異空間へと集まり、空の継ぎ接ぎを破ってぬいぐるみの様な怪物…ナイトメアが現れる。
ナイトメアが吐き出したクマが、更にその手から放たれた枕が、次々とビルを破壊。
彼が泡の上に降り立ったその時、影の群れに混じって何かが現れる。
それはまどかだった。
まどか「…えへっ」
弓を構え、光の矢を空に放つ。
まどか「はっ!」
しばらくすると、無数の光の矢がその場に降り注ぐ。
まどか「ぅわあっ!」
慌てて逃げる。
矢をかわしつつビルの谷間へと飛び降りるナイトメアに追従する者がいた。さやかだった。
さやか「ビンゴだよ、まどか」
そして更に、杏子もナイトメアに迫る。
杏子「首尾は上々っと!」
さやかと杏子に追い詰められていき、ナイトメアは目の前のビルの窓に突っ込む。
その向こうの部屋で、ナイトメアはテーブルについていた。
テーブルの上に盛られた菓子。
背後の扉からパンの入ったバスケットを持ったまどかが現れ、彼女の投げたパンをナイトメアが食べる。
右からは鳥の丸焼きを持ったさやか、そして左からはリンゴを持った杏子も現れ、2人が投げた鳥とリンゴも続けて食べる。
更に手前から現れた、ティーセットを持ったマミ。
彼女の頭に乗っていたベベがテーブルの上に座ると、ナイトメアがテーブルをひっくり返し、その瞬間自身とその周囲の時間が止まる。
ベベが手にしたティーカップから飛び出した光が周囲を包む。それを見つめる4人。
そして───。
まどか「…?」
ベッドの中のまどか。
まどか「……はうぅ…もう朝?」
戦いが終わってから、大して眠れていなかったらしい。
棚の上に飾られたにぬいぐるみに混じって眠っているキュゥべえ。
まどか「おはようキュゥべえ」
まどかに頭を撫でられ、キュゥべえは目を覚ます。
そして周囲を見回した後、再び眠る。
家庭菜園でプチトマトを摘んでいる知久に、起きたばかりのまどかが声をかける。
まどか「おはようパパ」
知久「おはよう、まどか」
まどか「ママは?」
知久「タツヤが行ってる。手伝ってやって」
まどか「はーい」
急いで詢子を起こしに行ったまどかを笑顔で見送る知久。
詢子の寝床では、タツヤが布団の上に乗ってポカポカ叩きながら詢子を起こしている。
タツヤ「ママー、ママー、あーさ、あーさー」
しかし、一向に起きる気配を見せない。
タツヤ「マーマー、マーマー」
すると、猛烈な勢いでドアを開けてまどかが入って来る。そしてカーテンを開け、布団を掴んで…。
まどか「起ーきろー!!」
布団をめくるまどか。
詢子「ぅわあぁぁぁぁうおぉぉぉ!!?」
驚き、のた打ち回る詢子。起き上がって我に返ると、目の前にまどかの姿が…。
詢子「…?」
洗面所前、並んで歯を磨いているまどかと詢子。
詢子「最近どんなよ?」
まどか「仁美ちゃんがちょっと大変。中々上条くんと予定が合わないんだって」
詢子「うんうん。ま、ほんとに難儀なのは付き合う様になってからなのさ。めげず焦らず、諦めずだよ~」
まどかは両手で水をすくって顔を洗う。
手探りでタオルを取ろうとしていると、それを詢子がまどかの方へとずらす。
詢子「ほい」
そして、すぐさまタオルを手に取り顔を拭く。
まどか「先生はちょっともう急に世界の終わりがどうとか言い出すし、やっぱり相当落ち込んじゃってるのかも…」
詢子もファンデーション、そして口紅と化粧を進め…。
詢子「あっちゃー。そろそろこっちで何かセッティングしてやるかな」
机に並んだ化粧品。
詢子はメイクブラシで頬を撫で、まどかは髪をとかす。
まどか「和子先生どうしてモテないのかなぁ…結構可愛いとこあるのに…」
詢子「あいつは昔から高望みが過ぎるんだよ」
まどか「…」
詢子「まあ良くも悪くも妥協しねえってのがなぁ…」
まどか「ふーん…」
化粧箱のふたを閉じ、鏡の前で決めポーズ。
そして両手で顔を叩いて…。
詢子「…よっし!」
朝食の席へ向かう詢子を、まどかが呼び止める。
まどか「…それからね。今日から転校生が来るんだって」
詢子「へえ。こんな時期に珍しくない?」
まどか「…どんな子かなぁ…お友達になれるといいな」
左手の中指には、指輪化したソウルジェムが。
桶に張られた水に浸かって上機嫌なキュゥべえ。
朝食の時間。オムレツのケチャップで口周りを汚したタツヤがプチトマトにフォークを刺そうとして…。
タツヤ「あーぅ…」
フォークが刺さりきらず、反動でプチトマトが皿から転げ落ちる。
詢子「あぁっ!…とー…」
詢子は、すかさず落ちたプチトマトをトーストでキャッチする。
詢子「セーフ!はい、残さないで食べてねー」
タツヤ「あーい!」
知久「コーヒー、おかわりは?」
7時44分を指す壁の時計。詢子はそれを見ながら…。
詢子「んー、いいや」
詢子は残りのコーヒーを飲み干し、タツヤにキスをする。
タツヤ「えへへ…」
そして詢子は知久にもキスし、まどかにハイタッチ。
詢子「ぅおっし! じゃあ行ってくる!」
まどか&タツヤ&知久「いってらっしゃい!」
知久「さあ、まどかも急がないと」
まどか「え!? わ…」
知久に急かされ、慌てて朝食を進めるまどか。
まどか「いってきまーす!」
知久「いってらっしゃーい!」
タツヤ「いってらっしゃーい!」
トーストを銜えながら玄関を出て、学校へと走るまどか。
その右肩に乗ったキュゥべえに、笑って目を遣る。
朝日に照らされた見滝原の街並み。
P U E L L A M A G I M A D O K A M A G I C A
魔法少女まどか★マギカ
[ 新 編 ] 叛 逆 の 物 語
最終更新:2015年05月14日 13:37