陽泉酒家。
マオは眠りこけていた。
メイリィ「マオ!!起きなさいったら!!ねぇマオ―――――ッ」
「今日か何の日かわかってるの?カリンお姉さんもリー提督も御到着よ!!・・・・・もう・・・広州に帰ってきてから寝てばっかり・・」
「ねぇマオ~~~~~ん♡起♡き♡て♡」
マオ「うう~ん母さん、その変な声のネコ追い出してよ」
メイリィ「・・・・・・」
(ムリもないわね・・・あの全霊を出し尽くした『万里の長城』決戦から――――まだ半月だもんね・・・)
メイリィ(―――そう、マオ、フェイの宿星決戦となった決勝戦を前に、フェイさんはいきなり‘伝説の厨具‘『迦桜羅刀』を谷底へ投げ捨て言った・・・)
マオ「フェイさん!!」
フェイ「実はな・・・マオ・・・お前の母、パイ仙女なくば――――」
「オレもあのカイユと同じ運命を辿っていたのかもしれないのさ・・・・」
パイがかってアルカンと引き分けた際に抱えていた赤子がフェイだったのだ。
マオ「え・・・・!?」
フェイ「過去のしがらみだとか‘伝説‘だとかは、時に人を束縛する・・・・・だがどんな束縛も、オレたちの‘魂‘までは縛ることはできない・・・今この勝負から、オレたちの信じる‘中華‘の未来を切り開こう、マオ・・・・!!」
マオ「フェイさん・・!!」
メイリィ(―――それはもはや技術の競い合いを超越した‘魂‘と‘魂‘のぶつかり合いだった・・・!!パイ仙女の‘魂‘を継ぐ者どうしの・・・・・)
メイリィ「・・・・・・」
マオ「・・・・・・」
メイリィ(たくさんの料理勝負をずっと見守ってきたけど・・・いちばんステキだったよ・・・あの時のマオ・・・・・)
メイリィが眠るマオにキスを――――
しようとした所にシロウが来た。
シロウ「マオ兄!!いつまで寝てんだよ、もうみんな席ついてるって!!」
メイリィ「・・・!!」
シロウはメイリィを押しのけ、寝ぼけ眼のマオを引き立てていった。
シロウ「早く早く!!」
メイリィ「・・・・・あ・・ね、ねェシロウ・・・」
(み・・・みられたかな・・・)
食堂には、カリンやレオン、シェルにリー達が集まっていた。
シロウ達「「「宮廷料理人『龍厨師』拝命――――――恭喜恭喜、マオ―――――!!」」」
マオ「ど・・・どうもありがとうみんな・・・」
シェル「すさまじい闘いだったぜ、『万里の長城』決戦・・・・!!」
レオン「とうとう『龍厨師』にまで登りつめたかマオ・・・・・あのカイユを・・・・‘裏料理界‘を・・・ついに倒したなマオ・・・・!!」
マオ「レオンさん・・・」
レオンがマオの手を握った。
サンチェ「しかも若き天才『龍厨師』フェイを相手に一歩もひけをとらん―――見事な料理闘いぶり・・!!」
シェル「この黒星の雪辱も果たせねェうちに、まァた大きく差(リード)奪われちまったなァ・・!!」
シロウ「マオ兄ならやると思ってたよ――――!!一生ついていきます師匠――――!!」
リー「・・・・フッ・・・思い出す・・・四川『菊下楼』で初めて会った時を・・・・・まだ母親の敵討ちにはやる闘志ムキ出しの子供だったなマオ・・・・」
マオ「リー提督・・・・・・」
メイリィ「広州にでて来たての頃なんて右も左もわからないイナカ者で、あたしがぜーんぶ案内したんだから!!」
ルオウ「じゃが‘陽泉‘に入門後の成長はめざましかったのォ・・・・・!!」
チョウユ「確かに・・・・・!!」
カリン「・・・・あたしがいなきゃ何にもできないあのマオが・・・・・!!」
ルオウ「とうとうパイ仙女から継いだ夢を完成させたなマオ!!」
「―――さて、龍厨師殿に一品調理ってもらおうかの。何を所望する、チョウユ?」
チョウユ「よーし・・まずは、チンゲン菜でも炒めてもらおうか」
マオ「チョ・・・・チョウユさん・・・・」
翌朝。
馬を連れて、立っていたフェイの所にマオが来た。
フェイ「いいのか・・・・?黙って『陽泉酒家』を抜け出して・・・」
マオ「フェイさんこそいいの・・・・?とうとう宮廷厨房の副料理長にまで昇格したのに、全部捨てて、広州まで来ちゃって・・・
フェイ「しょせんは引き分けで得たものさ、大したことじゃない・・変装してまで参加したんだ。あの決勝では白黒キッチリつけたかったよ」
マオ「フェ・・フェイさんあまり納得してなかったんだ・・・ぼ、僕は引き分けでもよかったんだけどな・・・」
フェイ「だいたい、料理人の‘位‘など初めからオレにはどうでもいいことだ。オレが宮廷に入ったのは――――このためさ・・・・・!!」
フェイが連れた馬の後ろの車には、大量の書物が積まれていた。
マオ「こ・・・これが・・・!!」
フェイ「そう・・・宮廷料理として各地から吸収され封印された料理、全三千品目の調理法・・・書き写すのに丸一年かかった・・・オレはこの、宮廷に封じられ二度と世に出るはずのない名菜の数々を、再び大陸虫に開放して回りたいんだ・・・・」
マオ「・・・・スゴイや・・それがフェイさんが‘裏‘打倒の後、叶えたかった夢なんだね・・」
「・・・・・・僕はね・・・・フェイさん・・・あの‘裏料理界‘を闘って倒し、フェイさんんと約束した再勝負も実現したとき、何だか‘夢‘を果たし終えて―――――カラッポになっちゃったような気がしてたんだ・・・・」
フェイ「・・・・」
マオ・・・・でも今はわかる・・・・それは違うって・・・だって・・・」
マオがこれまで出会い、料理を振る舞い、料理で闘ってきた者達もそれぞれの道を歩いていた。
マオが再会へ導いたイグルとライアの夫婦は、新たに生まれた赤子を抱いていた。
ニワトリタウンでは、ティアが街の皆と一緒に、烏骨鶏の飼育に務めている。
『梁山伯』からマオ達を逃がすためにその命を燃やし尽くしたと思われたアルカンも、左足を失いながらも、リコと共に人混みの中を歩いていた。
そして、エンセイ達はカイユを弔っていた―――
マオ「また大きく豊かな‘夢‘を紡げばいいんだ・・・そしてまた人を幸せにすればいいんだ・・・・・!!」
「そう決めたんだ。だから僕、フェイさんと一緒に行くよ・・・・!!」
マオはショウアンから託されたものと西南で手に入れた、パイの二冊の料理書を持ってきていた。
フェイ「・・・・?何だそれは?」
マオ「母さんの残した料理書なんだ。母さんが作った料理、学んだ料理。そしてその想い出が細かく記録されている・・・だから、ほら僕も――――」
マオは、新しい冊子も大量に持ってきていた。
フェイ「・・・・・!!」
マオ「まだ真っ白い冊子だけど、これに僕は――――母さんの何十倍も、新しい料理を描いていきたい・・・・!!」
フェイ「そうか・・・・ならばかけようマオ。オレたちで・・・この大陸に幸福をつなぐ味のかけ橋を・・・・・・!!」
マオ「うんフェイさん・・!!」
シェル「おいおいそんな楽しそうな‘夢‘――――お前らだけで追いかける気か・・・・・・?」
門の方で、シェルとレオン、サンチェにシロウ、元‘裏料理界‘五虎星のジュチとミラ、チョウユとルオウ、そしてメイリィが待ち構えていた。
マオ「み・・・・みんな・・・!!」
シェル「一人増えりゃ」
レオン「ひとつ多くの‘橋‘がかかる」
シロウ「マオ兄は、オレがいなけりゃダメなんだい!!」
メイリィ「置いていこうたって、そうはいかないんだから!!」
マオ「き・・・来てくれるの・・!?」
メイリィ「来るなって言ったってついてくもん!!」
マオ「好!!!」
マオ達は、新たな旅へと旅立っていった――――――
最終更新:2019年09月04日 19:09