ウルトラマンR/Bの第1話

ウルトラマンR/B(ルーブ)の第1話



(主人公の1人、湊カツミのナレーション)

今日もいい天気だ。
ここは俺たちの町、綾香市(あやかし)
みんな休日を、思い思いに楽しんでいる。

俺たちはそれどころじゃないけど……!



2人の巨人が、巨大な怪獣を相手に、戦いを挑んでいる。

「どうしよう、カツ(にい)!?」
「歯が立たない……」
「やべぇ!」


俺の名は、湊カツミ。
こっちは弟のイサミ。
これは俺たち兄弟の物語だ。



ウルトラマンはじめました



まぁ、そんなわけで、話は24時間前に遡る。


綾香市の洋品店、セレクトショップ「クワトロM」。
店員の湊カツミが、女性客2人に洋服を勧めている。

客A「でも少し、派手じゃないかしら?」
カツミ「いえ、ピンクとイエローは、今年の流行色ですよ」
客B「そう? じゃあ、試着してみようかしら」
カツミ「どうぞ、こちらへ」

父で店長の湊ウシオは、「うちゅ~ん」とロゴがデザインされた、妙な服を手にしている。

カツミ「何してんの? 父さん」
ウシオ「見てみろよ、これ」
カツミ「『うちゅ~ん』……?」
ウシオ「うちゅ~ん! 果てしない大宇宙への憧れを、言語化してみた」
カツミ「また変な商品作って、在庫の山が増えるだけだろ!」

もう1人の主人公、カツミの弟のイサミが、眠そうな顔で現れる。

イサミ「はぁ~、腹減った…… カツ兄、朝飯は?」
カツミ「もう昼だ、馬鹿」
客B「あら、イサミちゃん、こんにちは」
イサミ「こんちわっス」

イサミは店のテーブルに、塔の模型のような装置を置き、パソコンに向かい始める。

客A「あっ、クリスマスツリー?」
カツミ「いや、違うんです。これは弟の研究の…… おい、勝手に変な物を置かないでくれ! 父さんもなぁ」
ウシオ「今度は絶対、売れるって! 『うちゅ~ん』だぜ!?」
カツミ「少しはトレンドとか流行とか、考えてくれよ」
イサミ「いやいや、カツ兄、今流行ってないものはこれから大流行する可能性あるって。ガリレオ・ガリレイだって、最初は天動説に対して──」
カツミ「そんな大げさな話をしてるんじゃない」
ウシオ「まぁ、カリカリしなさんなって。ほら、ケーキが1つ残ってるから、仲良く半分ずつ食べなさい」
イサミ「いただきぃ!」
客B「イサミちゃんて、大学を出て、宇宙考古学をやってらしゃるんでしょ?」
客A「宇宙考古学って、何?」
イサミ「まぁ、宇宙考古学ってのは…… 通信衛星ってあるでしょ? あれで地上を観測して、地球環境とか遺跡とか、そういうのを調査するやつです。今はバイブス波の反射率を解析して、大体1300年前の地層を調べてんです」


夜が更ける。
イサミは依然、パソコンで研究に打ち込んでいる。
カツミがそばに、夜食の皿を置く。

カツミ「夜食ここ、置いとくぞ」
イサミ「うん」

互いの拳をぶつけ合い、ハイタッチを交わす、兄弟お決まりのポーズ。

カツミ「研究もほどほどにするんだぞ。おやすみ」
イサミ「……ありがと」


夜の街角で、カップルが星空を見上げている。

「すごぉい! 星、きれいね」
「本当だね」

どこかで誰かが、「魔」と刻まれたクリスタルを何らかの装置に装填し、不気味な声が響く。

『グルジオボーン』

カップルはそれを知る由も無く、自撮りを始める。

「いくぜ。はい」

スマートフォンの画面の奥に、自分らの背後に、巨大な何か見える。

「あれ? 今、何か動かなかった?」
「な、何?」

2人が振り向くと、夜空の下に巨大な何者かの影──

「きゃあ──っ!!」


翌朝、カツミがジョギングを終え、クワトロMに帰って来る。

カツミ「ただいま」
ウシオ「おぅ、おかえり」

テレビでは、綾香市の誇る大企業、アイゼンテック社の社長である愛染 誠がインタビューを受けている。

『愛と善意の伝道師、愛染 誠です』
『早速ですが愛染社長、あれは一体、何でしょうか?』
『あれは筋肉強化、バイオパワード・フットギアです。人間が本来持っている筋肉の電気信号を解析し、それを増幅し、フィードバックするシステムです。──』

ウシオ「愛染さん、素晴しいなぁ」
カツミ「そうかな?」
ウシオ「そうだよ。この町だって、アイゼンテックがあるから発展したんだ。母さんだって、愛染さんには随分お世話になったんだよ」
カツミ「母さん…… あれから15年か」
ウシオ「今日は母さんの誕生日だなぁ…… お祝いに、すき焼きでもするか」
カツミ「そうだね。今どこで、何してるんだろう」
ウシオ「なぁに。母さんはいつかきっと、帰って来るって。港に船が戻るようにね」

『では社長、今日のお言葉を』
『本日の言葉は『石橋に当たって砕けろ』。何事もまず、チャレンジする精神が大切です!』

イサミがタブレット端末を手に、興奮した様子で現れる。

イサミ「カツ兄~! これ、見てくれ!」
カツミ「これは?」

綾香山(あやかさん)で巨大生物を見た」と題した投稿動画で、巨大な生物らしきシルエットが動き回っている。

イサミ「どう思うよ?」
カツミ「こういうのはフェイクだって。CGか何かだろ」
イサミ「じゃあ……」

イサミがパソコンの画面を示す。

イサミ「このデータはどうだ? バイブス波の発生源が、30からここまで移動してる! 綾香山には絶対、何かいんだよ!」
ウシオ「昔からあの山には、グルジオ様がいるという伝説があるからな。昔、寝る前によく読んで聞かせてやったじゃないか。『昔々、空から妖奇星(あやかほし)が降りました。星からグルジオ様という物の気が生まれました。戦で争っていた人々は皆、グルジオ様に飲まれました』──」
カツミ「そんなの、おとぎ話だろ?」
イサミ「おとぎ話じゃねぇってば! 綾香市っていう町の名前になってるくらい、歴史的な事実じゃん! 妖奇星は、今じゃ隕石ってことになってるけど、俺にはただの隕石とは思えない。地磁気の異常はそれだけじゃ説明つかねぇからな。母さんだって、綾香山の研究してたろ?」
カツミ「綾香山、か……」
イサミ「よぉし! 今すぐ調査に行こうよ、カツ兄!」


カツミとイサミは、綾香山そばの公園にやって来る。

カツミ「なぁ。昔、母さんとよくここに、ピクニックしに来たな。憶えてないか?」

イサミはその言葉に耳を貸さず、夢中で調査を行なっている。

俺たちの母さんは
地元ではちょっと有名な宇宙考古学者だった。

母さんは15年前の今日、近所に
すき焼きのお豆腐を買いに行くといったまま
姿を消した。
結局、母さんの居所はわからなかった……

でも、今でも母さんのことはよく覚えている
優しくて、ちょっと変わった──

カツミが感傷に浸っていると、イサミが頬をひっぱたく。

カツミ「痛っ! 何すんだよぉ!?」
イサミ「頬っぺたに蚊が止まってたから。それよりカツ兄、このデータ見てくれ!」

イサミがタブレット端末を示す。

イサミ「プラズマイオンとバイブス波の値を見ろよ。すげぇだろ!」
カツミ「はぁ…… お前の言ってること、さっぱりわからん」

イサミが駆け出す。

カツミ「お、おい! どこ行くんだよ!?」
イサミ「こっちの方が電量、高ぇんだよ!」

俺は心配だ……
イサミは母さんの凄い部分と
変てこな部分を受け継いでいる。
このままだと、
ろくなことにならないような気がするのだ。

イサミが夢中のあまり、立入禁止の柵を乗り越えようとする。

カツミ「おい! ここから先は駄目だって書いてあるだろ!?」
イサミ「でも、ほら! この数値見てよ!」

大地を突き破り、巨大な怪獣グルジオボーンが現れる。

カツミ「グルジオ様……!?」
イサミ「追いかけよう、カツ兄!」
カツミ「何言ってんだ!? 逃げなきゃ!」
イサミ「こんな機会、二度と無いっての! 俺は誇り高き科学者だ。逃げるわけねぇだろ!」

グルジオボーンが2人を睨み、咆哮を張り上げる。

イサミ「……やっぱ、逃げよ」

2人が踵を返して、駆け出す。

カツミ「おい急げ、早く!」

遅れをとったイサミが、貸し自転車があるのに気づく。

イサミ「自転車、お貸しします?」

イサミが自転車に乗って、走り出し、カツミを追い越す。

イサミ「カツ兄、早く!」
カツミ「あ!? あいつ、自分だけ! おいイサミ、ちょっと待て!」
イサミ「カツ兄、逃げ足だけは速いんだろ!?」
カツミ「そういう問題じゃないだろ!」
イサミ「ほら、つべこべ言ってると追いつかれるぞ!」

グルジオボーンが火を吐き、2人は地面に叩きつけられる。

イサミ「痛ぇ……」
カツミ「イサミ、大丈夫か!? ほら、立て! 早く!」

グルジオボーンが周囲に火を撒き散らし、人々が逃げ惑う。

カツミ「だから言ったろ! 大体お前は……」
イサミ「説教は後! 追いつかれるぞ!」
カツミ「大体こうなったのは誰のせいだ!?」
イサミ「あぁ! それ言っちゃう!?」

幼い子供が逃げ遅れ、1人で泣いている。
母親と思しき女性が、必死に子供を捜している。

「キワムちゃん!? キワムちゃぁん!」

イサミ「どうした、カツ兄?」
カツミ「イサミ、おまえは奴の注意を引け!」
イサミ「えっ!?」
カツミ「その間に俺が行く」

カツミが子供を救いに、駆け出す。

イサミ「無茶だよ、カツ兄!?」

子供が泣いており、グルジオボーンの足音が近づく。

イサミ「くそっ!」

イサミが地面の石を拾い、グルジオボーンに投げつける。

イサミ「グルジオぉ!! でっけえツラしてんじゃねぇぞ!!」

カツミはその間に子供を救い、母親のもとに届ける。

母親「キワムちゃん!」
カツミ「早く逃げてください!」
母親「ありがとうございます!」

イサミは勢い余って転倒し、そこへグルジオボーンが次第に迫って来る。

イサミ「まずい!」

カツミがイサミに駆け寄りつつ、手を伸ばし、イサミも手を伸ばす。

カツミ「イサミぃ──っ!!」
イサミ「カツ兄ぃ──っ!!」

グルジオボーンが炎を吐きかける。
火柱の上がる中、2人の手がしっかりと握り合う──


気づくと、2人は神秘的な光に満ちた空間に浮かんでいる。

カツミ「……どこだ、ここは?」
イサミ「何だ、どうなってんだよ!?」

光と共に、2つの変身アイテム・ルーブジャイロ、そして2つのクリスタルが現れる。

イサミ「何これ?」
カツミ「わからん……」

クリスタルが輝き、2人の脳裏に映像が浮かぶ。

地上に火の玉が落下する
炎の中、怪獣グルジオボーン、2人の巨人。
巨人たちが砕け散り、無数のクリスタルと化す──

イサミ「見た、カツ兄?」
カツミ「あぁ…… もしかして、俺たちにこれを使えってことか?」
イサミ「じゃあ、1・2の3でいこう」
2人「1・2…… 3! 俺色に染め上げろ! ルーブ!

カツミ「セレクト・クリスタル!」

音声『ウルトラマンタロウ!』

カツミ「纏うは火! 紅蓮の炎!

音声『ウルトラマンロッソ フレイム!』

イサミ「セレクト・クリスタル!」

音声『ウルトラマンギンガ!』

イサミ「纏うは水! 紺碧の海!

音声『ウルトラマンブル アクア!』

カツミが火の力を宿したウルトラマンタロウのクリスタル、イサミが水の力を宿したウルトラマンギンガのクリスタルを手にする。
クリスタルを装填したルーブジャイロにより、カツミは赤と銀の巨人・ウルトラマンロッソ フレイムに、イサミは青と銀の巨人・ウルトラマンブル アクアに巨大変身する。

イサミ「マジか!? 俺たち、すげぇことになってるぞ!」
カツミ「一体どうなってんだ!?」

グルジオボーンがロッソとブルの姿を認め、向かって来る。

ロッソ「どうする、イサミ?」
ブル「おぉし、行くぞ!」
ロッソ「おい、ちょっと待てって!」
ブル「ジャンピングキック!」

ブルの先制攻撃のキックは、あっさりとかわされる。
グルジオボーンはブルをロッソの方へ投げ飛ばし、さらに2人に襲いかかってくる。

ロッソ「来るぞ!」

ロッソが思わず手を伸ばすと、火の球が飛び出し、グルジオボーンに命中する。

ブル「カツ兄、どうやったんだ?」
ロッソ「わからん…… 何か、ビュッて出た」
ブル「よっしゃ! じゃあ、俺も!」

ブルも手を伸ばすと、水流状の光線が飛び出し、地面に炸裂する。

ブル「すげぇ~! 見た?」

ブルが浮かれている隙に、グルジオボーンが襲い掛かってくる。

ロッソ「おい、どけ!」

ロッソがグルジオボーンの突進を食い止める。
そこにブルも加わり、2対1の戦いが始まる。
ブルのキックが、グルジオボーンに決まり、ロッソも巻き添えになる。

ブル「大丈夫!?」
ロッソ「痛ぇ…… お前、蹴るなよ!」

ロッソとブルが連携してグルジオボーンに挑むが、初陣で苦戦を強いられる。

ブル「どうしよう、カツ兄」
ロッソ「歯が立たない……」
ブル「やべぇじゃん! このままだと、やられちゃうよ!」
ロッソ「そんなこと言ったって、どうすりゃいいんだよ!?」

ロッソが先ほど放った火炎弾、ブルは光線──

イサミ「そうだ! カツ兄、俺とクリスタルを交換してくれ」
カツミ「はぁ? 何言ってんだ!? そんなことできんのか!?」
イサミ「カツ兄と俺とじゃ、光線の形が違う。ちょっと試したいことがあるんだ」
カツミ「でも……」
イサミ「早くぅ!!」
カツミ「まったく…… しょうがないなぁ!」

イサミ「セレクト・クリスタル!」

音声『ウルトラマンタロウ!』

イサミ「纏うは火! 紅蓮の炎!」

音声『ウルトラマンブル フレイム!』

カツミ「セレクト・クリスタル!」

音声『ウルトラマンギンガ!』

カツミ「纏うは水! 紺碧の海!」

音声『ウルトラマンロッソ アクア!』

先ほどとは逆に、イサミがタロウ、カツミがギンガのクリスタルを手にする。
ブルはウルトラマンブル フレイムに、カツミはウルトラマンロッソ アクアに変身する。

グルジオボーンが口から火炎を吐く。
ロッソが水のエネルギーのバリアを作り出し、炎を食い止める。

ブル「よぉし、俺も!」

ブルの放った火炎の光線が、グルジオボーンに命中する。
グルジオボーンと組み合っていたロッソまで、巻き添えになる。

ロッソ「あ、熱、熱ぃ! ヤバいだろ! 周り確認して撃てよ!」
ブル「やっぱ、交換すると違う火が出るんだ。かっけぇ~!」
ロッソ「聞いちゃいないな、こいつ……」

ロッソとブル、連携での戦いが続く。
やがて、2人の胸のカラータイマーが、点滅を始める。

アサヒ「やばい、カツ兄…… なんか、急に胸がドキドキしてきた」
ロッソ「俺もだ……」

ロッソとブルが力を合わせ、グルジオボーンを捕え、放り投げて地面に叩きつける。

ブル「カツ兄、怪獣を水のバリアで覆ってくれ」
ロッソ「わかった」

ロッソが巨大な水球でグルジオボーンを包み、動きを封じる。

ブル「からの──熱線っ!!」

ブルの熱線が、グルジオボーンに炸裂する。

2人「セレクト!」

カツミは再びウルトラマンロッソ フレイムに、イサミはウルトラマンブル アクアとなる。

ロッソ「フレイムスフィアシュート!!
アサヒ「アクアストリューム!!

ロッソの碑のパワー、ブルの水のパワーの必殺光線が炸裂──!!
グルシオボーンが大爆発し、2人のウルトラマンは初陣を勝利で飾る。

ロッソ「やった…… やったぞ!」
ブル「決まったね、俺たち!」

突如、ウルトラマンブルの体が光の粒子と化して、次第にぼやけてゆく。

ブル「あ!? しっかりしろ、イサミ!」

ブルの体が消え去る。
ウルトラマンロッソもまた、光の粒子と化して消え去る。

グルシオボーンが消滅した後、「魔」のクリスタルを、何物かが受けとる──


「カツ兄、イサ兄、しっかりしてください! 目を覚ましてください!」

カツミとイサミが、草原に倒れている。
2人が目を覚ますと、視界に飛び込んできたのは、妹の湊アサヒの姿。

2人「アサヒ……?」
アサヒ「2人とも、大丈夫? あ、何か付いてますよ」
カツミ「何でここにいるんだよ?」
アサヒ「お父さんが、きっとここだろうって。さ、早く帰りましょう」
イサミ「あ──、腹減ったぁ……」

アサヒが飴玉を差し出す。

アサヒ「はい、飴ちゃん! 今夜はすき焼きです。帰りにお豆腐と白滝、買いますよ。じゃあ、行きましょう!」



というわけで
何だか大変なことになってしまった。
これから俺たち、どうなっちゃんだろう?

でもまぁ…… 取敢えず
母さん、お誕生日おめでとう!



(続く)

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最終更新:2020年04月03日 22:20