流れ暴魔ヤミマルとキリカは、一気に片を付けようと、 ターボレンジャーに最後の戦いを挑んできた。
そして、その死力を振り絞った戦いは、 いつ果てるともなく、際限もなく続いていた!
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海岸を舞台に、ターボレンジャーと流れ暴魔の戦いが繰り広げられている。
互いに切りつけあい、鎧や強化スーツから火花を散らす両者。
戦いは熾烈を極め、その様相は正しく殺し合いと呼ぶにふさわしかった。
そして、それを陰からじっと見つめる暴魔獣がいる。その暴魔獣の目に映る映像は、地下深くにうごめく何者かの脳裏へと送られていた。
声「戦え…… 戦え……!!」
場所は戻り海岸。
ターボレンジャーに倒されたヤミマルとキリカが倒れ伏している。
傷をおして、なおも立ち上がるヤミマル。
ヤミマル「この世界を、必ずやお前たちの赤い血で染めてやる!! その時こそ地球は、我ら流れ暴魔2人のものとなるのだ!!」
傷ついているのはターボレンジャーも同じだった。
GTソードを杖にして立つレッドターボ。
レッドターボ「まだわからないのか!? 赤い血を流すのはお前たちだ!! その時になって、我が身に流れる人の血の尊さに気づいても、もはや手遅れだぞ……!?」
ヤミマル「そんなセリフ、我が流星剣を受けてから言ってみろ!!」
再び戦いが始まる。駆け出すターボレンジャーと流れ暴魔。
そして、GTソードとヤミマルの剣が交錯したその瞬間、激しい閃光と爆発が両者を吹き飛ばした。
砂浜に突き刺さるそれぞれの武器。
物陰に潜む暴魔獣が、その光景を地底に送信する。
声「力の限り戦え……!」
ターボレンジャーと流れ暴魔は、武器を失っても互いを殴り合い続けていた。
そこにはるなが足をもつれさせながら駆け寄る。
ひときわ遠くまで吹き飛ばされたはるなは変身が解けていた。
はるな「やめて! もうやめて!!」
しかし、その叫びは誰の耳にも届いていない。
ヤミマルに殴り飛ばされるブルーターボ。
イエローターボがキリカの顔面を思いきり殴る。顔を押さえ、砂の上を転がるキリカ──
はるな「お願い…… もう戦いはやめて……」
はるなの頬を大粒の涙が伝う。
もしも自分たち5人がターボレンジャーでなく、流星と小夜子が流れ暴魔でなければ、きっと素晴らしい友達になれたはずなのに──そんな思いがはるなの脳裏をよぎっていた。
ついにはるなを除くターボレンジャーも流れ暴魔も皆倒れ伏し、動かなくなる。
その時、神々しい光とともに、天使の像が添えられた白亜の枠が海岸に現れた。
はるな「あっ、あれは……」
倒れていたターボレンジャーと流れ暴魔も、一斉に枠に注目する。
はるな「……いったいなんなの……?」
ターボビルダー基地。
謎の枠を見た妖精シーロンが声を上げた──
シーロン「あっ! 『妖精の門』だわ」
太宰博士「妖精の門?」
シーロン「ええ。あの門をくぐれば、妖精の国に行けるのです。そして、そこには『愛の石』があると言い伝えられています」
太宰博士「愛の石……」
シーロン「この世に、愛と平和をもたらすと言われている石なんです。その光を浴びた者は、みんな憎しみを忘れ、愛を取り戻すのです」
はるなが妖精の門の前に立つ。
はるな「憎しみを忘れ、愛を取り戻す……」
ヤミマル「なんだと……!?」
わき目も振らず、門の中に飛び込もうとするはるな。
レッドがそれを引き留める。
レッド「やめるんだ、はるな! これは罠かもしれない……」
はるな「そんなことないわ! もうこんな戦い、終わらせることができるのよ!?」
レッドを振り切り、はるなが門の向こうに消える。
それを追う、残り4人と流れ暴魔。
謎の暴魔獣は今だ黙して語らず、ただ彼らを監視し続けている──
妖精の国は、その名の通りに幻想的な世界。
美しい花々が咲き乱れ、パステルカラーのウサギが野を駆け回っている。
はるな「かわいい……」
ウサギの一羽を優しく抱き上げるはるな。
はるな「愛の石はどこにあるの? 案内して……」
そこにヤミマルとキリカが現れる。
ヤミマル「愛の石など、渡すものか!」
はるなに切りかかるヤミマルを、レッドが寸前で食い止める。
切り結ぶ両者。さらにブラック、ブルー、イエローも駆けつける。
レッドターボ「そんなに愛の石が怖いのか!?」
ヤミマル「黙れっ!!」
ヤミマルが剣から光線を放つ。直撃を受け、吹き飛ぶレッドたち。
はるな「早く愛の石を見つけなければ……!」
妖精の国を駆けずり回るはるな。
はるな(愛の石はどこ!? 愛の石は……!!)
ヤミマルとキリカが再び立ちはだかる。
はるな「愛の石は、渡さない!!」
はるなはピンクターボに変身し、流れ暴魔を飛び越して先へ進む。
その光景もまた、謎の暴魔獣によって送信されている──
声「もっと戦え……! 命を削れ……!!」
妖精の国の美しい自然の中で、ピンクを除くターボレンジャーと流れ暴魔の泥沼の戦いはまだ続いている。
ピンクターボ「みんな……」
その時、ピンクの目の前に巨大な城へ向かって延びる階段が現れた。
ピンクターボ「妖精城だわ! 愛の石はきっと、あの中にあるに違いないわ!!」
城を目指すピンク。ヤミマルとキリカがレッドたちを振り払って、その後を追う。
崖を上り、城へ続く階段に飛びつこうとするピンク。
ヤミマルとキリカも崖を登ろうとするが、岩が崩れ、ずり落ちていく。
ヤミマル「どうしたことだ…… これぐらいの崖を……」
階段に取り付いたピンクが、懸命に階段をよじ登っていく。
レッドたちもそれに続こうとするが、流れ暴魔と同じようにずり落ちてしまう。
ブラックターボ「パワーが、出ない……!」
妖精城の門がゆっくりと開く。
城の中に飛び込んだピンクが、祭壇に供えられたハート型の物体を見つけた。
ピンクターボ「愛の石! ついに見つけたわ…… これで戦いは終わる! やっと、世界に平和が来るんだわ……」
息を切らしながら愛の石を取りに行こうとするピンクを、背後からキリカが引き留めた。
キリカ「待て!」
身構えるピンク。
キリカ「……渡すものか!」
ピンクはキリカの攻撃を必死にかわし、最低限の反撃を行う。
そうこうしているうちに、レッドたちとヤミマルも妖精城になだれ込んでくる。
乱戦の中、愛の石を取ろうとするピンクの前にキリカが立ちはだかり、ピンクを切りつけた。
吹き飛ぶピンク。
レッド「ピンク!!」
ブラック、ブルー、イエロー「ピンク!!」
ヤミマルとキリカが互いの武器を交差させる。
ヤミマル、キリカ「スターライト・ビー……」
しかし、なぜか光線は不発に終わった。
キリカ「どうなってるの!?」
ターボレンジャーもターボレーザーを取り出し、引き金を引くが、光線が出ない。
ブルーターボ「どうしたんだ!?」
レッドターボ「どうしてこんなにパワーが減ってしまったんだ!」
ヤミマル「ハハハ…… お互いに、面白いことになったな。勝負だっ!!」
流れ暴魔2人とレッドのキックが空中で激突。
その余波で激しい爆発が巻き起こり、お互いを、そして愛の石をも吹き飛ばし──
誰もがボロボロの状態で床に転がっていた。
そんな中で、はるなが必死にはいずり、地面に落ちた愛の石を拾い上げる。
流星、小夜子「あっ!」
はるな「みんな、見て!」
流星と小夜子に向き直るはるな。
はるな「流星くん、月影さん、武蔵野学園の仲間に戻るのよ! みんなに愛を…… 愛の石よ、輝いて!!」
掲げられた愛の石から激しく光が噴き出す──しかしその時、なぜか妖精城が爆発とともに崩れ始めた。
瓦礫の下敷きになるターボレンジャーと流れ暴魔。
そして妖精の門も、髑髏型の不気味な影を残して消滅した──。
ターボレンジャーと流れ暴魔は海岸に戻されていた。
はるなの手の中で、愛の石が砂になって崩れ去る。
はるな「あっ! 愛の石が…… いったいどういうことなの!?」
ターボビルダー基地──
太宰博士「罠だ…… すべて罠だったんだ! いったい何者が……?」
その罠を仕掛けた張本人、一部始終を見守っていた謎の暴魔獣が、空中に巨大な眼球の幻影を出現させる。
身構える一同。
眼球の幻影が消え、今度は真っ赤な炎が地上に向けて降り注いだ。
炎は巨大な鉄柱となって地面に突き刺さる。そこへさらに、何者かの高笑いが響く──
流星「あの声は!」
高笑いとともに、鉄柱の中から人影が姿を現した。
筋肉がむき出しになったような体、そして不気味な顔立ち。
力「お前は!?」
ネオラゴーン「暴魔大帝・ネオラゴーン!!」
流星「ラゴーン! 生きていたとは!」
すぐさま変身しようとする一同。だが──
大地「変身できない!」
小夜子「どういうことなの、ヤミマル……!?」
ネオラゴーン「ふゎ──っはっはっはっはっ!! お前たちはともに力を失ってしまった……」
力「何ぃっ!?」
流星「なんだと!?」
ネオラゴーン「『流れ暴魔』と『妖精のパワーを授かった者』が戦えば、ともにその力を失ってゆくのが宿命!」
力「何ぃ!?」
ネオラゴーン「愚か者めが。己が力を失ってゆくとも知らず、ターボレンジャーと戦い続け、ついに今! 力を失ってしまったのだ……」
ネオラゴーンがヤミマルとキリカをあざ笑う。
はるな「妖精の門は? 妖精のお城は? 愛の石はなんだったの……?」
ネオラゴーン「ヒトツメボーマを操って作らせた幻影にすぎん」
今まで息をひそめていた暴魔獣ヒトツメボーマが姿を見せる。
あまりのことに茫然自失するはるな。
ネオラゴーン「ヒトツメボーマ、流れ暴魔を処刑せよ!!」
ヒトツメボーマの目から放たれた光線がヤミマルとキリカを直撃。
2人が空のかなたまで吹き飛ばされ見えなくなった直後、ズルテンがウーラー兵を引き連れて現れた。
ズルテン「にゅふふ、ざま~みろってんだ流れ暴魔め! ネオラゴーン様、必ず生きておられると信じていたんですよってんだ」
ズルテンとウーラー兵たちが土下座で忠誠心を見せる。
ネオラゴーン「ターボレンジャーも処刑!」
なすすべなくヒトツメボーマの光線を受け、吹き飛ばされる力たち。
太宰博士「なんという奴だ……!」
ネオラゴーン「とどめを刺せい!」
ヒトツメボーマ、ズルテン、ウーラー兵が5人を追う。
ネオラゴーンは地球に呼び寄せた暴魔城に乗ってその場を離れた。
力たちは傷つき、満足に動くこともできないまま崖下に倒れている。
はるな「みんな…… ごめんなさい!」
力「はるな…… そんなに自分を責めるな」
はるな「力……」
顔を上げたはるなが、洋平の手から外れた左手用ターボブレスに目をやる。
はるな、意を決して──
はるな「みんな…… みんなの残ったエネルギーを私にちょうだい! 私1人なら、きっと変身できるわ」
洋平「なんだって……? ……正気か!?」
うなずくはるな。
大地「それなら俺が戦う!!」
俊介「いや、俺が戦うよ!」
洋平「いや、俺が……!」
はるな「いいえ! 私にやらせて。こんなピンチを招いたのは、私の責任があるわ。お願い、私にやらせて!」
洋平「はるな……」
はるな「……お願い……」
力、しばし逡巡して──
力「……よし、わかった。みんな、最後の力を、はるなに与えるんだ」
5人がそれぞれのターボブレスを向かい合わせる。
そこに暴魔が現れた。
ズルテン「んっ、何やってんだ!?」
力、大地、洋平、俊介の妖精パワーがはるなのターボブレスに注ぎ込まれ、はるながピンクターボに変身を遂げる。
ズルテン「こしゃくなってんだ!! 1人で何ができる? それ行けぇ~!」
固有武器・Wステッキで迫るウーラー兵を薙ぎ払い、ヒトツメボーマと戦うピンク。
力たちは生身でウーラー兵を食い止める。
ヒトツメボーマは、目から光線を連射してピンクに反撃の隙を与えない。
力「ピンク! 奴の目を狙え!!」
Wステッキを投げつけるが、ヒトツメボーマは簡単にそれを弾き落とす。
さらに光線を受け、ピンクが倒れる。
力「ピンクーっ!!」
ピンクターボ「こんな時…… 愛の石があれば……」
力「愛の石は、君の熱いハートなんだ! 君の胸の中にある……!!」
ピンクターボ「愛の石は、私のハート……?」
力「うん……!」
力の言葉に己を奮い立たせ、ピンクが渾身の力を込めて立ち上がる。
ヒトツメボーマの攻撃をジャンプでかわし、すれ違いざまにWステッキを拾って、その目を狙って投げつける。
ひるむヒトツメボーマ。
ピンクターボ「ターボレーザー!!」
とどめの一撃がヒトツメボーマを撃ち抜き、撃破──が、それもつかの間、敵は瞬時に巨大化を遂げる。
ピンクターボ「ターボラガー、発進!!」
ピンクが単独で乗り込み、ラガーファイターから変形したターボラガーが地上に降り立つ。
ピンクターボ「バトルボール、キックオフ!!」
ラグビーボール型爆弾・バトルボールを取り出し、巨大ヒトツメボーマめがけて蹴りつけるも、簡単にキャッチされ、投げ返されてしまう。
やはり1人だけの力では勝てないのか──
力「がんばれ、ピンク!!」
巨大ヒトツメボーマの頭突きを受け、倒れ伏すターボラガー。
力たち4人がコクピットに乗り込むが、ターボラガーは動かない。
巨大ヒトツメボーマの光線がターボラガーを責めさいなむ。
力「やっぱりダメか…… ピンク、頼む!」
操縦桿を引き、どうにかターボラガーを立ち上がらせるピンク。
反撃のパンチが巨大ヒトツメボーマを吹き飛ばす。
ピンクターボ「ラガージャンプ!!」
最後に大きく飛び上がり──
ピンクターボ「スクリューラガーキ──ック!!」
エネルギーを込めた両足蹴りで巨大ヒトツメボーマを粉砕した!
しかしターボラガーの消耗も激しく、倒れて動かなくなる。
コクピットの中で息も絶え絶えの5人の頭上を、暴魔城が通り過ぎていった。
どことも知れぬ荒れ地に叩きつけられた流星と小夜子は、力たち以上に傷ついている。
流星「ネオラゴーンめ……」
小夜子「……ヤミマル……」
流星「き……キリカ……」
互いに手を伸ばしあう2人だが、その手は触れることなく地面に落ちた。
暴魔城──
ネオラゴーン「流れ暴魔の役目は終わった! ターボレンジャーも変身はできん! もはや世界征服は成し遂げたも同然。ぬふふふふふはははははは……」
再び大気圏外へと引き上げていく暴魔城。
ターボビルダー基地では、力たちが敗北感に打ちひしがれている。
太宰博士「みんな、大丈夫か!?」
シーロン「みんな、早く手当てをして!」
シーロンが包帯を持ってくる。
シーロン「さあ、早く!」
しかし今の5人には、
以前妖精パワーを喪失した時と同じく、シーロンの姿が見えず、声も聞こえない。
シーロンと交信できない今の5人には、包帯だけがひとりでに宙に浮いているように見える。
はるな「そこにいるのはシーロンなの!?」
俊介「えっ!?」
太宰博士「なんだって……!?」
太宰博士が妖精グラスを装着して確認。
妖精グラスを使えばシーロンの姿は見えるようだ。
シーロン「みんなは、私が見えないの!?」
太宰博士「みんなには…… 見えないのか……?」
俊介「見えない…… シーロンが見えない!」
力「姿も見えなければ…… 声も聞こえない……」
シーロン「ええっ……!?」
ショックのあまり、シーロンが包帯を落とす──。
ついに、妖精シーロンの姿を見、 声を聞くこともできなくなった5人!
果たして私たちは、もう二度と、 あのターボレンジャーの雄姿を、 見ることはできないのであろうか!?
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最終更新:2021年04月09日 00:04