高速戦隊ターボレンジャーの第47話



ターボビルダー基地は沈痛な雰囲気に包まれている。

洋平「変身もできないなんて…… あのネオラゴーンとどう戦えばいいんだ!!」
シーロン「みんな…… ごめんなさい! こんな時に、何も助けてあげられないなんて…… ほんとにどうしたらいいのか…… 妖精のくせに、何もわからないなんて……!」

ドールハウスの中でうなだれ、泣きじゃくるシーロン──



SOS変身不能



前回、ネオラゴーンの攻撃を受けて力尽きた流れ暴魔2人は、何者かによって洞窟の中にかくまわれていた。
先に目を覚ました流星が小夜子を起こす。
そこに1人の老人がやってきた。

老人「気がついたかな?」
流星「何者だ?」
老人「流れ暴魔も、礼儀を忘れたのかのう? 助けてもらって『ありがとう』も言えんのかな? んん?」

老人は不敵に笑いながら2人に飲み物をふるまう。

流星「俺たちを流れ暴魔と知るお前は、いったい誰だ!?」
老人「ふん、さぁてね…… 流れ暴魔・カシムとでも言っておこう」
小夜子「流れ暴魔ですって!? まだ私たちの他にも、流れ暴魔がいたなんて……」
カシム「探したぞ! よかった、やっと会えてな!」

呵々大笑するカシム。それに対し、流星はいら立ちを隠そうともせずに茶碗を叩きつける。

流星「何が良いものか! こんな無様な姿の、どこが……」
カシム「いや、良いのじゃ。それで…… 良いのじゃ」

流星と小夜子はカシムの意味深な態度をいぶかしむ。
その時、洞窟の外をドラグラスが飛び過ぎていった。思わず追おうとする2人を、カシムが制止する。

カシム「追うな! もはや、ドラグラスもネオラゴーンのもの」


カシムの告げた通り、ドラグラスは暴魔城に姿を見せた。
ズルテンが恐れおののく。

ネオラゴーン「ふん、来たかドラグラス」

犬猫のように喉を鳴らしてネオラゴーンに恭順を示すドラグラス。

ネオラゴーン「いでよ、暴魔獣・ドラグラボーマ!!」

ネオラゴーンの口から放たれた暴魔力の炎をドラグラスが飲み込み、代わりに自分の口の中から竜人型の暴魔獣を吐き出した。

ズルテン「ありゃ!? ドラグラスから暴魔獣が!!」
ネオラゴーン「わしは暴魔蝙蝠に乗るしか能のない流れ暴魔とは違う。ドラグラスの体内に封印されていた暴魔獣を大復活させ、一気に人間どもを滅ぼしてみせよう」


一方、力たち5人はまだ妖精パワーを失ったショックから立ち直れずにいる。
そこへ山口先生が来る。

山口先生「いったいそんな暗い顔をして、どうしたの?」
はるな「先生……」
山口先生「君たちが何かやっていることは、うすうす察しています。でも私はずーっと、君たちを信じてきました」

うなだれる5人。

山口先生「……でもね、そんな暗い顔を見てると、やっぱり心配だわ。もうすぐ卒業…… 夢と希望に一番満ち溢れてなければいけない時に、いったいどうしたの?」

5人はうつむいたまま何も言わない。

山口先生「なぜ黙っているの!? ねぇ、君たち! 先生にも相談できないことなの……?」

そこにドラグラボーマが飛来。5人を突き飛ばし、山口先生の首に噛みつく。

山口先生「うっ……!! ああっ!!」
力「先生っ!!」

ドラグラボーマが口を離すと、顔面蒼白の山口先生の口から牙が伸び始めた。
さらにズルテンとウーラー兵たちが現れる。

ズルテン「暴魔蝙蝠の体内から大復活したドラグラボーマに噛まれた人間は、吸血鬼になるのだ!」
力「吸血鬼!?」
山口先生「血が…… 血が欲しい……!!」


力たちに迫る山口先生。
その映像はターボビルダー基地内の太宰博士とシーロンにも届いていた。

太宰博士「山口先生が!」

苦悩する太宰博士をドールハウスからじっと見るシーロン。

太宰博士「なんてことだ…… 先生を…… みんなを、どうやって救えばいいんだ」
シーロン「博士……」

シーロンが意を決してドールハウスを飛び立つ。
気配を感じた太宰博士が振り向くと、ドールハウスのブランコが、誰かに押されたかのように揺れている──

太宰博士「シーロン……?」

妖精グラスを着けていない太宰博士は、シーロンがどこかに行ったらしいことしかわからなかった。


力「先生、やめてください!」

山口先生に追われる力たちの前に流れ暴魔2人が現れる。

洋平「あっ!」
力「流星っ!」
流星「行くぞっ!!」

有無を言わさず襲い掛かる流星と小夜子。その様子を木陰からカシムが見ている。


飛びかかってきた流星と小夜子を力と大地がキックで迎撃。
いつもなら軽くいなせるだろう攻撃をまともに喰らい、力なく地面を転がる姿に、力は2人の窮状を察する。

力「お前たちもパワーを失くしたのでは……」
流星「黙れっ!! 貴様たちは…… 俺たちが倒す……!!」
力「よせ、流星!」

立ち上がろうとする流星を制止する力。

力「その姿で何ができる? 無益な戦いはやめるんだ!」

そこにカシムも姿を見せた。

カシム「その通りじゃ! もはや戦ってはならん!」

だが、流れ暴魔2人は、あくまでカシムの言葉を無視して力たちを攻撃しようとする。
直後、一同にズルテンとドラグラボーマの攻撃が炸裂。

ズルテン「あきらめの悪い奴らめ。もはや、暴魔百族はネオラゴーン様の天下となったんだ!」

流れ暴魔2人がズルテンを睨む。

ズルテン「お前らの出る幕じゃない! 流れ暴魔など、しょせん歴史の流れに浮かんだ(うた)(かた)のようなものよ。消えちまえってんだ!!」

手にしたほら貝状の武器から光線を放つズルテン。流れ暴魔2人はなすすべなく吹き飛ばされる。

ズルテン「次はお前たちだ! やれ~ぃ!!」

ウーラー兵と山口先生、ドラグラボーマが力たちを襲う。
一方、ドールハウスを抜け出したシーロンも戦場へ到着しつつあった。

シーロン(先生、みんな…… 待ってて!!)

以前、妖精パワーを喪失した力たちの窮地を救った時と同じく、シーロンが妖精パワーを黄金の光として体から放つ。
そして力たちが追い詰められたその時、シーロンの渾身の体当たりがドラグラボーマを弾き飛ばした!
ドラグラボーマの牙が折れたことで山口先生も元に戻り、そのまま気を失う。地面に落ちたシーロンから抜け出た妖精パワーがその肢体に重なり、あろうことか山口先生は背中から妖精の羽が生えたまま小さくなってしまった。

はるな「先生……!? 先生が妖精に!!」
力「先生……!!」
大地「いったい、これはどういうことなんだ!?」
はるな「先生……」

はるなが小さくなった山口先生を抱き上げる。
その横では、羽を失ったシーロンが、力たちと同じ大きさで倒れていた。

力「シーロンっ!!」
洋平「これはいったい…… なぜシーロンがこんなに大きくなったんだ!」
シーロン「みんな…… 間に合ってよかった……」
俊介「じゃあ、さっきの光は…… シーロンが助けてくれたのか!」

うなずくシーロン。だが、すぐに気を失ってしまう。

太宰博士「シーローン!!」

太宰博士も現場に駆けつけた。

太宰博士「シーロン、大丈夫か!?」
力「博士、いったいこれは……」
太宰博士「シーロンは、もう妖精ではなくなったんだよ」
力、大地、洋平、俊介「ええっ!?」
太宰博士「翼を失った妖精は、人間の姿になるんだ。だが、その姿では、もうこの世には生きていられないんだよ……」
はるな「なんですって!?」

力が倒れているシーロンを見つめる。

力「シーロン……」
太宰博士「それだけじゃない。シーロンが死んでしまったら、山口先生までも……」
力「山口先生まで!?」

博士がはるなの手の中の山口先生に気づく。

太宰博士「先生……」

山口先生の呼吸が弱まってきている。

太宰博士「山口先生……」
洋平「シーロン…… どうしてそんな取り返しのつかないことを……」
シーロン「吸血鬼になった先生を救い、みんなを救うためには、そうするしかなかったのです……」

シーロンが再び意識を失う。

力、洋平、俊介「あっ、シーロン!!」
力「そうか! シーロンは俺たちを信じてくれているんだ。信じてるからこそ、こんな命がけの行為で俺たちを救ってくれたんだ……! みんな、そうは思わないか!?」
大地、俊介「ああ!!」
力「俺たちはその信頼に応えて、なんとしてもシーロンと山口先生を助けなければならないんだ!」


暴魔城では、ドラグラボーマの折れた牙がネオラゴーンの暴魔力で再生を遂げていた。

ズルテン「さすがはネオラゴーン様! 妖精の捨て身の攻撃も、まるで無駄だったわけだってんだ」
ネオラゴーン「もはや暴魔百族の行く手を阻む者はおらぬわ!! みんなまとめて血祭りにあげてしまえ!!」

すぐさま力たちに急襲をかけるズルテンとドラグラボーマ。

力「ドラグラボーマっ!!」
ズルテン「い~っひっひっ、お前たちとの戦いも今日で最後かと思うと、感慨深いものがあるぜってんだ。喰らえっ!!」

ズルテンの攻撃が力たちを襲う。
太宰博士はとっさにはるなから小さくなった山口先生を奪い、木陰に逃げ隠れた。

力「博士っ!」
太宰博士「いいから逃げろ!」
ズルテン「奴らを片付けてしまえ!!」

シーロンを抱きかかえて草原を逃げ惑う力たちに、ウーラー兵たちが骨ピッケルを投げつける。
爆発──

ズルテン「まだまだこれくらいでは、暴魔百族の恨みは晴れないぜ!?」

ウーラー兵の攻撃はなおも続く。爆発の中を駆け抜ける力たち。

力「シーロン……! 死なせはしないぞ──っ!!

しかしその叫びもむなしく、5人とシーロンは爆発に吹き飛ばされ、斜面を転がり落ちていく。

力「シーロン……? シーロンっ!!」

いち早く立ち上がった力がシーロンに駆け寄り、その手を握る。

力「大丈夫か、シーロン!?」
シーロン「……力……」
力「なんだ……?」
シーロン「力の手…… あったかい……」

うなずく力。

シーロン「大丈夫…… みんなを信じて、頑張ります……」
力「シーロン…… 俺たちは変身して、必ず君の命を守る……」

大地たちもシーロンに駆け寄る。
そこにズルテンとドラグラボーマが出現。

ズルテン「フェフェ! なかなか感動的なラストシーンだぜってんだ。2万年の恨み、華々しく晴らしてやるぜ! 構えな!!」

ウーラー兵たちが骨ピッケルを銃に変形させ、一斉に構える。
シーロンをかばって身構える力たち。

ズルテン「撃てぃ!!」

一斉射撃──

ズルテン「とどめだ!!」

さらにダメ押しの破壊光線を浴びせるズルテン。
シーロンを守るため、力がシーロンを抱いたまま地面に伏せ、さらに大地たちがその上に覆いかぶさる。
再び爆炎に飲み込まれる5人を見、両手を挙げて勝ち誇るズルテンたち。
流星と小夜子も、やや離れた小高い丘からその様子を見ている。

ズルテン「やった~~っ!! でゅふふふ、ついにターボレンジャーを倒したぞ~ぅ!」

煙が晴れる──そこには、変身を遂げたターボレンジャーの姿が。

ズルテン「ありゃりゃ!?」
流星「あっ、ターボレンジャーが変身を!」

シーロンを助けたいという5人の熱き想いと、
ターボレンジャーを信じるシーロンの想いが通じた!

レッドターボがシーロンをそっと寝かせる。

シーロン「あっ、ターボレンジャー……」
レッドターボ「シーロン…… 俺たちはもう、誰にも負けない!」
ブラック、ブルー、イエロー「ああ!」
ピンクターボ「ええ!」
レッドターボ「シーロン、見ていてくれ……」

ターボレンジャーが暴魔に向き直る。

レッドターボ「ターボレンジャーは不滅だ!! 行くぞっ!!

復活したターボレンジャーの猛攻に、次々と倒れていくウーラー兵たち。
イエローのBボーガン、ピンクのステッキブーメランがズルテンに炸裂する。
そしてレッドターボはドラグラボーマと対決。GTソードとドラグラボーマのブーメランとが、すれ違いざまにお互いを切り裂く。
GTソードを牙で噛み止めるドラグラボーマ。

レッドターボ「負けてたまるかっ!!」

ドラグラボーマがレッドを投げ飛ばし、GTソードを手にして襲い掛かる。レッドはターボレーザーでこれを迎撃。
ドラグラボーマの手を離れたGTソードが宙を舞う。

レッドターボ「GTクラ──ッシュ!!

レッドが跳躍し、GTソードをキャッチ。その勢いのまま放った一太刀でドラグラボーマを撃破した。

5人「ビクトリー!!
ズルテン「よ~し!」

ズルテンがほら貝状の武器を吹き鳴らし、暴魔再生巨大化光線を照射。
ドラグラボーマが巨大な姿となって蘇生される。

レッドターボ「ラガーファイター、発進!!」

ターボビルダーの上部ハッチが開き、ラガーファイターが出撃。

レッドターボ「変形シフト・ターボラガー!!

すぐさまラガーファイターが4つのブロックに分かれ、ターボラガーへと再合体・変形してゆく。

レッドターボ「セットアップ! ターボラガー!!

ターボラガーが巨大ドラグラボーマの前に舞い降りた。
巨大ドラグラボーマが先手を取り、ターボラガーに飛び掛かる。

レッドターボ「バトルボール、キックオフ!!」

ラグビーボール型爆弾・バトルボールを取り出し、上空の巨大ドラグラボーマめがけて蹴りつけるターボラガー。
巨大ドラグラボーマがバトルボールをぶつけられて墜落。

レッドターボ「ラガーパンチ!!」

すかさず急降下パンチを繰り出すターボラガーだが、巨大ドラグラボーマは殴り飛ばされた勢いを利用して岩山を蹴り再び跳躍、ブーメランを投げつける。
後ずさるターボラガー。

レッドターボ「ターボロボ!!」

レッドの指令でターボロボが飛来。それを追ってターボラガーも飛び上がる。

レッドターボ「合体・スーパーシフト!!

ターボラガーが足を分離し、そこからアーマーに変形。
ターボラガーの足がターボロボの足首に合体し、ターボラガーが変形したアーマーがターボロボの上半身に装着され、ターボラガーの頭にヘッドギアが合体した。

レッドターボ「完成! スーパーターボロボ!!

スーパー合体を遂げたスーパーターボロボが地面に降り立った。
巨大ドラグラボーマは腕から赤い光の刃を飛ばして攻撃。スーパーターボロボのコクピットが若干揺れる。

レッドターボ「スーパーミラージュビーム!!

スーパーターボロボの両腕と頭が描く三角形から放たれた光線が巨大ドラグラボーマに炸裂し、巨大ドラグラボーマが大爆発した。


シーロンが太宰博士の下へ向かう。

太宰博士「先生、もう少しの辛抱ですからね…… 頑張って……」

妖精パワーの回復したシーロンが元のサイズに戻り、同時に山口先生を元の姿に戻した。
再びシーロンの姿を見、声を聞くことができるようになった力たちがシーロンに駆け寄る。
いきなり山口先生が元に戻ったことに仰天する太宰博士。
そして山口博士が目を覚ます。

山口先生「まぁ、博士ったら!」

博士が握っていた手を振りほどく山口先生。

太宰博士「あ、い、いや、あの…… 牙が取れて、よかったですね」
山口先生「牙ですって?」
太宰博士「いえ、ですからその、き、き、牙……」
山口先生「牙とはなんですか、牙とは!」
太宰博士「先生、そんなにキバらずに……」

山口先生が博士を池に突き落とす。
思わず苦笑いの力たち。

シーロン「あ~あ……」


そして同じ頃、流星と小夜子は──

流星「ターボレンジャーは自らパワーを取り戻した。この俺たちにできないはずがない!」

うなずく小夜子。

流星「必ずや流れ暴魔ヤミマル、キリカとなり…… この俺たちこそが、世界を支配してみせるぞ!」



あくまでも、流れ暴魔としての執念を燃やす若き2人。
ネオラゴーンと、ターボレンジャー。

果たして、三つ巴の戦いは、いかなる決着を
迎えるであろうか?



寄り添い、荒野の中を歩き去っていく2人。
その孤独な後ろ姿を、カシムが遠方からじっと見つめる──。

カシム(……小夜子……)



つづく



※ この続きは高速戦隊ターボレンジャーの第48話をご覧ください。

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最終更新:2021年04月16日 00:33