高速戦隊ターボレンジャーの第48話

※ ここまでのあらすじは高速戦隊ターボレンジャーの第47話をご覧ください。


雷雨の中、流星と小夜子が天に向かってひたすらに叫び続けている。

流星「我に試練を──っっ!!
小夜子「我に…… 我に試練を──っっ!!
流星「もっと強くなって…… ああっ!!」

落雷が2人を直撃。
2人はボロボロになりながらも、再び立ち上がって叫び続ける。

流星「稲妻よ──っ!! もっと強く打て──っっ!!
小夜子「稲妻よ──っっ!!

駆けつけた力たち5人も、あまりに異様な光景に言葉さえ出ない。
再び雷雲が光る。

力「危ないっ!!」

力が流星を押しのけた次の瞬間、流星が立っていた場所に雷が落ちる。
地面が爆発。

力「何をしている!! 死にたいのか!?」

流星の胸ぐらをつかんで怒鳴る力。

流星「ええいっ!!」

流星がそれを振りほどく。

流星「試練が…… 俺たちを流れ暴魔にするのだ!!」
小夜子「私たちは、流れ暴魔ヤミマル、キリカとなるのだ!」
流星「貴様たちは、あの極限状態の中で変身した…… 貴様たちにできて、俺たちにできぬわけがない!! ──稲妻よ!!
小夜子「稲妻よ──っっ!!
流星「もっと強く打て──っっ!!

5人を無視して、再び叫び始める2人──



流れ暴魔の秘密



なおも落雷に身を焼く流星と小夜子。
その叫び声に導かれたのか、流れ暴魔カシムもその場に姿を現す。

流星「流れ暴魔に…… 必ず、流れ暴魔に! 変身してみせるぞ──っ!!」
カシム「嵐よ──っ!! 去ぁぁれ──っ!! 去れ──っっ!!

カシムが手にした杖を振り回し、暴魔力を放つと、たちまち雷雲が消えて快晴になった。
愕然とする流星。

流星「何をする!」
カシム「変身してはならん!」
流星「なんだとっ!?」
カシム「変身してはならんっ! 今のお前たちの、その姿こそが、真の流れ暴魔なんじゃ!」
小夜子「何を言うか! これでは戦えぬ!」
カシム「流れ暴魔とは、戦う者にあらず! 本当は、この世に愛と、平和をもたらす者なんじゃ!」
流星「じじい! 耄碌しすぎたんじゃないのか?」
カシム「光っ!!」

カシムの胸ぐらをつかむ流星を、逆にカシムが一喝する。

カシム「小夜子……」

そして小夜子の肩を優しく抱き、力たちの方にも向き直り──

カシム「みんな、聞いてくれ! 今こそ流れ暴魔の真実を教えよう」

流星と小夜子が顔をこわばらせる。

カシム「遠い、遠い昔のことじゃ。暴魔百族が、人間や妖精たちと(いくさ)を始めた時、1人の傷ついた暴魔を、1人の美しい娘が救ったんじゃ」

回想──

腕から緑色の血を流す暴魔獣を、娘が止血してやっている。

カシム「暴魔百族で一番凶悪な暴魔獣・キメンボーマは、その優しさに驚き、たちまち心を打たれてしまったのじゃ…… その娘は、暴魔の中にも心の通じる者がいることを知ったが、人々はキメンボーマを許さなかった!」

傷ついたキメンボーマを連れて、戦火の中を逃げ惑う娘。

カシム「そこで娘とキメンボーマは、深~い深い山奥へ身を隠し、いつの日か人間と暴魔が、仲良くなれることを願った……」

キメンボーマと娘の間には、いつしか子供が生まれていた。
我が子をあやすキメンボーマ。

カシム「やがて子供が生まれた。2人はその子供が、海のように広い心を持った、優しい子に育つことを祈ったんじゃ。それが…… 流れ暴魔一族の始まりなんじゃ」

カシムの言葉の重みに、力たちは言葉を失う。

カシム「流れ暴魔とは、人と暴魔とをつなぐ者なんじゃ。人と暴魔とが、仲良くすること…… それこそが、キメンボーマと美しい娘の願いだったんじゃ」
流星「黙れ…… 黙れっ!! 誰がそんな話を信じるものか!!」

流星がカシムに背を向け、あくまでカシムを拒絶するかのように晴天に向かって叫ぶ。

流星「稲妻よ!! 俺を打てっ…… 稲妻よ──っっ!!」
小夜子「……光っ!」

見かねた小夜子が流星に駆け寄る。

流星「嵐よ来い……!! 稲妻よ──っっ!! 俺を、変身させてくれ──っっ!!


流星の悲壮な叫びは、衛星軌道上の暴魔城に届いていた。

ネオラゴーン「そんなに変身したいか…… よーし、変身させてやろう! ……ズルテン!!」

ズルテンが巨大な壺を持って現れ、ネオラゴーンの目の前に恭しく壺を置く。

ネオラゴーン「ぬふははははは…… 今、出してやる」

ネオラゴーンが杖を壺に向けると、壺の中から粘液のような物体が湧き出てきた。

ズルテン「なんだ、これ!?」
ネオラゴーン「行くのだ…… フフフフフフ……!」

粘液が地球を目指して飛んでいき、そして流星に取り憑く。
苦しむ流星。

小夜子「光っ!!」
カシム「どうした!?」
力「あっ!?」

流星の体が粘液にまみれている。

流星「なんだこれはっ……!?」

粘液はたちまち流星の全身を包み込み、暴魔獣となった。

小夜子「光…… その姿は……!?」
力「流星っ!!」
カシム「もしや、ネオラゴーンが!!」

さらにズルテンが姿を現す。

ズルテン「ひゃはは、いかにも! ただ殺したのではもったいないからな。ネオラゴーン様の手で、暴魔獣ゴムゴムボーマとされたのだってんだ!! かかれぃっ!!」

流星を取り込んだゴムゴムボーマが口から火炎弾を連射。

力「ターボレンジャー!!

力たちがターボレンジャーに変身しつつ攻撃をかわす。
そこにウーラー兵たちも現れ、たちまち乱戦になる。

イエローターボ「行くぞ、ピンク!!」
ピンクターボ「OK!!」

2人のWキックが炸裂──しかしゴムゴムボーマの弾力ある体に跳ね返されてしまう。
レッド、ブラック、ブルーがターボレーザーを抜くが──

小夜子「やめてっ!!」

小夜子がゴムゴムボーマをかばう。

小夜子「撃たないで!!」
レッドターボ「……撃てない! あいつ(流星)はもうヤミマルじゃない…… 無力な姿に戻ったあいつを撃つなんて、できないっ……!」

しかし、ゴムゴムボーマは背後から小夜子を突き飛ばす。

レッドターボ「あっ!」
カシム「小夜子っ!!」

ゴムゴムボーマの口から放たれる光線を浴び、ターボレンジャーのスーツがみるみるうちに腐食していく。

ズルテン「でへへ~、思い知ったか、ネオラゴーン様の恐ろしさ!」

苦しみ、膝をつく5人。

ズルテン「ズルパッチン!!」

ズルテンのスリングショットから放たれる爆弾の爆発がターボレンジャーを苛む。

ズルテン「今だ、行け、ゴムゴムボーマ!」

ゴムゴムボーマが全身から蒸気を噴き出し、猛烈な勢いでターボレンジャーに駆け寄る。
そしてレッドターボに抱き着き、そのまま5人全員を巻き込んで大爆発した。
ターボレンジャーもろとも吹き飛ぶゴムゴムボーマ──

カシム「光っ……!」
小夜子「光──っ!!」


小夜子がゴムゴムボーマを探して森を駆けずり回っている。
やがて満身創痍のゴムゴムボーマを発見。

小夜子「光!」

ゴムゴムボーマに駆け寄ろうとする小夜子をカシムが制止する。

カシム「やめとけ、行くな! 無駄じゃ……」
小夜子「光は…… ヤミマルは、この世で私のたった1人の仲間なのよ!?」

カシムを振り払う小夜子。

カシム「小夜子っ!」
小夜子「ヤミマル、しっかりして! ヤミマル……」

ゴムゴムボーマを抱き起す小夜子。
しかし、ゴムゴムボーマは小夜子を突き飛ばす。

小夜子「ヤミマル、やめて! 私よ、私! キリカよ? キリカなのよ!?」
カシム「危ない! やめろーっ!!」

カシムが小夜子をかばってゴムゴムボーマの前に立ちはだかり、ゴムゴムボーマが吐いた光線をまともに浴びる。
倒れるカシム。

小夜子「ヤミマル、私を忘れたの? 流れ暴魔2人、共に手を取って戦おうと誓った私を!!」
カシム「小夜子……」

そこにズルテンが姿を現す。

ズルテン「にゅっふっふ! ゴムゴムボーマ、小夜子もゴムゴムボーマにしてしまえってんだ!」

ゴムゴムボーマが小夜子に粘液を浴びせたのと同時に、力たちもその場に駆けつける。
粘液にまみれ、苦しむ小夜子。

カシム「小ぁぁ夜ぉぉ子──っっ!!

カシムが首から提げているペンダントから光線を発射。
光線を浴びて、小夜子の体にまとわりついた粘液が跡形もなく消え去る。

カシム「はぁ──っ!!」

さらにゴムゴムボーマにも光線を浴びせるカシム。
流星の体からゴムゴムボーマが離れる。

小夜子「光!!」

抱き合う小夜子と流星。

小夜子「ヤミマル……」
流星「……キリカ!」
小夜子「ヤミマル……」

安堵するカシム。
だが、次の瞬間、上空から流れ暴魔2人に光線が浴びせられる。爆発──

カシム「小夜子!! 光っ……!!」
ネオラゴーン「思い知ったか、ネオラゴーンの力を!!」

光線は、ネオラゴーンが暴魔城から放ったものだった。
煙が晴れる──そこには、変身を遂げた流れ暴魔の姿が。

ネオラゴーン「おおっ!!」
ズルテン「なんだぁ~!?」
力「ああっ……」
カシム「変身してしまった……!」
ネオラゴーン「あのパワーに耐えるとは!」

ヤミマルが天を睨む。

ヤミマル「ネオラゴーン、見たか!! 今こそパワーを取り戻したぞ!! 流れ暴魔ヤミマル!!」
キリカ「キリカ!!」

2人が互いの武器を交差させる。
あくまで戦いをやめないヤミマルを悲しみ、顔を曇らせるカシム。

力「なんという奴だ……」

ヤミマルが気を放って粘液に戻ったゴムゴムボーマを支配し、ズルテンに取り憑かせる。

ズルテン「い、嫌だぁ~っ!!」

ズルテンの体が粘液に覆われて、新たなゴムゴムボーマとなった。

ヤミマル「世界を支配するのは誰か、見せてやる!!」
カシム「違うぞ!!」

カシムがヤミマルの脚にしがみつき、懸命に動きを封じる。

カシム「流れ暴魔は、人と暴魔をこそつなぐ者なんじゃ!」
ヤミマル「……しつこいぜ!」

ヤミマルは必死に訴えるカシムを冷たく見下し、下流に蹴り落とした。

力「カシムっ!!」

川岸に叩きつけられたカシムの体が光を放つ。

はるな「あっ! この姿は……?」

力たちがキメンボーマの姿に戻ったカシムに駆け寄る。

力「もしや、キメンボーマでは!?」
キメンボーマ「……これを」

キメンボーマは力なくうなずくと、力にペンダントを差し出した。
力がペンダントを開けると、その中には少女の写真が。少女の顔は、小夜子に瓜二つ──

洋平「月影 小夜子……!?」
大地「違う。きっとキメンボーマを助けたという、美しい娘だ!」
キメンボーマ「ああ…… 小夜子の母じゃ……」
俊介「なんだって!? じゃあ、月影 小夜子はお前の……」
キメンボーマ「娘じゃ……」
力、洋平、俊介「えっ……!?」
はるな「……だったら、なぜ? なぜ黙っていたの?」
キメンボーマ「いかに暴魔の血を引くとはいえ、わしのような暴魔百族が父と知ったらば、いかにあの子でもショックが大きいと思ってな……」

一陣の風が吹き抜け、枯れ木に残った木の葉を散らしていく。
あたかもキメンボーマの命を散らすかの如く──

キメンボーマ「……小夜子を助けてやってくれ…… 流れ暴魔の本当の心を、わからせてやってくれ……」

キメンボーマが力の手を強く、強く握りしめる。

キメンボーマ「頼む…… あの、若い流れ暴魔たちをな……」

それが、キメンボーマの末期の言葉だった。
キメンボーマが杖とペンダントを残して消滅する。

力「キメンボーマ……」

キメンボーマの形見のペンダントを握りしめる力。
その目は、ヤミマルへの怒りに満ちている。


流れ暴魔2人は圧倒的なパワーでウーラー兵の群れを蹴散らし、ゴムゴムボーマを追い詰めていた。
そこに力たちが現れる。

力「ヤミマル!!」
ヤミマル「んっ?」
力「2人ともよく見るんだ…… カシムが2万年間、胸に抱いていたものを!!」

力がキメンボーマのペンダントを開き、小夜子の母の写真を見せつける。

力「カシムの正体こそ、キメンボーマだったんだ。この人は、暴魔獣を初めて愛した人間の娘…… そして、その間に生まれた子供が、キリカ…… 君なんだ! これは君のお母さん…… お母さんなんだ!!」

もう一度、キリカに向けて写真を突きつける力。

力「カシムは君のお父さんだ」
キリカ「嘘だ!」
力「嘘じゃない!! 親子でありながら、君の受けるショックを思って黙っていた…… その気持ちこそ、本当の親心だと思わないか?」

キリカが顔を伏せる。
ゴムゴムボーマから自分を救った時、「小夜子」の名を叫んだカシムの姿がその脳裏をよぎる。

ヤミマル「キリカ! 俺たちの約束を忘れたのか? 2人で世界を支配するという約束を……」

キリカの手を握るヤミマル。
しかしキリカの表情は晴れない。
力たちは、キリカが心を改めることを祈りながら見守っている──

キリカ「…………」

キリカがヤミマルから顔をそむける。
力とキリカの目が合う。
力が緊張を解いた、その瞬間──

キリカ「……月光剣!!」

キリカの剣から放たれた光線が力たちを襲った。
すかさずジャンプしてターボレンジャーに変身し、流れ暴魔2人を攻撃する5人。
ゴムゴムボーマとウーラー兵が横槍を入れるが、ターボレンジャーはターボレーザーの一斉射撃を浴びせて難なく撃破した。
ズルテンからゴムゴムボーマが離れる。

ズルテン「助かったぜってんだ!」

ズルテンが放り捨てた半固形状のゴムゴムボーマがウーラー兵の1人に取り憑き、新たなゴムゴムボーマとなる。

ズルテン「悪く思うなよ」

そのままレッドに襲い掛かるゴムゴムボーマだったが、GTクラッシュであっけなく倒された。

ズルテン「あらら~! よーし……」

ズルテンがほら貝状の武器を吹き鳴らし、暴魔再生巨大化光線を照射。
ゴムゴムボーマが巨大な姿となって蘇生される。

レッドターボ「ラガーファイター、発進!!」

ターボビルダーの上部ハッチが開き、ラガーファイターが出撃。

レッドターボ「変形シフト・ターボラガー!!

すぐさまラガーファイターが4つのブロックに分かれ、ターボラガーへと再合体・変形してゆく。

レッドターボ「セットアップ! ターボラガー!!

ターボラガーが巨大ゴムゴムボーマの前に舞い降りた。

レッドターボ「バトルボール、キックオフ!!」

ラグビーボール型爆弾・バトルボールを取り出し、巨大ゴムゴムボーマめがけて蹴りつけるターボラガー。
巨大ゴムゴムボーマはヘディングでバトルボールを返すが、ターボラガーもバトルボールを上空へトス。
そのまま跳躍し、電撃的なスパイクを巨大ゴムゴムボーマに叩き込む。
バトルボールが巨大ゴムゴムボーマの口の中に納まる。
すかさずパンチ、キックの連続攻撃を繰り出すターボラガー。巨大ゴムゴムボーマは手も足も出ない。

レッドターボ「ラガージャンプ!!」

最後に大きく飛び上がり──

レッドターボ「スクリューラガーキ──ック!!

エネルギーを込めた両足蹴りで巨大ゴムゴムボーマを粉砕した。


力たちはキメンボーマの杖を墓標として砂浜に立て、花を手向けた。

キメンボーマ(小夜子…… 海のように、広~い心を持った、優しい子に育つんだぞ……)

力「キメンボーマよ。必ず君の気持ち、ヤミマルとキリカに伝える」

決意を新たに、水平線を見据える5人。
その後ろ姿を、キリカがじっと見つめる──。



ついに、ヤミマルとキリカも変身した。
だが、同時にキリカは、思いもかけぬ出生の秘密を知った。
果たして、その胸に去来する思いは?

誰も、うかがい知る術もなかった……。




つづく



※ この続きは高速戦隊ターボレンジャーの第49話をご覧ください。

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最終更新:2021年04月16日 00:41