雷雨の中、流星と小夜子が天に向かってひたすらに叫び続けている。
流星「我に試練を──っっ!!」
小夜子「我に…… 我に試練を──っっ!!」
流星「もっと強くなって…… ああっ!!」
落雷が2人を直撃。
2人はボロボロになりながらも、再び立ち上がって叫び続ける。
流星「稲妻よ──っ!! もっと強く打て──っっ!!」
小夜子「稲妻よ──っっ!!」
駆けつけた力たち5人も、あまりに異様な光景に言葉さえ出ない。
再び雷雲が光る。
力「危ないっ!!」
力が流星を押しのけた次の瞬間、流星が立っていた場所に雷が落ちる。
地面が爆発。
力「何をしている!! 死にたいのか!?」
流星の胸ぐらをつかんで怒鳴る力。
流星「ええいっ!!」
流星がそれを振りほどく。
流星「試練が…… 俺たちを流れ暴魔にするのだ!!」
小夜子「私たちは、流れ暴魔ヤミマル、キリカとなるのだ!」
流星「貴様たちは、あの極限状態の中で変身した…… 貴様たちにできて、俺たちにできぬわけがない!! ──稲妻よ!!」
小夜子「稲妻よ──っっ!!」
流星「もっと強く打て──っっ!!」
5人を無視して、再び叫び始める2人──
なおも落雷に身を焼く流星と小夜子。
その叫び声に導かれたのか、流れ暴魔カシムもその場に姿を現す。
流星「流れ暴魔に…… 必ず、流れ暴魔に! 変身してみせるぞ──っ!!」
カシム「嵐よ──っ!! 去ぁぁれ──っ!! 去れ──っっ!!」
カシムが手にした杖を振り回し、暴魔力を放つと、たちまち雷雲が消えて快晴になった。
愕然とする流星。
流星「何をする!」
カシム「変身してはならん!」
流星「なんだとっ!?」
カシム「変身してはならんっ! 今のお前たちの、その姿こそが、真の流れ暴魔なんじゃ!」
小夜子「何を言うか! これでは戦えぬ!」
カシム「流れ暴魔とは、戦う者にあらず! 本当は、この世に愛と、平和をもたらす者なんじゃ!」
流星「じじい! 耄碌しすぎたんじゃないのか?」
カシム「光っ!!」
カシムの胸ぐらをつかむ流星を、逆にカシムが一喝する。
カシム「小夜子……」
そして小夜子の肩を優しく抱き、力たちの方にも向き直り──
カシム「みんな、聞いてくれ! 今こそ流れ暴魔の真実を教えよう」
流星と小夜子が顔をこわばらせる。
カシム「遠い、遠い昔のことじゃ。暴魔百族が、人間や妖精たちと戦を始めた時、1人の傷ついた暴魔を、1人の美しい娘が救ったんじゃ」
回想──
腕から緑色の血を流す暴魔獣を、娘が止血してやっている。
カシム「暴魔百族で一番凶悪な暴魔獣・キメンボーマは、その優しさに驚き、たちまち心を打たれてしまったのじゃ…… その娘は、暴魔の中にも心の通じる者がいることを知ったが、人々はキメンボーマを許さなかった!」
傷ついたキメンボーマを連れて、戦火の中を逃げ惑う娘。
カシム「そこで娘とキメンボーマは、深~い深い山奥へ身を隠し、いつの日か人間と暴魔が、仲良くなれることを願った……」
キメンボーマと娘の間には、いつしか子供が生まれていた。
我が子をあやすキメンボーマ。
カシム「やがて子供が生まれた。2人はその子供が、海のように広い心を持った、優しい子に育つことを祈ったんじゃ。それが…… 流れ暴魔一族の始まりなんじゃ」
カシムの言葉の重みに、力たちは言葉を失う。
カシム「流れ暴魔とは、人と暴魔とをつなぐ者なんじゃ。人と暴魔とが、仲良くすること…… それこそが、キメンボーマと美しい娘の願いだったんじゃ」
流星「黙れ…… 黙れっ!! 誰がそんな話を信じるものか!!」
流星がカシムに背を向け、あくまでカシムを拒絶するかのように晴天に向かって叫ぶ。
流星「稲妻よ!! 俺を打てっ…… 稲妻よ──っっ!!」
小夜子「……光っ!」
見かねた小夜子が流星に駆け寄る。
流星「嵐よ来い……!! 稲妻よ──っっ!! 俺を、変身させてくれ──っっ!!」
流星の悲壮な叫びは、衛星軌道上の暴魔城に届いていた。
ネオラゴーン「そんなに変身したいか…… よーし、変身させてやろう! ……ズルテン!!」
ズルテンが巨大な壺を持って現れ、ネオラゴーンの目の前に恭しく壺を置く。
ネオラゴーン「ぬふははははは…… 今、出してやる」
ネオラゴーンが杖を壺に向けると、壺の中から粘液のような物体が湧き出てきた。
ズルテン「なんだ、これ!?」
ネオラゴーン「行くのだ…… フフフフフフ……!」
粘液が地球を目指して飛んでいき、そして流星に取り憑く。
苦しむ流星。
小夜子「光っ!!」
カシム「どうした!?」
力「あっ!?」
流星の体が粘液にまみれている。
流星「なんだこれはっ……!?」
粘液はたちまち流星の全身を包み込み、暴魔獣となった。
小夜子「光…… その姿は……!?」
力「流星っ!!」
カシム「もしや、ネオラゴーンが!!」
さらにズルテンが姿を現す。
ズルテン「ひゃはは、いかにも! ただ殺したのではもったいないからな。ネオラゴーン様の手で、暴魔獣ゴムゴムボーマとされたのだってんだ!! かかれぃっ!!」
流星を取り込んだゴムゴムボーマが口から火炎弾を連射。
力「ターボレンジャー!!」
力たちがターボレンジャーに変身しつつ攻撃をかわす。
そこにウーラー兵たちも現れ、たちまち乱戦になる。
イエローターボ「行くぞ、ピンク!!」
ピンクターボ「OK!!」
2人のWキックが炸裂──しかしゴムゴムボーマの弾力ある体に跳ね返されてしまう。
レッド、ブラック、ブルーがターボレーザーを抜くが──
小夜子「やめてっ!!」
小夜子がゴムゴムボーマをかばう。
小夜子「撃たないで!!」
レッドターボ「……撃てない! あいつはもうヤミマルじゃない…… 無力な姿に戻ったあいつを撃つなんて、できないっ……!」
しかし、ゴムゴムボーマは背後から小夜子を突き飛ばす。
レッドターボ「あっ!」
カシム「小夜子っ!!」
ゴムゴムボーマの口から放たれる光線を浴び、ターボレンジャーのスーツがみるみるうちに腐食していく。
ズルテン「でへへ~、思い知ったか、ネオラゴーン様の恐ろしさ!」
苦しみ、膝をつく5人。
ズルテン「ズルパッチン!!」
ズルテンのスリングショットから放たれる爆弾の爆発がターボレンジャーを苛む。
ズルテン「今だ、行け、ゴムゴムボーマ!」
ゴムゴムボーマが全身から蒸気を噴き出し、猛烈な勢いでターボレンジャーに駆け寄る。
そしてレッドターボに抱き着き、そのまま5人全員を巻き込んで大爆発した。
ターボレンジャーもろとも吹き飛ぶゴムゴムボーマ──
カシム「光っ……!」
小夜子「光──っ!!」
小夜子がゴムゴムボーマを探して森を駆けずり回っている。
やがて満身創痍のゴムゴムボーマを発見。
小夜子「光!」
ゴムゴムボーマに駆け寄ろうとする小夜子をカシムが制止する。
カシム「やめとけ、行くな! 無駄じゃ……」
小夜子「光は…… ヤミマルは、この世で私のたった1人の仲間なのよ!?」
カシムを振り払う小夜子。
カシム「小夜子っ!」
小夜子「ヤミマル、しっかりして! ヤミマル……」
ゴムゴムボーマを抱き起す小夜子。
しかし、ゴムゴムボーマは小夜子を突き飛ばす。
小夜子「ヤミマル、やめて! 私よ、私! キリカよ? キリカなのよ!?」
カシム「危ない! やめろーっ!!」
カシムが小夜子をかばってゴムゴムボーマの前に立ちはだかり、ゴムゴムボーマが吐いた光線をまともに浴びる。
倒れるカシム。
小夜子「ヤミマル、私を忘れたの? 流れ暴魔2人、共に手を取って戦おうと誓った私を!!」
カシム「小夜子……」
そこにズルテンが姿を現す。
ズルテン「にゅっふっふ! ゴムゴムボーマ、小夜子もゴムゴムボーマにしてしまえってんだ!」
ゴムゴムボーマが小夜子に粘液を浴びせたのと同時に、力たちもその場に駆けつける。
粘液にまみれ、苦しむ小夜子。
カシム「小ぁぁ夜ぉぉ子──っっ!!」
カシムが首から提げているペンダントから光線を発射。
光線を浴びて、小夜子の体にまとわりついた粘液が跡形もなく消え去る。
カシム「はぁ──っ!!」
さらにゴムゴムボーマにも光線を浴びせるカシム。
流星の体からゴムゴムボーマが離れる。
小夜子「光!!」
抱き合う小夜子と流星。
小夜子「ヤミマル……」
流星「……キリカ!」
小夜子「ヤミマル……」
安堵するカシム。
だが、次の瞬間、上空から流れ暴魔2人に光線が浴びせられる。爆発──
カシム「小夜子!! 光っ……!!」
ネオラゴーン「思い知ったか、ネオラゴーンの力を!!」
光線は、ネオラゴーンが暴魔城から放ったものだった。
煙が晴れる──そこには、変身を遂げた流れ暴魔の姿が。
ネオラゴーン「おおっ!!」
ズルテン「なんだぁ~!?」
力「ああっ……」
カシム「変身してしまった……!」
ネオラゴーン「あのパワーに耐えるとは!」
ヤミマルが天を睨む。
ヤミマル「ネオラゴーン、見たか!! 今こそパワーを取り戻したぞ!! 流れ暴魔ヤミマル!!」
キリカ「キリカ!!」
2人が互いの武器を交差させる。
あくまで戦いをやめないヤミマルを悲しみ、顔を曇らせるカシム。
力「なんという奴だ……」
ヤミマルが気を放って粘液に戻ったゴムゴムボーマを支配し、ズルテンに取り憑かせる。
ズルテン「い、嫌だぁ~っ!!」
ズルテンの体が粘液に覆われて、新たなゴムゴムボーマとなった。
ヤミマル「世界を支配するのは誰か、見せてやる!!」
カシム「違うぞ!!」
カシムがヤミマルの脚にしがみつき、懸命に動きを封じる。
カシム「流れ暴魔は、人と暴魔をこそつなぐ者なんじゃ!」
ヤミマル「……しつこいぜ!」
ヤミマルは必死に訴えるカシムを冷たく見下し、下流に蹴り落とした。
力「カシムっ!!」
川岸に叩きつけられたカシムの体が光を放つ。
はるな「あっ! この姿は……?」
力たちがキメンボーマの姿に戻ったカシムに駆け寄る。
力「もしや、キメンボーマでは!?」
キメンボーマ「……これを」
キメンボーマは力なくうなずくと、力にペンダントを差し出した。
力がペンダントを開けると、その中には少女の写真が。少女の顔は、小夜子に瓜二つ──
洋平「月影 小夜子……!?」
大地「違う。きっとキメンボーマを助けたという、美しい娘だ!」
キメンボーマ「ああ…… 小夜子の母じゃ……」
俊介「なんだって!? じゃあ、月影 小夜子はお前の……」
キメンボーマ「娘じゃ……」
力、洋平、俊介「えっ……!?」
はるな「……だったら、なぜ? なぜ黙っていたの?」
キメンボーマ「いかに暴魔の血を引くとはいえ、わしのような暴魔百族が父と知ったらば、いかにあの子でもショックが大きいと思ってな……」
一陣の風が吹き抜け、枯れ木に残った木の葉を散らしていく。
あたかもキメンボーマの命を散らすかの如く──
キメンボーマ「……小夜子を助けてやってくれ…… 流れ暴魔の本当の心を、わからせてやってくれ……」
キメンボーマが力の手を強く、強く握りしめる。
キメンボーマ「頼む…… あの、若い流れ暴魔たちをな……」
それが、キメンボーマの末期の言葉だった。
キメンボーマが杖とペンダントを残して消滅する。
力「キメンボーマ……」
キメンボーマの形見のペンダントを握りしめる力。
その目は、ヤミマルへの怒りに満ちている。
流れ暴魔2人は圧倒的なパワーでウーラー兵の群れを蹴散らし、ゴムゴムボーマを追い詰めていた。
そこに力たちが現れる。
力「ヤミマル!!」
ヤミマル「んっ?」
力「2人ともよく見るんだ…… カシムが2万年間、胸に抱いていたものを!!」
力がキメンボーマのペンダントを開き、小夜子の母の写真を見せつける。
力「カシムの正体こそ、キメンボーマだったんだ。この人は、暴魔獣を初めて愛した人間の娘…… そして、その間に生まれた子供が、キリカ…… 君なんだ! これは君のお母さん…… お母さんなんだ!!」
もう一度、キリカに向けて写真を突きつける力。
力「カシムは君のお父さんだ」
キリカ「嘘だ!」
力「嘘じゃない!! 親子でありながら、君の受けるショックを思って黙っていた…… その気持ちこそ、本当の親心だと思わないか?」
キリカが顔を伏せる。
ゴムゴムボーマから自分を救った時、「小夜子」の名を叫んだカシムの姿がその脳裏をよぎる。
ヤミマル「キリカ! 俺たちの約束を忘れたのか? 2人で世界を支配するという約束を……」
キリカの手を握るヤミマル。
しかしキリカの表情は晴れない。
力たちは、キリカが心を改めることを祈りながら見守っている──
キリカ「…………」
キリカがヤミマルから顔をそむける。
力とキリカの目が合う。
力が緊張を解いた、その瞬間──
キリカ「……月光剣!!」
キリカの剣から放たれた光線が力たちを襲った。
すかさずジャンプしてターボレンジャーに変身し、流れ暴魔2人を攻撃する5人。
ゴムゴムボーマとウーラー兵が横槍を入れるが、ターボレンジャーはターボレーザーの一斉射撃を浴びせて難なく撃破した。
ズルテンからゴムゴムボーマが離れる。
ズルテン「助かったぜってんだ!」
ズルテンが放り捨てた半固形状のゴムゴムボーマがウーラー兵の1人に取り憑き、新たなゴムゴムボーマとなる。
ズルテン「悪く思うなよ」
そのままレッドに襲い掛かるゴムゴムボーマだったが、GTクラッシュであっけなく倒された。
ズルテン「あらら~! よーし……」
ズルテンがほら貝状の武器を吹き鳴らし、暴魔再生巨大化光線を照射。
ゴムゴムボーマが巨大な姿となって蘇生される。
レッドターボ「ラガーファイター、発進!!」
ターボビルダーの上部ハッチが開き、ラガーファイターが出撃。
レッドターボ「変形シフト・ターボラガー!!」
すぐさまラガーファイターが4つのブロックに分かれ、ターボラガーへと再合体・変形してゆく。
レッドターボ「セットアップ! ターボラガー!!」
ターボラガーが巨大ゴムゴムボーマの前に舞い降りた。
レッドターボ「バトルボール、キックオフ!!」
ラグビーボール型爆弾・バトルボールを取り出し、巨大ゴムゴムボーマめがけて蹴りつけるターボラガー。
巨大ゴムゴムボーマはヘディングでバトルボールを返すが、ターボラガーもバトルボールを上空へトス。
そのまま跳躍し、電撃的なスパイクを巨大ゴムゴムボーマに叩き込む。
バトルボールが巨大ゴムゴムボーマの口の中に納まる。
すかさずパンチ、キックの連続攻撃を繰り出すターボラガー。巨大ゴムゴムボーマは手も足も出ない。
レッドターボ「ラガージャンプ!!」
最後に大きく飛び上がり──
レッドターボ「スクリューラガーキ──ック!!」
エネルギーを込めた両足蹴りで巨大ゴムゴムボーマを粉砕した。
力たちはキメンボーマの杖を墓標として砂浜に立て、花を手向けた。
キメンボーマ(小夜子…… 海のように、広~い心を持った、優しい子に育つんだぞ……)
力「キメンボーマよ。必ず君の気持ち、ヤミマルとキリカに伝える」
決意を新たに、水平線を見据える5人。
その後ろ姿を、キリカがじっと見つめる──。
ついに、ヤミマルとキリカも変身した。 だが、同時にキリカは、思いもかけぬ出生の秘密を知った。 果たして、その胸に去来する思いは?
誰も、うかがい知る術もなかった……。
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最終更新:2021年04月16日 00:41