高速戦隊ターボレンジャーの第49話



力たちが海岸にカシムことキメンボーマの墓標を立てて去ったあと、キリカもまた、父の墓前で手を合わせていた。
そこにヤミマルが姿を見せる。
しばし互いに顔を見合わせた後、うつむいたままその場を去るキリカ。
ヤミマルは何も言わず、ただその背中を見送る──



美しきキリカ



妖精の守護神・聖獣ラキア。
ターボレンジャーに暴魔百族打倒を託し、星となって今も見守っているラキア。
そのラキアの星座に今、異変が起ころうとしていた。
ラキアの星座が邪悪な赤い光に包まれてゆく。

はるな「ラキアの星が消えていくわ……」
シーロン「不吉な印です! ああ、何かとても恐ろしいことが起きようとしているに違いありません!」

シーロンの予感は当たっていた。
暴魔城の最奥部・大帝の間で、ネオラゴーンが不気味な呪文を唱えている。

ネオラゴーン「いでよ、『大封印』…… いでよ、大封印……!」

ラキアの星座を覆っていた赤い光が、暴魔百族の紋章に変化した。

俊介「暴魔百族! いったい何をしようとしているんだ……」

怯えるシーロン。
力たちが暴魔百族の紋章を睨む。

ネオラゴーン「出た! 大封印の前触れ! いでよ、いでよ大封印……!!」


一夜明け、ポイ捨てされたゴミだらけの空き地に、ズルテンがウーラー兵長・ウーを引き連れて現れた。
草木は枯れ、土も池の水も腐り果て、黄色い瘴気を噴き出している。

ズルテン「大封印はどこかな、大封印はどこかな?」

地面が光り、暴魔百族の紋章が浮かび上がる。
歓喜するズルテンとウー。

ズルテン「あっ、またまた出たぞってんだ! 大封印はいずこ、大封印はいずこ~♪」

そこに力と洋平が現れ、ズルテンに飛び蹴りを見舞う。吹き飛ぶズルテン。
次いで大地、俊介、はるなも参戦。

力「ズルテン! 『大封印』とはなんだ!?」
ズルテン「聞いて驚くなってんだ。暴魔百族の勇者たち108匹が封印されている暴魔界、最後に最大の封印なのだってんだ! その大封印が出現するのも時間の問題。108匹の強力暴魔獣軍団で、一挙に地球を制圧してやるぜってんだ!」
大地「そんなこと、させるものか!!」

その時、暗雲とともに暴魔城が飛来する。

俊介「暴魔城が!」
ネオラゴーン「大封印を探せ!!」
ズルテン「わかりましたっ! 大変身・かっとびズルテン!!」

ズルテンが車に変身し、ウーを乗せて走り去る。

ズルテン「行くぞってんだ~! それそ~れ~!!」

暴魔城が地球から離れていく。
一方、流れ暴魔2人もズルテンを追っていた。

ヤミマル「ネオラゴーンなどに負けるものか! 人と暴魔…… 2つの世界を支配するのは、流れ暴魔だということを見せてやる」

いつものように野望を口にするヤミマルだが、キリカの表情はすぐれない。
そんなことはつゆ知らず、ヤミマルが指笛を吹き、使い魔・ヤミクモを呼び出す。

ヤミマル「いよいよお前の力を借りる時が来たぜ」

流れ暴魔2人は(ひと)()のない洞窟に移動。
洞窟の中でヤミクモがうごめいている。
ヤミクモに暴魔力を与えるよう、キリカに促すヤミマル。
キリカは少し迷うそぶりを見せたあと、意を決してヤミマルとともにヤミクモへ暴魔力を照射した。
キリカが膝をつく。

ヤミマル「……やはりお前は迷っている!」

ヤミマルを睨みつけ、立ち上がるキリカ。

キリカ「黙れ、黙れっ! お前こそ仲間をそんな目で見ていて、ともに力を合わせて戦えると思っているのか!」

睨み合う2人。だが、やがて再び暴魔力の照射を再開する。
2人の暴魔力を受けたヤミクモは、武蔵坊弁慶を思わせる暴魔獣に変化した。

ヤミマル「ヤミクモボーマよ、行くぞ! 最後の戦いに!!」


ターボビルダー基地──

力「大封印というのは、いったいどこにあるんだ?」
太宰博士「あまりにも深く隠されたために、誰にもわからなくなってしまったんだ」
俊介「それがなぜ解け始めたんだろう?」
シーロン「地球が、一向にきれいにならないからです……」
洋平「ええっ……」
シーロン「空気や水が、少しでもきれいになったでしょうか?」
洋平「じゃあ、大封印を抑えきれないほど、地球は汚れてしまったというのか?」
はるな「いいえ、間に合わないのよ。みんな自然の大切さに気付いてはきたけど…… 一度破壊された自然は、すぐには戻らないのよ」
太宰博士「だからこそ君たちが必要なんだ! 今、地球は傷ついた体を治そうとしている。その間、弱った地球を守るのが君たちの勤めなんだ。そのためには、絶対に大封印を開かせてはならない! 今、大封印を破られたら、今度こそ地球は終わりだ」


ズルテン「大封印、大封印、大封印っと!」

大封印のありかを探して駆けずり回るかっとびズルテンの前に、力たちが立ちはだかる。

力「止まれ、ズルテン!!」
ズルテン「何を~、蹴散らしてやるぜってんだ!!」

かっとびズルテンの体当たりを受けて吹き飛ぶ5人。

ズルテン「それそれ~ぃ!」
力「ズルテン、待てっ!!」

そこに流れ暴魔が出現。

俊介「ヤミマルっ!」
力「キリカ……」
ヤミマル「世間もだいぶにぎやかになって、最後の戦いらしい雰囲気が出てきたぜ!」
力「待て! 今はそれどころじゃないんだ」

鼻で笑うヤミマル。

ヤミマル「心配するな! 大封印は開かせん。お前たちを片付けたら、すぐにネオラゴーンも片付けてやるということさ」
大地「言わせておけば!!」
はるな「あなたたちは、どうして流れ暴魔に託された願いを、わかろうとしてくれないの!?」
ヤミマル「黙れ!! 2万年前の暴魔獣ごときのたわごと、誰が信じるものか!」

キリカが顔を曇らせる。

力「これでもたわごとと言うのか!?」

力がキメンボーマの形見のペンダントを取り出し、()(たび)キリカに小夜子の母の写真を突き付ける。

キリカ「あっ……」
力「キリカ! 君のお母さんだ。もう一度よく見るんだ! 2万年前、人間でありながら、暴魔獣キメンボーマを愛した…… 優しい()()を!!」

うつむくキリカ。
はるなが進み出て、力の隣に立つ。

はるな「このペンダントは、人と暴魔が仲良くすることを願っているのよ!? 流れ暴魔が、その架け橋になることを……」
ヤミマル「俺は人と暴魔から受けた傷の痛みに耐えながら、2万年を生き延びてきたのだ…… 2万年の痛み、もはや血であがなわねば消えんのさ!」
力「違うっ!! 俺たちはみんな、仲良く生きていけるんだ!!」

ヤミマルが力をあざ笑い、そして背を向ける。

ヤミマル「俺に人を愛せというのか? 暴魔を愛せというのか!?」

すぐに振り向くヤミマル──その顔には、黒い面頬が装着されている。

ヤミマル「俺の愛するのはただ1人……!!」

キリカが顔を上げる。

ヤミマル「人と暴魔、2つの世界を支配する王国を築き、黄金の椅子に座らせてやるぜ……!」

困惑するキリカ。

ヤミマル「……ヤミクモボーマっ!!」

ヤミマルの指示でヤミクモボーマが出現。掌から糸を放って力たちの動きを封じ、いつもヤミマルが使っていた銃で撃ちまくる。

5人「ターボレンジャー!!

瞬間変身した5人が糸を引きちぎり、ヤミマルとヤミクモボーマに挑みかかってゆく。

ヤミマル「キリカっ!」

ヤミマルの言葉を受けて、迷っていたキリカも戦闘に加わる。


これまでヤミマルが使ってきた数々の武器を操り、ターボレンジャーを苦しめるヤミクモボーマ。さながら、ヤミマルを2人同時に相手取るのと同じような状態になっている。
ヤミクモボーマに投げ飛ばされた勢いを利用して背後の木を蹴り、反撃の飛び蹴りを見舞うレッドターボ。
ヤミクモボーマが姿を消す。

レッドターボ「あっ! どこ行ったんだ……?」

周囲を見回すレッドの頭上から、ヤミクモボーマが攻撃を仕掛ける。吹き飛ぶレッド。
流れ暴魔2人とヤミクモボーマがターボレンジャーにとどめを刺さんと迫る。
その時、地面に暴魔百族の紋章が浮かぶと同時に地割れが起こり、巨大な爆発とあふれ出る瘴気が一同を包む。
変身が解け、転がる力たち。

洋平「なんなんだ、今のは……」
太宰博士「大封印の妖気だ! あちこちで同じような現象が起きた。大封印が破れかけてきた印なんだ!」

キリカも倒れ伏している。ヤミマルとヤミクモボーマの姿はない。

力「キリカっ!」

キリカに駆け寄る5人。

力「キリカ、しっかりしろ!」

顔を伏せるキリカ。そこにヤミクモボーマが攻撃を見舞う。

洋平「力、ここは俺たちに任せろ!」
力「頼む!」

キリカに肩を貸し、戦場を離れる力。
しばらく走ったところで、キリカが力を振りほどく。

キリカ「なぜ…… この私を……?」
力「君には、人でありながら暴魔を…… 暴魔でありながら人を愛した者たちの血が流れているんだ!」

キリカの腕から血が滴る。

力「憎しみを超えて、互いに愛し合うことの大切さを知った者たちの血が……」

力が再びキメンボーマのペンダントを取り出し、キリカに見せる。

力「みんな仲良く生きること、それが君の両親の願いだったんだ。俺はカシムとこのペンダントに誓ったんだ…… 命にかけても…… 君を守ると!」

ペンダントの中の写真に目をやる力。

力「君はこの人たちが送り出した、この世に一番大切なことを伝える、この世で一番美しい存在。君自身が、2万年のメッセージなんだ!!」
キリカ「この私が? この私が2万年のメッセージ!?」

うなずく力。
その時、再び地震が起こり、崖が崩れ、黄色い瘴気が噴き出す。
ズルテンとウーラー兵たちもその場に来ていた。

ズルテン「このあたりだ、このあたりにこそ大封印があるに違いないってんだ!」
太宰博士「大変だ! 大封印を破られてしまうぞ!!」

焦る力。そこにヤミマルが現れ、ドロップキックを見舞う。
ヤミマルがキリカの肩に手を置く。

ヤミマル「キリカっ!」
キリカ「ヤミマル……」
ヤミマル「炎 力!! この流星剣から、逃げることはできないぞ!!」

剣を振りかざして力を襲うヤミマル。力は変身しないままヤミマルと戦う。
ヤミマルの光線を受けて倒れる力。力のジャケットからこぼれ出たペンダントがキリカの目に留まる。

ヤミマル「今だ、キリカ!!」
キリカ「っ!」
ヤミマル「今こそ流れ暴魔2万年の恨みを晴らすのだ!!」

しかし、キリカは悲しげな表情を浮かべ、力に手を出そうとしない。

ヤミマル「どうした、キリカ?」
キリカ「……わからない! どうしたらいいのか……!!」
ヤミマル「キリカ……」

ヤミマルがペンダントに目を向け、そしてキリカを睨みつける。

ヤミマル「愚か者がぁ……! その目、覚ましてやるぜ!!」

ヤミマルが力に切りかかる。

キリカ「やめてぇっ!!」

駆け出すキリカ。
キリカがヤミマルの剣をつかんで食い止める。

ヤミマル「あっ…… キリカ!」
キリカ「ヤミマル…… ごめんなさい、ヤミマル! 私…… 私……!!」

キリカの頬を涙が伝う。ヤミマルも寂しさと困惑がないまぜになったような表情を浮かべている。
そして大地たちも駆けつけてきたのを見て、ヤミマルがキリカと力たちに背を向ける。

ヤミマル「流れ暴魔ヤミマル、たとえ1人になろうとも戦うぞ!」
キリカ「ヤミマル!」
力「ヤミマル……」

ヤミマルは2人を無視して指笛を吹く。
ヤミクモボーマが出現。

ヤミマル「勝負だっ!!」
力「……行くぞっ!!」
5人「ターボレンジャー!!

やむなく変身して戦う5人。
鬼気迫るヤミマルの猛攻がブラックたちを追い詰めてゆく。

レッドターボ「あっ、ここは!?」

レッドはヤミクモボーマの作り出した異空間に閉じ込められていた。
ヤミクモボーマの糸に絡めとられるレッド。
ヤミクモボーマはヤミマルの武器を使って攻撃してくる。

レッドターボ「負けてたまるか……! 行くぜっ!!」

レッドが闘志を奮い立たせ、GTソードでヤミクモボーマと切り結ぶ。

レッドターボ「GT…… クラ──ッシュ!!

レッドの2連続斬りが炸裂。異空間が消えると同時に、ヤミクモボーマも爆発・消滅する。

ヤミマル「おのれぇっ!!」

ヤミマルが兜から暴魔再生巨大化光線を照射。
ヤミクモボーマが巨大な姿となって蘇生される。

レッドターボ「ラガーファイター、発進!!」

ターボビルダーの上部ハッチが開き、ラガーファイターが出撃。

レッドターボ「変形シフト・ターボラガー!!

すぐさまラガーファイターが4つのブロックに分かれ、ターボラガーへと再合体・変形してゆく。

レッドターボ「セットアップ! ターボラガー!!

ターボラガーが巨大ヤミクモボーマの前に舞い降りた。
巨大ヤミクモボーマが先手を取り、糸を浴びせてターボラガーの動きを封じると、さらに斧で斬りかかり、銃撃を浴びせる。
続いて鎖鎌を取り出す巨大ヤミクモボーマ。一方のターボラガーは糸を引きちぎってラグビーボール型爆弾・バトルボールを投げつけ、これを牽制する。
そして宙を舞う鎖鎌をキャッチし、巨大ヤミクモボーマを鎖で縛り上げて投げ飛ばす。

レッドターボ「行くぞ! ラガージャンプ!!」

最後に大きく飛び上がり──

レッドターボ「スクリューラガーキ──ック!!

エネルギーを込めた両足蹴りで巨大ヤミクモボーマを粉砕した。
だが直後、地震と地滑りが起こる。地面からはなおも瘴気が噴出している。

ズルテン「破れる! 破れるぞぉ、大封印が!!」

急いでターボラガーを降り、ズルテンの下へ向かう力たち。
一方のヤミマルは、キリカに背を向け、夕闇の荒野を1人歩き去っていく。

ヤミマル「……俺は負けん!! 流れ暴魔ヤミマル、たとえ1人になろうとも最後まで戦う!!」



果たして、ターボレンジャーは、
大封印が開くのを、防ぐことができるのであろうか!?

そして…… 孤独のヤミマルは、どこへ行くのか?




つづく



※ この続きは高速戦隊ターボレンジャーの第50話をご覧ください。

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最終更新:2021年04月23日 02:25