激走戦隊カーレンジャーの第29話

前回、「ボーゾック祭り」の最中、宇宙の邪悪なエネルギーを一気に浴びたことでパワーアップを遂げたリッチハイカー教授。
そんなことなどつゆ知らぬレッドレーサー・恭介は、故郷のポリス星へ帰ったシグナルマンに思いをはせていた。

恭介「今頃…… シグナルマンの奴、ポリス星の小学校の運動会で、息子と2人で二人三脚競争に出場して、家庭サービスしているんだろうなぁ」

その頃、ダップは急な眠気と倦怠感に襲われていた。

ダップ「う~ん、最近どうしてこう眠くなりやすいんダップか?」

うとうとして、パソコンに顔をぶつけるダップ。

ダップ「あっ! わかったダップ!」


一方、宇宙暴走族ボーゾックのアジト・バリバリアンでは──

ガイナモ「リッチハイカー教授! 宇宙の邪悪なエネルギーを偶然にも1人で浴びて、より悪知恵に磨きがかかったはずなのに、カーレンジャーを倒す作戦はどうなってるんだ? リ~~ッチハイカー教授!!」
リッチハイカー「ガイナモ…… いったい誰に向かって口をきいているのかな」
ガイナモ「えっ……!?」

リッチハイカーが指を鳴らすと、地面を揺るがすような轟音と共にバリバリアンが揺れ始めた。
バリバリアンの窓から、巨大な怪獣が中を覗いている!

ガイナモ「どわ~!?」
ゼルモダ「オーマイゴッド!」
グラッチ「いや~ん、許して!」



予期せぬ大怪獣事故!!



リッチハイカー「名付けて『ブレーキング』」
ガイナモ「さ、さ~すがリッチハイカー教授! 低予算でよくもこんな素晴らしいロボットを作ったもんだ。いや、お見事」
リッチハイカー「足りない資金は…… ガイナモ、あなたの秘密定期預金を使わせていただきました」
ガイナモ「なっ、何を!? あの秘密定期預金は、俺がゾンネットと結婚するために貯めてた金なんだぞ!」
ゾンネット「誰があんたなんかと結婚するわけ!?」
ガイナモ「い、いや……」
ゾンネット「だけど、あたしのために貯めてたってことは…… あたしのお金!?」
ガイナモ「そうよ!」
ゾンネット「リッチハイカー!」
リッチハイカー「何か」
ゾンネット「誰に断ってあたしのお金であんなくだらないロボット作ったわけ!?」
リッチハイカー「……ゼルモダ、グラッチ。このうるさい2人をなんとかしなさい」
ゼルモダ「はい、リッチハイカー教授!」

ゼルモダとグラッチがガイナモとゾンネットを羽交い絞めに。

ガイナモ「こ、コラ! 何するんだ、お前は!」
ゾンネット「何すんのよ!」
ガイナモ「ゼルモダ、グラッチ! オメーらまで、まさか!」
ゼルモダ「そう! 俺たちまで、そのまさかだよ」

回想──

リッチハイカー「わたくしの部下になれば、ガイナモの秘密定期預金から少しお分けしますよ」
ゼルモダ「……俺とガイナモは硬い友情で結ばれてるんだから、ガイナモを裏切ることはできねぇよ」
グラッチ「できねぇよ」
リッチハイカー「その友情とやらを、高くお買いいたしましょう」

札束を2つ見せるリッチハイカー教授。

ゼルモダ「へっ、友情は売り物じゃねぇよ。なぁ?」
グラッチ「売り物じゃねぇよ!」
リッチハイカー「なるほど」

リッチハイカー教授が札束を5つ追加。

リッチハイカー「そこを何とか」
ゼルモダ「バカにするんじゃねぇ! 俺にだって誇りってもんがあらぁな」
グラッチ「バカに埃っぽいぜ!」
リッチハイカー「その誇りとやらも、まとめてお買いしましょう」

スーツケースの中の札束をすべて差し出すリッチハイカー教授。

リッチハイカー「さぁ」
グラッチ「売る、売る! 決めた!」
ゼルモダ「すぐ持ってって!」

ガイナモ「この裏切り者!! 俺たちの友情は、いったい何だったんだ!?」
ゼルモダ「まぁ、しょせんその程度のものだったってことさ!」
グラッチ「そう、バカじゃねぇってことだよ」
リッチハイカー「オホン! 諸君、今日から、知性と教養溢れるわたくしリッチハイカー教授がボーゾックの新しい総長を務めることになった」
ガイナモ「なっ、何だとぉ!?」
リッチハイカー「諸君と新しいボーゾックを作り、宇宙征服して、大儲けしようではないか!」
ゼルモダ「ほら、オメーら何してる! 盛り上がれ!」

ボーゾックのゴロツキたちがゼルモダに促されてリッチハイカー教授を称え始めた。

ガイナモ「させんじゃねぇぇ!!」

ガイナモがゼルモダの足を踏みつけて脱出。ケンカキックを見舞う。

ゾンネット「あたしのお金、返せー!!」

ゾンネットもグラッチの腕に噛みついて脱出。グラッチを蹴飛ばし、ガイナモと共にバリバリアンを脱出する。
それを追って地球(チーキュ)へ向かうブレーキング。

ガイナモ「ええ~い、もう、リッチハイカーの野郎…… 今度会った時は、ただじゃおかねぇぞ!!」

言った直後にブレーキングが地球(チーキュ)へ降下。ガイナモとゾンネットが乗った暴走車を追いかける。
アクセルを全開にして逃げようとした2人だが、壁に激突して車が壊れてしまった。
走って逃げる2人をブレーキングが通せんぼ。頭部のコクピットには、リッチハイカーが自ら搭乗している。


自動車会社ペガサス地下のカーレンジャー秘密基地──

ダップ「ダップが最近眠くなる原因がわかったダップ!」
恭介「えっ!? なんで?」
ダップ「実は!」
実「実は?」
ダップ「その前に…… ねぇねぇ、聞いて聞いて! ダップの歌ダップ!」

何の脈絡もなく、キャラソン『ダップのうたダップ!』を歌い始めるダップ。
困惑のカーレンジャー一同。歌が終わる前に、ボーゾック発生サイレンが鳴る。

ダップ「みんな、ボーゾック発生ダップ!!」
恭介「よし、行くぞみんな!!」
5人「激走・アクセルチェンジャー!!
レッドレーサー「行くぞ!!」
グリーンレーサー「おう!!」

カーレンジャーが出撃。

ダップ「あっ…… 言いそびれたダップ」


リッチハイカー教授は、地球(チーキュ)の港で優雅にティータイムの最中。
そこへカーレンジャーがペガサスサンダーとドラゴンクルーザーで駆けつける。

リッチハイカー「カーレンジャーの皆さん、お待ちしてました」
グリーンレーサー「なんやなんや、リッチハイカー、ちょっと見んうちに顔色よくなったんとちゃうけ?」
リッチハイカー「色が変わっただけではありません。わたくしはパワーアップして、悪知恵にも、より磨きがかかったのです。人呼んで、リッチリッチハイカー教授!!」
レッドレーサー「リッチリッチハイカー!?」
リッチハイカー→リッチリッチハイカー「さらに重大な発表があります。わたくしは、本日付をもって、ボーゾックの2代目総長になったのです!!」
ブルーレーサー「何ですって!?」
レッドレーサー「ガイナモはどうしたんだよ?」
リッチリッチハイカー「無能な初代総長・ガイナモは、ゾンネットともどもボーゾックを追放されました」
レッドレーサー「ゾンネットも!?」
リッチリッチハイカー「今頃は、どこかでさまよっていることでしょう」


その頃、ガイナモとゾンネットはスーパーマーケットで果物を買って飢えをしのいでいた。

ガイナモ「あ~あ、わびしいなぁ」


リッチリッチハイカー「とにかくわたくしが総長になったからには、今までのボーゾックとひと味もふた味も違うのです。手始めに、カーレンジャー、あなたたちを血祭りにして差し上げましょう!!」
レッドレーサー「そうは行くかよ!!」
リッチリッチハイカー「ワンパー!!」

海の中から戦闘員ワンパーが出現。早速戦いが始まる。

リッチリッチハイカー「フハハハハ、こいつには手も足も出まい!!」

ワンパーを倒し終えたカーレンジャーの前に、リッチリッチハイカーの操るブレーキングが立ちはだかった。
ブレーキングの踏み付け攻撃を紙一重でかわすカーレンジャー。

レッドレーサー「なんだ、こいつは!?」
リッチリッチハイカー「ボーゾックの2代目総長、わたくしリッチリッチハイカー教授が作った怪獣ロボット・ブレーキングです」
レッドレーサー「よし、ギガブースター!!」

秘密基地からギガブースターが飛来。

レッドレーサー「キャノンモード!!
ブルー、グリーン、イエロー、ピンク「イグニッション!!
カーレンジャー「ブースターキャノン!!

ギガブースターから撃ち出された灼熱のエネルギー弾がブレーキングに炸裂──が、ブレーキングは微動だにしない。

ピンクレーサー「全然効かない!」
リッチリッチハイカー「カーレンジャーとは、この程度のヒーローだったんですね? リーッチッチッチッチ!」
グリーンレーサー「ああっ……」
レッドレーサー「ダップ! レンジャービークルだ!」

だが、秘密基地内のダップは熟睡している。

レッドレーサー「ダップ、ダップ!? どうしたんだ……」
ブルーレーサー「このままでは、RVロボは出動できないでございます!」

ブレーキングが目から破壊光線を発射して攻撃。吹き飛ばされるカーレンジャー。

レッドレーサー「仕方ない…… いったん退却だ!」


カーレンジャー秘密基地──

実「あっ! いったい何をしとるんじゃ!」
菜摘「ダップ!」
洋子「ダップ!」
恭介「起きろよ!」
直樹「起きてください!」
ダップ「う~ん…… みんな?」

ダップが目を覚ます。

直樹「のんきに寝てる場合じゃございませんよ!?」
ダップ「いいえ、寝てる場合ダップ。実は…… ハザード星人は、冬眠しなければ生きてはいけない体の宿命を持っているんダップ」
恭介「と、冬眠!? そんな!?」
実「冬眠って…… まだ夏終わったばっかしやぞ!?」
ダップ「だから、冬眠する」

再び眠りにつくダップ。

恭介たち「ダップ!?」
ダップ「みんな…… ごめんダップ」
実「ごめんて!」
直樹「……わたくしたち、これからどうすればよいのでございますか!?」
洋子「もう一度シグナルマンに戻ってきてもらうとか……」
菜摘「洋子! そんないい加減なこと言ってる場合じゃないでしょ?」
実「そやなぁ…… ここはひとつ、現実を見つめてやな……」
恭介「俺たちだけで、やるしかないだろ」

再度、ボーゾック発生サイレンが鳴り響く。

恭介「……みんな、行くぞ!!」
直樹、実、菜摘、洋子「おう!!」

カーレンジャーがレンジャービークルで出撃。
すぐさまRVロボへと激走合体してブレーキングに立ち向かう。

レッドレーサー「今度は絶対負けねぇぜ!!」
リッチリッチハイカー「RVロボ、ついに出てきましたね。お前の来るのを待っていたのです!」

RVロボのパンチやキックがブレーキングに炸裂。
ブレーキングも手指の爪で応戦。

レッドレーサー「今だ! RVソード!!」
カーレンジャー「RVソード・激走斬り!!
リッチリッチハイカー「さぁ、来い!」

ブレーキングは高速回転して激走斬りの回転を相殺し、RVソードを叩き折った。

レッドレーサー「RVソードが!」
グリーンレーサー「折れた……」

ブレーキングの猛反撃でRVロボが大ダメージを負う。

リッチリッチハイカー「これまでの頭の悪いボーゾックの攻撃とは、ひと味違うのです」

ブレーキングは尻尾でRVロボを打ち据える。

リッチリッチハイカー「スパーク・ON!!」

RVロボに尻尾を巻き付け、電流を流すブレーキング。
RVロボのコクピットが激しく爆発する。

イエローレーサー「第4・第5ステラパネル大破!」
ブルーレーサー「クルマジック・タービンエンジン、作動停止!」
ピンクレーサー「センサー・コンプレックス制御不能!」
グリーンレーサー「あかん、操縦不能や!!」

ついにRVロボは全身から火花を吹いて動かなくなった。
そこへゼルモダとワンパーが登場。ワンパーたちがRVロボに縄梯子をかけて取り付き、フロントガラスを割ってコクピット内へ突入する。
閉所のコクピットではカーレンジャーもうまく立ち回れない。

レッドレーサー「このままでは、RVロボも俺たちもやられてしまう!」

ワンパーの攻撃で、カーレンジャーはとうとうRVロボのコクピットから投げ出されてしまった。

リッチリッチハイカー「勝利の女神はボーゾックに微笑みました。さぁ、RVロボと一緒にバリバリアンに帰って、シャンパンでもいただきますか!」

ブレーキングが機能停止したRVロボもろとも宇宙へ飛んでいく。

レッドレーサー「ああっ、RVロボが……」


その頃、ガイナモとゾンネットは回転寿司屋にいた。

ガイナモ「タマゴ、マグロ、サケ、エビ、イワシと……」
ゾンネット「あ~、いっぱい」
ガイナモ「あーあ、もう。安いもんばっか食っちゃった」

続いてカラオケボックスへ。
キャラソン『夢見るゾンネット』を熱唱するゾンネット。

ガイナモ「ええ~い、もう、それにしてもリッチハイカーの奴! ……しかし、寂しいなぁ」


リッチリッチハイカー教授に完全なる敗北を喫したカーレンジャーは、すっかり肩を落としている。

恭介「俺たちカーレンジャーは、ダップやシグナルマンがいないと、ボーゾックに勝てないのか?」

日が沈み、夜になってもカーレンジャー一同はいじけていた。

恭介「……行こう」
実「さぁ、帰んぞ」

直樹を促す実。
しかし、その時──

???「戦う交通安全が、泣いてるぜ」

漆黒の鎧に身を包んだ謎の男が、街灯の逆光を背に5人の前に歩いてきた。

恭介「誰だ、お前?」
VRVマスター「敵か味方か、宇宙の一匹狼…… VRVマスター!!」

言うだけ言ってVRVマスターは姿を消した。
唐突に現れた謎の新戦士・VRVマスターの正体は?



つづく



※ この続きは激走戦隊カーレンジャーの第30話をご覧ください。

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最終更新:2024年05月24日 00:06