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第1幕
時は1814年 ナポレオン敗退後のヨーロッパの列強が集まった「会議は踊る されど進まず」が舞台です。短い前奏曲は第1幕終わりの4重唱から(ワルツ「後宮の舞踏」 Serailtanze, Op.5)。引き続いてワルツ「ウィーンの森の物語 Geschichten aus dem Wienerwald Op. 325」の一節がほのかに聞こえてくる(これは省略されることも多いですが)。そのまま音楽が途切れることなく幕が上がると、ツェドラウ伯爵の従僕ヨーゼフが伯爵の別荘に息せき切って駆け込んで来ます。外交上の一大事に何が何でも伯爵を見つけ出さねばならないのですが、肝心の伯爵は仕事そっちのけで女遊びにどこかをほっつき歩いているのです(ポルカ・フランセーズ「愛の使者」 Postillon d'amour, Op. 317~ポルカ・フランセーズ「ルイーズちゃん」 Louischen, Op. 339)。事情を知っていそうなメイドのアンナは不在、代わりに出て来たのは伯爵の愛人のひとりで、この別荘に囲われているフランツィ・カリアリ嬢。帰ろうとするヨーゼフを捕まえてもう5日も逢いに来てくれない伯爵のことを愚痴るのでした(ワルツ「祝祭の歌」 Feuilleton, Op. 293~ワルツ「おとぎ話」 Feenmarchen,Op. 312)。きっとまた新しい女でもこしらえてその女のところに入り浸っているのだろうと邪推していたところに当の伯爵が登場します。
どうして来てくれなかったのとなじるフランツィ(ポルカ・シュネル「電光石火」 Rasch in der That, op. 409)に伯爵は本妻の相手をしなければいけなくて来れなかったのだ、と言い訳をします(ポルカ・マズルカ「町と田舎」 Stadt und Land, Op. 322)。悔しいけど仕方ないわねと丸め込まれて引き下がるフランツィでした(ポルカ・マズルカ「ヴァルディーネ」 Waldine, Op. 385)。
そんな彼女を後目に、伯爵は妻と行った洋装店のお針子に惚れたので何とかせい、とヨーゼフに命じます。そりゃラブレターを書くのが一番とヨーゼフ、自分の筆跡だと何かと都合が悪いのでお前代筆しろ、と伯爵。伯爵の歌う歯の浮くような愛のささやきを口述筆記するヨーゼフ。伯爵は新たな恋の予感に意気揚揚と去って行くのです(ワルツ「新しいウィーン」 Neu-Wien, Op. 342)。
ひとり残ったヨーゼフのところに彼の恋人のぺピがやってきます。勤めている洋装店にご注文頂いたドレスを届けに来たのです。思いがけず出会えた恋人に、今日はヒーツィングでお祭りがあるから一緒に行きましょ、と誘うぺピに、伯爵のお供があるから行けないと渋るヨーゼフ、だけど伯爵は今日は奥様と舞踏会でしょと言われ、だったら一緒に行こうと盛り上がる二人(ポルカ・シュネル「うわき心」 Leichtes Blut, Op. 319)。ペピはドレスを届けに中に入って行きます。実は伯爵が惚れたのは自分だとも知らずに…
そのあとからやってきたのはフランツィの父親のカーグラーと伯爵を自ら探しに来た上司である首相のイプスハイムーギンデルバッハ公爵、カーグラーは娘が伯爵と付き合っているのは知っていましたが、彼が妻帯者であることは知らず、娘は伯爵と結婚するものと思い込んでいます。一方首相の方は伯爵の別荘に堂々と住んでいる女性がよもや愛人とは思わず、伯爵夫人に会いに来たと思い込んでいる様子。勘違いしている二人の前に現れるフランツィ(ワルツ「後宮の舞踏」 Serailtanze, Op. 5)、これはヤバいとカーグラーを連れて去るヨーゼフ、残された首相とフランツィですが、すっかり彼女を伯爵夫人と信じ込んでいる首相は彼女を慰めるつもりで愛人のことをけちょんけちょんにけなし(ポルカ・マズルカ「ヴァルディーネ」 Waldine, Op. 385)フランツィを怒らせるのでした(ポルカ・フランセーズ「パトロンのご婦人方」 Patronessen, Op. 286)。彼らが去ったあと一人思い出に浸りながら登場する伯爵夫人、主人とかつて暮らした愛の巣である別荘が何も変わっていないことに感慨深い様子です(ワルツ「朝刊」 Morgenblätter, Op. 279~ワルツ「ミルテの花」 Myrthenblüten, Op. 395 なぜか新婚当初はなかったカサノヴァの小説があったのが意味深長)。そこへ戻ってくる首相。彼はすっかりフランツィを伯爵夫人だと思い込んでいるので、こちらの本当の伯爵夫人は伯爵の愛人だろうと思い切りの嫌味をぶつける。そこへ現れる伯爵。なんでお前がここに、しかも首相まで…
君の奥さんとこんなところで愛人が鉢合わせしたらどうする、早く連れて帰りなさい、と説教する首相ですが、間の悪いことにフランツィが屋敷から出てきてしまいます。あわてた伯爵は首相にフランツィを首相の奥さんだとウソの紹介してもらい窮地をしのごうとしますが、フランツィを伯爵夫人だと思い込んでいる首相はあろうことか本物の伯爵夫人の方を自分の妻だと言ってしまうので万事休す。二人の女の疑心暗鬼はいや増すなか、困惑しきった伯爵と得意満面の首相とのちぐはぐな4重唱(ポルカ・シュネル「百発百中」 Freikugeln, Op.326)。二組のカップル?は別れ別れとなって幕となります。
第2幕
ビドウスキー伯爵の屋敷での夜会。来賓たちがポロネーズを歌いさざめく中(祝祭ポロネーズ Op. 352 Fest-Polonaise, Op. 352)、ツェドラウ伯爵と夫人が登場し、先ほどの別荘での一件は何だったの?とひと悶着。独身時代は武骨で堅物だったはずの伯爵が今ではドン・ファンも顔負けの女たらしになってしまった、だけどそれはウィーンの血をあなたが手に入れたからなの とこのオペレッタで白眉のデュエットを歌います(ポルカ・フランセーズ「よき市民」 Gut burgerlich, Op. 282~ワルツ「ウィーン気質」 Wiener Blut, Op. 354)。ひとり残った伯爵はすっかりウィーンと言う都会に染まり、汚れちまった自分をしみじみと独白します。これはさすがにウィーンの小唄から取ってきたものかと思ったら、これもちゃんとシュトラウスの作品だったのですね(ポルカ・フランセーズ「ネヴァ川」 Newa-Polka, Op. 288)。性懲りもなく第1幕で手紙を書いたお針子とのランデブーを夢見て去って行きます(ワルツ「新しいウィーン」 Neu Wien, Op. 342)。そこへやってきたのはお針子のぺピ。伯爵が恋の手紙を書いたのは何とこの娘でした。手紙を第1幕と同じメロディで読みますが、彼女の心は恋人のヨーゼフにあり、伯爵など興味もないようです(第1幕で伯爵のヨーゼフのデュエットが印象的だったワルツ「新しいウィーン」 Neu-Wien, Op. 342)。そこへ恋人のヨーゼフ登場。ですが仕事熱心な彼は、伯爵を見つけること優先で今日はデートには行けないとほざいます。「仕事とあたし どっちが大事なの!?」(ポルカ「舞踏会の花束」 Ballsträusschen, Op. 380)。とうとう喧嘩別れになる二人。ヒスを起こしたぺピはそれならお祭りには伯爵と行ってやる!と感情が爆発します(ポルカ・シュネル「うわき心」 Leichtes Blut, Op. 319 これも第1幕の再来ですね)。
場面変わってウィーン会議の舞踏会場でしょうか。女性たちのコーラスで「私たちだって戦いますわよ」と元気のいい歌(ドイツ戦争行進曲 Deutscher Krieger-Marsch, Op. 284)。ただこれはあまり話の流れと関係ないからでしょうか。ほとんどの録音でカットされています。
さて伯爵夫人は自分のことを伯爵の愛人と勘違いしている朴念仁の首相を持ち前の「ウィーンの血」色仕掛けで落とし、伯爵の情報を引き出そうとします(ポルカ・マズルカ「女性賛美」 Lob der Frauen, Op.315)。まんまとそれに引っかかる首相(ポルカ・フランセーズ「ルイーズちゃん」 Louischen, Op. 339)。鉢合わせした本当の愛人フランツィに「伯爵の愛人を落としたぞ」と自慢します(ワルツ「楽しめ人生を」 Freuet euch des Lebens, op. 340)。あまつさえそこへやってきた伯爵夫人とフランツィをあべこべに紹介する不始末(このあたりワルツ「酒、女、歌」 Wein, Weib und Gesang!, Op. 333からのいろんなフレーズが絶妙に物語に落とし込まれています 編曲の妙)。そこへぺピとヨーゼフまで現れて「誰が伯爵の愛人なの」問題で混迷が深まります。最後に伯爵が登場しますがひたすらとぼけてごまかす一手。(ポルカ・シュネル「観光列車」 Vergnügungszug, Op. 281がこのドタバタを引き立てます)
そこへファンファーレと荘厳なマーチ(祝典行進曲 Jubelfest, Op. 396)場の雰囲気が一気に引き締まります。この曲もカット多し。突如登場した執事に伯爵夫人は正体を明かされ、蒼ざめる首相とフランツィ。ぺピはこの期に及んでなお伯爵にお祭りに連れてってくれるんでしょうね とおねだり。なんか色々ドタバタはしましたが祝宴にふさわしく伯爵がウィーンのワルツを讃える言葉を述べ (これもワルツ「酒、女、歌」 Wein, Weib und Gesang!, Op. 333の最後のワルツ)、皆でワルツを踊って盛り上がって幕となります(曲はご存じワルツ「美しく青きドナウ」 An der schönen blauen Donau, Op. 314)。
第3幕
冒頭物語とは関係ない二人の女が冒頭に歌う小唄風の歌 これも実はシュトラウスの作品でした(ワルツ「わが家で」 Bei uns z’Haus, Op. 361)。第3幕前奏曲からこのワルツのメロディを使っているのでけっこう歌も含めて重要なのですが、あまりキャストを増やしたくないオトナの事情でこの曲も主要キャストの誰かが歌うウィーンの小唄に差し替えられることが舞台では多いです。そのあともこの幕は膨大なカットの嵐ですが、要の6重唱(伯爵とぺピ、伯爵夫人と首相、フランツィとヨーゼフと相手をそれぞれ組み替えて伯爵のアバンチュールの場を取り押さえようと必死です)はやはり外せないところ。シュトラウスにしては悲しく不安げなメロディはちょっと意外な感じですが、このあとのカタルシスを得るのに重要なところでしょうか(ポルカ・マズルカ「蜃気楼」 Fata Morgana, Op. 330)、このあたりは他にも色々使われているようなのですが確認中です。やっと出会えたぺピと「乾杯」と叫ぶところ(これもワルツ「酒、女、歌」 Wein, Weib und Gesang!, Op. 333から この曲もこのオペレッタを支える主要作品のひとつですね)、隠れている他の2組のペアも乾杯と声を合わせてこれでは隠れている意味がありません。この曲で一応の盛り上がりを見せます。このあともつれにもつれた人間関係の種明かしがされて行くのですが、そんな中唐突に入ってくる伯爵夫人とフランツィのデュエット(これもワルツ「酒、女、歌」 Wein, Weib und Gesang!, Op. 333からです)。さすがに座りが悪いのでこの曲は私もボスコフスキー盤でしか聴いたことがありません。けっこう耳には心地よい曲ではあるのですが…
そしてすべてが解決したあとの〆はやはりこの曲ですね(ワルツ「ウィーン気質」 Wiener Blut, Op. 354)。筋とはあまり関わりなく強引に締めるところなど大衆演芸の香りに満ち溢れています。
最終更新:2025年01月03日 00:31